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クライメート・ポジティブとは?注目される背景や企業の取組事例も

クライメート・ポジティブ。それは、単に二酸化炭素を減らすだけでなく、さらに広範囲に目を向け、地球環境を積極的に改善しようという概念です。

気候変動が深刻化する今、クライメート・ポジティブは、カーボンニュートラルよりもさらに高い目標として、世界で注目を集めています。自然との共生循環型経済の実現を目指すにあたっても重要な、クライメート・ポジティブの定義や企業の取り組み事例を、わかりやすく解説します。

クライメート・ポジティブとは

クライメート・ポジティブとは、一般的に温室効果ガスの排出量よりも削減・吸収量を多くすることを目指す概念です。気候システム全体にポジティブな影響を与える包括的な視野を持ち、単なる数値目標を超えた生態系の健全性回復持続可能な社会形成への取り組みを推進します。

まずは、関連する用語との違いや関係性を理解することが重要です。クライメート・ポジティブの定義と関連する概念について確認していきましょう。

国際機関によるクライメート・ポジティブの推進

クライメート・ポジティブは、地球温暖化対策の新たな潮流として、国際機関で強く推進されています。国連環境計画(UNEP)※は、企業や投資家に対し、排出量削減を超え、地球環境に貢献する目標設定を求め、その重要性を強調しています。

この動きは、パリ協定の目標達成を加速させ、持続可能な未来への道を切り開く鍵となるでしょう。

※国連環境計画(UNEP)

1972年設立の国連機関であり、環境問題解決と持続可能な開発促進を目的とする。各国政府や市民社会と連携し、政策提言、科学調査、教育啓発を通じて環境保全を推進。ナイロビ本部を拠点に活動する。

【クライメート・ポジティブはどう機能するか】

カーボンニュートラルとの違い

クライメート・ポジティブとカーボンニュートラルは、どちらも温室効果ガス排出削減に関する概念ですが、その目標レベルに違いがあります。

カーボンニュートラルは、二酸化炭素の排出量と吸収量をプラスマイナスゼロにすることを目指します。一方、クライメート・ポジティブは、二酸化炭素だけでなく、メタンやフロンなども含む全ての温室効果ガスについて、排出量よりも削減・吸収量を多くすることを目標としています。

つまり、クライメート・ポジティブはカーボンニュートラルと比較すると、以下の特徴があります。

  • 対象ガスの範囲が広い
  • 目標レベルがより高い(排出量<削減・吸収量)
  • より積極的な環境貢献を目指す

クライメート・ポジティブに関連する概念と用語の確認

クライメート・ポジティブを理解するにあたって、以下の関連概念についても確認しておきましょう。

カーボン・ポジティブ

カーボン・ポジティブは、温室効果ガスの排出量よりも吸収量や削減量が多い状態を指します。つまり、これも地球温暖化対策に積極的に貢献している状態です。

カーボン・ポジティブとクライメート・ポジティブはほとんど同義語です。どちらも温室効果ガスの排出量よりも吸収量や削減量が多い状態を指し、これらの概念は、排出量と吸収量を均衡させるカーボンニュートラルを超えて、より積極的に地球温暖化対策に貢献することを目指します。

カーボン・ネガティブ

  1. カーボン・ネガティブ
  2. カーボン・ポジティブ
  3. クライメート・ポジティブ

この3つは、実質的には同じ概念と言えます。これらは全て、温室効果ガスの排出量よりも吸収量や削減量が多い状態を意味します。

クライメート・ニュートラル(気候中立)

クライメート・ニュートラル(気候中立)は、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、実質的な排出量をゼロにする状態のことです。これは、地球温暖化対策の基本的な目標であり、カーボン・ポジティブやカーボン・ネガティブを目指す上での前提となります。

カーボン・オフセット

カーボン・オフセットは、自身の温室効果ガス排出量を、他の場所での排出削減・吸収活動に投資することで埋め合わせる仕組みです。カーボン・オフセットは、クライメート・ニュートラル達成のための手段の一つです。排出量の削減が難しい場合に、他の場所での削減・吸収活動に貢献することで、実質的な排出量を減らすことができます。

