福田 圭祐/Keisuke Fukuda
1990年生まれ。青山学院大学卒。新卒で広告代理店に入社。大手ビール会社の営業を3年担当後、退職してNPOの世界へ。クリエイティブとコミュニケーションを通じて、団体の新たな可能性に挑戦中。
目次
introduction
設立20周年を迎える認定NPO法人グリーンバード。主な活動は街のゴミ拾いです。「きれいな街は、人の心もきれいにする」をコンセプトに活動しています。
ゴミ拾いのイメージをポジティブに変え、気軽に参加してもらうためにどのような活動を続けているのか。代表の福田圭祐さんに詳しく伺いました。社会のために、未来のために、一歩踏み出したいという方はぜひご一読ください。
若者の街、東京・原宿で始まった「新しいカタチのゴミ拾い活動」
–まず、団体のご紹介をお願いします。
福田さん:
私たちNPO法人グリーンバードは、2002年、東京・原宿で活動をスタートしたゴミ拾い団体です。今から20年前というと街中や電車でタバコが吸える時代であり、当たり前のようにポイ捨てされ、街にゴミが溢れかえっている状況でした。若者の街として多くの人が行き交う原宿も当然ポイ捨てが日常茶飯事でした。
そうした状況に対して、この街で生まれ育った当時20代後半から30代前半の若者たちが「これじゃいけない。生まれ育った街のゴミは自分達で拾わなくては。」と、最初は義務感からゴミ拾いをしたのが事の始まりです。
–素晴らしいことですね。一方で、義務感だけでは20年間もの長い間団体が続かなかったのではないかと思うのですが。
福田さん:
普通にゴミ拾いをしてもモチベーションは上がらないし続かない。当時のゴミ拾いというと「真面目で、地味で、カッコ悪い」そんなネガティブなイメージでした。
日本を代表する若者の街、カルチャーの中心地。この街でやるなら、「オシャレで、楽しくて、カッコイイ」とポジティブなイメージに転換させようと考えたのです。
–ゴミ拾いのイメージを、「オシャレで、楽しくて、カッコイイ」にする。具体的にはどのように取り組まれたのですか。
福田さん:
私たちが朝ゴミ拾いをしても次の日にはまたゴミがたくさん落ちている状況で、まるでいたちごっこでした。これでは根本的なポイ捨て問題の解決にはつながりません。それならポイ捨てする人たちが、ポイ捨てしづらい空気を作ろうと考えたのです。
そこで、本来、サッカーなどスポーツで使うビブスを活動時に全員お揃いで着て、ゴミを拾う人達をあえて街中で目立たせることにしました。
–ビブスを着ることで、ゴミ拾い活動がスポーツのように感じられますね。服装を変えて、どのような効果がありましたか。
福田さん:
「自分たちの街でもやってみたい」という声が日本各地からたくさん寄せられました。それなら組織としてやってみようと、団体名を決め、法人として活動することになりました。今では北海道から沖縄まで、更には海を超えてフランスやイタリアなど海外にまで広がり、国内外に約80チーム、参加人数は年間3万人ほどの組織へと成長しました。
誰もが自由に参加できる。社会貢献の最初の一歩目でありたい。
–グリーンバードの皆さんがこの活動で大切にしていることを教えていただけますか。
福田さん:
私たちの活動には清掃用具の持参や、事前の参加登録などは一切不要。集合してから解散まで約1時間。最後に記念の集合写真を撮影して解散です。次回の参加を強制することは一切ありません。
自分の参加したい時に、参加して頂ければいいのです。社会貢献活動において大切な事は「頑張りすぎない、義務化しない」ことです。この気軽さとゆるさを20年間、維持し続けてきました。
(※コロナ禍で密集を避けるため、現在は事前登録制となっています。)
–関心はあっても、ゴミ拾いに参加する一歩目に勇気が要ります。ちなみに、福田さん自身はなぜゴミ拾い活動を始めたんですか。
福田さん:
初めて参加したのは高校三年生の夏。実は、大学の推薦入試のためという今では一般的なきっかけです。エントリーシートに「ボランティア貢献の有無」を記入する欄があり、空欄状態にしていたところ、顧問の先生に「この欄を埋めてきなさい」と指摘されました。当時は、ボランティアと言われてもゴミ拾いしか思い浮かばず、「東京 ゴミ拾い」と検索したところ、3番目に出てきたのがグリーンバードでした。活動日を見ると部活のオフ日と重なっていたという理由で参加したのが一番最初です。
団体の代表っていうと昔から環境問題に取り組んできたように思われがちですが、不純な動機で始めたんです(笑)。
