
「ガソリン車が廃止になる」
という噂が気になっている人は多いでしょう。日本では長い間、国民の足として親しまれてきたガソリン車。しかし近年は、地球温暖化対策の観点から、世界的にガソリン車の使用を抑制する動きが加速しています。
では、ガソリン車はいつまで乗れるのでしょうか?ガソリン車の今後の展望について、わかりやすく解説し、対象となる車種や、新車販売終了の理由、世界の動向など、これからのために必要な情報をお届けします。
目次
ガソリン車廃止はありえない?日本でもガソリン車が廃止になるって本当?
「日本でもガソリン車が廃止になるっ本当?」
という疑問に率直に答えるなら、「その可能性はありますが、自動車、燃料、バッテリー、発電などの技術開発が進むペースによって、その時期や内容も変わる可能性がある」といったところが誤解を招かない回答です。
日本政府は、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「2050年カーボンニュートラル」を掲げています。それに伴い、自動車からの温室効果ガス排出量を減らすため、将来的に新車販売の100%を電動車両にするという目標を掲げています。
この目標は、グリーン成長戦略※の一環としても位置付けられています。
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「2035年ガソリン車の新車販売終了」を目指す
【日本の自動車・蓄電池産業の実行計画】
その中で日本政府は、「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」という目標を掲げています。これは建前ではなく、日本政府は「予算」「税制」「金融」「規制改革・標準化」「国際連携」などの政策を総動員して、電動車の普及を後押しするとしています。
日本政府はカーボンニュートラルを実現することで、「環境だけでなく経済や社会にもメリットがある」と考えています。しかし、2035年までに新車販売の100%を電動車両にすることは、現実的にはかなりの困難が予想されています。
各自動車メーカーは、電動車両の開発や生産拡大に向けて取り組んでいますが、まだまだ課題も多く残されています。
ガソリン車の新車販売が廃止になったらどうなるの?
新車販売が終了しても、既に所有しているガソリン車は引き続き使用することができます。また、中古車市場には、今後もガソリン車が流通することになります。
規制によりガソリン車に乗れなくなることを心配している人もいますが、ガソリン車で公道が走れなくなることはありません。ガソリンスタンドや整備工場は、今後もガソリン車に対応していくと考えられています。
これらのことから、ガソリン車を所有すること自体はできる状況が続くと予想できます。しかし、
- 燃料税の引き上げ(ガソリン車の燃料税を引き上げることで、燃料消費の削減やエネルギー効率の向上を促す)
- 車両税の増額(ガソリン車の所有にかかる車両税を増額することで、環境に配慮した車種の普及を促す)
- CO2排出量に基づく課税(車両のCO2排出量に応じて課税することで、環境に優しい車種の選択を奨励する)
などが検討されているので、将来的にガソリン車の所有には高い税金がかかるようになる可能性もあります。
日本ではガソリン車にいつまで乗れる?
日本では、ガソリン車に乗ること自体が禁止される予定は今のところありません。政府は2035年までに「新車販売を電動車(ハイブリッド車含む)に限定する方針」を示していますが、すでに購入済みのガソリン車に関しては、継続して乗ることが可能です。
つまり、2035年以降も中古車市場でガソリン車を購入したり、現在保有している車を車検を通して使い続けたりすることができます。
ただし、将来的にはガソリン価格の上昇や排出ガス規制の強化、税制の変化などでコストや利便性に影響が出る可能性があります。環境配慮や経済性の面から電動車への移行が進むと、ガソリン車ユーザーが肩身の狭い思いをする日も来るかもしれません。
いつかEV100%になるの?