これらの言葉は、地球温暖化対策のさまざまな側面を表しており、それぞれが密接に関連しています。

【関連記事】カーボンオフセットとは?クレジットの商品一覧・カーボンニュートラルとの違い・企業の取り組み

【カーボン・オフセットの概念図】

このような取り組みは、単に環境保護にとどまらず、新たなビジネスチャンスや技術革新にもつながる可能性があります。クライメート・ポジティブの概念は、持続可能な社会の実現に向けた重要な指針となっているのです。*1)

クライメート・ポジティブが注目される背景

地球温暖化対策が待ったなしの状況と言われる中、従来の「削減」から「積極的な修復」へとパラダイムシフトが起きています。これがクライメート・ポジティブが注目を集める根本的な理由です。

この章では、クライメート・ポジティブが注目される背景を、さらに具体的に見ていきましょう。

科学的研究の進展と警鐘

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)※の第6次評価報告書(2023年)が決定的なデータを示しました。現状の政策が続けば2100年の気温上昇は最大3.5℃に達し、生態系崩壊や食糧危機のリスクが急増すると警告しています。

特に注目されるのは森林の炭素吸収能力に関する新事実で、温帯地域では増加傾向にあるものの、永久凍土の溶解で寒冷地の吸収量が減少していることが2024年の国際研究で明らかになりました。

IPCCの報告書作成に参加したスウェーデンの環境科学者ヨハン・ロックストローム氏は、「排出量ゼロでは不十分」と指摘しました。大気中に蓄積した温室効果ガスの除去が必要だと訴え、これがクライメート・ポジティブ推進の科学的根拠の1つとなっています。

※気候変動に関する政府間パネル(IPCC)

気候変動に関する科学的知見を評価・提供する国連の機関。世界中の科学者が協力し、定期的に評価報告書を発表。政策立案者や国際社会に対し、気候変動対策の根拠となる情報を提供。温暖化の現状、将来予測、対策の選択肢などを包括的に評価する。

国際政策の転換点

クライメートポジティブは、EUが2019年に発表した「欧州グリーンディール」※が契機となりました。2050年までの気候中立(カーボンニュートラル)実現を掲げつつ、2030年までに温室効果ガス55%削減という野心的な中間目標を設定しました。

これに呼応する形で、2024年9月にUNEP※が発表した投資家声明では、世界の機関投資家600社が「政府全体で取り組むべき」と提言しています。

特に画期的だったのがイギリス・リバプール市の挑戦です。2018年、ブロックチェーン技術を活用した世界初のクライメートポジティブ都市計画を発表しました。その後、LED街路灯の導入や植林プロジェクトで、2020年までに排出量の110%削減を達成しました。

※欧州グリーンディール

EUが2019年に発表した包括的な環境政策。2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを目標とし、循環型経済への移行や再生可能エネルギーの普及を推進。経済成長と環境保護の両立を目指す戦略であり、国際社会に大きな影響を与えている。

※UNEP

地球環境問題に取り組む国連の機関。環境状況の監視・評価、環境政策の提言、国際的な環境協定の策定などを実施。持続可能な開発目標(SDGs)達成にも貢献。本部はケニアのナイロビ。

経済システムの変革圧力

国際オリンピック委員会(IOC)が2024年までにクライメートポジティブ達成を宣言するなど、スポーツ界も大きな役割を果たしています。パリ2024オリンピックでは会場の95%を既存施設で賄い、カーボンフットプリントを前回大会の半減に成功しました。

トーマス・バッハ会長は「スポーツが気候変動対策の推進力に」と述べ、社会的影響力の活用を強調しています。

このように、地球温暖化の深刻化と国際的な政策転換、そして経済システムの変革圧力という三重の要因が、クライメート・ポジティブへの注目度を高めています。科学的根拠に基づいた対策の必要性が、社会全体の意識を「削減」から「修復」へとシフトさせているのです。*2)

クライメート・ポジティブを実現するためには

クライメート・ポジティブの実現には、温室効果ガスの排出削減だけでなく、積極的な吸収・除去が不可欠です。この目標達成に向けて、多角的かつ包括的なアプローチが求められています。

温室効果ガス排出削減の徹底

地球温暖化を1.5℃または2℃に抑えるためには、温室効果ガス排出量の正味ゼロ化(ネットゼロ)が必要です。特に1.5℃目標の場合、2050年初頭までにこれを達成しなければなりません。

