ストレス性薄毛は、ストレスが原因で発症する脱毛症です。男性特有の脱毛症・AGAもストレスが原因で悪化することが多いという説もあります。
ストレス性薄毛の特徴や症状、ストレスを原因とする薄毛を発症しやすい人の特徴やストレス性薄毛の防止方法、治すために心がけたいことなどについて解説します。
ストレスは薄毛の原因?密接な関連性について
ストレスが薄毛に結びつくという医学的根拠はマウスを使った実験結果で立証されており、人間も同様にストレスで薄毛を発症する可能性が高いとされています。
この章では、ストレスと薄毛の密接な関連を紹介します。
ストレスによってホルモンバランスが乱れる
「薄毛の原因になるのはテストステロンという男性ホルモン」と長い間誤解されていましたが、実際はそうではありません。
テストストロンが「5αリダクターゼ」という還元酵素と結びつくことによってジヒドロテストロンに変化し、それが薄毛やAGAの原因になるのです。
そのため、テストステロンは善玉男性ホルモン、ジヒドロテストロンは悪玉男性ホルモンと呼ばれています。
テストストロンがジヒドロテストロンに変化する原因の1つは、ストレスによるホルモンバランスの乱れです。
ホルモンバランスが崩れるとジヒドロテストロンが多く分泌されるようになり、その結果薄毛やAGAが発症・進行するのです。
女性の場合は、髪の成長を促進する女性ホルモン・エストロゲンがストレスによって分泌されにくくなり、ストレス性薄毛の原因になります。
男性も女性も、ストレスでホルモンバランスがおかしくなった状態が続くと薄毛になるのです。
ストレスによって生活習慣が悪化する
ストレスによる生活習慣の悪化も薄毛を引き起こします。
薄毛やAGAのリスクが上がる主な生活習慣は以下の通りです。
- ストレス
- 睡眠不足
- アルコール
- 喫煙
この4つのうち、ストレスが原因で悪化しやすい生活習慣は、睡眠とアルコールと喫煙です。
ストレスによって寝付きと寝起きが悪くなったり熟睡できなかったりといった睡眠障害が発生すると共に、ストレスを発散するために過度なアルコール摂取をしたり、喫煙量が増えたりといった事態を引き起こしやすくなります。
睡眠障害で睡眠の質が悪くなると自律神経が乱れ、交感神経と副交感神経という2種類の自律神経のバランスが乱れることにより、薄毛・AGAを発症しやすくなるのです。
お酒の飲み過ぎは、薄毛・AGAの発症を促すアセトアルデヒトの発生原因になります。
また、タバコを吸うことでタバコの成分であるニコチンが毛細血管を収縮させ、発毛を促進する毛母細胞に十分な栄養が届かなくなり、薄毛やAGAにつながるのです。
ストレスによって血行不良が起こる
心身がストレスを感じると、交感神経が活性化します。それだけなら良いのですが、交感神経の活性化により、動悸が早くなったり体温が上昇したりといった状態になります。
その状態が続くと、交感神経などの自律神経が緊張し、血管を収縮させるという反応を起こすため、血の流れが悪くなって血行不良になるのです。
血行不良によって細胞に栄養素が十分に送れなくなるので、前述の毛母細胞への栄養供給が阻害されて発毛力を損ないます。
正常に毛母細胞が働かないと、生えてくる髪の毛も栄養が行き渡っていないので、抜けやすく切れやすくなります。また、従来より痩せた毛しか生えてこなくなることも。
血行不良で健康な髪の毛が育たなくなることによって、薄毛やAGAが進行しやすくなってしまうのです。
ストレス性薄毛の特徴は?主な症状3つを解説
ストレス性の薄毛には代表的な症状が3つあり、このどれもが男女どちらでも発症する可能性があります。
- ストレスによって円形脱毛症になる
- ストレスによって頭皮全体が薄くなる(びまん性脱毛症)
- ストレスによって髪の毛のハリがなくなってくる
上記の症状3つについて解説します。
ストレスによって円形脱毛症になる
ストレスが原因で発症することが多いのは円形脱毛症です。
頭髪が円形・楕円形を描くように抜けるのが特徴で、よく使われる別名は「10円ハゲ」などですが、10円玉より大きく、頭部の広範囲または全体に円・楕円型の脱毛を発症することもあります。
円形脱毛症の代表的な分類法は以下の5つです。
- 単発型
- 多発型
- 蛇行型
- 汎発型
- 全頭型
この中で最も多いのは単発型で、狭い範囲なので治療しやすいです。多発型は複数の脱毛が頭部に現れるタイプで、単発型の次に多く見られます。