【多様な自動車のそれぞれの特徴】
ガソリン車が廃止や新車販売が終了になった場合、それを補うためにモビリティ(移動手段)はEV一択ではなく、多様化すると考えられます。もちろん、電気自動車(EV)をはじめ、
- 燃料電池自動車(FCV)
- 水素自動車
- 環境に優しい燃料で走るエンジン車
- バイクや自転車
- 公共交通機関
など、移動手段にはさまざまな選択肢が増えるでしょう。
例えば、環境負荷の低い燃料を使用するエンジン車の開発も進んでいます。エンジンを搭載した自動車でも、バイオ燃料や合成燃料など、化石燃料に比べて二酸化炭素の排出量が少ない燃料を利用することで、環境負荷を低減することができます。
これにより、エンジン車の利用者も環境に配慮した選択肢を持つことができるのです。つまり、将来的にEV100%になる可能性は、今のところ低いと言えるでしょう。
【多様なモビリティの担う範囲】
将来のモビリティについても把握したところで、現在の計画ではいつ頃「ガソリン車廃止」や「ガソリン車の新車販売終了」などの規制が始まる予定なのか確認しましょう。*1)
【関連記事】合成燃料とは?作り方や活用事例、メリット・デメリット、課題も
地域ごとに規制が始まる時期が異なる?
政府としては「2035年までにガソリン車の新車販売終了を目指す」としていますが、ガソリン車の新車販売の規制を始める時期は地域ごとに異なる見込みです。その理由として、
- 電気自動車の充電インフラが整備されている状況
- ガソリン価格
- 環境意識が高い人が多いかどうか
- 新車の販売台数が多いかどうか
など、地域によって事情が異なるからです。
例えば東京都は、2030年までに東京都内の新規登録車両のうち、ゼロエミッション車※の割合を100%にすることを目指しています。
【関連記事】ゼロエミッションとは?推進理由や日本の取組事例、私たちにできることも
次の章では、なぜガソリン車が廃止や販売終了になるのかを考えていきましょう。*2)
ガソリン車が廃止・販売終了になる理由
ガソリン車が販売終了になる理由は、環境問題に関する取り組みが背景にあります。また、自動車部門の技術革新が加速していることも理由として考えられます。
環境問題への対応
【日本の部門別CO2排出量】
ガソリン車は、燃料としてガソリンを使用し、走行する際に二酸化炭素や窒素酸化物などの温室効果ガスを排出します。これらの排出物質は、大気汚染や地球温暖化の原因となり、環境問題につながっています。
ガソリン車の代替車両として注目されている電気自動車や水素燃料電池車は、環境に優しく、持続可能なエネルギーを使って走ることができます。これにより、大気汚染を減らし、地球温暖化を食い止めることが期待できます。
上の資料からも、自動車をはじめとする「運輸部門」の二酸化炭素排出量は、全体の大きな割合を占めていると言えます。その中でも自家用車の割合が多いこともわかります。
自動車部門の技術革新
電気自動車などの代替車両の技術が進化しており、より環境に優しい車両が登場しています。これらの車両は、ガソリン車に比べて温室効果ガスの排出量が少なく、環境に配慮した走行が可能です。
さらに、新しい車両の登場によって、私たちの生活も変わると予想されています。例えば、AI(人工知能)※による自動運転技術の進化により、車が自動的に走行することが可能になります。
これによって、私たちは運転にかかる時間を有効活用したり、交通事故のリスクを減らしたりできるようになります。
【関連記事】ディープラーニングとは?仕組みやメリット・デメリットと実用例の紹介
環境問題ばかりではなく、近年テクノロジーの進歩が加速していることによって、これまでの自動車が「新技術・新エネルギーの自動車に移行しつつある」ということも理解しておくことが大切です。次の章ではガソリン車の廃止・新車販売終了に関する世界の動向について確認します。*3)
ガソリン車のメリット
電動車の普及が進む中でも、ガソリン車には根強い人気があります。その理由は、長年使われてきた信頼性や、使い勝手の良さにあります。ここでは、ガソリン車ならではの魅力やメリットについて、具体的にご紹介します。