具体的な方策として、以下が挙げられます。

  • 再生可能エネルギーの大規模導入:太陽光・風力発電の導入
  • 電化の推進:産業・運輸部門での電気利用を増加
  • エネルギー効率の改善:エネルギー利用の改善・効率化を目指す
  • 行動変容と需要削減:温室効果ガス削減を個人・組織レベルでも推進

自然との共生と生態系の保全

クライメート・ポジティブの実現には、自然との共生生態系の保全が不可欠です。これらは温室効果ガスの吸収を促進し、気候変動への適応力を高めるだけでなく、生物多様性の維持や持続可能な経済活動の基盤としても重要な役割を果たします。

自然共生経済の実現に向けて、以下の取り組みが重要です。

生物多様性国家戦略の推進

生物多様性国家戦略は、日本が生物多様性の保全と持続可能な利用を目指す長期計画です。この戦略では、

  • 生態系の保護
  • 持続可能な資源利用
  • 気候変動への適応策

などが盛り込まれており、クライメート・ポジティブな社会の実現に向けた、重要な枠組です。

30by30目標:2030年までに陸と海の30%を保全

30by30目標は、2030年までに陸と海の少なくとも30%を保全地域として保護することを国際的に目指す目標です。これは、生物多様性の損失を食い止め、生態系サービスを維持するために不可欠です。

NbS(自然に基づく解決策)の活用

NbS(Nature-based Solutions:自然に基づく解決策)は、生態系を活用して気候変動や生物多様性の課題に対処するアプローチです。

  • 森林再生
  • 湿地保全
  • 緑地化

などのアプローチがこれに含まれます。これらは、二酸化炭素吸収、洪水防止、気温緩和などさまざまな効果をもたらし、クライメート・ポジティブな社会づくりに貢献します。

OECM(その他の効果的な地域をベースとする保全手段)の推進

OECM(Other Effective area-based Conservation Measures:その他の効果的な地域をベースとする保全手段)は、保護地域以外で生物多様性の保全に貢献する地域のことです。企業の森林や緑地、地域住民が管理する里山などが該当します。

これらは、生物多様性の保全と持続可能な利用を両立させる新たな保全手段として注目されています。企業は、OECMを適切に管理し、その効果を評価することで、地域社会と連携した生物多様性保全に貢献できます。

産業界の取り組み

世界の産業界全体の変革も求められています。企業活動が生物多様性に与える影響を最小化しつつ、自然の回復に貢献する新たなビジネスモデルへの移行が、経済成長と環境保全の両立を可能にし、持続可能な社会の構築につながります。

具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。

  • 産業脱炭素化:水素利用やカーボンマネジメントの導入
  • 自動車産業:2050年までに排出ゼロ車両とネットゼロ・低GHG排出燃料への移行
  • 非CO2温室効果ガス対策:フロン類のライフサイクル管理、特に漏洩防止や廃棄時の管理
  • 廃棄物分野:2030年までにメタン排出を30〜35%削減

【サーキュラーエコノミー、ネイチャー・ポジティブを通じてネットゼロに貢献するシナジーアプローチ】

個人の持続可能なライフスタイルへの移行

クライメート・ポジティブは地球規模の課題ですが、個人レベルでの取り組みも重要です。

  • 再生可能エネルギーの利用:温室効果ガス排出削減
  • 食品ロスの削減:廃棄物と温室効果ガス排出の低減
  • 公共交通機関の利用:CO2排出量の削減
  • エネルギー効率の高い家電製品の使用:電力消費量の削減
  • 断熱性の高い住宅の選択:冷暖房エネルギーの削減
  • ローリングストックの実践:食品廃棄の削減と災害時の備え
  • 植林や緑化活動への参加:CO2吸収量の増加
  • リサイクルとリユースの徹底:資源の有効活用と廃棄物削減
  • 地産地消の実践:輸送に伴う温室効果ガス排出の削減
  • 節水:水処理に必要なエネルギーの削減
  • 肉類の消費削減:畜産業からの温室効果ガス排出の低減
  • コンポスト(堆肥化)の実践:有機廃棄物の削減と土壌改良
  • 省エネ行動(こまめな消灯など):電力消費量の削減
  • エシカル消費の実践:持続可能な生産・消費の促進
  • テレワークの活用:通勤による温室効果ガス排出の削減

