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カーボンフットプリントとは?算定方法や課題、企業の取組事例も

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CO2削減分野では今、「カーボンフットプリント」が重要なキーワードとなっています。カーボンフットプリントを明らかにすることは、なぜ重要なのでしょうか?

あなたはカーボンフットプリントの知識を得ることにより、それぞれの情報を元に、個人や企業が地球に与える影響を考慮し、環境に配慮した選択を行うことができます。今後、社会人として必須の知識となるカーボンフットプリントについて、算定方法や課題、企業の取り組み事例などを解説します。

目次

カーボンフットプリントとは

カーボンフットプリントとは、個人や団体、企業などが生活・活動していく上で排出される二酸化炭素などの温室効果ガスの量をCO2に換算して表したものです。例えば、商品やサービスの原料調達から廃棄・リサイクルまでライフサイクル)の間に排出される温室効果ガスを数値化します。

【カーボンフットプリントとは】

カーボンフットプリントは、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量を削減するための重要な指標です。カーボンフットプリントを理解することで、私たちひとりひとりが普段の生活や活動の中で、温室効果ガスの排出量を減らすための対策を考え、発見し、行動することができるようになります。

【カーボンフットプリントと製品のライフサイクル】

ライフサイクルアセスメント(LCA)について確認

ライフサイクルアセスメントLCA※)とは、商品やサービスの原材料調達から廃棄までのライフサイクル全体にわたる環境負荷を評価する手法です。カーボンフットプリントは、LCAの結果から算出される、商品やサービスのライフサイクル全体における二酸化炭素排出量のことです。つまり、LCAはカーボンフットプリントを算出するための手法であると言えます。

【LCAとは】

例えば、リンゴのカーボンフットプリントを算出する場合、

  • 原材料調達(リンゴの木の植林、肥料や農薬の使用)
  • 栽培
  • 輸送
  • 販売
  • 廃棄

など、ライフサイクル全体における温室効果ガス排出量をCO2に換算して計算します。この計算結果が、リンゴのカーボンフットプリントです。

次の章では、カーボンフットプリントの算定について、もう少し詳しく解説します。*1)

カーボンフットプリントの算出方法

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カーボンフットプリントを算定するための手順は、以下のとおりです。

①CFP-PCRの策定・認定

CFP-PCRとは、カーボンフットプリントの算定・宣言に関するルールのことです。製品やサービスごとにCFP-PCRを策定し、公募やレビューを経て認定を受けます。

CFP-PCRは、カーボンフットプリントを計算するときのルールですが、一律というわけではありません。製品やサービスによってルールが異なるため、それぞれに合った内容にする必要があります。このようなルールは、一般に意見を求めたり、専門家の検証により適切か判断されます。

②温室効果ガスの算定・検証

次に、CFP-PCRに基づいてカーボンフットプリントを算定します。その際、温室効果ガスの算定は、以下のような手順で行います。

  1. CFP-PCRを確認する
    製品やサービスごとにCFP-PCRが作られています。自分の算定したい製品やサービスのCFP-PCRを見つけて、どんな情報や方法が必要かを確認します。
  2. 温室効果ガスの排出源を特定する
    製品やサービスのライフサイクル全体を見て、原料調達や製造、輸送や使用、廃棄やリサイクルなど、どこでどんな排出源があるかを特定します。
  3. 温室効果ガスの排出量を計算する
    排出量は、原単位データ※と活動量データ※をかけて計算します。計算した排出量は、CO2換算して足し合わせます。
  4. 不確実性を評価する
    不確実性とは、カーボンフットプリントの計算結果に含まれる誤差やばらつきのことです。不確実性は、データや方法によって変わります。
    不確実性を評価することで、カーボンフットプリントの信頼性や妥当性を判断できます。
  5. 算定したカーボンフットプリントを検証してもらう
    第三者機関に依頼して検証を受け、算定結果の正確さや妥当さを確認します
※原単位データ

排出源ごとに発生する温室効果ガスの単位量あたりの排出量

※活動量データ

排出源ごとに発生する温室効果ガスの発生回数や重量

【カーボンフットプリント算定の流れ】

③CFP宣言の登録・公開

CFP宣言とは、カーボンフットプリントを表示・活用することです。製品やサービスにCFPマークをつけるなど、カーボンフットプリントを表示して、消費者の判断を助けます。

CFP検証に合格したら、登録・公開申請書をダウンロードして記入し、CFPプログラム事務局にメールで送ります。申請書には、CFPの数値や計算方法、表示方法などを記載します。

これがCFPプログラム事務局に受理され、契約の締結が完了すると、製品やサービスにCFPマーク※を貼り付けることができます。登録・公開手続きが完了したら、CFPプログラムのホームページにCFP宣言認定製品一覧として登録情報が公開されます。

※CFPマーク

政府が2009年度から2011年度にかけて実施した「カーボンフットプリント制度試行事業」において用いたマークを、CFPプログラムが国から継承したマークで、数値を表示することでCO2の排出量が分かるように表示する。

【CPFマーク】

次の章で、カーボンフットプリントの算定を、リンゴと牛肉を例に見ていきましょう。*2)

カーボンフットプリントの算定例

例として、植物性食品のリンゴと動物性食品の牛肉のカーボンフットプリントを見ていきましょう。先ほど紹介したように、

  • 対象となる商品やサービスのライフサイクルを特定
  • 各プロセスで排出される温室効果ガスの量を算定
  • 各プロセスで排出される温室効果ガスの量をCO2に換算
  • CO2換算した各プロセスの温室効果ガス排出量を合計

という手順で算定します。

リンゴ1kgのカーボンフットプリント

始めに、リンゴのライフサイクルを考えてみましょう。一般的に以下のようなライフサイクルの段階が考えられます。

  • 原材料調達…リンゴの栽培に必要な資材や水の調達
  • 生産…リンゴの収穫や選別
  • 流通・販売…リンゴの輸送や保管
  • 使用・維持管理…リンゴの消費や保存
  • 廃棄・リサイクル…リンゴの廃棄物や副産物の処理

