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21世紀型スキルとは?スキルの種類などをわかりやすく解説!

現代の社会や組織では、コミュニケーション力、ITリテラシー、問題解決力などの能力が高く評価される傾向にあります。なぜ今の時代にこうしたスキルが必要とされるのでしょうか。背景には、21世紀型スキルの開発が関わっています。

この記事では、21世紀型スキルとは何か、ATC21sや21世紀型能力について、求められている背景、種類、具体事例、取得するには、SDGsとの関係を解説します。

21世紀型スキルとは

21世紀型スキルとは、21世紀のグローバル社会で活躍する人材に求められる能力を言います。世界では、新しい時代に必要な人材像や能力について、さまざまな機関や組織が検討を行っています。こうした研究の成果の一部は、21世紀型スキルとして、学校などの教育現場をはじめビジネス界などで活用されています。

21世紀型スキルにはいくつかの種類がありますが、共通点をまとめると次の通りです。

■21世紀型スキルまとめ

1.コラボレーションスキル
2.コミュニケーションスキル
3.ICTリテラシー
4.社会スキル
5.市民性
6.創造性
7.批判的思考
8.問題解決
9.生産性

詳しい内容については、後述の「21世紀型スキルの種類」の章で紹介します。

ATC21sについて

ATC21sは、世界的なIT企業であるシスコシステムズ、インテル、マイクロソフトと、オーストラリアのメルボルン大学が2009年に始めたプロジェクトです。このプロジェクトでは、6カ国(オーストラリア、フィンランド、ポルトガル、シンガポール、イギリス、アメリカ)が協力し、21世紀に必要なスキルとその評価研究を行いました。ATC21sにより得られた結果は、21世紀型スキルの1つとして知られています。詳しい内容については、後述します。

21世紀型能力との違い

21世紀型スキルとは別に、21世紀型能力があります。21世紀型能力とは、国立教育政策研究所が2013年に発表した21世紀に求められる人間の資質・能力です。日本の学校教育が育んできた資質や能力を、「基礎」「思考」「実践」として再構成した日本型資質・能力の枠組みを言います。

【21世紀型能力】

「基礎」「思考」「実践」は、次のように定義されています。

・基礎力…言語・数量・情報を道具として目的に応じて使いこなす力
・思考力…自分の考えを持って他者と話し合い、より良い解を創り出す力
・実践力…日常生活や社会、環境の中に問題を見つけ出し、自分やコミュニティー、社会にとって価値のある解を導く力

日本ではこれまで、「生きる力」(文部科学省:1996年)、「人間力」(内閣府・経済財政諮問会議:2003)、「社会人基礎力」(経済産業省:2006年)などの人材像を示してきました。21世紀型能力は、最終的に「生きる力」につながる構造になっています。

21世紀型能力は、内容に重なる部分があるほか、教育の分野に活かされているという点では、21世紀型スキルと共通しています。ただし、日本が開発しているという点に違いがあります。

21世紀型スキルが求められている理由

21世紀型スキルが求められている背景には何があるのでしょうか。世界や日本が置かれている現状から、2つのポイントを取り上げます。

情報化の進展

1つには、デジタルテクノロジーを含む情報化の進展があります。インターネットの普及に伴い、情報へのアクセスが簡単にできるようになりました。この結果、知識量や計算速度といった従来の能力よりも、情報を解釈して処理する力が今求められています。

教育のグローバル化

もう1つは、グローバル化が進むことで、教育が変化していることです。グローバル化により、国債取引や貿易、海外投資などが増えました。これに伴い、英語など語学のほか、他国の文化なども理解し、世界的な視野で物事を考える力を養うことが必要とされています。

21世紀型スキルが求められている理由には、こうした時代の変化が背景にあります。

21世紀型スキルの種類

21世紀型スキルにはいくつかの種類があるとお伝えしました。それは例えば、P21(21世紀スキル協同事業)による枠組みや、非営利組織(ISTE)による基準(いずれもアメリカ)、アメリカ北部中央地域教育研究所による能力群(enGauge)などです。ここでは、21世紀型スキルの代表とも言えるPC21と、先に紹介したATC21sを見ていきましょう。

P21(21世紀スキル)

