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HSPとは?特徴と診断テスト・セルフチェック診断、どんな人がなりやすいかを解説

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HSPは近年注目を浴びましたが、あなたは正しく理解していますか?HSPは、心理学的な定義で「繊細な人」のことです。

心理学的定義であって、現時点では医学的に診断・認定できるものではないところも、注意しなければならない点です。しかし、この点は今後の研究によっては医学的にも証明されるかもしれません。

この機会に、HSPについて理解を深めておきましょう!HSPとは実際どのようなものなのでしょうか?HSPの特徴や自己診断テスト、うつ病との違いもわかりやすく解説します。

目次

HSPとは

HSP(Highly Sensitive Person)とは、生まれつき五感や感情、他人の感情などに敏感な傾向があります。子どものHSPをHSC(Highly Sensitive child)と呼ぶこともあります。

HSPの人は一般的に、

  • 周囲の音やにおいに敏感で、人混みや騒がしい場所が苦手
  • 他人の表情や仕草から、その人の感情を敏感に察知する
  • 他人の痛みや喜びを、自分ごとのように感じる

などの特徴があります。

HSPは障害なの?

HSPは、病気ではなく生まれつきの特性です。HSPの人は、強い刺激にさらされると、疲労やストレスを感じやすく、生きづらさを感じてしまうこともあります。

このような感受性の高さから、HSPの人は他の人と比較して自分を劣っていると感じることがあります。自己評価が低くなり、自信を持つことが難しくなることもあるのです。

HSPは少数派の特性

HSPは、私たちの社会では少数派の特性です。一般的には、人口の15〜20%がHSPであるとされています。

また、HSPはスペクトラム※の一部であり、個人の特性や感受性の度合いは様々です。ある人は強い感受性を持ち、他の人は軽度の感受性を持っているかもしれません。そのため、HSPとして分類される人々の中でも、何に敏感か、また感受性の度合いなどは個人差があります。

例えば、

  • 音やにおいに敏感な人もいれば、そうでない人もいる
  • 人混みや騒がしい場所が苦手な人もいれば、それほど苦手ではない人もいる
  • 他人の感情を敏感に察知する人もいれば、そうでない人もいる

このように、HSPの特性には幅広い個人差があります。

スペクトラム

ある特定の性質や特徴を持つものが、その度合いによって連続的に変化する範囲を指す。幅広い範囲の性質や特性があり、さまざまなタイプに分けられることを表す。

HSPの人は、生きづらさを感じてしまうこともありますが、自分の特性を理解することで、それを乗り越え充実した人生を送ることができます。次の章ではHSPの特徴と具体的な例から、さらにHSPについて探っていきます。*1)

HSPの特徴と具体的な例

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HSPの特徴は、感受性が非常に高いことです。この特徴は、性別や年齢でもある程度の特徴や傾向があると言われています。

あくまで一般的な傾向であって、とても個人差が幅広いものであることを念頭に置きながら見ていきましょう。

HSPの男性と女性の特徴

男性のHSPは、女性のHSPに比べて、

  • 自分の敏感さを認めづらい
  • 他人から「弱い」「頼りない」と思われるのを恐れる
  • 自分の感情を抑え込む傾向がある

という特徴があります。

一方、女性のHSPは、男性のHSPに比べて、

  • 自分の敏感さを自覚しやすい
  • 他人から理解してもらいたいという気持ちが強い
  • 自分の感情を表現しやすい

という特徴があります。

男性のHSPの特徴

男性のHSPは、周囲の人々の感情に敏感で共感力があり、細かい観察力や洞察力を活かすことによって、問題解決能力が高い人もいます。しかし、社会的なプレッシャーや期待に敏感で、ストレスを感じやすい傾向があります。

また、感情表現に苦手意識を持っていることもあります。

例えば、会社でのプレゼンテーションや公の場でのスピーチなど、緊張する場面でHSPの男性は特に大きなストレスを感じやすい傾向があります。

女性のHSPの特徴

女性のHSPは、共感性が高く感情表現に優れており、美的感覚に敏感で音楽や芸術などに興味を持ちやすい傾向があります。

しかし、他人の感情に過敏に反応し、傷つきやすい特徴や高い共感力などが原因で、過度な自己犠牲をしてしまい、自己肯定感が低くなってしまうこともあります。

その特性を活かして、美術館やコンサートなどで芸術作品に触れることによって心を癒すことができます。これは男性のHSPにも当てはまりますが、現代の日本でもまだ、これらの特徴を「女性らしさ」と捉えられることも多く、よって男性の方が自分のHSPの特徴をおさえざるを得ない場合が多いと考えられます。

