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仏教とは?歴史や教え、主な宗派についてわかりやすく解説!

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もし、外国人に「日本人は何を信仰していますか?」と聞かれたら、どのように答えるでしょうか。もしかしたら、多くの人は「何も信仰していない」と答えるかもしれません。しかし、葬式の際に僧侶を呼んだり、お寺に墓参りに行く人も少なくないでしょう。

にもかかわらず、私たちは仏教のことをあまり知らないのかもしれません。仏教とはいったいどのような宗教なのでしょうか。

今回は仏教を開いた釈迦の簡単なプロフィールや釈迦の死後に仏教教団がたどった歴史、日本で独自の発展を遂げた8つの宗派、仏教に関する質問などをまとめます。仏教とSDGsの関わりについても解説しますので、ぜひ、ご覧になってください。

仏教とは

仏教とは、釈迦(ガウタマ=シッダールタ)が紀元前5〜6世紀ごろに開いた教えで、世界三大宗教の一つです。始めは北インドを中心に信仰が広まりましたが、釈迦の死後はインド全域、さらには東南アジアや中国、日本に拡大していきました。

仏教の開祖は釈迦

仏教を開いたのは、北インドに数多くあった小さな王国の王子であるガウタマ=シッダールタです。釈迦と呼ばれるのは、ガウタマの部族がシャカ族(シャーキヤ族)だったからです。のちに、仏の教えを開いたことから、仏陀(ブッダ)とよばれます。呼び名が複数ある人物であるため、今回は「釈迦」で統一しましょう。

釈迦が生まれたとき、立ち上がって7歩あるいて右手で天(上)を、左手で地(下)を指さしながら「天上天下唯我独尊」と言葉を発したのは非常に有名なエピソードです。今でも、釈迦が生まれた4月8日は仏教の重要な採点の日で、日本の寺では「花祭り」が行われます。

釈迦は19歳のときに結婚し、王族として何不自由ない生活を送ります。しかし、釈迦が宮殿の外に出たときに様々なものを目にしたことがきっかけで、出家してしまいます。

東の門から出かけた釈迦は腰の曲がった老人を見つけ、人が老いることを認識します。南の門から出たときには病人を見て、病に苦しむことを知ります。西の門を出たときには、葬列に遭遇して人の死を目の当たりにします。最後に、北の門を出たときに修行する出家者の姿を見て、自らも出家を志すようになるのです。このエピソードを「四門出遊」といいます。

その後、釈迦は6年もの苦行を行いますが、何の悟りも得られませんでした。そして修行をやめた釈迦は菩提樹の下で迷走し、悟りの境地を開くのです。釈迦35歳のときでした。悟りを開いた釈迦は、ガンジス川周辺の北インド各地で布教活動を行い、北インドのクシナガラで亡くなります。彼の死の間際の姿を描いたのが「涅槃像」です。

仏教の教えについて

釈迦は35歳で悟りを得てから80歳でなくなるまで、数多くの教えを説きました。その全てをここで紹介するのは難しいため、今回は「四法印」「八正道」についてとりあげます。

四法印(しほういん)と四諦(したい)

四法印とは、仏教の根本理念となる考え方のことです。「諸行無常」「一切皆苦」「諸法無我」「涅槃寂静」の四句に要約されることから、四法印とよばれます。

諸行無常しょぎょうむじょうすべてのものは変化する
一切皆苦いっさいかいく人生で苦しみは避けられない
諸法無我しょほうむが固定された自我はない
涅槃寂静ねはんじゃくじょう煩悩や苦がない安らかな世界(悟りの境地:ニルヴァーナ)が存在する

そして、悟りに至るための4つの修行を四諦といいます。

苦諦くたいこの世のすべてが苦であるという真実
集諦じったい苦が多いのは、煩悩(尽きることがない欲望)があるからだ
滅諦めったい苦しみの原因である煩悩を絶つことで心理である涅槃にたどり着く
道諦どうたい涅槃にたどり着くには、八正道を実践しなければならない