この各段階で発生する温室効果ガスの種類と量を調べます。そのためには、以下のような情報が必要です。

  • 原材料調達…資材や水の製造・輸送に使われる燃料や電力の消費量、リンゴの栽培に使われる肥料や農薬の排出量
  • 生産…収穫や選別に使われる機械や人力の消費量
  • 流通・販売…輸送や保管に使われる燃料や電力の消費量、冷蔵庫やトラックなどの排出量
  • 使用・維持管理…消費者がリンゴを食べる際に使う燃料や電力の消費量、冷蔵庫などの排出量
  • 廃棄・リサイクル…リンゴの廃棄物や副産物を処理する際に使われる燃料や電力の消費量、焼却や堆肥化などによる排出量

全てのデータが揃ったら、各段階で発生する温室効果ガスをCO2に換算します。この時、以下のようなCO2以外の温室効果ガスからCO2への換算係数が必要です。

  • CO2…1kgあたり1kg
  • CH4(メタン)…1kgあたり25kg
  • N2O(亜酸化窒素)…1kgあたり298kg
  • HFCs(フロン)…種類によって異なる

最後に各段階で換算したCO2量を合計します。これがリンゴ1kgのカーボンフットプリントになります。

リンゴ1kgのカーボンフットプリントの具体的な数値は、製品や産地によって異なりますが、一例として、青森県産のリンゴ1kgのカーボンフットプリントは0.32kg-CO2と算定されています。

このように、カーボンフットプリントを試算するには、多くのデータや計算が必要です。

牛肉1kgのカーボンフットプリント

まずは先ほどのように、牛肉のライフサイクルを考えます。例えば、以下のような段階が考えられます。

  • 原材料調達…牛の飼料や水の調達
  • 生産…牛の飼育や屠殺
  • 流通・販売…牛肉の輸送や保管
  • 使用・維持管理…牛肉の消費や保存
  • 廃棄・リサイクル…牛肉の廃棄物や副産物の処理

この各段階で発生する温室効果ガスの種類と量を調べます。そのためには、以下のような情報が必要です。

  • 原材料調達…飼料や水の製造・輸送に使われる燃料や電力の消費量、牛の消化器から排出されるメタン(CH4)や一酸化二窒素(N2O)の量
  • 生産…飼育や屠殺に使われる燃料や電力の消費量、牛舎や屠殺場などの排出量
  • 流通・販売…輸送や保管に使われる燃料や電力の消費量、冷蔵庫やトラックなどの排出量
  • 使用・維持管理…消費者が牛肉を調理する際に使う燃料や電力の消費量、冷蔵庫などの排出量
  • 廃棄・リサイクル…牛肉の廃棄物や副産物を処理する際に使われる燃料や電力の消費量、焼却や堆肥化などによる排出量

最後に各段階で発生する温室効果ガスをCO2に換算し、各段階で換算したCO2量を合計します。これが牛肉1kgのカーボンフットプリントになります。

国連食糧農業機関(FAO)の報告書によると、牛肉1kgあたりのカーボンフットプリントは約60kg-CO2です。

また、牛肉はウォーターフットプリント※も多い食品として知られています。牛肉1kgあたりのウォーターフットプリントは約15,000リットルと言われています。

これは、他の食品と比べても非常に大きい値です。例えば、鶏肉1kgあたりのカーボンフットプリントは約6kg-CO2、ウォーターフットプリントは約4,300リットルです。

製品や食べ物を作るためにライフサイクル全体で必要な水の量。

リンゴ1kgと牛肉1kg

植物であり、成長過程ではCO2を吸収するリンゴに対して、牛肉は、

  • 牛は反芻動物としてメタン(CH4)を大量に排出する。(メタンはCO2よりも温室効果が強いガス)
  • 牛は飼料として大量の穀物や草を食べる。(これらは農地や森林を開発して生産されるため、土地利用変化によるCO2排出や生物多様性の減少を引き起こす)
  • 牛には水が多く必要。(飼料や飲料水だけでなく、飼育や屠殺などにも水が使われる)
  • 排泄物が多い

といった、大型の草食哺乳類ならではの特徴があります。リンゴ1kgと牛肉1kgを比較してみましょう。参考に鶏肉1kgも記載します。

カーボンフットプリント ウォーターフットプリント
リンゴ0.4kg‐CO2/kg約800L/kg
牛肉60kg‐CO2/kg約15,000L/kg
鶏肉6kg‐CO2/kg約4,300L/kg

動物性食品は植物性食品に比べて、温室効果ガスの排出量や水資源の消費量が多く、地球温暖化や水不足などの環境問題を悪化させていると言われています。近年では、このことから「環境のために牛肉の生産量・消費量を減らしていこう」という動きがあります。

しかしリンゴでは牛肉のようにタンパク質が取れない!