HSPの子どもと大人の特徴

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HSPは、生まれつき感受性が高く、ほとんどの場合、幼少期から繊細な性格を持っています。子供の場合、周りの人たちがその特性を理解してくれなかったり、刺激が多すぎる環境に置かれたりすることで、ストレスを感じやすくなります。

例えば、

  • 他人との感じ方の違いがわからず、不安を感じる
  • 周囲の刺激に圧倒されて、学校や集団生活で苦労する
  • 自分自身に対して厳しい傾向があり、失敗や批判に敏感
  • 自分自身を守るために他の子どもから距離を置く

ということもあるようです。

大人になると自分自身を理解し、子供の頃より適切な対処法を見つけることができるようになります。

子どものHSP

子どものHSPは、新しい環境や人との出会いに敏感で、過剰な刺激には心身ともに大きなダメージを受けることがあります。また、他人の感情に敏感なので、些細なことでも傷つきやすい傾向があります。

例えば、新しい学校や習い事に行く際には、HSPの子どもは平均的な子どもより強い緊張や不安を感じやすく、疲れてしまいます。また、自分自身で心身のバランスをとることが大人よりも難しいため、感情を適切に制御することが苦手なこともあります。

しかしHSPの特徴から、

  • ものごとを敏感に察知できるため、成長の機会が多く得られる
  • 周囲の人々の感情に敏感で、共感力があり、他人に思いやりが持てる
  • 繊細な気遣いや洞察力があり、深い友情を築くことができる
  • HSPの特徴を芸術などの表現に活かす

というポジティブな面も期待できます。HSPの子どもは繊細で傷つきやすいので、身近な人の理解とサポートが重要です。

大人のHSP

大人のHSPも、子どものHSPと同様に自分自身の感情や他人の感情に敏感で、深く考える傾向があります。また、繊細な気遣いや洞察力が高いことを、普段の生活に活かすこともできるようになっていきます。

しかし、繊細で傷つきやすい特徴はそのままなので、会社でのミーティングやグループワークなど、他人とのコミュニケーションにおいて、HSPの大人は気を遣いすぎて疲れやすい傾向があります。また、五感が過敏な人は、社会生活において平均的な人にはない苦労があります。

大人のHSPは、ストレスを感じやすい反面、

  • 深い思考力や洞察力で、問題解決や創造的な活動において優位に立つことができる
  • 共感力や理解力が高く、深い信頼を築くことができる
  • 自分の感情や他人の感情に敏感であるため、自己成長や他人のサポートにつながる

などの特徴を活かした強みがあると言えます。HSPの人は、一般的に年を重ねるにつれて自身の特徴に慣れ、自分なりの対策ができるようになります。

HSPと性格との違い

性格とは、個人の行動や態度、価値観、信念、習慣などを総じて表すものです。HSPと性格は似ていますが、別のものです。

HSPは生まれつきの特性であり、性格は後天的に個人の経験や環境、教育、社会的な影響などによって形成されます。また、性格は変化することがありますが、HSPの特徴は生涯にわたって継続します。

性格とは別に気質という言葉があります。気質とは生まれつきの傾向や特性を指し、遺伝的な要素や生物学的な要因によって形成されます。

つまりHSPは気質と言えますが、性格の形成に影響を与えるものの、性格そのものではありません。

このように、性別や年齢によってもそれぞれ特徴があるHSPですが、さらに幾つかのタイプや型に分けることもできます。HSPのタイプや型について、次の章で確認しましょう。*2)

HSPのタイプ・型

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HSPの人は、その特性によって、さまざまなタイプに分けられると考えられており、研究が進められています。現段階では、HSPの分類はあくまで一般的な傾向を示すものです。