燃料補給が早く、インフラが整っている
ガソリン車の大きな利点の一つが、全国どこでも簡単に燃料補給ができることです。ガソリンスタンドは都市部だけでなく地方にも広く設置されており、ルートを選ばずに長距離移動が可能です。
さらに、給油は数分で完了するため、充電に時間がかかる電気自動車(EV)と比べて、時間的なストレスが少ない点も魅力です。とくに営業車や長距離ドライバーにとっては、給油の早さが日々の効率に直結します。今後も一定期間はガソリンスタンドの数が維持されると見られており、移動の自由度を重視する人にとって、ガソリン車は安心して使える存在です。
車種や価格の選択肢が豊富
ガソリン車は市場に出回っている車種が圧倒的に多く、軽自動車からSUV、高級セダンまであらゆるニーズに対応できる点が魅力です。また、新車だけでなく中古車市場でも種類が豊富にあり、予算に合わせて選びやすいという利点もあります。
電動車は車種が限られていたり、初期費用が高くなりがちですが、ガソリン車はエントリーモデルでも安価なものが多く、初めてのマイカーとしても手が届きやすいです。趣味やライフスタイルに合わせた車選びができる点は、今でもガソリン車が選ばれる大きな理由の一つとなっています。
整備や修理がしやすく、対応できる工場も多い
ガソリン車は長い歴史があるため、整備や修理に関するノウハウが広く蓄積されています。そのため、多くの整備工場やディーラーで対応でき、パーツの流通も安定しています。故障時の対応がスムーズで、特別な技術や設備が不要なため、メンテナンスコストも比較的抑えられる傾向にあります。
一方で電動車は特殊な構造や高電圧バッテリーなどにより、修理可能な場所が限られる場合があります。とくに地方では、ガソリン車の方が圧倒的に対応環境が整っており、長く乗り続けることを前提とするなら、維持のしやすさは大きなメリットといえるでしょう。
現在おすすめのガソリン車一覧
以下に、現在おすすめのガソリン車を一覧表にまとめました。
車種名 | メーカー | 特徴 | 価格帯(目安) |
---|---|---|---|
ヤリス | トヨタ | 燃費性能が高く、街乗りにも最適 | 約150〜230万円 |
フィット | ホンダ | 室内空間が広く、扱いやすいコンパクトカー | 約160〜220万円 |
スイフト | スズキ | 軽快な走りとコスパの良さが魅力 | 約150〜200万円 |
ノート(ガソリン仕様) | 日産 | 安定感のある走行性能とシンプルな設計 | 約170〜230万円 |
カローラスポーツ | トヨタ | デザイン性と走行性能のバランスが良い | 約220〜280万円 |
コンパクトカーを中心に、燃費性能・運転のしやすさ・維持費のバランスを重視したモデルが人気です。上記の車種はいずれも日常使いに適しており、初心者からベテランドライバーまで幅広く支持されています。
購入時は、使用目的や燃費、予算に応じて比較検討するのがポイントです。
ガソリン車のデメリット
ガソリン車には多くの利点がありますが、環境への影響や今後の維持コストを考えると、デメリットも無視できません。時代の変化とともに電動車の普及が進む中、ガソリン車を選ぶ際に知っておきたい注意点をご紹介します。
環境への負荷が大きい
ガソリン車は走行時に二酸化炭素(CO₂)や窒素酸化物(NOx)などの排気ガスを排出するため、地球温暖化や大気汚染の一因とされています。電動車やハイブリッド車と比べて環境負荷が高く、エコ意識の高まる現代においては「時代に逆行している」とみなされることもあります。
特に都市部では排ガス規制が厳しくなってきており、一部の国や地域では将来的にガソリン車の乗り入れが制限される可能性もあります。環境問題への配慮が求められる中、ガソリン車の利用は社会的な視線も変化しており、持続可能な選択として再検討される場面も増えています。
将来的に維持費が上がる可能性がある