–意外すぎる参加理由ですが、それを知って参加へのハードルが下がりました。初参加のときはどんな印象をもちましたか。
福田さん:
「これは面白い活動だな」と思ったのを、今でも鮮明に覚えています。
集合場所に行くと10人ほどの参加者が集まっており、始めに自己紹介タイムがありました。「近所に住んでいます」「音楽プロデューサーです」「占い師です」「現在、求職中です。視野を広げたくて。」「美容師をやっています。よかったらお店に来てください」という感じで。
全員、熱心に環境活動に取り組まれてる方々が集まっていると思っていましたが、参加の理由もみんな違っていて、活動中に環境問題について語り合う人など誰もいませんでした。
単語帳に温暖化の原因などを書いて不純な動機で参加した事がバレないように準備して臨んでいましたが、単語帳の出番は一回もありませんでしたね(笑)。
–ゴミ拾いを通じて、いろんな人と出会えたんですね。
福田さん:
ゴミを拾うという体験、社会に貢献できたという事以上に、普段話すことのない世代の方々や様々な業界の人と交流できた事に驚きを感じました。高校生の頃、話す大人は両親か先生くらいでしたから。ゴミ拾いを通じていろんな人に出会えた事がなにより嬉しかったです。
参加者の皆さんに「何故、グリーンバードに参加してくださっているんですか?」と聞くと、多くの方々が「いろいろな人と出会えるから」とおっしゃるんです。ゴミ拾いの団体でありながら、人との交流、出逢いを求めて参加する方が多いのがグリーンバードの特徴です。今ではゴミ拾いが重要なコミュニケーションツールになっているのです。
20年前からダイバーシティな団体だった
–さまざまな業種の方が参加されるとのことでしたが、具体的に参加者の傾向などはありますか。
福田さん:
参加者の傾向といったものはありません。子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで、正に老若男女。外国の方やセクシャルマイノリティの方、身体の不自由な方など様々な方が参加してくださっていて、ダイバーシティという言葉が世間に認知される前から、この言葉を私たちの団体では自然と体現していたと思います。
なによりゴミ拾いは、全人類が参加できる活動ですから。
–SDGsができてから、環境問題への関心が高まった人も多いのではないかと思います。活動を続けていて変化を感じることはありますか。
福田さん:
ここ近年、環境問題への関心をきっかけに参加する方々が増えています。企業のCSRの一環として参加する社会人や、学校で環境問題について学んで「ゴミ拾いをしてみたい」と参加する子供たちなど。例えそれが半強制的なアクションだったとしても、これはチャンスだと捉えています。
どんな理由であれ、アクションを起こそうと一歩踏み出した人たちの受け皿として、活動の場を提供したいと思っています。その中で一人でもグリーンバードのゴミ拾いを楽しいと感じてもらえたら嬉しいですね。
ゴミ拾いを通して地域にとって欠かせないコミュニティをつくりたい
–最後に、団体としての今後の展望をお聞かせください。
福田さん:
街をきれいにするだけでなく、参加してくれる皆さんにとってプラスの価値を提供する団体になっていかなければと考えています。
ゴミ拾いを通じて、学びがある。発見がある。人との出会いがある。ゴミ拾いがもたらす価値をどんどん増やしていけるように、20年間という積み重ねを活かし、更なる成長を続けていきたいと思います。
–具体的に担いたい役割など、イメージがあるのでしょうか。
福田さん:
グリーンバードという活動が、人々を、地域を支えるコミュニティになることです。
インターネットやSNSが普及して、簡単に誰かと繋がれる時代になりました。一方で、地域のつながり、世代を越えたつながりは希薄になっています。高齢化・過疎化によりシャッター商店街が増え、お祭り行事が開催できなくなったり。隣に住んでいる人の名前も顔も知らないといった人も少なくないかと思います。
でもいざという時のため、暮らしを良くするため、こうした繋がりは今こそ必要なものだと思っています。
そのためにも、ゴミ拾いをきっかけに人と人が出会い、繋がる。その場(コミュニティ)がグリーンバードであり、ゴミ拾いをツールとして、日本各地の地域を支える役割を担っていきたいです。
–誰もが参加できる活動だからこそ、地域をつなぐきっかけになれるのですね。本日はありがとうございました。
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