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子ども食堂とは?日本の貧困現状やボランティア・取り組み事例、寄付先にもおすすめの団体を紹介

「NPO法人全国子ども食堂支援センター むすびえ」によると、子ども食堂の数は2021年時点で6,000ヵ所以上になると報告されています。

【子ども食堂の増加数】

2016年に比べると子ども食堂の数は約19倍となっていることからも分かるように、年々需要が高まっています。

では、子ども食堂とは一体どのような食堂なのでしょうか。

本記事では、子ども食堂の概要、メリットや課題、実例などをまとめました。まずは、子ども食堂がどのような活動を行っているのか詳しく見ていきましょう!

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子ども食堂とは

子ども食堂とは、その名の通り子どものための食堂です。

別名「地域食堂」や「みんな食堂」と呼ばれることもあり、食事を無料または低価格で提供しています。食事提供の他にも、支援が必要な子どもに向けて、孤食の解消や食育などにも力を入れています。

ではなぜ、子ども食堂の活動が広まったのでしょうか。子ども食堂のはじまりは、ある八百屋さんが始めた活動がきっかけだと言われています。

子ども食堂が始まったきっかけ

東京都にある自然食品店「きまぐれ八百屋 だんだん」で、子ども食堂は始まりました。

2010年頃、店主である近藤博子さんは小学校の副校長から「給食以外の食事で、バナナを1本ずつしか食べられない子どもがいる」という話に大きなショックを受け、「自分のお店を使って、子ども達に食事を提供できないか」と考えます。

そこから、調理や費用面など、さまざまな課題と向き合いながら準備を進め、2012年8月に日本初の子ども食堂がオープンしました。その後、「きまぐれ八百屋 だんだん」の活動を知り、少しずつ子ども食堂の輪は広がっていったのです。

子ども食堂が注目を集めている理由

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近年、子ども食堂が注目を集める理由に、日本の貧困の現状や支援への参加のしやすさが挙げられます。1つずつ確認していきましょう。

明るみになった日本の相対的貧困の現状

日本で子ども食堂が広がっている理由の1つに、相対的貧困層の拡大が挙げられます。

相対的貧困とは、国や地域の生活水準の中で比較した時に、大多数よりも貧しい状態にいる人を指します。

日本は

  • 経済や雇用状況の悪化
  • 非正規雇用の増加
  • ひとり親世帯の増加

などによって、家庭への負担が大きくのしかかり、貧困に陥るケースが見られるのです。

それらの影響を大きく受けているのが子どもや若者世代です。特にひとり親世帯の場合、親が生活費を稼ぐために、夜遅くまで働いていることも珍しくありません。帰宅後に、栄養面を考えた食事を作ることは現実的ではなく、コンビニのお弁当やインスタント食品ですませてしまう家庭も少なくはないでしょう。

首都大学東京子ども・若者貧困研究センターは、東京都内に暮らす子どもと保護者を対象に生活実態調査を行いました。生活困難度別の、インスタント食品とコンビニ食品の摂取頻度は下図の通りです。

困窮層のインスタント食品や、コンビニ食品の利用率の高さがわかる結果となりました。このような食生活を続けていくと、栄養の偏りや不足にもつながります。この現状が世間に広く認知されるようになったのは、厚生労働省が初めて相対的貧困率を発表した2009年頃からと言われています。

この発表以降、貧困についてニュースや新聞などのメディアで取り上げられる機会が増えました。それに伴い支援する人も増え、先述した「きまぐれ八百屋 だんだん」が立ち上げた子ども食堂をきっかけに少しずつ輪が広がっていったのです。

活動に参加しやすい

世の中には、名前を聞いただけでは活動内容がピンとこないボランティア団体も存在しており、「ボランティアをしてみたい」「初めてボランティアに参加しようと思っている」人からすると、なかなか1歩を踏み出せない原因にもなるでしょう。

その点、子ども食堂は活動内容が明確で、他のボランティア団体より参加に対するハードルを下げてくれます。また、それぞれの子ども食堂によって開催日や時間帯は異なるため、自分の日程に合う食堂をみつけやすい特徴もあります。

