【わかりやすく解説】解散総選挙とはどんな時にするの?したらどうなる?メリット・デメリットを過去の事例とともにみていく

解散総選挙とは、衆議院の任期途中で議員全員の身分をいったん失わせ、新たに選挙を行う制度です。

政治の行き詰まりを打開したり、国民の信任を得直すための重要な仕組みとして活用されてきました。

過去には「郵政解散」や「バカヤロー解散」など、時代を動かす大きな転機となった例もあります。

ニュースでよく目にするこの制度ですが、具体的にどんな仕組みで、なぜ行われるのかを知っている人は意外と少ないかもしれません。

知っておくと、政治の動きがより立体的に見えてきます。

解散総選挙とは?どんな仕組みなのか解説

解散総選挙とは、衆議院を一度リセットして新たに選び直す制度です。

その主導権は内閣総理大臣にあり、政治的な判断で行われることが多いのが特徴です。

この章では、解散総選挙の基本的な定義から、誰がどうやって決めるのか、そして決定されたあとの流れまでを、段階的に整理して解説します。

「解散ってどういう意味?」「選挙はいつやるの?」といった疑問もここで解決できるはずです。

解散総選挙の簡単な定義

解散総選挙とは、衆議院の議員を一度すべて辞めさせて、新たに国民の投票によって選び直す仕組みのことです。

この制度がある理由は、政治に行き詰まりが起きたときなどに、国民の声をあらためて聞くためです。

選挙によって民意を再確認することで、政治の方向性に正当性を持たせることができます。

たとえば、重要な法案が国会で通らないときや、内閣に対して「信頼できない」と判断されることがあったときに行われるケースがあります。

一見すると「ただのやり直し選挙」に見えるかもしれませんが、実は政治の大きな分かれ道になることもある重要な制度です。

つまり解散総選挙とは、国の未来をあらためて選ぶ“再スタートのボタン”のようなものだと言えるでしょう。

解散総選挙は内閣総理大臣が決定する

解散総選挙を行うかどうかの最終的な判断は、内閣総理大臣が握っています。

これは日本の憲法第7条に基づき、「内閣の助言と承認」によって天皇が衆議院を解散するという形で実施されます。

形式的には天皇が解散を宣言しますが、実際に「やるか・やらないか」を決めているのは内閣総理大臣というわけです。

この制度には、「政治の流れをつくるリーダーが責任を持って判断する」という意味があります。

ただし、好き勝手に解散できるわけではなく、タイミングや世論の動き、政党の事情なども深く関わってきます。

天皇の役割はあくまで“国事行為”として形式的に解散を発表するものなので、政治的判断には関与しません。

このように、解散は総理が政治的な判断を下し、天皇がそれを憲法に沿って発表するという、役割分担で成り立っています。

解散総選挙の仕組み・決定された後の動き

解散総選挙が決まると、その時点で衆議院は解散となり、すべての議員は職を失います。

その後は新しい議員を選ぶための選挙が行われますが、選挙の投票日は「解散から40日以内」と法律で決まっています。

この期間中、衆議院は存在しない状態となり、法律をつくったり審議したりする機能は一時的に止まってしまいます。

参議院は引き続き活動できますが、国会全体としての働きは大きく制限されます。

また、解散から選挙、そして新たな議員が集まって初めて国会が再開されるまでの流れは、国の政治運営にとって非常に重要です。

この仕組みは、ある意味で「政治の空白期間」をつくるリスクもありますが、そのぶん国民の意思が強く反映されるチャンスでもあります。

解散総選挙はどんな時に行われるの?主に3つのタイミング

解散総選挙は、いつでも気まぐれに行われるわけではなく、いくつかの明確なタイミングがあります。