ここでも個人の感受性の度合いや特性はとても多様であることを念頭に置く必要があります。

遺伝子的タイプ

HSPは遺伝子タイプによっても分けられます。現在、HSPと関連すると考えられている遺伝子は、100種類以上確認されています。

これらの遺伝子は、HSPの特性を引き起こす原因となるのではなく、HSPの特性の発現に影響を与えると考えられています。

つまり、HSPの遺伝子タイプは、HSPの特性の発現に影響を与える可能性があるものの、HSPになるかどうかを決定する唯一の要因ではないということです。

環境的タイプ

HSPの人は、生まれつき敏感な特性を持っていますが、環境や経験によって、その特性がより強くなったり弱くなったりすると考えられています。

具体的には、以下の環境や経験が、HSPの特性の発現に影響を与えると考えられています。

  • 音響環境
  • 社交的環境
  • 感情的環境
  • 自然環境

つまり、HSPの特性の発現は、

  • 親や周囲の大人からの接し方
  • 育った環境
  • 学校生活
  • 職場環境

などによっても影響され、変化する可能性があるということです。

受容型(Receptive HSP)・反応型(Responsive HSP)

受容型のHSPは、外部からの刺激や情報を感じ取る能力が非常に高く、細部に気づく能力があり、環境の変化や他人の感情に敏感に反応します。音や光、匂いなどの刺激に敏感であり、情報の処理に時間がかかることもあります。

反応型のHSPは、内部的な刺激や感情に敏感で、深い洞察力を持ち、直感的に他人の感情や状況を理解する能力があります。また、自分自身の感情にも敏感であり、強い共感性を持っています。

また、受容型と反応型の特徴は重なる部分もあり、両方の特徴を持ち合わせている場合もあります。

内向型・外向型・HSS型

HSPを、

  1. 【内向型HSP】
    五感や感情、他人の感情などに敏感で、人混みや騒がしい場所が苦手なタイプ
  2. 【外向型HSP】
    内向型HSPと同様に五感や感情、他人の感情などに敏感で、人との交流を好むタイプ
  3. 【HSS型HSP】
    内向型HSPと外向型HSPの両方の特性を併せ持つタイプ

の3つに分けることもあります。これらのタイプ分けも、あくまで一般的な分類であり、HSPの特性は個人差が大きく一概には分けられないことに注意しましょう。

自分がHSPなら、自分がどのタイプのHSPであるかを知ることで、自身を理解し適切な対処法を見つけるヒントになります。そうでない人もHSPの人を理解する手がかりの1つと考えることができます。

次の章では、HSPとうつ病の違いについて解説します。*3)

HSPとうつ病の違い

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HSPとうつ病は、どちらも敏感さや疲れやすさなどの特徴が似ていますが、根本的な違いがあります。

HSPは、生まれつき備わっている特徴です。一方で、うつ病は、環境やストレスなどの要因によって発症する病気です。

うつ病の特徴は、

  • 気分の落ち込み
  • 意欲や興味の低下
  • 集中力の低下
  • 睡眠や食欲の変化
  • 思考や行動の遅滞
  • 自殺念慮

などが代表的です。

感受性の違い

HSPは感受性が高く、外部の刺激に敏感です。一方、うつ病は感情の低下や無気力感が特徴で、感受性が高いとは限りません。

持続性の違い

HSPは感受性が高いため、刺激によって一時的に疲れやストレスを感じることがありますが症状は一時的で、回復力も比較的高い傾向があります。一方、うつ病の症状は持続し、日常生活に大きな影響を与えます。

HSPは自分の感情にも敏感なため、ストレスを感じやすく疲れても自分自身で心身のバランスをとることもできますが、うつ病の場合は脳内の、

  • セロトニン(幸福感や情緒の調整に関与する神経伝達物質)の減少
  • ノルアドレナリン(興奮や注意の制御に関与する神経伝達物)の異常
  • ストレス応答の異常(ストレスホルモンの分泌が増加し、脳内の神経回路が過活動になる)
  • そのほかの神経伝達物質の不均衡(ドーパミンやグルタミン酸などのバランスが変化し情緒や意欲の調整に影響を与える)

などが原因の複雑な状態なので、自分で治すことは難しいと言われています。しかし、自己管理や自己ケアの方法を学ぶことで、症状の軽減や回復のプロセスを支援することは可能です。

感情の違い

HSPの人は、その特徴が原因で

  • イライラ
  • 不安
  • 緊張感
  • 劣等感

などを感じやすくなる場合がありますが、うつ病の人には、

  • 憂うつ感
  • 自己否定感
  • 無気力感
  • 生きることへの絶望感

などの症状が現れます。

例えば、学校でのテスト前にイライラしたり、試合前に緊張するのはHSPの特徴が原因ですが、日常生活で何もやる気が起きなかったり、自分を責めたりするのはうつ病の症状です。

うつ病には専門の治療が必要!