側頭部や後頭部の髪の生え際から帯状に脱毛するのが蛇行型、眉毛や脇毛なども脱けるのが汎発型、頭部全体に脱毛が広がるのが全頭型で、汎発型と全頭型は治療に時間を要します。
ストレスによって頭皮全体が薄くなる(びまん性脱毛症)
びまん性脱毛症は、ストレスで頭皮全体が薄くなる脱毛症です。
初期症状は髪の分け目が薄くなることで、次第に髪全体のボリュームが減っていく形で症状が進行します。主な症状は以下の通りです。
- ブラッシングや洗髪などで抜ける髪が従来より多くなった
- 髪の毛が細くなった
- 地肌が透けて見えるようになった
これらの症状が出たことで発症に気付く人も少なくありません。
進行速度には個人差がありますが、急激に症状が悪化することが少ないので、発症に気付いたときにはかなり進行しているというケースが多いのも、この脱毛症の特徴に挙げられています。
びまん性脱毛症が発症する原因とされているのは、ストレス・自律神経の乱れ・加齢によるホルモン分泌量の減少などです。
最も多く罹患するのは年齢を重ねた女性ですが、若い男性でも発症する可能性があるので要注意です。
ストレスによって髪の毛のハリがなくなってくる
ストレス性薄毛を発症すると、薄毛になるだけではなく、髪の毛のハリが失われていきます。
特に多いのは以下の特徴です。
- 髪全体のボリュームがなくなる
- 髪1本1本のハリとコシがなくなる
- ヘアスタイルを整えにくくなる
髪のハリ・コシが少なくなってヘアスタイルがうまく整えられなくなると、ついムースなどのヘアケア製品に頼ってしまいます。
しかし、薄毛を発症している場合に強い薬品が含まれているヘアケア製品を使うと、薄毛がさらに進んでしまう可能性があるので危険です。
明らかに薄毛が原因と自覚している場合には、自力で何とかしようとせずに脱毛症専門のクリニックで相談することを推奨します。
AGAは現在の医学で症状の進行を食い止めるのみで完治はしない脱毛症ですが、ストレス性の脱毛症は医療の力で完治させられるからです。
女性に多い?ストレスが原因で薄毛になる人の特徴
この章では、ストレスを受けて薄毛になってしまう人の特徴を解説します。
- ダイエットを繰り返す
- 真面目で責任感が強い
- 不規則な生活リズム
- ホルモン変化の時期である
上記4つの症状は女性に多く見られます。特徴が自分に該当するか確かめてみましょう。
ダイエットを繰り返す
ダイエットを繰り返している人もストレス性薄毛を発症しやすいです。
食事制限の程度によってはダイエット前よりも健康になれます。
しかし、早く痩せたいという気持ちが先走って極度の食事制限を行うと、髪を成長させる栄養素が毛母細胞に十分に行き渡らなくなり、抜け毛が増えるのです。
また、ダイエットで無理な食事制限をすると共に体に負荷がかかりすぎる運動をするのも、心だけではなく体にストレスがかかるため、薄毛発症につながります。心身にかかる過度な負荷はストレスと同義だからです。
過激なダイエットを繰り返したことにより、AGA・円形脱毛症・びまん性脱毛症を発症する人はかなりの数にのぼっています。
特に、スタイルが気になる思春期の女性は、ダイエットが原因で薄毛を発症する傾向があります。
真面目で責任感が強い
真面目かつ責任感が強いタイプの人も、ストレス性の薄毛になりやすいです。
何事にも一生懸命取り組む姿勢は素晴らしいのですが、勉強・仕事・家事など自分に与えられたノルマを完璧に果たそうとする気持ちがストレスに結びつきがちだからです。
真面目・責任感が強いという特徴を持つ人は、神経質な面も併せ持っていることが多く、神経質なタイプもストレスを感じやすいため、ストレス性薄毛を発症しやすいという泣き所があります。
神経質なあまり、洗髪を熱心にやりすぎて、その結果薄毛になる例もあります。
真面目・強い責任感・神経質はどれも欠点ではありませんが、度が過ぎると本人のストレスになり、心身の健康を損なう結果、薄毛になってしまうのです。
不規則な生活リズム
生活のリズムが不規則なことも、薄毛の発症原因になります。
朝型なら朝型、夜型なら夜型で、毎日決まった時間に栄養バランスが整った食事を摂り、適度な運動をして、決まった時間に寝起きするという生活をしていれば、薄毛になる心配は基本的にありません。