ガソリン車は今後、燃料価格や税制の変化によって維持費が高くなるリスクがあります。すでにガソリン価格は原油価格の変動や為替の影響で不安定になっており、今後も値上がりの傾向が続くと予測されています。
また、環境負荷の高い車への課税強化(例:炭素税や重量税の見直し)などが導入されれば、所有コストが増加する可能性もあります。加えて、補助金制度などがEVやハイブリッド車に集中する中、ガソリン車は経済的に不利な立場に置かれる場面が増えるかもしれません。
長期的な視点で車を選ぶ際には、将来的な維持費の変化も考慮すべき要素です。
政策や市場の影響を受けやすい
日本を含む多くの国では、環境政策の一環としてガソリン車の新車販売を将来的に終了する方針が示されています。そのため、ガソリン車の販売・流通は今後縮小していく可能性が高く、市場価値やリセールバリューにも影響が出ることが予想されます。
たとえば、「2035年以降は新車でガソリン車を買えなくなる」「都市部での走行が制限される」といった政策が進むことで、中古市場でも敬遠される可能性が出てきます。また、自動車メーカー各社が電動化へシフトする中、部品供給や整備対応の体制も次第にガソリン車にとって不利になるかもしれません。
こうした外部要因をふまえて、将来的な影響を見極めることが重要です。
ガソリン車の廃止・新車販売終了に関する世界の動向
【世界の主要各国の自動車電動化目標(2022年ごろ)】
近年、世界各国で環境保護のための取り組みの一環として、ガソリン車の廃止や新車販売終了、ZEV規制※などに向けた動きが見られます。しかし、2022年ごろまでは中国やEU諸国が「2025年〜2040年(下の表を参照)までにガソリン車の新車販売禁止」の計画を次々と発表していましたが、2023年になって「エンジン車も容認」で合意する方向に転換する傾向があります。
これには2023年になって、
- 電気自動車の価格が高い
- 充電インフラが整っていない
- ガソリン車の需要がまだある
- 環境負荷の少ない燃料の開発が進んでいる
などの要因で、世界的に「ガソリン車を完全に禁止する必要がない」との認識が広まってきたことが背景にあります。そのため世界各国は、ガソリン車の販売を「禁止」するのではなく、環境負荷の少ない燃料の開発を促進することで、ガソリン車の販売を「減らす」方針を採る風潮になってきました。
【関連記事】ZEV規制とは?クレジットの計算や世界・日本の現状
下の一覧は2022年ごろのものですが、2023年7月現在では、下の表の内容よりガソリン車を容認する方向に転換している国も多くなっています。
将来的にはバッテリー技術の向上や量産化で、価格が下がると予想されています。とはいえ現状は、世界的に見ても、電気自動車の価格は、ガソリン車に比べてまだ高くなっています。また、充電インフラもまだ十分に整備されていません。
環境負荷の少ない燃料の開発が加速
【再エネ由来の水素を用いた合成燃料】
さらに、水素やバイオ燃料などの環境負荷の少ない燃料の開発が加速していることも、世界のガソリン車に対する考え方の変化に大きく影響しています。世界各国は、これらの環境負荷の少ない燃料の開発を促進し、EVやFCVを増やしながらバランスをとってガソリン車の販売を減らす方向で、地球温暖化対策を進めようとしています。
【合成燃料におけるCO2の再利用のイメージ】
【合成燃料のコスト】
EV導入を急ぎすぎて混乱を招いた国や地域も
【主要国・地域における電気自動車の販売比率の推移】
上記の表でもわかるように、中国やEUを中心とした欧州は、短期間で強く電気自動車への転換を推し進めたことがわかります。
しかし、このような国や地域は、
- 充電インフラが販売台数に追いつかない
- 政府の補助金に関連する問題
- バッテリーのリサイクル問題
など多くの問題に直面し、混乱を招きました。それまで日本政府や日本を代表する自動車メーカーのトヨタは、「EV導入に対して消極的である」という理由で批判されていました。しかし結果的に、日本政府やトヨタの方が冷静に将来の分析をしていたと言えるでしょう。