HSPの人がうつ病になりやすいかどうかは、個人差が大きく、一概には言えません。HSPの人の中には、その洞察力と感受性の高さを自分自身の分析にも利用して、ストレスに弱いながらも心身のバランスを上手くとることができる人もいます。

HSPの人はストレスや刺激に対して過敏に反応することが多いため、うつ病にならないように、ストレス管理やストレスを軽減する方法を身につけましょう。また、自分自身がうつ病になってしまった場合には、早期の治療が大切です。

もし、自分の症状がHSPとうつ病のどちらなのか判断に迷う場合は、専門の医療機関や相談窓口に相談しましょう。うつ病は専門家の支援を受けることが非常に重要です。

次の章ではHSPの自己診断テストを紹介します。*4)

HSPの自己診断テスト・セルフチェック

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自己診断テストは、HSPの特徴に当てはまるかを理解するための手助けとなるものです。自己評価に基づいてHSPの特徴を把握するための1つの手段と考えてください。

注意すること

このテストは一般的な傾向を把握するためのものであり、正確な診断を提供するものではありません。専門家の診断や助言を受けることをおすすめします。

回答は、あなた自身の感じ方や行動に基づいて選択してください。最も当てはまる選択肢を選ぶことが重要です。

回答には時間制限はありませんが、できるだけ正直に回答しましょう。テスト結果はあくまで参考として受け取ってください。

まずはセルフチェックしてみよう

以下の質問に、「はい」か「いいえ」で答えてください。

  • 新しい場所に行くと、緊張してしまうことがある。
  • 騒音や強い匂いなど、刺激が強い場所にいると不快に感じることがある。
  • 他人の感情に敏感で、共感することが多い。
  • 芸術や音楽、文学などの表現に感動することが多い。
  • 人前で話すことが苦手で、緊張してしまうことがある。
  • ひとりで過ごす時間が好き。
  • 細かい変化に気づきやすく、物事の細部に注目することが多い。
  • 過去の出来事や失敗を引きずってしまうことがある。
  • 大勢の人と一緒にいると、疲れてしまうことがある。
  • 自己評価が低い傾向がある。

診断結果

  • 9問以上「はい」:HSPの可能性が高い
  • 6問~8問「はい」:HSPの可能性あり
  • 5問以下「はい」:平均的な人

この自己診断テストは、HSPの可能性を判断するための1つの指標ですが、正確な診断を得るためには専門家の意見や評価が必要です。HSPは生まれつきの特性で、さまざまな特徴が、広い範囲の程度で現れ、個人差が大きいものです。テストの結果だけでHSPであると確実に断定することはできません。

次の章では、HSPとの付き合い方について考えていきましょう。*5)

HSPとの付き合い方

HSPは生まれつきの特性であるため、それを変えることはできません。しかし、あなた自身がHSPなら、自分の特徴をしっかりと把握し、HSPについて学ぶことで、自分に合った生活スタイルを見つけることができます。

また、身近な人がHSPかな?と思ったら、その人のHSPの特徴を理解し適切な付き合い方をすることで、お互いに気持ちよく過ごすことができます。

もしもあなたがHSPだったなら

自分自身がHSPの場合、まずはあなたの特徴をできるだけ正確に分析し、理解しましょう。生まれた時から持っている特徴なので、もしかしたらまだあなた自身も気づいていない、平均的な人より鋭い感覚があるかもしれません。

自分自身の特徴をしっかりと知っておくことによって、ストレスの原因がわかったり、生きづらさを軽減できたりします。また、あなたの持つ特徴を活かして、周囲の人や社会に貢献できることもあります。

  • 会社・学校
  • 飲食店
  • 公共交通機関

など、どこへ行ってもHSPにとっては、人の視線・におい・光・音など、嫌な思いをするリスクと隣り合わせです。しかし、常に心の準備をしておくことと、できる限りのリスク対策が重要です。