1kgあたりのカーボンフットプリントは牛肉より断然少ないリンゴですが、例えば、私たちの体を維持するために必要なタンパク質は少ない果物です。1個あたり約0.5gのタンパク質しか含まれていません。そのため、いくら環境に優しくてもリンゴだけでタンパク質を十分に摂取することはとても大変です。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」によると、成人の1日のタンパク質摂取量は男性で60g、女性で50gです。この基準を満たすためには、リンゴを1日に10個以上食べなければいけません。しかし、1日に10個ものリンゴを食べるのは…。そのため、他の食品からタンパク質を摂取する必要があります。

リンゴ100gと牛肉100gの、タンパク質を代表する人間にとって重要な栄養素の比較を表にまとめました。

栄養素働きリンゴ牛肉
タンパク質筋肉や内臓、皮膚、血液などの身体の主要な構成成分。必須アミノ酸を含む。0.2g9.7g
鉄分血液中のヘモグロビンや筋肉中のミオグロビンの構成成分。酸素の運搬に関与する。0.1mg1.2mg
ビタミンB1炭水化物のエネルギー代謝に必要な補酵素。神経系の働きにも関係する。0.05mg0.04mg
ビタミンB2タンパク質、脂質、炭水化物のエネルギー代謝に必要な補酵素。皮膚や粘膜の健康にも重要。0.03mg0.09mg
ビタミンB6タンパク質の代謝や合成に必要な補酵素。赤血球や免疫細胞の生成にも関与する。0.08mg0.15mg
ビタミンB12赤血球や神経細胞の生成に必要な補酵素。動物性食品にしか含まれない。0μg1.1μg
ナイアシンタンパク質、脂質、炭水化物のエネルギー代謝に必要な補酵素。皮膚や粘膜、神経系の健康にも重要。0.26mg2.4mg
葉酸DNAやRNAの合成に必要な補酵素。細胞分裂や赤血球の生成にも関与する。妊娠初期には胎児の神経管閉鎖障害を予防するために重要。12.75μg3μg

牛肉はリンゴよりもタンパク質や鉄分が豊富で、ビタミンB群も多く含むことがわかります。リンゴと牛肉はそれぞれ異なる栄養素を持っているので、他の食品と組み合わせながら、バランスよく摂取することが望ましいですね。

カーボンフットプリントを削減できる食生活とは?

現代の先進国において、特に都市部の食生活は、カーボンフットプリントが多い傾向があります。食生活からカーボンフットプリントを削減するためには、以下のような点に注意して、できることから良い習慣に変えていきましょう!

  • 地産地消旬産旬消を心がけ、食材の輸送によるCO2排出量を減らす
  • 有機(オーガニック)食品環境に配慮した生産方法の食品を選ぶ。
  • 自分で野菜や果物を育てたり、地域の農家と直接取引したりして、食の自産自消を楽しむ。
  • シカ肉やイノシシ肉などのジビエを食べたり、魚介類や大豆製品などを積極的に摂取したりして、肉類の消費量を減らす
  • 普段の自分の食生活を見直し、野菜を積極的に食べる。(栄養バランスに気を付ける)
  • 食品ロスを減らすため、必要な分だけ買ったり、賞味期限や消費期限を確認したり、残り物を活用したりする。
  • カーボンフットプリントラベル環境ラベルなど、食品の環境負荷に関する情報に目を向けて、環境に配慮した製品を選ぶ

【サステナブルで健康な食生活の提案】

環境に配慮した食生活を心がけることで、持続可能な地球環境の実現に貢献することができます。

コラム:昆虫食

昆虫食は、持続可能な地球環境を目指すための有効なタンパク質の摂取方法の一つです。肉類に比べて水や土地の使用量が少なく、温室効果ガスの排出量も少ないため、環境にやさしいタンパク源と言えます。また、昆虫は、肉類に比べて安価で手に入りやすいため、経済的にも優れています。

しかし、昆虫食には、いくつかの課題があります。最も大きな課題は、特に先進国の都市部では、すでに昆虫食の習慣がない場合が多く、食感や味に抵抗を感じる人が少なくないことです。

また、昆虫食の衛生管理が不十分な場合、食中毒のリスクがあります。昆虫食の普及には、昆虫の養殖技術や加工技術の開発も課題です。

これらの課題はあるものの、昆虫食は持続可能な地球環境を目指すための有効なタンパク質の摂取方法の一つです。昆虫食の課題を克服し、昆虫食を普及させることで、持続可能な地球環境の実現に貢献することができます。

次の章では、このようなカーボンフットプリントの情報がなぜ、私たちの社会や生活にとって重要なのかに迫ります。*3)

なぜカーボンフットプリントが重要なの?

カーボンフットプリントを把握しないと、以下のような問題が起こる可能性があります。消費者・企業・市場の3つの側面から見ていきましょう。

消費者としての責任を果たす機会を得られない

消費者がカーボンフットプリントの情報が得られないと、自分の消費行動が環境に与える影響を正しく認識できず、

  • 無駄な温室効果ガス排出を招く
  • 知らず知らずのうちに多くの排出をともなう行動を続ける

などの恐れがあります。例えば、カーボンフットプリントの高い商品やサービスを習慣的に選んだり、必要以上に購入したり、使い捨てしたりすることで、地球温暖化を加速させてしまう可能性があります。

事業者としての信頼と競争力を失う

事業者は、カーボンフットプリントを正確に把握する努力をしないことで、

  • 自社の製品やサービスの環境性能を向上させるための努力や投資を怠る
  • 消費者に対して正確な情報を提供できない

といった行動を招き、社会的な信頼や競争力を失う恐れがあります。例えば、カーボンフットプリントの低い商品やサービスを偽って表示したり(=グリーンウォッシュ※)、サプライチェーン全体での排出量を無視したりすることで、消費者や関係者からの不信や批判を招いてしまいます。

環境に良いイメージとして使用される「グリーン」と、「うわべだけ」や「取り繕う」を意味する「ホワイトウォッシュ」を合わせた言葉。本当は環境に配慮していないにもかかわらず、しているように見せかけて商品やサービスを提供すること。

市場全体の効率的な低炭素化を妨げる

市場は、政府や企業が正しくカーボンフットプリントを測定しないことにより、

  • カーボンフットプリントに基づいた適正な価格設定や需要調整ができない
  • 温室効果ガス削減に向けたインセンティブ※が機能しない

などの恐れがあります。例えば、カーボンフットプリントの高い(=温室効果ガスの排出量の多い)商品やサービスが安く売られたり、過剰に供給されたりすることで、環境に配慮した商品やサービスの普及や開発が阻害される可能性があります。

