もし、世界中の人が新たな技術を取り入れて、豊かさを手に入れることができたのなら、この先の未来はどんな希望が待っているでしょうか。
目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、
- 地球上の限りある資源を効率的に使う産業づくり
- 持続可能な産業づくりのための技術革新づくり
- 自然災害が起きても早く復旧できるレジリエントな社会基盤づくり
をゴールにしています。
とはいえ難しく考える必要はありません。
例えば、私たちが使っている携帯電話も技術革新と言えるでしょう。
これまでは固定電話が主流でしたが、技術の発展によりいつでもどこでも使える携帯電話が普及しました。そして今では途上国でも導入されており、人々の生活の質は向上しています。
つまり先進国が技術革新を進めることで、自国だけでなく途上国にも良い影響を与え、持続可能な社会へとつながるのです。
現在、さまざまな企業が課題の解決に向けて日々研究を続けています。
そこで今回、目標9と関わる事業に取り組む企業を紹介します。自社の事業と結びつけるために参考になるはずですよ。
目次
日本一の刃物の町から世界初の技術革命を。98%プラスチック削減に成功した貝印の「紙カミソリ」

カミソリといえば、持ち手はプラスチック製というのが一般的なイメージでしょう。
仮にシェービング用カミソリである場合、刃の交換ができない仕様のものは使い捨てされてしまい、サスティナブルではありません。
岐阜県関市の貝印が作り出したのは、「紙カミソリ」。
紙カミソリは刃部分以外がすべて紙でできていて、98%プラスチック削減に成功。従来のカミソリ技術を180度転換させた驚きの製品なのです。
日本一を誇る刃物の町・岐阜県関市の技術
岐阜県関市といえば、刃物の町として有名です。年に一度行われる関市刃物まつりは、日本の刃物の伝統を大切にしながらも、時代を先読みして新たな刃物技術をお披露目する場でもあります。
中でも貝印は創業110年以上の伝統を誇るカミソリ開発の第一人者です。そんな貝印が紙カミソリの構想が始まったのは2018年のこと。
まだSDGsがそこまで認知されていない時期に、使い捨てプラスチックをやめて地球環境に配慮したカミソリをゼロから作ろうと盛り上がったのです。
カミソリの概念を覆す
とはいえカミソリに求められるのは耐水性。水に濡れて使い物にならなくなっては、商品として意味を成しません。
そこで貝印はさまざまな紙を試し、独自の技術で耐水性と使い心地の良さを兼ね備えた、使い切りの紙カミソリを製品化することができました。
貝印「紙カミソリ」が貢献するSDGs
紙カミソリは目標9の以下のターゲットに貢献します。
9.4 2030年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。すべての国々は各国の能力に応じた取組を行う。
また、紙カミソリは見た目が紙とわかるクラフトカラー、持ち手部分はポップで発色の良いカラーを揃えており、性別関係なく使いやすいシンプルなデザイン設計になっているため、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」の達成にもつながります。
構想から完成まで2年かかったという紙カミソリ。
江戸時代から残っている刀があるように、現代の私たちに欠かせない刃物産業。よりクリーンに、より環境に配慮した技術革新は今後も必要となるでしょう。
廃棄物の臭いを90%カットする技術で循環型のコーヒー革命。東京都蔵前から発動「+coffee project」

毎日飲むコーヒーでも技術革新が進んでいます。ここでは循環型社会を目指す+coffee projectを紹介します。
+coffee project とは
+coffee projectは、日々の生活や街から出るコーヒーかすと鶏糞肥料を混ぜて、臭いを90%以上カットしたペレット状の有機肥料に変えるプロジェクトです。
東京都台東区にあるコーヒー焙煎の株式会社縁の木と、愛媛県四国中央市にある四国ケージ株式会社の共同開発で、本プロジェクトは2020年5月にクラウドファンディングで活動資金を集めてスタートをきりました。
食育、環境、福祉の可能性を広げるプロジェクト
プロジェクトのゴールは、
- 都市部や住宅地など広い場面で有機肥料を使用することで、肥料特有の臭いを気にすることなく安心して利用できる
- 食育や環境を考えるきっかけになる
ことです。
一般的に鶏糞などの肥料は独特な臭いを発し、都市部や集合住宅ではなかなか使いにくいという声があります。
そのため、特に多くの人が行き交う場所では、有機肥料の臭いを90%カットする本プロジェクトの取り組みはかなり有効でしょう。
コーヒーかすを有機肥料にするメリット
コーヒーかすを有機肥料にすることで、
- 家庭や業者から出る廃棄物の削減
- コーヒーとして使われなかった欠点豆の利用価値を増やす
などのメリットがあります。
さらには、「NPO法人つなぐ台東 第3福祉作業所」に業務の一部を委託する予定もあるなど、福祉施設の方の継続的な仕事の創出にも力を入れているのです。
福祉施設との連携で、工賃アップをもたらす事業モデルも築いていきます。
+coffee projectが貢献するSDGs
廃棄物を活用して臭いの出ない有機肥料を作ることで次の目標に貢献しています。
- 目標8「働きがいも経済成長も」
- 目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」
- 目標11「 住み続けられるまちづくりを」
- 目標15「陸の豊かさを守ろう」
年間一人当たり500杯もコーヒーを飲んでいるというデータもあるほど、私たちの生活に身近な存在です。
筆者含め、編集部でもコーヒー愛飲者が多く、読者のみなさまもやすらぎのために毎日コーヒーを飲むという方も多いのではないでしょうか。
コーヒー店の密集する蔵前の街からスタートしたこのプロジェクトは、環境に配慮した技術基盤をつくるきっかけとなることでしょう。
リアルタイムで被災地の様子をアップデートできる「クライシスマッピング」のアイディア