しかし、睡眠時間も食事の時間も日によってまちまち、という感じで生活リズムが不安定だと、自律神経が乱れることにより、髪の毛の成長に必要な栄養が頭部に届きにくくなり、抜け毛が増え、薄毛になっていくのです。
特に、栄養不足と睡眠不足は頭髪の健康を守る毛母細胞に悪影響を与え、精神面にも悪影響を及ぼすので、不規則な生活をしている人は薄毛になる可能性がかなり高いです。
ホルモン変化の時期である
ホルモンが変化したりバランスが乱れたりする時期も、薄毛になる可能性を高めます。
薄毛の原因になる代表的なホルモン変化は以下の通りです。
- テストストロンがストレスでジヒドロテストロンに変化
- 出産後にホルモンバランスが変動
- 加齢や更年期障害によるホルモンバランスの乱れ
- 生活習慣(食生活・睡眠時間など)の悪化によるホルモンバランスの変化
2つ目は女性特有のホルモン変化ですが、テストストロンがジヒドロテストロンに変化したり、加齢と更年期障害や生活習慣悪化でホルモンバランスが変化するのは男女共通です。
ホルモン変化による脱毛症の多くは治療可能なので、薄毛になったと自覚した時は脱毛症専門クリニックでカウンセリングを受けてみましょう。
どうすれば防げる?ストレス性薄毛を防ぐ方法
ストレス性薄毛は発症したらクリニック受診がベストですが、まだ発症していなければ自分で対策することで防ぐことが可能です。
自分でできるストレス性薄毛予防方法をチェックしてみましょう。
十分な睡眠時間を確保する
睡眠不足は薄毛の主因になるので、睡眠時間を十分に確保するのも、非常に有効な薄毛予防方法です。
特に、頭髪が成長する時間帯に睡眠をとるのが最善です。
頭髪の成長する時間帯は、22時(午後10時)から午前2時なので、この時間は眠ることをおすすめします。
他の時間帯に眠るよりも多くの成長ホルモンが分泌されるので、頭髪や毛根の健康が維持しやすくなるからです。
十分に眠ることで心身のストレスも大きく緩和されるので、薄毛の原因を取り除けるのも大きなメリットです。
睡眠不足が続くと自律神経に乱れが生じ、眠ろうとしても頭が冴えて眠れない不眠症を発症します。
睡眠不足や不眠症は薄毛だけではなく心身の他の病気にもつながるので、薄毛を予防すると共に、全体の健康を維持するための睡眠を確保することを心がけましょう。
食生活を見直す
食生活の改善も、薄毛の予防になります。栄養バランスがとれている食生活をすると同時に、頭髪の成長を促進する食べ物を食生活に取り入れることをおすすめします。
薄毛予防・頭髪成長促進の効果を得られる代表的な食べ物・栄養素は以下の通りです。
- 良質なタンパク質が含まれる肉・魚・卵・大豆・乳製品
- ミネラルが豊富な貝類・海藻類
- ビタミン類が多い緑黄色野菜・果物・ナッツ類
タンパク質・ミネラル・ビタミン類は、髪の成長を促し、薄毛を予防する効果があります。
タンパク質では鶏ささみ肉と大豆製品、ミネラルでは牡蠣と海藻類、緑黄色野菜ではほうれん草やかぼちゃ、果物ではバナナが特におすすめです。
これらの栄養素が摂れるような食事をすることが、薄毛予防につながるだけではなく、薄毛の進行を止める効果を発揮します。
ストレス性の薄毛は治る!? 治すために重要なこと
ストレスが原因で発症した薄毛は、治る可能性が非常に高いです。治すために必要なことを確認した上で治療を始めましょう。
ストレス性の薄毛が回復する条件は、心身の健康を維持することです。
心にかかったストレスは趣味などで解消するようにした上で、体のストレスを栄養バランスが整った食事と十分な睡眠を摂ることで解消することにより、薄毛の症状を緩和し、治療できます。
薄毛がかなり進んでしまった場合には、脱毛症専門のクリニックで相談し、治療を受けましょう。それでほとんどの薄毛が回復します。
回復までの期間は薄毛の進行度や個人の体質や対策にもよりますが、半年から1年くらいの時間を要するのが一般的です。
しかし、治療を続ければ回復するので、時間がかかっても諦めずに治療し続けましょう。
まとめ
ストレス性薄毛は、薄毛を気にしすぎた結果、それがストレスになって薄毛がさらに悪化する、といった最悪のループを作ることが少なくない病気です。
そういったループを作らないために、薄毛は回復するものと信じながら心身のストレスを解消する対策をとり、十分な睡眠と栄養バランスが良い食生活によって薄毛の進行を防ぎましょう。