※温室効果ガス削減に向けたインセンティブ

温室効果ガスの排出量を減らすことによって得られる利益やメリットのこと。カーボンフットプリントが正確でなければ、温室効果ガスの排出量に応じた税金や補助金の設定や、消費者が環境に配慮した商品やサービスを選ぶ判断ができない。

このように、カーボンフットプリントを把握しないと、自分自身や事業者や市場にとっても不利益な結果を招く可能性があります。

カーボンフットプリントは、社会全体で効率的に温室効果ガスを削減する上で、とても重要な情報です。次の章では、カーボンフットプリントを算定することによって見えてくるものを、メリットとしてまとめていきます。*4)

カーボンフットプリントから見えてくるもの(メリット)

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カーボンフットプリントを算定しなければ見えないもの・知りえない情報は多くあります。カーボンフットプリントから、私たちは多様な視点からモノやサービス、生活習慣などを判断し、より環境に配慮した行動を選択することができます。

カーボンフットプリントによって明らかになること

カーボンフットプリントから具体的にわかることは、商品やサービスの

  • ライフサイクル全体で排出される温室効果ガスの量をCO2に換算した数値
  • 各工程で排出される温室効果ガスの量や割合
  • 種類や規格によって異なる温室効果ガスの排出量
  • 使用方法や廃棄方法によって変わる温室効果ガスの排出量
  • 代替品や競合品と比較した温室効果ガスの排出量

などです。

私たちの生活とカーボンフットプリント

このことから見えてくるものは、

  • あなたのライフスタイルが環境に与える影響

です。あなたのライフスタイルを見直し、持続可能な未来のためにこれまでの習慣を変える良い機会になります。例えば、

  • 商品やサービスの使用方法や廃棄方法によって、あなたのライフスタイルが環境に与える影響を変えることができる
  • カーボンフットプリントの少ない商品やサービスを選ぶことによって、あなたのライフスタイルが環境に与える影響を減らすことができる
  • 商品やサービスの購入量や頻度によって、あなたのライフスタイルが環境に与える影響を量的に抑えることができる

といったように、私たちは誰もが普段の生活の中で、温室効果ガスの排出量削減に貢献できるのです。

【脱炭素のつながる豊かな暮らしの10年後(2030年頃)】

企業にとってのカーボンフットプリント

企業にとって、カーボンフットプリントを明記することにより、さまざまなメリットがあります。

①製品やサービスの開発・改善

カーボンフットプリントを算定することで、自社の製品やサービスがどの工程でどれだけのCO2を排出しているかを把握できます。それに基づいて、原材料の選択や製造方法、輸送方法、包装材料などを見直し、CO2排出量を削減することができます。

②消費者への情報提供・啓発

カーボンフットプリントを製品やサービスに表示することで、消費者に自社の環境への影響や貢献がわかりやすくなります。このことから、企業は消費者の意識向上や行動変容を促すことができます。

③消費者や取引先の信頼や支持を得る

近年、消費者や取引先は、環境にやさしい製品やサービスを求める傾向があります。そのため、カーボンフットプリントを明記することで、消費者や取引先の信頼や支持を得ることができます。

④競争力やブランド力を高める

カーボンフットプリントを明記することで、他社との差別化や優位性をアピールすることができます。また、カーボンフットプリントを低くするために、新しい技術やアイデアを開発することもできます。

⑤国際的なルールや規制に対応することができる

カーボンフットプリントは国際的な基準やルールが作られつつあります。そのため、自社の製品やサービスのカーボンフットプリントを計算し、表示することで、国際的なルールや規制に対応することができます。

LCAやカーボンフットプリントには、国際的にも注目が集まっています。カーボンフットプリントの国際的な基準やルールは現在作られつつあり、企業はいずれ、対応を求められるようになると考えられます。

【2050年カーボンニュートラル】

このようにさまざまなことがわかり、多くのメリットがあるカーボンフットプリントですが、現状ではまだ課題や問題点があります。次の章では、カーボンフットプリントの課題を確認しましょう。*5)

カーボンフットプリントの課題(デメリット・問題点)

カーボンフットプリントを算定し、製品やサービス、私たちの活動などのライフサイクル全体で、温室効果ガスの排出量を考えた行動をすることは、今後スタンダードになるでしょう。しかし、カーボンフットプリントという考え方はまだ比較的新しいこともあり、課題も多くあります。

正確に測定することが難しい

  • 製品やサービスのライフサイクルが複雑
    カーボンフットプリントは、製品やサービスが原材料調達から廃棄・リサイクルまでにどれだけCO2を出しているかを計算します。しかし、製品やサービスはさまざまな工程や場所を経て作られるため、すべてのCO2排出量を把握するのは大変です。
  • CO2排出量のデータが不足している
    カーボンフットプリントを計算するには、製品やサービスに関わるすべての企業や組織からCO2排出量のデータを集める必要があります。しかし、CO2排出量のデータはまだ十分に開示されていない場合が多く、正確なデータを入手するのは困難です。
  • CO2排出量の計算方法が統一されていない
    カーボンフットプリントを計算するには、CO2排出量の計算方法や基準を決める必要があります。しかし、国際的な基準やルールはまだ完全には確立されておらず、企業や業界によって計算方法が異なる場合があります。そのため、カーボンフットプリントの比較や評価が難しくなります。

環境への影響が必ずしも直接的ではない

カーボンフットプリントは、CO2の排出量を示すことで、製品やサービスが環境に与える影響を間接的に示します。しかし、CO2の排出量だけでは、環境への影響を正確に測ることはできません。例えば、以下のような問題があります。

全ての環境負荷がわかるわけではない

カーボンフットプリントは、オゾン層破壊酸性雨などの環境問題を考慮しません。また、資源の枯渇生物多様性の低下なども直接的には考慮していません。しかし、これらの問題も環境に大きな影響を与えています。