自然災害が起きたとき、
- 地盤が緩んで地形が変形
- 交通網が麻痺し通行不可
とさまざまな二次災害が起きることが予測されます。
そうなると、支援物資を届けたくてもなかなか現場にたどり着けないという事態が起きます。一刻を争う災害時の判断は、通れる道を手当たり次第探すほど悠長なことはいってられません。
そこで役立つのが特定非営利活動法人クライシスマッパーズ・ジャパンが手がける「クライシスマッピング」です。
リアルタイムで被害状況を地図に置き換える
クライシスマッピングは、災害発生時に、
- SNS
- カーナビ
- 携帯電話位置情報
- ドローンによる空撮
- 現地ボランティアの情報共有
などの情報をもとに、被害状況をネット上の地図に描いていくサービスで、世界中の人々が自由に地図づくりに参加できる特徴を持ちます。
実際に、2016年4月に発生した熊本地震では、ドローンの活用によって被災地の状況が描かれました。
また、更新はリアルタイムで行われ、地図の印刷やコピーは自由にできます。
クライシスマッピングが貢献するSDGs
クライシスマッピングは中継で被害の様子を地図に置き換えられるシステムで、目標9の以下のターゲットの達成に貢献します。
9.1 すべての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。
9.a アフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国及び小島嶼開発途上国への金融・テクノロジー・技術の支援強化を通じて、開発途上国における持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラ開発を促進する。
他にも、目標11「住み続けられるまちづくりを」や目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」にも関連。
安全で住みやすいまちづくりを築くにはこうした技術の利用が求められていくでしょう。
ビジネスの知識を社会課題の解決に活かすクロスフィールズの留職プログラム

NPO法人のクロフィールズの「留職プログラム」は、
- グローバルリーダーの育成
- 新規事業の構築
- 仕事の意義を再確認し、熱意で組織を活性化する
というプログラムです。
地域巻き込み型ですべての人がワクワクする支援
クロスフィールズが目指す世界は、
- 自分の仕事を通じて社会を良くする世界
- ひとりひとりの強みを活かし、社会問題解決に前向きに取り組んでいる世界
です。
異国の地で現地の企業や人を巻き込み目標を達成する、というのは決して簡単ではありませんがお互いのビジネスを学ぶ機会にもなります。
では、どのような取り組みを進めているのでしょうか。
新興国に滞在することで知識や技術をシェア
クロスフィールズの社員は、開発途上国に数カ月滞在。現地の企業と協力して、これまで培ってきた知識や技術をシェアし、解決できる社会問題は何かを模索し取り組んでいきます。
例えば食品メーカーと研究職であれば、農作物を使った食品開発をし、農家の雇用支援に貢献できます。
クロスフィールズが貢献するSDGs
クロスフィールズが目標9に貢献するターゲットは次の通りです。
9.5 2030年までにイノベーションを促進させることや100万人当たりの研究開発従事者数を大幅に増加させ、また官⺠研究開発の支出を拡大させるなど、開発途上国をはじめとするすべての国々の産業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上させる。
9.a アフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国及び小島嶼開発途上国への金融・テクノロジー・技術の支援強化を通じて、開発途上国における持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラ開発を促進する。
また、目標9以外にも
- 目標1「貧困をなくそう」
- 目標3「すべての人に健康と福祉を」
- 目標8「働きがいも経済成長も」
- 目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」
- 目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」
の達成に貢献します。
ドローンが医薬品をお届け!テクノロジーのパラダイムシフトを実現したZipline

最先端の技術が開発途上国の社会問題解決に導くことを証明したのが、アメリカのベンチャー企業Ziplineです。
Ziplineの取り組みは、ドローンで素早く医薬品や血液を運び、人々の命を助けるというものです。
都市部から離れた場所の人を助けたい
アフリカでは、都市部から離れた場所になると病院が近くにないケースが多々あります。これでは必要な医薬品や血液をなかなか届けられず、ひどいときには何日もかかってしまうこともあるのです。
すぐに助けたくてもどうすることもできない。これはアフリカ含む、多くの途上国に共通する課題です。
これを受けてZiplineはドローンが
- すばやく必要な物資を届けられる
- 仮に故障した際も簡単に修理ができる
- 飛行機に比べて安価に作れる
と、サスティナブルな機材であり、課題の解決につながると考えました。
ハイスペックなドローンが大活躍
Ziplineで使われるドローンのスペックは、
- 飛行機型
- 雨や風の悪天候に強く設計されている
- 高速で飛べて燃費が良い
- 上空から医薬品を落とす際は、パラシュートを利用する
- 医薬品を渡す際は自動車2台分程度の誤差の範囲でも荷物を落とすことが可能
と、途上国の課題との相性が抜群で、多くの人に医薬品を届けています。
この最新テクノロジーをフルに活用した取り組みは世界中で注目を集めており、課題解決への期待が高まっています。
Ziplineが貢献するSDGs
最新テクノロジーを利用して開発途上国の社会問題解決につなげるという点で次のターゲットに貢献しています。
9.1 すべての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。
9.a アフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国及び小島嶼開発途上国への金融・テクノロジー・技術の支援強化を通じて、開発途上国における持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラ開発を促進する。
まとめ
今回は目標9「産業や技術革新の基盤をつくろう」に貢献する企業を紹介しました。
世界中すべての人が持続可能な産業を取り入れられるためには、先進国の研究開発が求められるでしょう。
イノベーションを起こすことは、もしかすると長い時間を要するかもしれません。とはいえ、すぐに結果が出なくても、長い目で見て解決に望む姿勢が重要です。
持続可能な社会を作り上げるためにも、現在世界が抱えている課題を把握し、解決に向けてどのように事業と結びつけるか、検討してみてはいかがでしょうか。