このように、世界が「ガソリン車を完全に禁止する必要はない」という風潮になってきたのは、技術の進歩や燃料の多様化、社会のニーズの変化などが影響しています。日本政府やトヨタも、環境に配慮しつつ、エンジン車とEVの両方を推進する方針を示しています。
次の章では、世界が「トヨタはEV開発に消極的」と非難しても「ガソリン車を完全に禁止する必要はない」と将来を見据えていたトヨタの経営方針から、今後の自動車産業について考えていきましょう。*4)
トヨタの経営方針から見る今後の自動車産業
【トヨタのMIRAI】
トヨタは、世界最大の自動車メーカーであり、常に新しい技術開発に取り組んでいます。トヨタの技術開発・経営方針から、将来の日本と世界の自動車産業とモビリティのあり方を予想してみましょう。
電気自動車(EV)は普及していく
【FCごみ収集車(技術検討試作車)】
トヨタはEVの普及にも力を入れており、2020年にはEV専用プラットフォーム「e-TNGA」を開発しました。将来的には、ガソリン車とEVの両方を提供することで、さまざまなニーズに応えることができるでしょう。
また、トヨタは燃料電池車(FCEV)や水素エンジン自動車の開発にも力を入れており、燃料の多様性を追求しています。
【水素エンジンカローラ】
【関連記事】水素自動車とは?仕組みや将来性、普及しない理由、販売しているメーカーは?
自動運転技術の進化
【人の感覚に寄り添った先進のインターフェース】
自動運転技術は今後ますます進化し、安全性や利便性の向上が期待されます。トヨタは自動運転技術の開発に力を入れており、2020年には自動運転レベル2※の車両を発売しました。
将来的には、高度な自動運転技術が普及し、交通事故の減少や交通の効率化が実現されるでしょう。
コネクティッドカーの発展
【 NTTDATAによる混雑状況の情報提供の例】
トヨタはコネクティッドカー(車両間通信やインターネット接続を活用した車両)の開発にも力を入れています。将来的には、車とインターネットがつながり、リアルタイムの情報やサービスが提供されるようになるでしょう。
例えば、渋滞情報や駐車場の空き状況などをリアルタイムで把握できるようになることで、移動の効率化やストレスの軽減が期待されます。
カーシェアリングやライドシェアリングの拡大
【トヨタのカーシェアサービス】
トヨタはモビリティサービスの提供にも注力しています。例えば、カーシェアリングやライドシェアリングなど、「所有から利用」へのシフトが進んでいます。
将来的には、自動車を「所有」することよりも、必要な時に「利用」することが主流になるかもしれません。これにより、自動車の保有コストが削減され、より多くの人が自動車を利用することができるようになると言われています。
また、トヨタは地域の交通インフラと連携したモビリティサービスの展開にも注力しており、地域の移動手段の充実や交通の円滑化が期待されます。例えば豊田市では、市がTOYOTA SHARE※から平日は公用車専用として自動車をレンタルし、その自動車を休日は、シェアリングカーとしてTOYOTA SHARE会員が利用するという、公用車とシェアリングカーの併用モデルの実証実験も行われています。
この章で紹介した例はあくまで現在一般的にされている予想であり、実際の将来の自動車産業とモビリティのあり方はさまざまな要素によって変化する可能性があります。これまでも今後のガソリン車や将来的なモビリティ事情の予想などについて解説してきましたが、次の章では、そのほかの「ガソリン車廃止」「ガソリン車販売終了」「ガソリン車規制」に関連する質問に答えていきます。*5)
ガソリン車廃止・販売終了に関してよくある質問
これまで親しんできたガソリン車が「廃止」「販売終了」「規制」などと聞くと、将来の自動車事情について不安を覚える人もいるかもしれません。ここではそのような不安の解消から素朴な疑問まで、よくある質問に答えていきます。
ガソリン車だけじゃなくハイブリッド車も対象?