時間的に継続する影響を考慮しない

CO2は大気中に長く残ります。そのため、過去に排出されたCO2も現在の環境に影響を与えています。また、将来に排出されるCO2も予測する必要があります。これらの時間的に継続する影響を無視すると、環境への影響を過小評価することになります。

コストがかかる

カーボンフットプリントを計算するには、製品やサービスに関わるすべての工程や場所でどれだけCO2を出しているかを調べる必要があります。しかし、これは時間やお金がかかる作業です。

  • データ収集のコスト
  • 計算方法のコスト※
  • 表示・開示のコスト

など、企業にとって、カーボンフットプリント算定にかかるコストは決して少なくないと言えます。

※計算方法のコスト

カーボンフットプリントを計算するには、国際的な基準やルールがまだ完全には確立されていないため、今後の状況の変化によっては、計算方法を選択したり、変更したりする必要がある。その変更に伴うのが「計算方法のコスト」。

消費者の理解がまだ広がっていない

カーボンフットプリントは比較的新しい概念で、表示されている数値がどういう意味なのかわからない人も多いのが現状です。また、表示されている数値が多い・少ないの基準がわかりにくいことも課題です。

例えば、缶飲料のカーボンフットプリントが75g-CO2eq2だとしても、これが高いのか低いのか、その数値だけでは判断できない人がまだ多いのです。これが判断できるようになるには、他の製品やサービスと比較したり、自分の1日あたりの排出量と比較したりする必要があります。

カーボンフットプリントは測定・算出の技術や基準面でもまだ改良の余地があります。環境への意識が高まるにつれて、カーボンフットプリントの知識は消費者にも広がっていきます。そのため、カーボンフットプリントの国際基準の制定や、判断に十分な精度で温室効果ガスの排出量を測定できる方法・技術の開発が急務です。

次の章ではカーボンフットプリントを削減するためにできることを確認しましょう!

カーボンフットプリントを削減する方法

それでは、カーボンフットプリントを削減する方法の例を、企業と個人に分けて見ていきます。あなたの職場や、普段のあなたの生活の中でできることがあれば、忘れないうちに実行してみてください。

企業ができるカーボンフットプリントの削減

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まずは、企業ができるカーボンフットプリントの削減方法を紹介します。

電気自動車やハイブリッド車に切り替える

EV(電気自動車)ハイブリッド車は、ガソリン車やディーゼル車に比べて、走行時の温室効果ガス排出量が少ないか排出量がゼロです。しかし、電気自動車やハイブリッド車の製造や廃棄、電気や燃料の生成には温室効果ガスを排出するため、ライフサイクル全体で見ると「走行時にCO2を排出しない」という印象よりは、温室効果ガス削減の効果は少なくなります。電気自動車やハイブリッド車を選ぶ場合は、再生可能エネルギーを利用すると削減効果が大きくなります。

太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを利用する

再生可能エネルギーは、化石燃料に比べて、温室効果ガス排出量が少ないか排出量がゼロです。また、再生可能エネルギーは枯渇の心配がなく、長期的に見ると安定してエネルギー供給が期待できます。

しかし、環境にやさしい再生可能エネルギーにも課題があります。例えば、発電量が天候や地域によって変動することや、発電設備の建設や運用にコストがかかることなどです。

省エネ設備を導入する

省エネ設備を導入することで、カーボンフットプリントを削減する効果があります。また、省エネ設備は、エネルギー費用の節約快適な室内環境の確保などのメリットもあります。しかし、省エネ設備にも導入に初期投資がかかり、導入後も適切な運用管理が必要です。

ペーパーレス化を推進する

ペーパーレス化を推進することで、紙の製造や輸送にともなう多くの温室効果ガス排出量が削減できます。また、ペーパーレス化は、森林資源の保護廃棄物の削減などのメリットもあります。しかし、ペーパーレス化にも、電子媒体のセキュリティや保管の問題、電子機器のライフサイクルに伴う温室効果ガス排出量などの課題があります。

リサイクルやリユースを促進する

リサイクルリユースによって、新たな製品や資源の生産に必要なエネルギーや原材料を節約できます。また、リサイクルやリユースは、廃棄物の減少資源の有効活用などのメリットもあります。

一方で、リサイクルやリユースにも課題があります。例えば、品質や安全性の確保や、コストや手間の問題です。

植林を行う

樹木など植物のほとんどは光合成によって大気中のCO2を吸収し、酸素を放出します。また、植林は、森林資源の増加生物多様性の保護などのメリットもあります。

しかし、適切な種類や数の樹木を選ぶことや、長期的な管理や保全の必要性など、植林にも課題があります。

環境に配慮した製品やサービスを開発する

環境に配慮した製品やサービスを開発することで、カーボンフットプリントを削減できます。例えば、エコデザインを採用するなどの取り組みが挙げられます。

エコデザインとは、製品やサービスの企画・設計段階から環境負荷を低減することを目的としたデザインのことです。エコデザインは、製品やサービスの機能や性能を維持しながら、原材料の選択や使用量の削減、省エネ化や長寿命化、分解やリサイクルしやすさなどを考慮しています。

カーボンオフセット

企業は製品やサービスのカーボンフットプリントを把握し、削減することが求められていますが、すべての排出を自分たちだけで削減することは困難です。カーボンオフセット※を利用することで、企業は努力しても削減できない分の温室効果ガス排出量を他の場所や方法で削減・吸収・回収された量で相殺することができます。

CO2をはじめとする温室効果ガスの削減の努力をした上でも、やむを得ず排出してしまう温室効果ガスを埋め合わせるため、他の場所で排出削減や吸収の取り組みをしたり、そのような事業に出資したりすること。