主に「国会がうまく機能していないとき」や「内閣への信頼が揺らいだとき」、そして「政権が選挙で勝てる見込みがあるとき」の3つです。

これらはいずれも、政治を前に進めるための戦略的な判断によるものです。ここでは、それぞれのケースについて解説します。

法案がなかなか通らない原因のねじれを解消したい時

解散総選挙が行われる理由のひとつに、「政治が動かなくなってしまった」ケースがあります。

特に、衆議院と参議院で多数派の政党が異なる「ねじれ国会」の状態では、法案の審議がストップしてしまうことも珍しくありません。

政府としては、必要な政策を進めたいのに、国会でことごとくブレーキがかかる。そんなとき、状況を打開する手段として「衆議院の解散」が使われます。

選挙を通じて、国民の意思を改めて問うわけです。

実際に2005年、小泉首相が進めようとした郵政民営化法案が強く反発されたときも、衆議院を解散し、「この政策を支持しますか?」と国民に直接問いかけました。

ねじれたままでは政治が前に進まず、最終的には私たちの暮らしにも支障が出かねません。

だからこそ、解散総選挙には「政治をもう一度、民意に沿った形に立て直す」という意味合いがあるのです。

不信任案が可決された時の対抗策として行う時

内閣不信任案が衆議院で可決された場合、総理大臣は「内閣総辞職」するか「衆議院を解散」するかの選択を迫られます。

これは憲法第69条で決まっており、議会が内閣を「信頼できない」と判断したときに起こる大きな政治イベントです。

不信任案が通るということは、内閣の支持が下がっている証拠でもありますが、それでも総理が「まだ信任される可能性がある」と考えた際、選挙で再び信任を問うために解散という手を取るのです。

このように、不信任案可決は「政治のリセットボタン」が押される瞬間でもあり、選挙という形で国民の最終判断をあおぐ重要な局面です。

選挙で勝ちやすいように政権にとって有利な時

実は解散総選挙には、政権にとって「勝てそうなタイミングで実施される」という戦略的な一面もあります。

憲法上は解散に厳密な制限がないため、支持率が高いときや野党がまとまっていないときなど、「今なら勝てる」と判断されると、総理が解散を決断することがあります。

これは選挙で大きく勝てば、その後の政策運営がしやすくなるからです。

もちろん「自分たちに都合がいいから解散するのはズルいのでは?」という声もありますが、最終的に判断するのはあくまで有権者です。

選挙は政治家にとって「信任」を得る最大の手段であり、戦略的な解散もその一部なのです。

解散総選挙のメリット・デメリットをそれぞれ表でいっき見!

メリットデメリット
・国民の最新の意見を反映できる
・政権が信任されれば安定につながる
・ねじれや行き詰まりを打開できる
・政治の空白期間ができる
・選挙費用がかかり、国の負担が大きい
・政権の都合で解散されることもある

解散総選挙には、政治を前に進めるチャンスになるという大きなメリットがあります。

なぜなら、今の政治に対する国民の意見をあらためて聞き直すことができ、その結果として政権が信任されれば、政策がスムーズに進むからです。

特に、ねじれ国会や不信任案などで政治が停滞しているときは、選挙によって仕切り直すことが必要になります。

ただし、デメリットも見逃せません。

衆議院が解散中は国会が一時的に動かなくなり、緊急の法案が審議できなくなるおそれがあります。

また、選挙には数百億円といった多額の費用がかかるとされ、税金の負担も無視できません。

選挙というのは本来、国民の判断を問う大事な機会ですが、場合によっては「与党が勝ちやすいから」という理由で解散されることもあるため、その背景を見極める目も必要です。

実際に行われた解散総選挙の事例を紹介

解散総選挙は、教科書に出てくる政治用語のひとつですが、実際にはどんな場面で行われてきたのでしょうか?