クライメート・ポジティブの実現には、政府、企業、個人が一体となって取り組むことが不可欠です。技術革新と行動変容の両輪で、持続可能な社会への移行を加速させることが求められています。*3)

クライメート・ポジティブに取り組む企業事例

ここまで、クライメート・ポジティブについて詳しく見てきました。

近年、クライメート・ポジティブの実現に向けて、世界中の企業が革新的な取り組みを展開しています。これらの先進的な事例は、他の企業や組織にとっても貴重な指針となっています。ここでは、特に注目される4つの企業の取り組みを紹介します。

イケア(IKEA)

スウェーデンに本社を置く世界最大の家具小売チェーンであるイケア(IKEA)は、クライメート・ポジティブへの取り組みで業界をリードしています。

イケアは2030年までにクライメート・ポジティブを達成する目標を掲げており、以下の取り組みを実施しています。

  • バリューチェーン全体での温室効果ガス排出量の削減
  • 再生可能エネルギーの100%使用
  • 森林再生・保護プロジェクトの推進
  • 全商品の再生可能またはリサイクル素材への切り替え

特に注目すべきは、イケアが2023年度のサステナビリティレポートで、すでにバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量を2016年比で24.1%削減したと報告していることです。これは、2030年に目標の半分以上を達成したことを意味します。

バーバリー(Burberry)

イギリスの高級ファッションブランドであるバーバリー(Burberry)は、アパレル業界におけるクライメート・ポジティブの先駆者として知られています。

バーバリーのクライメート・ポジティブ戦略の主な特徴は以下の通りです。

  • 2040年までのクライメート・ポジティブ達成目標
  • 2030年までにサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量を46%削減
  • 再生可能エネルギーの積極的な導入
  • 「バーバリー再生基金」を通じた生態系保護と生物多様性回復への投資

バーバリーの取り組みは、高級ファッション業界における環境負荷削減の新たな基準を提唱しています。

サントリーホールディングス

日本を代表する飲料メーカーであるサントリーは、「水と生きる」をコーポレートメッセージに掲げ、水資源の保全を中心としたクライメート・ポジティブな取り組みを展開しています。

サントリーの主な取り組みとして、以下が挙げられます。

  • 「水のサステナビリティ」を重視した事業展開
  • 2050年までに事業活動における水使用量以上の水を育む「水ポジティブ」の実現
  • 自然と共生する水源涵養活動「天然水の森」の展開
  • バリューチェーン全体でのCO2排出量削減

さらに、サントリーは2030年までに使用する水の2倍以上を自然に還元する目標を設定しています。これは、クライメート・ポジティブの概念を水資源管理に応用した先進的な取り組みです。

積水ハウス

日本の住宅メーカー大手である積水ハウスは、住宅業界におけるクライメート・ポジティブのリーダーとして知られています。

積水ハウスのクライメート・ポジティブへの取り組みは、以下が代表的です。

  • 2050年までにスコープ1、2、3※でのCO2排出量ネットゼロ化
  • ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)※の普及促進
  • 再生可能エネルギーの活用と「積水ハウスオーナーでんき」の提供
  • 生物多様性の保全と「5本の樹」計画の推進

積水ハウスの特徴的な取り組みとして、2023年度には新築戸建住宅のZEH比率が92%に達したことが挙げられます。これは、住宅業界全体のクライメート・ポジティブ化を牽引する成果と言えるでしょう。

※スコープ1、2、3

企業の温室効果ガス排出量を分類する国際的な基準。スコープ1は企業が直接排出するガス、スコープ2は電力使用による間接排出、スコープ3はその他の間接排出を指す。この分類により、企業は自社の事業活動全体における環境影響を包括的に把握し、効果的な削減策を立案・実行できる。

※ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)

年間の一次エネルギー消費量を実質ゼロにする住宅。高い断熱性能と高効率設備で省エネを実現し、太陽光発電などで創エネを行う。エネルギー消費を大幅に削減しつつ、快適な室内環境を維持。環境への配慮と光熱費削減を両立する次世代型住宅として注目を集める。