私たちにできるカーボンフットプリントの削減

次に、私たち個人にできるカーボンフットプリントの削減方法を紹介します。

自家用車の利用を減らし、公共交通機関や自転車、徒歩などを利用する

ガソリンやディーゼルが燃料の自家用車は、走行時に多くの温室効果ガスを排出するため、環境に大きな負担をかけます。一方、公共交通機関や自転車、徒歩などは、1人当たりの温室効果ガス排出量が少ないか排出量がゼロであるため、環境に優しい移動方法です。

また、自家用車の利用を減らすことは、交通渋滞や騒音の低減健康経済の面でもメリットがあります。

電気やガスの使用量を減らす

火力発電由来の電気やガスの使用は、温室効果ガスの排出量を増やす原因となります。電気やガスの使用量を減らす方法としては、

  • 再生可能エネルギーを選択する
  • 省エネ機器の選択や設定
  • 節電や節ガスの習慣づけ

などがあります。

クーラーの設定温度を上げる

クーラーは多くの電気を消費するため、温室効果ガス排出量も多くなります。エアコンの設定温度を上げることで、電気消費量を抑えることができます。エアコンの設定温度は、夏場は28℃を目安に設定することが推奨されています。

また、エアコン以外にも扇風機やカーテンなどで室内温度を調節することも有効です。近年では屋内での熱中症も問題になっているので、工夫しながら快適に過ごせる範囲で取り組みましょう。

節水を心がける

水道水は、取水から浄水・配水・下水処理までに多くのエネルギーを必要とするため、節水を心がけることはカーボンフットプリントを削減する効果があります。節水を心がける方法としては、

  • 水道水の無駄遣いを避ける
  • 節水型の水栓やシャワーヘッドを利用する

などがあります。

食べ物を無駄にしない

食べ物は、生産から消費までに多くのエネルギーを必要とするため、多くの温室効果ガスの排出量がともないます。食べ物を無駄にしない方法としては、

  • 必要な分だけ買う
  • 賞味期限や消費期限を守る
  • 残り物を活用する

などがあります。

リサイクルやリユースを心がける

リサイクルリユースを心がけることで、新たな製品や資源の生産に必要なエネルギーや原材料を節約できます。また、リサイクルやリユースを前提として、ものを大切に使うことも重要です。

環境に配慮した商品やサービスを選ぶ

環境に配慮した商品やサービスを消費者が選ぶことは、自分のカーボンフットプリントを削減するだけでなく、

  • 電気や水道などの使用量や費用を節約
  • 快適で健康的な生活を送ることができる
  • 企業が環境に配慮した製品の開発や改善に取り組む
  • 社会の持続可能性や循環性を高める

など多くのメリットがあります。

エコバッグやマイボトルを持ち歩く

エコバッグマイボトルを持ち歩くことで、使い捨ての製品の使用量を減らすことができます。この取り組みは、習慣になってしまえば無理なく続けることができます。

【ゼロカーボンアクション30 アクションごとのCO2削減効果の例】

このような地道な行動を積み重ねることで、カーボンフットプリントを削減し、持続可能な社会を実現することができます。次の章ではカーボンフットプリント削減に取り組む企業の事例を紹介します。*6)

カーボンフットプリントの削減に取り組む企業の事例

カーボンフットプリントの削減に積極的に取り組み、優れた温室効果ガスの削減に成功している企業を、海外(世界)企業の例と日本企業の例で紹介します。

海外(世界)企業の例:IKEA

【環境を考えた設計を大切にするIKEA】

IKEAは、「2030年までにクライメートポジティブを実現する」という目標を掲げています。この目標に向けて、IKEAは以下のような取り組みを行っています。

※クライメートポジティブ

自社のビジネスを成長させる一方で、バリューチェーン全体で排出される温室効果ガスよりも多くの排出量を削減すること。

素材選びにこだわる

【IKEAにとって基本となる素材、木材】

木材、金属、紙、テキスタイルファニッシング、プラスチックなどの素材は、IKEAのクライメートフットプリント※の排出源の約52%を占めています。これらの素材の使用量とクライメートフットプリントを削減するために、IKEAは再生可能素材またはリサイクル素材を100%使用した製品作りを目指しています。

※クライメートフットプリント

カーボンフットプリントが商品やサービスのライフサイクル全体で排出される温室効果ガスをCO2換算して合計したものに対して、クライメートフットプリントは、商品やサービスのライフサイクル全体で排出される温室効果ガスをそのまま(複数の種類の排出ガスとして)表したもの。

再生可能エネルギーの導入

【IKEAの再生可能エネルギー導入推進】

エネルギーからの温室効果ガスの排出は、IKEAのクライメートフットプリントの約12%を占め、主に製品の生産や輸送に多く使われています。IKEAは、自分のオペレーションだけでなく、サプライヤーのオペレーションも含めた「再生可能エネルギー使用率100%」を目指しています。

サーキュラービジネスの実現

サーキュラービジネスとは、製品や素材が循環するように設計し、廃棄物や排出量を減らすビジネスモデルです。IKEAは、「2030年までにサーキュラービジネスの実現」を目指しています。

そのために、

  • 購入者がサーキュラー(循環型)な方法で、商品を入手、手入れ、譲渡できるようにする
  • すべての商品を最初の段階からリユース、改修、再製造、リサイクルできることを念頭に置いてデザインする
  • 再生可能素材とリサイクル可能素材のみを使用する
  • ビジネスパートナーシップを提唱・協働・構築して、サーキュラーエコノミー(循環型経済)を推進する

などの取り組みを行っています。

プラントベース食品:プラントベースのタンパク質への移行

【プラントベース食品】

食品部門からの温室効果ガスの排出はIKEAのクライメートフットプリントの約3%を占めています。特に肉類や乳製品が主な排出源です。

IKEAは、食品のクライメートフットプリントを削減するためにプラントベース食品※の選択肢を増やすことを目指しています。レストランやパッケージ食品で提供する料理の50%以上をプラントベースにすることや、植物性肉代替品などの新商品を開発することを行っています。