加えて、

「普通の人ならこれくらい平気なのに」

などとネガティブに考えることは避けましょう。あなたの特徴は遺伝子の多様性の1つですし、あなたのその特徴が役に立つこともあるのです。

自分を否定せず、自分の良いところや長所にも目を向けることが大切です。

周囲の人に理解を求める

HSPの特徴を理解してくれる人は必ずいます。周囲の人に理解を求めることで、HSPの特徴を受け入れてもらい、自分らしく生きることができます。

信頼できる人には、あなたがHSPであることを伝えましょう。あなたがどのような刺激に敏感であるかを説明し、自分がストレスを感じやすい状況を避けるように協力をお願いすることもできます。

自分自身の健康管理をしっかりと

HSPは外部の刺激に敏感なため、ストレスや疲労が蓄積しやすい傾向があります。自己管理を意識し、健康的な生活を心掛けましょう。

また、HSPの人は自分自身を癒す時間を作ることが必要です。リラックス法や瞑想、趣味に没頭するなど、自分に合った方法で心と体をリセットしましょう。

身近な人を「HSPかな?」と思ったら

先ほどの章の自己診断リストを応用して、「HSPかな?」と思う人を注意深く観察してみましょう。また、本人に直接聞いてみても、大人のHSPの場合、すでに自分の特徴をほとんど把握している人が多いので、協力的な態度で尋ねれば問題ないでしょう。

もしも、あなたの身近な人がHSPだったら、その人の苦手なものに理解を示し、配慮しましょう。HSPの人は、平均的な人が何ともない程度の

  • におい
  • 他人の気持ち

などでも、大きなダメージを受けることがあります。

また、そのようなHSPの人の特別な能力について、リラックスした環境で話を聞いてみるのも理解を深める1つの手段です。平均的な人には思いもよらない、経験談や鋭い能力の話が聞けるかもしれません。

「HSPかな?」と思う相手が子どもなら、その特徴を認めて活かす方法を話し合ってみましょう。また、平均的な子供よりストレスを感じやすいことを理解し、その子のHSPの特徴でも快適に過ごせる方法を工夫することが大切です。*6)

HSPは治せる?

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「HSPは治るものなのでしょうか?」

結論から言うと、HSPは病気ではないので治療の必要はありません。「治す」というより「上手に付き合う」べきものです。

HSPは病気ではない

HSPは、病気や障害ではありません。HSPの人は、ただ繊細で敏感なだけなのです。

HSPの人は、周囲の音や光、においなどに敏感に反応し、大きなストレスを感じてしまうことがあります。また、他人の感情を敏感に察知し、自分のことのように感じてしまうこともあります。

このようなHSPの特徴は、ときには周囲の人との関係をうまく築くのに苦労してしまう原因となることもあります。しかし、HSPの人もそうでない人も、このように多様な特徴を持った人が、社会には必要であることを理解しましょう。

【関連記事】ダイバーシティの意味とは?多様性が尊重される理由と日本や海外の事例やSDGsとの関連を紹介

HSPの人への理解と協力

HSPの人はストレスや疲れに敏感であるため、ストレスを軽減する工夫は重要です。

また、HSPの人に対しては時に、

  • 弱い人間だと思われる
  • 感情的すぎると思われる
  • 過剰に神経質だと思われる
  • 社交的でないと思われる

といったような誤解や偏見が持たれることがあります。しかし、それは平均的な人は気が付かないことにいち早く気づき、有史以前から集団のために役立ててきた能力です。

HSPへの誤解や偏見は、HSPの人が抱えるストレスや孤立感を増大させる原因となります。私たちは全て、生物多様性の中で必要とされて生まれてきていると考え、私たち全てが集団として支え合っていることを尊重しましょう。

HSPの人もそうでない人も、HSPの特徴を理解することで、協力してそれぞれの強みを引き出し、活躍できる環境づくりが大切です。

HSPの人の繊細で敏感な心は周りに幸せをもたらすもの

HSPは、決して悪いことではありません。HSPの人の繊細で敏感な心は、周囲の人々にも多くの幸せをもたらすものです。

HSPの人は、多くの場合、周囲の人々に対して同情的であり、優しさや思いやりを持って接することができます。そのため、HSPの人が周囲にいることで、人々は幸せを感じる機会を多く得られる可能性があります。

また、HSPの人は、芸術や文学、音楽など、創造的な分野で活躍している人も多くいます。つまり、特別な技術や感性で周囲の人々に感動や喜びを与えることができる人が多いと言えるでしょう。

もちろん、HSPの人の繊細さゆえに、人一倍ストレスを感じたり、疲れてしまったりすることも少なくありません。しかし、HSPの人の特別な能力や繊細で敏感な心は、周囲の人々にも多くの幸せをもたらす、貴重な財産となり得るのです。*7)

HSPに関してよくある疑問

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ここでは、HSPに関するよくある疑問について回答・解説します。

HSPは医学的にどう扱われている?

