NPO法人日本もったいない食品センター|賞「味」期限を正しく伝え食品ロス削減

NPO法人日本もったいない食品センター代表理事 高津博司さん インタビュー

高津 博司

1978年 愛媛県松山市で生まれる
1996年 神戸市の高校を卒業後、海上保安庁に入庁
2005年 同庁を退職し、総合商社を設立 ※現在も経営中
2015年 総合商社の仕事を通じて、食品ロスの現状を知る。同年、国内でも食品が必要な要支援者が多数いることも知る。
2016年 現活動の前身として、総合商社で食品ロス削減、食料支援を行い始める。
2017年 商社で行っていた慈善活動等をNPO法人として引き継ぎ、現在に至る。
2019年 大阪市福島区において、ecoeat一号店をオープンさせる。

お知らせ

現在、NPO日本もったいない食品センターではクラウドファンディングを行なっています。

詳細はこちら:https://readyfor.jp/projects/mottainai-shokuhin-center

introduction

食品ロス削減事業や生活困窮者への支援事業を行っている、NPO法人日本もったいない食品センター。今回、日本もったいない食品センター代表理事の高津博司さんに事業内容や取り組みへの想いなどを伺いました。

日本もったいない食品センターのSDGsの取り組み

インタビュアー
インタビュアー

今日はよろしくお願いします。まず日本もったいない食品センターでは、どのような取り組みを展開されているのでしょうか?

高津さん
高津さん

大きく分けると、「食品ロスを削減すること」と「生活困窮者への食品の支援を行うこと」です。

メーカーなどの事業者から、賞味期限の3分の1ルール※などによって廃棄しなければならない食品の買い取りや寄付の受け付けを行っています。その食品を私たちが運営する「ecoeat※」で販売したり、生活困窮者に毎日配布したりしています。

3分の1ルールとは

賞味期間の3分の1以内で小売店舗に納品する慣例です。賞味期限が切れていないのにも関わらず店舗に納品できないため、やむを得ず廃棄となる食品も多く存在しています。

ecoeatとは

日本もったいない食品センターが運営する食品ロス削減ショップ。インターネットが身近でない方や、生活困窮者の方が直接足を運べる場所の確保を目的としています。2022年1月時点で西日本を中心に14店舗を展開。今後は、さらなる全国展開を予定している。どなたでも購入することができます。※1

インタビュアー
インタビュアー

廃棄せざるを得ない食品を、本当に必要としている人に配布して食品ロスを減らしているんですね。

高津さん
高津さん

はい。そうですね。また、食品ロスを減らすことは他にもメリットがあります。食べ物を捨てれば、ゴミとして焼却処分され地球温暖化の原因となる二酸化炭素が発生します。さらに、ごみの焼却は税金で賄われていますよね。食品ロスを減らせば、排出する二酸化炭素量も減りますし税金の節約もできます。これまでゴミの処分に費やしていた税金をほかの有意義なことに遣うことができるのです。

日本で「貧困」を目の当たりにしたことが大きなきっかけに

インタビュアー
インタビュアー

このような取り組みを始めた理由を教えてください。

高津さん
高津さん

この「豊かな」日本で、貧困がある現状を目の当たりにしたからです。もともと事業系の食品ロスの削減を目指して、海外の貧困地帯へ贈ろうと思っていたのですが、輸送コストや手続き等の問題もあり現実的に難しい状況でした。そこでまずは近場の日本へ寄付しようと考え、母子生活支援施設※に直接持っていったのです。その時に出会った子供たちは一つの飴玉でもそれはそれは大喜びでした。そこで「給食だけで一日を過ごす」「お菓子や甘いものはめったにたべられない」子供がいて、貧困の問題があることを知ったんです。

母子生活支援施設とは

18歳未満の子どもを育てている母子家庭や、またはさまざまな事情で離婚の届出ができない状況の女性が子どもと一緒に生活ができたり、自立支援が受けられたりする施設です。ドメスティック・バイオレンス(DV)の被害を受けた人の緊急一時保護、保育所に入所できない母子家庭の子どもへの保育サービスなども行っています。※2

インタビュアー
インタビュアー

日本でそのような光景はなかなか見る機会がないので、我々としても貧困を想像しにくい現状がありますよね。

高津さん
高津さん

そうなんです。日本の貧困の現状を目の当たりにしたことで、まずは国内の食品ロスと貧困を同時に解決していくことが使命だと感じ、自分に何ができるかを考えました。

実は私は、日本もったいない食品センターの代表理事であると同時に、商社を経営しており多くの事業者と繋がりがありました。その方々に声をかけて廃棄される食品を引き取り、支援ができるのではないかと考え、今の取り組みを始めたんです。

食の知識を広め「捨てる」前に「考える」きっかけをつくる

インタビュアー
インタビュアー

これらの活動の他にも、食に関する知識の啓発活動を行っているんですよね?