これらの企業の取り組みは、クライメート・ポジティブが単なる理想ではなく、実現可能な目標であることを示しています。各企業が自社の強みを活かしながら、独自の方法でこの課題に取り組んでいる点が特に注目されます。*4)

クライメート・ポジティブとSDGs

クライメート・ポジティブは、SDGsの17の目標達成において重要な役割を果たします。特に気候変動や生物多様性保全、エネルギー転換などの分野で具体的な貢献が期待されています。

特にクライメート・ポジティブと関係が深いSDGs目標について具体的に見ていきましょう。

SDGs目標7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに

再生可能エネルギーの普及は、クライメート・ポジティブ実現の鍵です。太陽光や風力発電の導入は、温室効果ガス削減に直接寄与し、エネルギー効率の向上にもつながります。

この目標達成には、技術革新と政策支援が不可欠であり、特に途上国におけるクリーンエネルギーへのアクセス改善が重要な課題となっています。

SDGs目標12:つくる責任 つかう責任

循環型経済(サーキュラーエコノミー)への移行は、廃棄物削減と資源効率向上を通じて持続可能な消費と生産パターンを実現します。この目標の達成には、製品のライフサイクル全体を考慮した設計(LCA)や、消費者の意識改革が重要です。

また、食品ロスの削減や持続可能な調達手段の採用も重要な取り組みとなっています。このような資源循環の取り組みにより、例えば日本では温室効果ガス全排出量の約36%を削減できる可能性があり、クライメート・ポジティブ実現に向けた重要な要素となっています。

SDGs目標13:気候変動に具体的な対策を

クライメート・ポジティブそのものが、この目標の達成に直結します。温室効果ガス排出量削減だけでなく、大気中からの炭素除去技術森林再生プロジェクトなどがその具体例です。

また、気候変動の影響に対する適応策の実施や、気候変動教育の推進も重要な取り組みとなっています。

SDGs目標14:海の豊かさを守ろう

海洋生態系の保全持続可能な利用は、クライメート・ポジティブの実現に不可欠です。この目標達成には、海洋汚染の防止、特にプラスチックごみの削減が重要な課題となっています。

また、持続可能な漁業方法の採用や、海洋酸性化への対策も求められています。また、海洋保護区の設定や、科学的な海洋管理計画の実施も、この目標達成に向けた重要な取り組みです。

SDGs目標15:陸の豊かさも守ろう

クライメート・ポジティブでも重要となる、自然共生経済生物多様性保全活動は、この目標に大きく貢献します。

  • 森林の持続可能な管理
  • 砂漠化への対処
  • 土地劣化の阻止と回復

などが重要な課題となっています。

また、生態系サービスの価値を国や地域の計画に組み込むことや、侵略的外来種対策の実施も、この目標達成に向けた重要な取り組みです。

クライメート・ポジティブへの取り組みは、SDGs達成への道筋を示すだけでなく、新たなビジネスモデルや社会価値創造にもつながる可能性を秘めています。*5)


>>SDGsに関する詳しい記事はこちらから

まとめ

クライメート・ポジティブは、温室効果ガスの排出量以上の削減・吸収を目指す先進的な環境戦略です。この概念は、カーボンニュートラルを超えて、より積極的に地球環境の回復に貢献することを意味します。

CDPによると、世界の大企業は気候変動対策によるビジネスチャンスを約5兆米ドルと推定しており、これは従来の予測の2倍に相当します。この推測は、クライメート・ポジティブへの取り組みが経済的にも大きな潜在力を持つことを示唆しています。

しかし、クライメート・ポジティブの実現には、

  • 技術革新
  • 政策支援
  • 社会全体の意識改革

が必要です。特に、

  • 先進国と途上国の間の格差
  • 技術移転の課題
  • 気候変動の影響を最も受けやすい地域への配慮

などが重要となります。

私たちは個人レベルでも、環境問題に対する理解を深め、地域や職場でクライメート・ポジティブな取り組みを提案・実践することが重要です。日常生活の中で、省エネ行動環境に配慮した消費選択を心がけましょう。

あなたの生活や仕事の中で、クライメート・ポジティブにつながる行動は何でしょうか?また、地域や社会全体でクライメート・ポジティブを実現するには、どのような変革が必要なのでしょうか。