食事提供以外にも、勉強を教えたり話し相手になったりするボランティアもあるため、学生や社会人も参加しやすくなっています。

このように子ども食堂は、日本で相対的貧困が認知されるようになったことや、ボランティアに興味のある人が1歩を踏み出しやすい活動内容のため注目されるようになりました。

では、子ども食堂は具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

子ども食堂のメリット

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子ども食堂には、4つのメリットがあります。

手作りの温かい食事をとれる

子ども食堂では、企業や団体などから寄付された食材を使い、スタッフが調理し提供しているため、栄養があって且つ手作りの温かい食事をとれます。開催地域によって異なりますが、提供する食事メニューを栄養士の方が考えている子ども食堂もあります。

普段インスタント食品やコンビニ弁当ばかり口にしている子どもたちにとって、心強い存在となるのです。

低価格で食事を提供している

低価格でバランスの良い食事が食べられるのも子ども食堂のメリットの1つです。子ども食堂の利用料は、平均で100〜300円程度となっており、この価格で温かい食事を食べられることは、困窮家庭の生活の支えになるでしょう。

注意点

なかには無料で提供している子ども食堂もありますが、寄付の有無や運営方法などによって異なります。また、大人と子どもで利用料が異なる場合もあるため、子ども食堂を利用する際は十分な確認が必要です。

大勢で食事ができる

日本では、ひとり親世帯や共働き世帯の増加による子どもの孤食(※)が問題となっています。

幼いころから孤食が当たり前になると、本来であれば自然と身につくはずのコミュニケーション能力や食事マナーを知らずに育ってしまうことも考えられるのです。

孤食とは

1人きりで食べる食事を意味する。

内閣府が行った「食育の現状と意識に関する調査」によると、家族や仲間と一緒に食事をとることで下記のメリットがあるとしています。

子ども食堂は場所によって異なるものの、ボランティアや運営スタッフと食卓を囲んで食事をします。

誰かと食卓を囲むことで、栄養バランスの良い食事をとれるだけではなく、コミュニケーション能力や食事マナーを身につける機会にもなるのです。

子ども食堂は健康面のサポート以外にも、社会性を身につける大切な場としてなくてはならない存在になっているのです。

親同士の交流の場にもなる

子ども食堂は子供だけでなく、親も一緒に利用できるケースがあります。そのため、食事にきている他の親との交流の場にもなり、自分と似た境遇の人と悩み相談や情報交換がしやすい環境となっているのです。

普段は仕事が忙しく余裕のない日常を送っているからこそ、肩の力を抜いて心の内を話せる場や相手は必要です。「相談できる人がいる」「自分だけではない」と分かり、孤独感から解放される人もいるでしょう。

特に相対的貧困は、最低限の衣食住は確保できていることもあり、問題が表面化しにくい性質を持ちます。周囲に相談すれば良いのでは?と考える方もいると思いますが、恥ずかしくて言えないという場合もあり、外に助けを求めにくいのが現状です。

そのような方々が、子ども食堂をきっかけで情報交換しやすくなることは、精神的な支えにもなるでしょう。

ここまでは、子ども食堂のメリットをお伝えしました。続いては子ども食堂が抱える課題を見ていきましょう。

子ども食堂が抱える課題やデメリット

子ども食堂にはさまざまな課題を抱えていますが、今回は共通している部分を見ていきます。

本当に支援を必要としている子どもや親に届いているか

子ども食堂運営者のうち全体の42%は、支援を必要としている家庭の子どもや親に来てもらうことが難しいと感じています。子どもが栄養を取れたり、親同士のコミュニケーションの場になることをわかってはいるものの、周囲の目や恥ずかしさから、なかなか足を運べないという困窮家庭がいることも事実です。

そのため、

  • 参加対象の幅を広げる
  • 保育所や児童クラブなど子どもと接する機会の多い団体と連携する

など、足を運びやすい環境づくりにも力を入れています。

また、「安い」という理由で、困窮家庭ではない保護者が子ども食堂を利用するケースも見受けられると言います。子ども食堂の目的は、普段から栄養バランスのとれた食事を食べれない子どもや、1人で寂しく食事をしている子どもへの食事提供です。食材も限られているため、提供できる食事数も決まっています。

1人でも多く食事を必要としている人に届けるために、「安い」という理由だけで子ども食堂を利用することは控えましょう。

子ども食堂は儲かるの?運営費用は?