八正道(はっしょうどう)

ここからは、涅槃にたどり着くために実践する八つの努力である「八正道」を解説します。

正見しょうけん自分がするべきことを正しく見定めること
正思しょうし怒りや憎しみにとらわれず、正しく物事を考えること
正語しょうご嘘や偽りをのべず、正しい言葉を使うこと
正業しょうごう盗みや殺生をせず、正しい行動をすること
正命しょうみょう悪事などを行わず、正しい仕事をすること
正精進しょうしょうじん正しいことに向かって、正しい努力をすること
正念しょうねん常に審理を求め、正しい決意をすること
正定しょうじょう正しい心を保つこと

8つの正しい教えを守ることで、人は煩悩を滅して涅槃にたどり着けると考えられました。

仏教の歴史

釈迦が亡くなった(入滅)後、弟子たちが釈迦の教えをまとめつつ、初期の教団を形成します。やがて、教団内部で大乗仏教と小乗仏教の対立が発生し、それぞれが個別に発展を遂げることとなります。

紀元前383年釈迦の死(入滅)
1世紀東南アジアに上座部仏教(小乗仏教)が伝わる
2世紀中ごろ大乗仏教の成立
4世紀前半仏図澄が中国で仏教を布教
4世紀後半鳩摩羅什が仏典の漢訳を行う
5世紀以後中国で仏教が広がる
538年(または552年)百済から正式に仏教が伝わる
9世紀初め最澄と空海が中国に留学 →天台宗・真言宗が日本に伝わる
12世紀中ごろ~13世紀中ごろ日本独自に仏教が発展

ここからは、仏教の歴史を詳しく見てみましょう。

初期仏教の成立

釈迦がクシナガラで亡くなった後、残された弟子たちは釈迦の言葉を集める作業(仏典結集)を行いました。しかし、文字で書かれた経典ではなく口伝で伝えられたため、純粋に釈迦の思想だけがまとめらているわけではないという指摘があります。

大乗仏教と上座部仏教(小乗仏教)の分裂

釈迦の死からしばらくすると、仏教の根本をめぐる対立が発生し、上座部仏教と大乗仏教に分裂しました。上座部仏教は、個人の悟りを重視していました。それに対して、大乗仏教は一般大衆(衆生:しゅじょう)を救うべきで慈悲の心が大事だと主張しました。

また、上座部仏教はインドから東南アジアに伝わりました。一方、大乗仏教は中国・朝鮮半島・日本に伝わりました。そのため、現在のタイやミャンマーなどの仏教と日本の仏教は、同じ仏教でもかなり違うのです。

中国・日本への拡大

4世紀にはいると、仏図澄鳩摩羅什がシルクロードを経て中国に仏教を伝えます。中国では、南北朝時代から隋・唐の時代にかけて支配者層を中心に仏教が広まりました。仏教は、まさに当時のトレンドだったといってもよいでしょう。

日本に仏教が伝わったのは6世紀のことです。538年または552年に、百済から日本に仏教がもたらされたといいます。このとき、日本では仏教を信仰する聖徳太子蘇我氏と、古来の神道を重視する物部氏の間で争いになり、物部氏が滅ぼされる事件が起きます。

奈良時代に入ると、日本では仏教を取り入れた国づくりが積極的に進められました。聖武天皇は全国に国分寺や国分尼寺を建て、奈良の東大寺に廬舎那仏(大仏)を建立するなど仏教を保護する政策をとりました。

同時に、中国の進んだ仏教を取り入れるため高僧の鑑真を日本に迎えようとしました。鑑真は6度も来日に失敗しますが、7度目に成功し日本で仏教を広めます。朝廷は鑑真のために唐招提寺を建てました。

仏教の主な宗派

奈良時代以降、仏教は日本独自の発展を見せ始めます。宗派とは仏教の分派のことで、同じ仏教でも何を大事にしているか、どのお経を読むかなどに違いがあります。ここでは、日本八宗と呼ばれる8つの宗派について解説します。