日本においては、2035年までに新車のうち100%が「新エネルギー車」になることを目指しています。新エネルギー車とは、EVや水素燃料電池車、プラグインハイブリッド車を指します。
つまり、2035年以降は、ガソリンエンジンのみを搭載したハイブリッド車の販売はできなくなる可能性があります。しかし日本は2050年カーボンニュートラルを目指すにあたって、自動車産業においてもLCA※で環境への負荷を評価して方針を決めていく予定なので、技術開発の進展により左右されると言えます。
【関連記事】カーボンニュートラルに欠かせないLCAとは?メリット・デメリット、問題点も
ガソリン車を日本で廃止するのは無理がある?
ポジティブな目線で考えると、ガソリン車の廃止や販売終了については、技術開発が滞りなく進展した場合には、大気汚染・地球温暖化の抑制、交通事故の減少、渋滞緩和など、社会的な課題の解決にもつながることが期待されます。
しかし、ネガティブ目線で考えると、実際ガソリン車廃止を実行するまでの道のりは険しく、まだ多くの課題が残されています。
今ガソリン車を買うならどれがいい?
今ガソリン車を購入するなら、「燃費性能・維持費・リセールバリュー・長期サポート」のバランスが取れた車種を選ぶのが賢明です。おすすめは以下のような車種です。
- トヨタ「ヤリス」
低燃費でコンパクト、街乗りから長距離まで万能に使える人気モデル。HV(ハイブリッド)も選べますが、ガソリンモデルでも優秀な燃費性能を誇ります。 - ホンダ「フィット」
広い室内空間と高い静粛性が魅力。使い勝手の良さでファミリー層からも支持されており、中古でも安定した人気があります。 - スズキ「スイフト」
軽快なハンドリングとコスパの良さで、運転の楽しさを求める方におすすめ。モデルチェンジ後もガソリン仕様が堅実に残っています。 - トヨタ「カローラ」シリーズ
信頼性の高いロングセラーモデル。カローラスポーツやセダンなど、好みに応じたスタイルが選べます。国内外で人気があるため、リセールも安定。
特にトヨタやホンダなど、国内メーカーのガソリン車は今後もしばらく部品供給や整備対応が安定する見込みです。迷ったらまずはこの2社のラインナップから選ぶと間違いが少ないでしょう。ご希望があれば、ライフスタイルに合った車種をご提案することも可能です。
ガソリン車の値段は今後どうなる?
ガソリン車の値段は今後、徐々に上昇していく可能性があります。自動車メーカーが電動車への移行を加速させており、ガソリン車の新車は今後ラインナップが絞られていく見通しです。生産台数が減ることで1台あたりの製造コストが上がり、価格にも影響が出ると考えられます。
また、中古車市場では「EVはまだ不安」「充電環境が整っていない」といった理由から、当面はガソリン車の人気が続く見込みです。そのため、人気モデルや低走行車は高値で取引される可能性もあります。
ただし、長期的には環境規制や税負担の強化によってガソリン車の保有コストが増し、市場価値が下がるリスクもあります。購入の際は、利用期間や目的に応じた見極めが大切です。
ガソリン車廃止・販売終了はSDGsとどのように関係するのか?