P21は、21世紀型スキルパートナーシップ(Partnership for 21st Century Skills)の略で、アメリカの教育省、ICT(情報通信技術)関連企業、教育団体などが参加して2002年に設立された組織です。ここで開発された21世紀型スキルは、21世紀社会の労働者や市民として成功するために必要なスキルと定義されています。

内容は大きく、教育の中で生徒が習得するもの、それを支援するものの2つに分かれており、基本的な枠組みは次の通りです。

【P21の「21世紀型スキル」】

(引用元:P21 Resources | 21st Century Learning Resources | Battelle for Kids:日本語訳は著者による)

上図に沿って内容を確認していきましょう。

習得するもの

①主要教科・21世紀の課題

主要教科とは、国語(英語)、読書、外国語、芸術、数学、経済学、科学、地理、歴史、公民を言います。21世紀の課題は、グローバルな認識や、金融・経済から公民、健康、環境に関する知識・能力を指します。

②学習スキル・革新スキル

学習スキル・革新スキルは、創造性と革新性、批判的思考と問題解決、コミュニケーションとコラボレーションを指し、複雑化する生活や労働環境に対応する能力のことです。

③情報メディア・テクノロジーのスキル

情報メディア・テクノロジーのスキルは、情報やメディアに関する知識・能力のほか、ICTを活用する力を言います。

④生活・職業スキル

生活・職業スキルは、柔軟性や適応力、率先力と主体性、社会・異文化スキル、指導力と責任感などを指します。

そして①から④を習得するためには、次の支援が必要だと考えられています。

習得を支援するもの

①スタンダード(基準)とアセスメント(評価)

スタンダードは、各教科や21世紀の課題を理解するために、データやツールなどを積極的に用いること、そしてアセスメントは、質の高いテストにより評価とフィードバックを行うことです

②カリキュラムと指導

カリキュラムと指導は、各教科と21世紀の課題の両面で行うことが必要です。また、これを支援するテクノロジーを活用するほか、問題解決型のアプローチ、高度な思考による学習方法を指します

③専門的な開発

21世紀型スキルを教師が教えるためには、学習ツールを用いたり指導方法を工夫したりする能力が重要です。そのためには、専門的な学習コミュニティを作り、教師の能力を高めていく必要があります

④学習環境

学習環境は、教育者が授業で実践したことを共有し、教室で21世紀型スキルを教えるためにこれらを利用できる環境を言います。さらに、学習ツールや資料などにもアクセスできることも重要です

P21の21世紀型スキルの枠組みは2002年に示されましたが、後に改訂され現在に至っています。

ATC21s

ACT21sは、21世紀型スキルのための教育と評価プロジェクト(Assessment and Teaching of 21st Century Skills)という意味です。 ACT21sで定義されている21世紀型スキルは、10個のスキルを「思考の方法」「仕事の方法」「働くためのツール」「世界の中で生きる方法」の4つのカテゴリーに分けています。

思考の方法

1.創造性とイノベーション

2.批判的思考、問題解決、意思決定

3.学び方の学習、メタ認知

思考と方法は、業務の中で知的成果物を生み出す「知的生産」を担う労働者が、高度な思考を行う際に必要なスキルです。

仕事の方法

4.コミュニケーション

5.コラボレーション

仕事の方法は、知的生産を担う労働者が仕事をするために利用する能力スキルです。母語と外国語で意思疎通する、チームで業務を行うスキルなどを指します。

働くためのツール

6.情報リテラシー

7.ICTリテラシー

知的生産に必要な情報通信技術を、働くためのツールとして利用する知識や能力です。情報にアクセスして価値を評価することと、通信技術を操作できる技術を指します。

世界の中で生きる方法

8.地域と世界の良い市民であること(市民性)

9.生活と職業に関するスキル

10.個人と社会的責任

これらのスキルは、住んでいる国や地域で他者と共生しながら、地域社会で個人の役割を果たしていく技術を含みます。

P21とATC21sの内容を見てきましたが、両者には似ている点が多くあることが分かります。

21世紀型スキルの具体事例

21世紀型スキルはどのように養われ、社会の中で活用されていくのでしょうか。教育現場での取り組みと、ビジネス界での具体例を取り上げます。

【教育】アリゾナ州チャンドラー統一学区

アメリカでは、21州でP21が実施されています。(2017年時点)そのうちアリゾナ州チャンドラー統一学区では、100人以上から意見を集め、生徒が成長していく過程で身に付ける特性6つを「学習者のポートレート」として定めています。