HSPを提唱・定義したのは心理学者のエレイン・アーロン博士※です。心理学は精神医学とは別の分野で、、一部の専門家や研究者はHSPを認識していますが、医療において公式な診断基準として認められているわけではありません。

HSPの存在が医学的に認められるかどうかは、今後の研究の進展や専門家の意見によっても変わる可能性があります。HSPはそれ自体に治療が必要なものではないため、医療の分野でどう扱うべきか難しいという見解もあります。

しかし、HSPが原因で精神的な疾患を招いた例は報告されています。現時点では、社会がHSPの存在を理解し、感受性を尊重することが重要であると言えます。

エレイン・アーロン博士

アメリカの心理学者であり、高感受性者(HSP)の研究者として知られている。HSPの特徴や影響に関する先駆的な研究を行い、HSPの理解と受け入れを促進するために貢献してきた。

【エレイン・アーロン博士】

どんな人がなりやすい?

HSPは生まれつきの特性であり、遺伝的な要素も関与していると考えられています。そのため、血縁の中にHSPの人がいる場合、自身もHSPである可能性が高いと考えられます。

  • 遺伝的要因(親や祖父母の中にHSPの特徴を持つ人がいる)
  • 神経系の特性(神経系の構造や機能の違い)
  • 環境要因(過去の経験や環境の影響)
  • 個人的な性格特性(に繊細で感受性が高く、思考や感情が深い)

などが、HSPの特徴の発現に影響すると考えられています。しかし「どんな人がHSPになりやすいか」も、遺伝的要素を含めて一概には言えないことを理解する必要があります。

HSPの人の限界サインはある?

HSPの人は刺激に敏感であるため、過度の刺激やストレスによって限界を感じることがあります。具体的な限界サインは個人によって異なりますが、以下のようなサインが現れることがあります。

  • 過度の疲労感や体の不調
  • 集中力や注意力の低下
  • 怒りやイライラ、不安感の増加
  • 感情のコントロールが難しくなる
  • 社交活動や刺激的な環境からの回避

HSPの人は、定期的な休憩やリラックス、自分自身の感受性や限界を理解することが重要です。身近な人がHSPの場合は、HSPの人が無理をしていないか、疲れていないかなど、こまめに注意しましょう。

HSPの人に言ってはいけない言葉は?

HSPの人に言ってはいけない言葉の代表的なものは、

  • 「気にしすぎ」
  • 「もっと強くなりなさい」
  • 「普通になれ」
  • 「甘え」
  • 「弱い」

などです。これらの言葉は、HSPの人の特徴を否定するばかりか、生きづらさや悩みを助長する可能性があります。

そもそも、多様性の大切さを理解し、ひとりひとりの尊厳を大切にしていればそのような言葉を他人に向けることはないでしょう。このような、ひとりひとりの個性への対応は、仕事の場面でも、規律や期限を守る厳しさとは分けて考える必要があります。

HSPの人はどれくらい平均的な人と違うの?

HSPの人は、平均的な人と比べて、一般には以下の点で違いがあるといわれています。

  • 刺激に敏感
  • 感情を感じやすい
  • 共感力が高い
  • 内省的
  • 一人の時間が好き

これらの違いは、生まれつきの特性であり、良いか悪いかの判断は個人の価値観によるものです。また、HSPの人もひとりひとりの個性や特性(スペクトラム)があるため、一概には言えません。

HSPだったと考えられる歴史上の有名人は?