最後に、ガソリン車廃止・販売終了とSDGsの関係を考えてみましょう。
SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」
ガソリン車廃止・販売終了は、SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」にとても深く関連しています。ガソリン車は温室効果ガスを排出する原因となっているため、ガソリン車を廃止・販売終了することで、地球温暖化対策に貢献することができます。
SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
ガソリン車は、石油を燃料として使用するため、エネルギーの効率的利用が課題となります。一方、ガソリン車が減り、ゼロエミッション車が普及すれば電気や水素を利用するため、化石燃料の利用を減らし、エネルギーの効率的利用が可能となります。
【関連記事】化石燃料とは?種類や用途、課題、頼らない方法も
SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」
ガソリン車の排出する有害物質は、人々の健康に悪影響を及ぼすことがあります。特に都市部では、交通量が多く、大気汚染が深刻な問題となっています。そのため、ガソリン車廃止・販売終了により、人々の健康と福祉の確保に貢献できると考えられます。
ガソリン車廃止・販売終了は、地球温暖化対策に効果的な手段の一つです。しかし、ガソリン車廃止・販売終了には、コストやインフラの整備などの課題もあります。
今後のガソリン車に対する日本をはじめ世界の対応は不確定要素が多く、まだ観察が必要な状況です。しかし、「できる限り環境や社会問題の解決につながるソリューションを」という姿勢は変わりません。
あなたもSDGsへの理解を深め、技術革新の最新情報などを積極的に集めながら、将来のより良い地球と社会に向けた正しい判断を心がけましょう。*6)
>>目標に関する詳しい解説記事はこちらから
まとめ
ガソリン車廃止のニュースを聞いて、将来に不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。しかし、ガソリン車が廃止になるからといって、車に乗れなくなるわけではありません。
また、遅かれ早かれ、新しい技術の進歩や環境問題の深刻化から、ガソリン車の時代は終わりを迎える可能性があります。現在は明確な見通しが示されていない「ガソリン車廃止」「ガソリン車の新車販売禁止」について、今後も世界各国の計画は変更されるかもしれませんが、「2050年カーボンニュートラルを目指す」という大きな目標は変わりません。
私たちは世界情勢や日本政府の方針を確認しながら、地球環境を守るためにできることを考え、行動に移すことが大切です。
自動車産業は大きな変革期を迎えています。この変化について理解を深め、あなたも持続可能な社会を実現するために、自分ができることを考えてみましょう。
- 環境に配慮した車両を選ぶ
- エコドライブを実践する
公共交通機関や自転車、徒歩などの移動手段を積極的に利用する - 日常生活でのエネルギーの効率的な利用
- ゴミ出し、廃棄物処理のルールを守る
など、個人にもできることはたくさんあります。
ガソリン車が廃止や新車販売終了になれば、私たちのライフスタイルや社会に大きな変化をもたらすかもしれません。その中で変化に対応するためにも、今から備え、行動を起こすことが大切です。
〈参考・引用文献〉
*1)日本でもガソリン車が廃止になるって本当?
GX(グリーントランスフォーメーション)とは?企業の取り組み事例や最新動向も
経済産業省『カーボンニュートラルに向けた自動車政策検討会』p.2(2021年3月)
国際環境経済研究所『脱炭素に向けてEV一本やりでない社会的選択を』(2022年5月)
日本経済新聞『脱ガソリン車 戦略と課題 日中、電動化で足並みEV・HVセットの「現実解」』(2020年12月)
資源エネルギー庁『自動車の“脱炭素化”のいま(前編)~日本の戦略は?電動車はどのくらい売れている?』(2022年10月)
資源エネルギー庁『自動車の“脱炭素化”のいま(後編)~購入補助も増額!サポート拡充で電動車普及へ』(2022年11月)
産経新聞『2030年代に新車全て電動車に 経産省、目標設定で調整 ガソリン車販売禁止』(2020年12月)
経済産業省『カーボンニュートラルに向けた自動車政策検討会』(2021年3月)
国際環境経済研究所『ガソリン自動車等の販売規制の行方と日本の課題(第1回)』(2021年1月)
国際環境経済研究所『ガソリン自動車等の販売規制の行方と日本の課題(第2回)』(2021年1月)
国際環境経済研究所『ガソリン自動車等の販売規制の行方と日本の課題(第3回)』(2021年2月)
日経XTECH『エンジン音が“当たり前”から“価値”へ、EVの普及で変化』(2023年7月)
日経XTECH『35年以降、エンジン搭載車を容認へそれでも欧州委員会の方針変わらず』(2023年7月)
日経XTECH『EVシフト幻想から覚めた欧州、現実解は合成燃料と一体の「ハイブリッドシフト」』(2023年3月)
国際環境経済研究所『バイオ燃料の最近動向と将来:乗用車から航空機へ』(2023年7月)
経済産業省『自動車政策について』
*2)地域ごとに規制が始まる時期が異なる?