■学習者のポートレート

適応性

コラボレーション

コミュニケーション

批判的思考

共感

グローバルな市民性

これらの特性は、就職や進学、軍への入隊、起業など、卒業後の生徒の成功に不可欠であると学区では考えています。校長や教員をはじめ、コミュニティーの人たちと交流し、進学や就職などの進路について意見をもらったり、自分の考えを聞いてもらったりなど、21世紀型スキルを身に付けるための場を設けています。

【ビジネス】イノベーションの創出

ビジネスにおいて21世紀型スキルを発揮する場面の1つは、イノベーションの創出です。イノベーションは新しい考え方により社会を変革するという意味があり、経済全体の活性化や、生産性が向上することで事業の拡大が期待できるなど、今注目されているビジネススキルです。

Act21sでは、思考の方法の中で創造性とイノベーションを挙げています。高度な思考により知的成果物を生む力はまさにイノベーションであり、21世紀型スキルに通ずる能力です。

例えば、国民が2006年に「20年後にあったら社会が変わる」と想像していたイノベーションに、日本語と外国語のやり取りを翻訳してくれるヘッドホンがあります。現在、音声や文字を瞬時に翻訳するアプリやシステムは、開発途上ではありますが実用化しています。

こうした新しいモノやサービスを作ることは、21世紀型スキルを身に付けることにより可能です。

21世紀型スキルを取得するには

21世紀型スキルを取得する方法はさまざまあります。日本では、21世紀型能力を活用した授業やプログラムを実施しています。職場では研修やコーチングなどを通じて、21世紀型スキルを身に付ける機会を設けている場合もあるでしょう。

ここでは、「21世紀型スキル学習」を掲げたオンライン通学コースの講座を紹介します。

21世紀型スキル学習(N高グループ)

N高グループのオンライン通学コース「21世紀型スキル学習」は、ATC21sとWHO(世界保健機関)のライフスキルを参考に開発されているプログラムです。

「自己を認識し、他者と協働」「正解のない問題に取り組むためのスキルを学習する」をテーマにスキルを取得し、それを幅広く活用できることを目指しています。

ワークショップやケース体験などの活動を通じて、感情に対処する、創造的に考える、協同/協同するスキルを身に付けることができます。N高グループが展開するN高等学校は、10〜80代までが学ぶ学校です。日本でATC21sの21世紀型スキルを学べる貴重な場です。

21世紀型スキルとSDGs

最後に、21世紀型スキルとSDGsとの関係を確認します。21世紀型スキルは、持続可能な開発を目指すSDGsのどの目標にもつながっています。

例えば、21世紀型スキルのICTリテラシーや生産性は、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」や目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」などのイノベーションを必要とする目標に、そして問題解決能力は、目標1「貧困をなくそう」や目標13「気候変動に具体的な対策を」などの課題の克服が必要な目標に貢献します。

SDGsは、未来のかたちを示しています。21世紀型スキルは、あるべき未来を実現するために必要なスキルとも言えるでしょう。

>>各目標に関する詳しい記事はこちらから

まとめ

21世紀型スキルは、グローバル社会で活躍する人材に求められているスキルであり、世界と日本の教育やビジネスに活用されています。情報化や教育のグローバル化が進む21世紀は、従来とは異なる新しい能力が求められています。これに合わせて、ATC21sやP21といった21世紀型スキルが開発されました。SDGsが目指している持続可能な未来の実現にも、21世紀型スキルは貢献しています。必要なスキルは時代とともに変化します。こうしたスキルを積極的に身に付けていくことも、これからは重要になるでしょう。

<参考文献>
田中義隆著、2015、『21世紀型スキルと諸外国の教育実践 求められる新しい能力育成』、明石書店
7オンライン通学コースの21世紀型スキル学習 | N高等学校・S高等学校・R高等学校
研究会資料、N高等学校|経済産業省