天台宗

天台宗は平安時代初期に最澄(伝教大師)が開いた宗派で、本山は比叡山延暦寺です。根本となる経典は妙法蓮華経(法華経)です。中国に渡った最澄は、天台宗の本場である中国で教学を学びました。その後、日本に持ち帰って天台宗を開きました。

最澄が持ち帰った膨大な経典は、その後の日本仏教の発展に大いに貢献します。天台宗では法華経だけではなく、密教や戒律も重視しているため、比叡山では法華経以外にも密教や戒律の研究も行われました。

真言宗

真言宗は最澄と同じ時代に生きた空海(弘法大師)が開いた宗派で、本山は高野山金剛峰寺と京都にある東寺(教王護国寺)です。生きているうちに悟りを開く「即身成仏」を目指す宗派としても知られています。

大日如来を本尊とする真言宗の根本経典は、大日経金剛頂経(こんごうちょうきょう)です。真言宗の法要では、般若心経などの経典が唱えられます。また、真言宗の寺院には多数の仏や菩薩が描かれた曼荼羅が掛けられています。

浄土宗

浄土宗は法然が開いた宗派で、本山は京都にある知恩院です。江戸時代に徳川氏の帰依を受けていたことでも知られています。法然は「南無阿弥陀如来」と念仏を唱えることで、阿弥陀如来の救済が受けられると説きました。法然は阿弥陀如来を信じて念仏を唱え続けると、死後は浄土に生まれ変わると説きました。

浄土真宗本願寺派

浄土真宗は、法然の弟子である親鸞が開いた宗派です。親鸞は仏教で禁じられていた結婚することや肉食することなどを容認した人物であり、「悪人正機(あくにんしょうき)」を唱えたことでも知られています。

悪人正機とは、悪人こそが阿弥陀如来の救済対象であるとする親鸞の考え方のことです。阿弥陀如来は全ての人々を救う存在であり、本願を成就してくれる存在であると考えたのです。

真宗大谷派

真宗大谷派は親鸞が開いた浄土真宗の一派です。戦国時代末期から江戸時代にかけて、浄土真宗の教団は本願寺派と大谷派に分裂しました。基本的な考え方は同じですが、使用する仏具や葬儀などに違いが見られます。

時宗

時宗は鎌倉時代の一遍が開いた宗派です。阿弥陀如来を信仰するという点では、浄土宗や浄土真宗と同じです。念仏を唱えると浄土に往生できるという考え方や絶対他力を信じる考え方などは念仏を唱える他の宗派と共通しています。

しかし、踊りながら念仏を唱える「踊念仏」や、煩悩や執着を捨てることを他の宗派より重視する考え方は、時宗の特徴といってよいでしょう。

日蓮宗(法華宗)

日蓮宗は、鎌倉時代に日蓮が開いた宗派で法華経を唯一の経典としています。「南無妙法蓮華経」という題目を唱えることで誰でも成仏できると説きました。日蓮宗の本山は身延山久遠寺です。

日蓮は自然災害が多発するなど国難に見舞われる理由は、人々や幕府が誤った教えを信じているからだとして『立正安国論』を著し、鎌倉幕府の中心人物だった北条時頼に提出しました。

他宗に対する激しい非難や幕府批判が問題とされ、日蓮は鎌倉から追放されたり、処刑されそうになったりしました。

曹洞宗

曹洞宗は、鎌倉時代に道元が開いた禅宗の一派で、本山は福井県の永平寺と神奈川県の総持寺です。座禅を何よりも重視する曹洞宗では、ひたすら座禅に打ち込む「只管打座」を修行の中心とします。その際、修行者は何も語らず黙って座禅をする黙照禅を行います。曹洞宗では華美な物は避けられる傾向があり、簡素な生活を営むことが尊ばれます。