ゼロエミッションとは?推進理由や日本の取組事例、私たちにできることも
大阪府『ゼロエミッション車を中心とする電動車の普及促進に向けた制度のあり方について』(2021年11月)
日本経済新聞『東京都知事、看板政策で攻めの一手 脱ガソリン車を表明』(2020年12月)
日本経済新聞『日本勢にEV化迫る EU、ガソリン車禁止で合意HV、35年以降販売できず』(2022年10月)
*3)なぜガソリン車が廃止・販売終了になるの?
資源エネルギー庁『自動車の“脱炭素化”のいま(前編)~日本の戦略は?電動車はどのくらい売れている?』(2022年10月)
ディープラーニングとは?仕組みやメリット・デメリットと実用例の紹介
*4)ガソリン車の廃止・新車販売終了に関する世界の動向
ZEV規制とは?クレジットの計算や世界・日本の現状
資源エネルギー庁『自動車の“脱炭素化”のいま(前編)~日本の戦略は?電動車はどのくらい売れている?』(2022年10月)
資源エネルギー庁『エンジン車でも脱炭素?グリーンな液体燃料「合成燃料」とは』(2021年7月)
日本経済新聞『EU、ガソリン車の新車販売禁止 35年までに』(2022年10月)
日本経済新聞『EU、ガソリン車禁止合意 新車販売規制、35年に HVも対象』(2022年10月)
日本経済新聞『EU、エンジン車容認で合意 合成燃料限定で35年以降も』(2023年3月)
*5)トヨタの経営方針から見る今後の自動車産業
TOYOTA『MIRAI』
TOYOTA『水素エンジンカローラとGR86(カーボンニュートラル燃料)、スーパー耐久シリーズオートポリス大会に参戦』(2023年7月)
水素自動車とは?仕組みや将来性、普及しない理由、販売しているメーカーは?
TOYOYA『トヨタの安全技術TOYOTA Safety Technology』
NTTDATA『トヨタのコネクティッドカーデータを活用した渋滞解消の取り組み開始』(2023年2月)
TOYOTA『トヨタのコネクティッドサービス』
TOYOTA『コネクティッドサービス一覧』
NTTDATA『トヨタ、コネクティッド基盤開発の最前線~e-TOYOTA部における脱レガシー、組織変革、新技術への挑戦~』(2020年2月)
NTTDATA『トヨタとNTTグループが描く、コネクティッドカーが実現する社会』(2021年3月)
https://youtu.be/zZu8xGmvLpA
TOYOTA SHARE『トヨタのカーシェアサービス』
TOYOTA『MaaS事業分野への参入』
豊田市『報道発表資料 C+podを活用した公用車のシェアリング実証について』(2021年4月)
*6)ガソリン車廃止・販売終了とSDGs
次世代自動車振興センター『ガソリン車から乗り換えて変わること』
経済産業省『SDGs』
化石燃料とは?種類や用途、課題、頼らない方法も
この記事を書いた人

松本 淳和 ライター
生物多様性、生物の循環、人々の暮らしを守りたい生物学研究室所属の博物館職員。正しい選択のための確実な情報を提供します。趣味は植物の栽培と生き物の飼育。無駄のない快適な生活を追求。
生物多様性、生物の循環、人々の暮らしを守りたい生物学研究室所属の博物館職員。正しい選択のための確実な情報を提供します。趣味は植物の栽培と生き物の飼育。無駄のない快適な生活を追求。