このように、IKEAは、カーボンフットプリントの削減に向けて、さまざまな分野で積極的な取り組みを行っています。その結果、2019年度には、バリューチェーン全体で排出された温室効果ガスの量が前年度比で4.3%減少しました。

また、IKEAは、カーボンオフセットを使用せずにクライメートポジティブを実現するという方針を掲げています。そのために、自社のビジネスやバリューチェーンの根本的な変革に取り組んでいます。

※プラントベースの食品

主に植物由来の原材料(畜産物や水産物を含まない。)で、肉などの畜産物や魚などの水産物に似せて作った食品。

日本企業の例:パナソニック

パナソニックはこれまでも、長年にわたって地球環境問題解決への貢献に力をいれてきました。1991年、パナソニック(当時、松下電器産業)は業界に先駆けて独自の環境管理基本方針(松下環境憲章)を制定し、世界中のパナソニックの拠点に適用しています。

【パナソニックの環境宣言】

パナソニックはカーボンフットプリント削減への取り組みとして、

  • 2030年までに自社の事業活動からのCO2排出量を実質ゼロにする
  • 2030年までに自社の商品・サービスのライフサイクルで排出されるCO2を1.1億トン削減する
  • 2050年までに自社の商品・サービスや新技術で社会全体のCO2排出量を3億トン以上削減する

などを目標とした「Panasonic GREEN IMPACT」※を掲げています。その中で、近年世界的にも注目度の高い、電池事業を担うパナソニック エナジーの取り組みを見てみましょう。

※Panasonic GREEN IMPACT

パナソニックが掲げる環境ビジョンのこと。パナソニックの事業活動や商品・サービスのライフサイクルで排出されるCO2を削減するだけでなく、電池や太陽光発電などの技術やソリューションで社会全体のCO2排出量を削減することを目指す。

【Panasonic GREEN IMPACT】

車載電池と工場のカーボンニュートラル化への挑戦

パナソニックは、2030年までに車載電池(自動車に搭載されるバッテリー)のカーボンフットプリントを半分まで削減すると共に、2028年度までにグローバル全ての生産工場での実質的なカーボンニュートラル化を目指します。現時点では9ヶ所の工場が「CO2ゼロ工場」を実現しています。

【CO2ゼロ工場グローバルマップ】

資源循環型の電池製造による環境負荷の低減

【国内での廃棄物交流会の様子】

パナソニックは、「資源循環型モノづくり」を掲げ、工場廃棄物の削減ゼロエミッション※)にも取り組んでいます。

  • 環境負荷の低い資源の調達
  • リサイクル材料の使用
  • レアメタルの使用削減
  • 現地での材料調達

などを通じて、電池製造におけるCO2排出量と資源使用量を削減しています。

【パナソニックの樹脂循環取り組みの流れ】

産業活動による温室効果ガスの排出や廃棄物などをできる限りゼロにして、環境への負荷を最小化することを目指すこと。

高性能な電池技術で電動化と省エネ化を支援

高エネルギー密度や高安全性を備えた電池技術を開発し、EVや社会インフラなど、社会全体の電動化や省エネ化に貢献しています。

【カーボンニュートラル社会に向けたパナソニックの貢献)

Carbon Pay構想で消費者と共に環境貢献する新習慣を創出

Carbon Pay構想とは、乾電池などの使用量やリサイクル率に応じて、消費者に環境貢献ポイントを付与するもので、消費者と共に環境貢献する新習慣を創出することを目指しています。

「Carbon Pay」アプリでは、乾電池の使用量やリサイクル率をスキャンや撮影などで記録し、それに応じてカーボンフットプリントが表示されます。ユーザーは、そのカーボンフットプリントに相当する金額を支払い、CO2を削減・吸収する取り組みを支援できます。支援できる取り組みには、

  • 森の保護
  • 植樹
  • サンゴの植え付け
  • 再生可能エネルギー発電所の建設
  • グリーンテクノロジー

などがあります。これは、消費者が簡単に自分のカーボンフットプリントを把握し、自主的にカーボンオフセットができる新しい仕組みです。

【Carbon Payアプリで簡単カーボンオフセット】

水素社会への移行に向けた水素活用

パナソニック エナジーは、水素をエネルギー源として利用することで、低炭素・脱炭素社会の実現に貢献しています。具体的には、

  • 水から水素を生成する水電解装置
  • 水素を高圧で貯蔵・輸送する高圧水素タンク
  • 水素を低温で液化・貯蔵・輸送する液化水素タンク
  • 燃料電池・燃料電池システム

などを開発しています。

【パナソニックの水素活用への取り組み】

今後の企業にとって、カーボンフットプリント削減は必要不可欠な取り組みです。このような環境保護など社会問題解決へのへの取り組みは、企業の社会的責任としてだけでなく、ビジネスの持続可能性にも直結する重要な要素となります。

次の章ではカーボンフットプリントとSDGsの関係について確認しましょう。*7)

カーボンフットプリントとSDGs

イメージ画像

カーボンフットプリントとSDGsは、どちらも持続可能な社会を実現するための重要な要素です。カーボンフットプリントを削減することで、温室効果ガスの排出量を減らし、地球温暖化の防止に貢献することができます。カーボンフットプリントを削減することは、エネルギーの効率化森林の保護リサイクルの促進など、SDGsの目標達成にもつながります。

特に、カーボンフットプリントと関連の深いSDGs目標は以下のとおりです。

これらの目標は、すべてカーボンフットプリントを削減することで、達成に貢献することができます。カーボンフットプリントを削減するためには、私たちひとりひとりが、自分の生活や行動を見直し、より持続可能なライフスタイルを送ることが重要です。

さらに、「SDGsの誰ひとり取り残さない」という前提を思い出してください。カーボンフットプリントの知識があれば、製品のリサイクルにも積極的に取り組めますが、その知識が普及していないことにより、「できるのに、知らないからできない」ことが、社会にはまだまだ多くあります。

知識が先でも、「みんながそうしているから、やってみる」が先でも構いません。SDGsやカーボンフットプリントの知識を深め、身近な人に広めることも心がけましょう。

まとめ:カーボンフットプリント削減で持続可能な社会へ!