この章では、歴史のなかでも特に印象的だった4つの事例を取り上げます。

事例を知ることで、解散総選挙がどう使われてきたか、そして今後どうなるのかがより立体的に理解できるはずです。

1953年の「バカヤロー解散」

「バカヤロー解散」は、政治の場において感情が爆発しためずらしいケースです。

当時の吉田茂首相が、衆議院で質問に立った議員に対して思わず「バカヤロー!」と発言してしまい、これが大きな問題となりました。

その結果、内閣不信任案が提出・可決され、吉田首相は衆議院を解散します。

この出来事は、日本の戦後政治で初めて「首相の発言」がきっかけで解散が起きた例として有名です。

もちろん本当の理由は、政府と国会との関係がうまくいっていなかった背景があり、それが爆発した形でした。

政治家の発言がどれほど重く、そして世論に影響を与えるかがよくわかる出来事と言えるでしょう。

選挙結果としては、与党の自由党が議席を減らしながらも第一党を維持し、吉田内閣はその後も政権を続けることになりました。

1986年の「寝たふり解散」

「寝たふり解散」は、中曽根康弘首相が非常にうまくタイミングを見計らって解散を仕掛けた事例です。

当時、中曽根政権の支持率は高く、自民党は大きく勝てる見込みがありました。

そこで、表向きはまだ解散を考えていない“ふり”をしながら、突然解散を発表したのです。

この姿勢が「寝たふり」と呼ばれ、あだ名のように使われるようになりました。

結果的に自民党は圧勝し、その後の政治運営において強い安定感を得ました。

この解散は、「タイミング次第で選挙結果は大きく変わる」ことを証明した例とも言えます。

政治には「戦略」も必要だと実感させられる、計算された解散劇でした。

2005年の「郵政解散」

「郵政解散」は、小泉純一郎首相の強い意志と信念が際立った歴史的な解散です。

きっかけは、郵便局の民営化をめぐる法案が参議院で否決されたことでした。

これに対して小泉首相は「この改革は譲れない」として衆議院を解散し、国民に直接信を問いました。

このとき小泉首相は、自民党内の反対派を“刺客候補”で一掃するなど、非常に強い政治手法を取りました。

その結果、与党は大勝し、郵政民営化も実現します。

この解散は、政策への覚悟と民意の力が結びついた好例として語り継がれています。

2021年「超短期解散」

「超短期解散」と呼ばれる2021年のケースは、解散から選挙までの期間が非常に短かったことで注目されました。

岸田文雄首相が就任からわずか10日後に衆議院を解散し、わずか17日後に投開票が行われるというスピード感でした(選挙までの期間として戦後最短)。

背景には、新型コロナ対策や経済政策への信頼を早めに得たいという岸田政権の意図がありました。

また、当時の政治状況では早期解散によって野党の準備不足を突く、という側面もあったと言われています。

この例は、解散のタイミングが“戦略的に使われる道具”でもあることを強く示しています。

選挙結果では、自民党が単独過半数を維持し、公明党とあわせて与党で絶対安定多数を確保。岸田政権はその後も継続しました。

※参照:NHK

解散総選挙に関するよくある質問

解散総選挙と聞くと、「よくニュースで聞くけど、実際どういう仕組み?」「なぜ衆議院だけ解散できるの?」といった疑問を持つ方も多いはずです。

この章では、制度の基本から細かいルール、よくある勘違いまで、気になるポイントを質問形式でわかりやすく整理しています。

ここを読めば、「なるほど、そういうことだったのか!」と理解が深まるはずです。

不信任案が可決された時に解散をしなければどうなる?

内閣不信任案が可決された時、総理大臣は10日以内に「内閣総辞職」か「衆議院解散」のどちらかを選ばなければなりません。

これは憲法第69条で決められていて、何もしないままだと憲法違反になってしまいます。

不信任案は「この内閣は信頼できない」という意思表示ですから、もしそのまま放置されれば、議会のルールが形だけのものになってしまい、民主主義の信頼が揺らぎます。

実際には多くの場合、政権側は衆議院を解散して民意を問い直す道を選びます。

理由は、信任を取り戻せば政権を維持できるからです。

ここからわかるように、解散は“政治的ピンチを切り抜ける最後の選択肢”とも言えるのです。

解散と任期満了の違いってなに?