HSPと考えられる有名人は多くいます。以下は一部の例です。

  • レオナルド・ダ・ヴィンチ:芸術家・発明家であり、彼の作品やアイデアには感受性や洞察力が現れています。
  • ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ:画家であり、感受性が非常に豊かで、彼の作品には深い感情が込められています。
  • アルバート・アインシュタイン:物理学者であり、繊細な性格と豊かな直感力を持っていたと言われています。
  • ジョージ・オーウェル:作家であり、彼の作品には社会的な敏感さや倫理的な問題への感受性が現れています。
  • ジョン・レノン:ミュージシャンであり、彼の歌詞や音楽には感受性や共感が表現されています。
  • マリリン・モンロー:女優であり、彼女の感受性や繊細さが彼女の演技やパフォーマンスに反映されていました。
  • ジョニー・デップ:俳優であり、感受性が高く、役作りにおいて深い洞察力を持っていると言われています。

これらの人々は、いずれも創造性や才能に恵まれ、社会に大きな影響を与えた人物です。HSPの特徴を活かして、世界に貢献した人々と言えるでしょう。

HSPと天才の違いはなに?

天才とHSPは、全く異なる概念です。天才とは、優れた才能や能力を持った人を指し、一般的には学問や芸術、スポーツなどの分野で優れた成果を出す人を指します。

また、天才はIQ才能などの測定可能な能力において、平均以上の高い水準に達している人を指すこともあります。例えば、IQが130以上の人は、天才の可能性が高いといわれています。

一方、HSPは、遺伝的な要因や環境要因によって引き起こされる特性です。感覚過敏や情動過剰などの特徴を持っていますが、IQや才能などの測定可能な能力とは関係がありません。

HSPは、才能や能力とは異なるものです。しかし、一部の人々には天才とHSP双方の特徴があるかもしれません。

天才

  • 非常に高い知能や創造力を持つ人々を指します。
  • 特定の分野で優れた成果や業績を上げることがあります。
  • 問題解決能力や直感力が非常に優れていることがあります。
  • 一般的には社会的に成功し、名声や評価を得る人が多いと言われています。

HSP

  • 環境の刺激に対して非常に敏感であり、感情や情報をより深く処理する傾向があります。
  • 直感力や洞察力が優れており、他の人々が気づかないような微妙なニュアンスやパターンを捉えることができます。
  • 深い思考や感情の豊かさを持ち、芸術や創造的な表現において優れた才能を発揮することがあります。
  • 繊細さや独自の価値観を持ち、自分自身や他の人々との関係に敏感です。

一部の天才はHSPの特徴を持ち、感受性や洞察力を活かして優れた成果を上げることがあります。しかし、全てのHSPが天才ではなく、全ての天才がHSPではないということを理解する必要があります。

次の章では、HSPとSDGsの関わりについて考えていきましょう。*8)

HSPとSDGs

HSPの人々を理解し、受け入れることで、より良い社会を築くことができます。個々の特性や感受性を尊重し、適切なサポートや配慮を行うことで、HSPの人々が自分らしく生きることができる環境を作り上げましょう。

HSPとSDGsは、関連性が深いと言えます。HSPの人たちは、繊細で感受性が豊かなため、社会や環境への意識が高く、SDGsに取り組む上で重要な役割を果たすことができます。

また、HSPの特性を理解し、その特性を活かすことができる社会が、SDGsの達成につながると考えられます。

特に関連の深い目標を見てみましょう。

SDGs目標1「貧困をなくそう」

貧困に苦しむ人々の感受性を理解し、その特性を活かすことで、貧困をなくすことができます。例えば、貧困に苦しむ人々の声を聞き、その声を反映した政策を立案することは、HSPの人の得意とする分野と言えます。

SDGs目標2「飢餓をゼロに」

飢餓に苦しむ人々の感受性を理解し、HSPの特性を活かすことで、飢餓をなくすことに貢献できます。例えば、飢餓に苦しむ人々の食文化や食習慣を理解し、その文化や習慣に合った支援を提供することで、HSPの特性を発揮できる可能性があります。

SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」

健康や福祉に関する問題に対して、HSPの感受性を活かすことができます。例えば、心の健康に関する問題に取り組む際には、HSPの感受性を活かして相手の心の状態を理解し、その特性を活かした支援を提供することができます。

SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」

ジェンダー平等に関する問題に対して、HSPの感受性を活かすことができます。例えば、女性やLGBTQ+の人々の感受性を理解し、その特性を活かして繊細で敏感な心にも配慮した政策や支援を提案できる可能性があります。

このように、HSPの特性を理解し、それを活かすことでSDGsの目標をより効果的に達成することができます。また、HSPの人たちは、

  • 社会や環境への意識が高い
  • 思いやりを持って接することができる
  • 内省的であるため、物事を深く考え、解決策を導き出す
  • 洞察力があるため、新たな視点で問題を発見することができる
  • 創造力があるため、新しいアイデアを生み出すことができる
  • 共感力が高いため、困っている人を助けることに優れている