カーボンフットプリントを知ることは、地球温暖化問題に対する意識や行動を変えるきっかけになります。私たちの生活や消費が地球環境に与える影響を理解し、カーボンフットプリントを削減することで、気候変動の緩和と持続可能な社会の実現に貢献しましょう!

カーボンフットプリントを削減するためには、企業と消費者、そして地方自治体や政府など社会全体で取り組むことが重要です。

  • 企業がリサイクルしやすいデザインを採用し、使用後の商品を回収する
  • 消費者が環境に配慮した製品やサービスを選び、リサイクルを前提とした使用を心がけ、リサイクルのための回収に協力する
  • 地方自治体・政府の支援で取り組む消費者・企業が増える

このような循環が、カーボンフットプリントの削減にはとても重要なのです。

私たち消費者は、SDGsの知識を深め、できることから社会問題につながる行動を習慣にしていくことで、世界が持続可能な循環型社会の構築に向かい、前進するための力を与えることができます。あなたの小さな行動も、継続と、大勢の小さな行動が積み重なりによって、地球環境の未来に大きな影響を与えることができるのです。

まずは無理なくできることから、カーボンフットプリント削減につながる行動を始めてみましょう!

〈参考・引用文献〉
*1)カーボンフットプリントとは
CFPプログラム『CFPとは』
林野庁『森林はどのぐらいの量の二酸化炭素を吸収しているの?』
関東森林管理局『森林の二酸化炭素吸収力』
経済産業省『カーボンフットプリント及びカーボンフットプリントガイドラインの概要』p.2
環境省『再生可能エネルギー及び水素エネルギー等の温室効果ガス削減効果に関するLCAガイドライン』
カーボンニュートラルに欠かせないLCAとは?メリット・デメリット、問題点も
*2)カーボンフットプリントの算出方法
環境省『カーボンフットプリントコミュニケーションプログラム』(2013年5月)
CFPプログラム『CFP-PCR認定について』
経済産業省『カーボンフットプリント及びカーボンフットプリントガイドラインの概要』p.5
経済産業省・環境省『カーボンフットプリント ガイドライン』(2023年3月)
環境省『排出量算定について』
経済産業省『「カーボンフットプリントレポート」及び「カーボンフットプリントガイドライン」を取りまとめました』(2023年3月)
CFPプログラム『CFPとは CFPマークについて』
*3)カーボンフットプリントの算定例
FAO『Tackling climate change through livestock』
厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2020 年版)』(2019年12月)
大塚製薬『栄養素の役割と摂取状況』
カロリーメイト『栄養補給について』
国立循環器病研究センター『栄養に関する基礎知識』
環境省『サステナブルで健康な食生活』(2021年9月)
農林水産省『食料・農業・農村基本計画』(2020年3月)
昆虫食とは?世界で注目されている理由、メリット・デメリット、おすすめ昆虫食も
環境省『日本の温室効果ガス排出量の推計』(2023年4月)
環境省『2021 年度(令和3年度)の温室効果ガス排出・吸収量(確報値1)について』
FAOFAO「Livestock’s Long Shadow: Environmental Issues and Options』
*4)なぜカーボンフットプリントが重要なの?
グリーンウォッシュとは?具体例と日本企業でもできる対策・SDGsの関係
*5)カーボンフットプリントから見えてくるもの(メリット)
環境省『脱炭素につながる豊かな暮らしをつくる国民運動』
環境省『脱炭素ポータル カーボンニュートラルとは』
*6)カーボンフットプリントを削減する方法
EV車のメリットとデメリット・充電の仕組み、今後電気自動車は日本で普及するのか?
カーボンオフセットとは?仕組みや目的、問題点、個人にできることまで
環境省『できることから始めよう、暮らしを脱炭素化するアクション!各アクションのCO2削減量と、やってみたい!ランキング編~「学んで実践しよう!ゼロカーボンアクション30」動画公開中です!~』(2022年5月)
*7)カーボンフットプリントの削減に取り組む企業の事例
IKEA『クライメートアクション』
IKEA『素材選び―大規模なビジネスを展開する企業としての大きな責任』
IKEA『サーキュラービジネスの実現』
IKEA『プラントベース食品のメリット』
消費者庁『プラントベース食品関連情報』
Panasonic Group『サステナビリティの取り組み』
Panasonic Group『パナソニックの方向性:「環境」と「事業でのお役立ち」でトップランナーに』(2021年6月)
『環境:中長期環境ビジョン パナソニック環境ビジョン2050からPanasonic GREEN IMPACTへ』
Panasonic Group『環境:工場のCO2削減』
Panasonic ENAGY『資源循環 資源循環型モノづくり』
ゼロエミッションとは?推進理由や日本の取組事例、私たちにできることも
環境省『パナソニックの環境取り組み』p.11(2022年3月)
Panasonic『Carbon Pay 地球とつながる自分になるこれからの新習慣』
環境省『パナソニックの環境取り組み』p.15(2022年3月)
水素エネルギーとは?メリットやデメリット、実用化に向けた課題と将来性、SDGsとの関係
Panasonic ENEGY『責任ある鉱物調達』
Panasonic『Cardon Pay』
日経XTECH『IFAでパナソニックは「環境」アピール、ブースのCO2排出量を7割減』(2022年9月)