臨済宗

臨済宗は、鎌倉時代に栄西が開いた禅宗の一派です。黙って座禅をする曹洞宗とは異なり、禅問答を用いた修行である「公案(こうあん)」が重視されます。とんちで有名な一休さん(一休宗純)は臨済宗の僧侶です。

臨済宗は鎌倉幕府や室町幕府の保護を受け、鎌倉や京都に大規模な寺院を構えていました。鎌倉の臨済宗寺院のトップに君臨したのが建長寺をはじめとする鎌倉五山で、京都のトップになっていたのは天龍寺などの京都五山です。京都五山の上に位置したのが南禅寺です。現在では、多くの観光客が訪れています。

仏教に関してよくある疑問

ここからは、仏教に関するよくある質問を2つ取り上げます。

世界に仏教国はどのくらいある?

仏教徒が多数を占める仏教国は、アジアに存在しています。主な仏教国はタイ、ベトナム、スリランカ、ラオス、カンボジア、ブータン、モンゴルなどです。それ以外の地域にも仏教徒が存在しており、数億人の仏教徒がいると推定されています。*1)

仏教徒はどんな生活を送る?

仏教徒といっても、

  • 出家している人(修行者・僧侶)
  • 一般市民として生活を送りながら仏教を信仰する在家信者

では生活が異なります。在家信者の生活は、一般的な人とほとんど変わりません。

修行者の場合は、宗派の戒律に従って生活します。仏教では殺生が禁じられているため、動物性の食べ物を食べないことが一般的です。

たとえば、曹洞宗の場合、朝の3時に起床した修行者は、作法に従って洗面を行い、座禅に励みます。朝食は7時で五観の偈(ごかんのげ)を唱えながら食事をとります。清掃などの活動は「作務(さむ)」とよばれ、修行の一環として行われます。

作務と座禅を行った後、12時に昼食をとります。その後、講義や座禅を経て17時に夕食を取ります。夕食後も修行は続き、就寝するのは21時ころです。*2)

仏教とSDGs

最後に、仏教とSDGsの関係について見ていきましょう。

SDGsの理念である「誰一人取り残さない」という考え方は、大乗仏教の理念である「すべての衆生を救済する」という考え方に通じる部分があります。ここでは、仏教とSDGsの関連を知るため、目標1「貧困をなくそう」との関わりを考えていきます。

SDGs目標1「貧困をなくそう」との関わり

SDGs目標1の「貧困をなくそう」は、世界中にいる極端に貧しい人々の生活を改善し、貧困を過去のものとするための目標です。仏教は、SDGsが生まれるずっと以前から、貧困を救済する活動を行ってきました。

奈良時代に生きた光明子(聖武天皇の妻で後に皇后・皇太后)は、730年に施薬院を置いて諸国の薬を集めて病人に施したり、貧困者を救うための施設である悲田院を設立したりして人々の救済に努めました。

日本仏教の根本となった大乗仏教では、自分のことよりも他人のことを大事に考える利他の精神や、生きとし生けるものから苦を取り除き、楽を与える慈悲の考え方があります。これらの考え方はSDGsに通じるものがあるでしょう。

今こそ、格差を是正して貧困をなくするために、仏教の精神を学ぶべきなのではないでしょうか。

まとめ

今回は仏教について解説してきました。仏教は、三大宗教の中で最も古いものであり、日本人にとってもなじみ深いものの一つです。もともとはインドや中国、朝鮮から伝わった教えでしたが、日本に伝来してからは独自の発展を遂げました。

日本では多くの宗派に分かれていますが、大本となるのはすべての人を救うという大乗仏教の理念です。誰一人取り残さず、大きな船に乗せるという大乗仏教の考え方は、貧困を撲滅をめざすSDGsの考え方に近いものがあります。

参考
*1)外務省「地域別インデックス(アジア)|外務省
*2)曹洞禅ネット「曹洞宗の修行 | 曹洞宗 曹洞禅ネット SOTOZEN-NET 公式ページ