私たち一人ひとりの小さな行動が、大きな変化を生み出す原動力となります。未来の世代のために、より良い地球環境を残す責任があります。

今日から、クライメート・ポジティブを意識した、新しい行動を始めてみませんか?*6)

<参考・引用文献>
*1)クライメート・ポジティブとは
UNFCC『MAX Burgers: Creating the World’s First “Climate Positive” Menu | Sweden, Norway, Denmark, Poland』(2019年)
UNFCCC『World’s First “Climate Positive” Feature Movie』(2019年2月)
UNFCCC『Climate Neutral Now』(2023年)
United Nations『Six Climate-Positive Actions to Help Rebuild Economies From COVID-19 Pandemic』
外務省『気候変動に関する国際枠組み』(2022年11月)
外務省『国連交渉(COP、CMP、CMA、SB)』(2024年11月)
環境省『第2章 脱炭素、 循環経済、 分散・自然共生という多角的な切り口によるアプローチ』(2021年6月)
環境省『環境基本計画』(2024年5月)
環境省『ネイチャーポジティブ経済移行戦略 参考資料集』(2024年3月)
環境省『【有識者に聞く】気候変動対策を推し進めるグリーンファイナンス』(2024年10月)
環境省『再生可能エネルギー源と気候変動緩和に関する特別報告書』
林野庁『第1部 第1章 第4節 国際的な取組の推進(2)』(2022年5月)
国土交通省『国土交通省 環境行動計画』(2021年12月)
国立環境研究所『ネイチャーポジティブと気候変動適応』
国立環境研究所『IPCC第4次評価報告書のポイントを読む』
地球環境産業技術研究機構『排出削減コストとポテンシャルー IPCC推計との比較と示唆 -』(2022年)
国際連合広報センター『ファッション業界、画期的な気候行動憲章を発表(*憲章の日本語訳ができました)』(2019年2月)
国際連合広報センター『スポーツ界、COP24で気候行動枠組みを立ち上げ(*枠組みの日本語訳ができました)』(2019年2月)
環境省『カーボン・オフセットガイドライン Ver.3.0』(2024年3月)
*2)クライメート・ポジティブが注目される背景
IPCC『AR6 Synthesis Report: Climate Change 2023』(2023年)
IPCC『Climate Change 2023 Synthesis Report』(2023年)
IPCC『The Intergovernmental Panel on Climate Change』
IPCC『Copenhagen, Denmark.21 March 2024』(2024年3月)
JICA『JICA Climate-FIT (Adaptation)』(2024年3月)
UNEP『気候変動 さらに長期的な視点へ』(2018年4月)
UNEP『Net-Zero Nature-Positive Accelerator Integrated Program』
UNEP『New Global Investor Statement launches with the backing of hundreds of investors urging a whole-of-government approach to addressing the climate crisis』(2024年9月)
国際連合広報センター『「気候危機は正念場を迎えている」と国連の『排出ギャップ報告書2024』が警告(UN News 記事・日本語訳)』(2024年11月)
環境省『IPCC 第 6 次評価報告書 統合報告書 政策決定者向け要約』
環境省『環境・経済・社会の状況と環境政策の展開の方向について』(2023年1月)
環境省『令和5年版 環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書(要約)』(2023年6月)
環境省『第2章 自然再興・炭素中立・循環経済の統合に向けて』(2023年6月)
環境省『生物多様性に係る企業活動に関する国際動向について』(2023年6月)
経済産業省『第5節 包摂的で持続可能な成長及び発展の確保』(2024年)
外務省『国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(結果)』(2025年1月)
国土交通省『グリーンインフラに関する国内外の動向』(2024年5月)
日本経済新聞『森林の炭素吸収量、温帯で増加も寒冷地で減少 国際研究』(2024年8月)
NRI『ネイチャーポジティブの台頭によるサーキュラーエコノミーの変化』(2023年10月)
*3)クライメート・ポジティブを実現するためには
環境省『NDC実施と透明性向上に向けた共同行動』(2024年11月)p.2
United Nations『Six Climate-Positive Actions to Help Rebuild Economies From COVID-19 Pandemic』
UNEP『The Climate Technology Progress Report 2024』(2024年)
資源エネルギー庁『NDC・地球温暖化対策計画の検討状況について』(2024年10月)