「解散」と「任期満了」は、どちらも衆議院の議員が全員退くタイミングですが、意味合いは大きく異なります。

解散は、衆議院の任期(最大4年)を途中で打ち切って、国民の信任を再確認するために行われます。

一方で任期満了は、そのまま4年間が過ぎた結果、自然と任期が終了することです。

解散は“政治的な判断”で起こる能動的なイベント、任期満了は“時間の経過”によって自動的に起こる現象と言えるでしょう。

任期満了の際も総選挙が行われますが、解散のような急なタイミングではないため、政党側も準備しやすいのが特徴です。

この違いを理解しておくと、選挙のニュースを見たときに「今回はどっちの理由で行われているのか?」が見えてくるようになります。

衆議院だけが解散できて、参議院はできないのはなぜ?

実は、衆議院と参議院は「同じ国会の一部」ではありますが、役割や仕組みに大きな違いがあります。

そのため、衆議院だけが解散できるようになっているのです。

衆議院は、任期が4年と短く、内閣に対して「不信任決議」を出す力も持っているなど、国民の声を強く反映する役目があります。

つまり、民意の変化にすばやく対応するための、フットワークの軽い議院なのです。

一方の参議院は、任期が6年で、3年ごとに半分だけが入れ替わる仕組みです。

急な世の中の変化に左右されず、安定した議論を続けることを重視しています。

このように、衆議院は「国民の声を受けて、必要なら一度立て直す」ために解散制度がありますが、参議院は「じっくりと腰をすえて議論する」ため、解散という制度はもともと設けられていないのです。

解散したら議員はどうなる?給料や立場は?

衆議院が解散されると、そこに所属していた議員は一斉に“失職”した扱いになります。

とはいえ、実際には「次の選挙までの間も国会議員としての身分は維持される」ため、給料(歳費)や身分は急になくなるわけではありません。

また、元議員として公務活動は制限されますが、地元での選挙活動や情報発信などは自由に行えます。

政治家にとっては“突然職を失うかもしれない”プレッシャーの大きな制度ですが、それと同時に「次も選んでもらえるように日々の活動を大切にしよう」と思わせる仕組みでもあります。

解散総選挙があると何がニュースで注目されるの?

解散総選挙が行われると、ニュースやネット上ではさまざまな視点で注目が集まります。

まず注目されるのは「解散の理由」と「いつ投票日になるか」です。

さらに「どの政党が優勢なのか」「現職議員はどうなるのか」なども大きな話題になります。

特に政権交代の可能性があるときは、社会全体の関心が一気に高まります。

加えて、経済や外交への影響なども分析され、株価が動くこともあります。

私たちが注目すべきなのは、「なぜ今、解散なのか?」という背景です。

ニュースを見るときに、その意図や影響を理解できるようになると、政治がぐっと身近になります。

ただの“イベント”ではなく、“未来の方向を選ぶ行為”として見ていく視点が大切です。

まとめ

解散総選挙は、衆議院を任期途中で解散し、あらためて議員を選び直す制度です。

政治の行き詰まりを打開したり、政権が民意を問う必要があるときに行われます。

実施される主な場面としては、法案が通らない「ねじれ国会」の解消や、不信任案への対応、政権にとって選挙のタイミングが有利なときなどがあります。

メリットは国民の意思を再び反映できる点ですが、一方で政治の空白や多額の選挙費用などのデメリットも存在します。

これまでに「バカヤロー解散」や「郵政解散」など、印象的な事例も多く見られました。

解散総選挙の仕組みや背景を知っておくことで、政治の動きをより深く理解しやすくなります。

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この記事を書いた人

エレビスタ ライター

エレビスタは「もっと"もっとも"を作る」をミッションに掲げ、太陽光発電投資売買サービス「SOLSEL」の運営をはじめとする「エネルギー×Tech」事業や、アドテクノロジー・メディアなどを駆使したwebマーケティング事業を展開しています。

エレビスタは「もっと"もっとも"を作る」をミッションに掲げ、太陽光発電投資売買サービス「SOLSEL」の運営をはじめとする「エネルギー×Tech」事業や、アドテクノロジー・メディアなどを駆使したwebマーケティング事業を展開しています。

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