などの特徴を活かして、SDGsに取り組む上でも大きく貢献することができるでしょう。*9)

>>SDGsについて詳しくまとめた記事はこちらから

まとめ

HSPの人たちは、平均的な人との感覚のずれや、社会的に理解されないことが原因で苦しむことがあります。そのため、大人だけでなく小学生などの若い世代にも、HSPへの理解と配慮が必要です。

HSPは個性であり、その個性を理解し受け入れることで、私たちは多様性を損なうことのない社会を築くことができます。HSPだけでなく、あらゆる個性への誤解や偏見を解消することが、より豊かな社会の実現には必要なのです。

「みんな違ってみんな良い」

私たちは、大なり小なりさまざまにある違いを認め合い、尊重し、支え合うことが大切です。HSPの人も、そうでない人も、一緒に学び成長していきましょう!

〈参考・引用文献〉
*1)HSPとは
NHK『HSP(とても繊細な人)とは? ストレス・お悩み解決術』(2022年10月)
沢井製薬『心が疲れやすくて生きづらい…それは「HSP」かもしれません』(2021年3月)
府中こころ診療所『HSPと心療内科』
*2)HSPの特徴と具体的な例
東大新聞オンライン『【論説空間】HSPについて正しく知ろう いま日本で何が起きているのか』(2022年1月)
日本心理学会『最近よく聞く“HSP”ってなんですか?』
日本心理学会『日本におけるHighly Sensitive Person(HSP)の研究動向』(2020年9月)
東京薬科大学『深く考えるHSP』
岸 美紀『Highly Sensitive Person は援助要請に消極的か?――感覚処理感受性と援助要請スタイルとの関連――』
Elaine Aron『The Highly Sensitive Person』
*3)HSPのタイプ・型
繊細さん『【HSP分類まとめ】HSPの4つのタイプ』
ひだまりこころクリニック『HSS型HSPとHSS型HSEについて』(2023年5月)
東京横浜TMSクリニック『HSPにTMS治療は有効?』
Japan Sensitivity Research『​HSP情報の誤解を紐解く』
飯村周平『HSPブームの今を問う(飯村周平:東京大学・日本学術振興会PD)』(2020年11月)
*4)HSPとうつ病の違い
品川メンタルクリニック『HSPとは? チェックリストや向き合い方を解説』(2023年6月)
大阪メンタルクリ二ック『HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)とは』(2023年7月)
厚生労働省『こころもメンテしよう』
平野 徹『HSPの正しい理解』
かとうメンタルクリニック『HSP/HSCの概念の有用性と危険性』(2021年8月)
うつ病ナビ『HSPうつ』
*5)HSPの自己診断テスト
品川メンタルクリニック『HSPとうつ病の診断チェック(セルフチェック)』
府中こころ診療所『HSPと心療内科』(2020年11月)
青山カウンセリングルーム『HSP診断テスト』
NPO日本次世代育成支援協会『HSP(子どもはHSC) 敏感すぎる人 診断テストと対処法』
*6)HSPとの付き合い方
Elaine Aron『Highly Sensitive High Sensation Seekers―Giving Equal Love to Both Parts』(2023年6月)
Elaine Aron『Mental Health Awareness Month ― Supporting HSPs & Highly Sensitive Youths』(2023年5月)
東京すくすく『感受性の高い人「HSP」を誤解していませんか 「生きづらさ」の自己判断で発達障害が見逃されることも』(2023年2月)
朝日新聞『なぜHSPの人は搾取されるのか 「生きづらさ」を利用する人たち』(2023年4月)
*7)HSPは治せる?
品川メンタルクリニック『HSPとは? チェックリストや向き合い方を解説』
日本産業カウンセラー協会『HSPってなに?繊細で敏感すぎる人がラクに生きていくためのヒント』(2020年1月)
Japan Sensitivity Research『日本だけではない!?スウェーデンでの「HSP現象」』(2021年12月)
ダイバーシティの意味とは?多様性が尊重される理由と日本や海外の事例やSDGsとの関連を紹介
*8)HSPに関してよくある疑問
Araine Aron『The Highly Sensitive Person』
*9)HSPとSDGs
経済産業省『SDGs』