高津さん
高津さん

はい。個人の食品ロスは正しい知識を身につけることで半減できると考えています。皆さん知らないから「期限が切れたから捨てる」となってしまう。

例えばお茶などの、製造日から賞味期限の日にちまで一年以上ある飲料の場合は、その後約半年はおいしく飲めます(保存状態や製品の特徴によって異なります)。

逆に買ってから賞味期限が短い牛乳などは気を付けましょう、というようなことです。

インタビュアー
インタビュアー

確かに「正しい知識」を身につける機会はそこまでないように感じます。

高津さん
高津さん

それが日本の食品ロスの約半分が家庭から出ていることにつながっているんだと思います。

高津さん
高津さん

正しい知識を私たちが伝えていくことで、捨てる前に一度「本当にこれはおいしく食べられないのか、捨てていいのか」と考えるきっかけをつくり、個人の食品ロスを減らしていきたいですね。

食の知識を勉強した社員がecoeatのお客様へ伝える

インタビュアー
インタビュアー

食に関する啓発活動は、具体的にどのように行っているのでしょうか?

高津さん
高津さん

もちろんメディアやSNSなど様々な媒体を使って発信していますが、それよりもまずはecoeatに来店されたお客様に直接伝えることを大事にしています。見る・聞く、だけではなく実際に食品を手に取り、食べることでより印象に残るからです。

インタビュアー
インタビュアー

来店されたお客様は、どのような反応でしたか?

高津さん
高津さん

さまざまですが、その中でも特に印象に残っている反応があります。

あるお客様に、商品を手に取りながら詳しく説明していると、「賞味期限切れてるけど大丈夫なん?」と心配していました。それでも安全性やおいしさに問題のないことをしっかり話し、納得してご購入いただいたんです。

高津さん
高津さん

後日、再度ご来店いただいた際には、「賞味期限が切れたものを食べてもおいしかった!家にある食品も捨てる前に考えるようになった」とうれしい反応を頂いたんです。

インタビュアー
インタビュアー

まさに見る・聞くことに加えて食べて「おいしい!」と実感してもらえたんですね。

高津さん
高津さん

はい。啓発活動が身になったと実感した瞬間でした。

このようにご来店いただいたお客様にしっかり伝えることで、少しずつ賞味期限などの理解が深まることを感じたので、従業員の教育にも力を入れています。現在、ecoeatの14店舗すべてに、食に関して訓練や勉強をしてテストに合格したスタッフを配置しています。

賞味期限切れの食品を扱っていることもあり、スタッフにより責任感やプロ意識を持ってもらうために社員として雇用しています。

インタビュアー
インタビュアー

社員を大切にし、教育にも力をいれているからこそお客様にもしっかりと理解していただけるんですね。

小学校では作り手へのリスペクトを伝える

インタビュアー
インタビュアー

店舗以外でも啓発活動を行っているのでしょうか?

高津さん
高津さん

主に若い世代に向けて発信を行っています。小・中・高、さらには大学まで様々な教育現場から取材や講演のオファーを頂きます。

インタビュアー
インタビュアー

私自身、小学生の姪っ子に食品ロスについて話した機会がありましたが、理解しにくいようでした。小さいお子さんたちにより効果的に伝えるために、どのようなお話をされているのでしょう?

高津さん
高津さん

先ほど話した賞味期限は消費期限の話に加えて、「保存方法の工夫」や「食べ物を作る人へのリスペクト」を話すようにしています。

自分が食べるまでに、どれだけの人が美味しくなる工夫や努力をしてきたのか、この具材はどうやってできたのか、などを考える機会はなかなかないものです。そこで、我々大人たちが考えるきっかけを作ってあげることが大事ですね。

インタビュアー
インタビュアー

知識だけではなく、食べ物をつくる人への感謝や敬意も一緒に伝えているんですね。

高津さん
高津さん

はい。また、講演をするときは実際に家から食品を持ってきてもらいます。そしてこの賞味期限ならいつまでおいしく食べられるよ、と具体的に伝えているんです。座学よりも、実際に触って見て考えることで、より自分ごとにできると感じています。

「何度でも伝える」ことで食品ロスが減っていく未来へ

インタビュアー
インタビュアー

最後に、今後の事業の目標や食品ロス削減への思いを聞かせてください。

高津さん
高津さん

年々、メーカーさんから声をかけていただく数も多くなり、引き受け量も増えています。今後、年間の引き受け量を10万tまで伸ばし、ecoeatの店舗も全国展開も目指しています。

ただ、事業での食品ロスを引き受けられる量はどんな団体でも限界があります。

そのため、食品ロスを削減するには個人の努力も不可欠です。ひとりひとりが食に対する意識を変えるだけで、食品ロスを半減できると信じています。それを実現するために私たちは何度でも何度でも食の正しい知識を伝え続けていくつもりです。

そして活動の積み重ねがいろいろなところでプラスになり、SDGsを含め様々な問題解決につながっていって欲しいですね。

インタビュアー
インタビュアー

本日は貴重なお話をありがとうございました!

取材・執筆 / 叶多(kanouda)

※1)食品ロス削減ショップ ecoeat(エコイート)
※2)社会福祉法人 全国社会福祉協議会 全国母子生活支援施設協議会

インタビュー動画

関連リンク

>>日本もったいない食品センター