NEDO『将来像「自然共生経済」の検討について』(2024年2月)
経済産業省『気候変動対策の現状と今後の課題について』(2024年6月)
経済産業省『クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針』(2021年5月)
経済産業省『カーボン・クレジット・レポートを踏まえた政策動向』(2024年3月)
環境省『令和6年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 第3節 炭素中立(ネット・ゼロ)』(2024年6月)
環境省『ネイチャーポジティブ経済移行戦略 参考資料集』(2024年3月)
日本電機工業会『昆明・モントリオール ターゲット達成に向けた重要な要素』
環境省『令和6年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 第2節 自然再興(ネイチャーポジティブ)』(2024年6月)
環境省『生物多様性国家戦略 2023-2030~ネイチャーポジティブ実現に向けたロードマップ~』(2023年3月)
環境省『「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」及び官民連携協議会発足式』(2022年10月)
環境省『はじめよう!再生可能エネルギー』
Spaceship Earth『Climate Action Reserve(CAR)とは?メリットやデメリット、導入企業事例も』(2024年4月)
*4)クライメート・ポジティブに取り組む企業事例
UNFCCC『IKEA to Present Path to Become ‘Climate Positive’ at COP25』(2019年11月)
Climate Positive『CLIMATE ACTION FOR ALL』
UNEP『UNEP’s 2024 Champions of the Earth recognizes six bold environmental leaders』(2024年12月)
UNEP『Sonia Guajajara – Policy Leadership』
UNEP『Amy Bowers Cordalis – Inspiration and Action』
UNEP『Gabriel Paun – Inspiration and Action』
環境省『巻末資料集』p.56
金融庁『気候変動と金融 気候変動問題から見たサステイナブルファイナンスの課題』(2021年1月)
TOYOTA『Toyota’s Views on Climate Public Policies 2023』(2023年)
日本水フォーラム『トヨタの環境取り組みについて』(2016年3月)
SUNTORY『サントリーグループのサステナビリティ』
SUNTORY『Water Positive!』
気候変動イニシアティブ『サントリーホールディングス株式会社』
日本河川協会『ネイチャーポジティブの実現を目指す川づくり』(2024年9月)
IKEA『クライメートアクション』
IKEA『イケア、2030年までのさまざまな目標に対する進捗を伝える「サステナビリティレポートFY23(日本語版)」と「クライメートレポートFY23(日本語版)」を公開』
IKEA『毎日をサステナブルに』
NRI『ネイチャーポジティブ実現による企業価値向上』(2023年10月)
Panasonic『Panasonic GREEN IMPACT』
Panasonic『環境:中長期環境ビジョン』
Spaceship Earth『カーボンフットプリントとは?算定方法や課題、企業の取組事例も』(2023年9月)
積水ハウス『VALUE REPORT 2024』(2024年1月)
積水ハウス『SEKISUI HOUSE ESG DATA BOOK 2024』(2024年1月)
積水ハウス『環境』(2024年)
積水ハウス『ESG経営』(2024年)
VOGUE『「2040年までにクライメート・ポジティブを達成する」──バーバリーの決意。』(2021年7月)
Burberry『BURBERRY BEYOND CLIMATE POSITIVE 2040』
Burberry『Burberry to be Climate Positive by 2040』(2021年6月)
Burberry『Going Beyond, for Better Our pledge to become climate positive by 2040.』
*5)クライメート・ポジティブとSDGs
地球環境行動会議『脱炭素とSDGsを同時に実現する施策の推進』
環境省『環境・経済・社会の状況と環境政策の展開の方向について』(2023年1月)
環境省『第六次環境基本計画に向けた基本的事項に関する検討会 取りまとめ』(2023年4月)
環境省『生物多様性に係る企業活動に関する国際動向について』(2023年11月)
経済産業省『イノベーションファイナンス促進に向けたクライメート・イノベーション・ダイアログ(CID)』(2022年1月)
経済産業省『通商白書2020 第 3 節 世界の社会課題解決(SDGs)の促進に向けて』(2020年)
日経BizGate『環境問題解決で社会の変革に セブン&アイが目指す未来』(2025年2月)
*6)まとめ
日本経済新聞『サステナビリティー、国際枠組みの構築相次ぐ』(2023年11月)
日本経済新聞『ゼロカーボン・Well-Being社会の実現に向けて』