農林水産省の調査によると、約70%の子ども食堂が年間30万円未満の運営費でやりくりしていると回答しています。

開催日数が多い場所ほど運営費は高くなっており、そのうち助成制度を活用したことのある子ども食堂は68.6%でした。その制度も、国や都道府県のものではなく、社会福祉協議会や民間・市区町村のものを活用している食堂が大半です。

しかし助成金や寄付だけでは足りずに、自己負担した人は58%もいます。子ども食堂を運営している半分以上が、寄付や制度だけでは運営費が足りていない状態です。この運営費問題は深刻で、食材確保を課題に挙げている食堂は全体の10%に対し、運営費の確保と答えた食堂は30%もいます。

子ども食堂を広めるためには、運営費問題は避けては通れません。早急な改善が求められているのです。

開催場所の確保

会場の確保も、子ども食堂を立ち上げる際の課題になっています。

特にこの課題は「これから新しく子ども食堂を運営しよう」と、立ち上げを検討している団体に多く見られます。農林水産省が子ども食堂の運営者に、「子ども食堂の立ち上げにあたり感じた課題」を聞いたところ、会場の確保を挙げた人は19%にのぼりました。

【子供食堂の立上げにあたり感じた課題】

子ども食堂の開催会場は児童館や公民館などの公共施設が最も多く、次に所属団体が所有する施設です。所有施設がなく公共施設も利用できない団体は、

  • お寺や教会などの宗教法人
  • 飲食店
  • 高齢者福祉施設
  • NPO団体

などに、有償または無償で会場を借りています。

しかし提供できる場所も数も限られているため、全ての団体を受け入れることは難しいのが現状です。

行政との連携が不十分だった

行政との連携ができていないのも子ども食堂の課題です。

実際に子ども食堂の運営者を対象に調査を行ったところ、22.3%が「行政の協力が得られない」と回答しました。この事態を受け、政府は令和2年に「支援対象児童等見守り強化事業」を発表しました。

食事提供や学習支援を行う子ども食堂や民間団体などに対して、政府は経費を負担する仕組みとなっています。このように、政府が少しずつ子ども食堂の運営をサポートする動きも見られるようになってきています。

子ども食堂の必要性や課題を理解したところで、続いては実際にどのような運営がされているのか事例を見ていきましょう。

日本の子ども食堂の取り組み事例とおすすめ団体

今回は食事提供以外にも、特色のある活動を行っている子ども食堂を集めました。

【埼玉県熊谷市】熊谷なないろ食堂

「ごはん屋なないろ食堂&nanacafe」では、小学校低学年の児童を対象に所有施設であるカフェを利用して子ども食堂を運営しています。

最近では新型コロナの影響で休校が相次ぎ、子どもの預け先に頭を抱える親が増えています。そこで、ごはん屋なないろ食堂&nanacafeは、普段からボランティアを行っている学生達と協力し休校中の子ども達に、食・学び・遊びの場を提供しています。

子ども達は、

  • 午前中:学生ボランティアから勉強を教わる
  • 昼:一緒に昼食をとる
  • 午後:トランプやゲームで遊ぶ

という流れで1日を過ごします。

学校の授業についていけず困っている子どももおり、「ごはん屋なないろ食堂&nanacafe」では、学生ボランティアが1対1で勉強を教えてくれます。個別に対応してくれるため、質問もしやすく自分のペースで学べるところが特徴です。

これにより子ども達は、今まで分からなかった部分も学び直し学習面の遅れを取り戻すことができました。

【北海道札幌市】子ども食堂りあん

誰かの「子どもが1人で来られて、温かいご飯を一緒に食べられる居場所ができれば」という声がきっかけで、「子ども食堂りあん」は誕生しました。

開催場所である「麻生キッチンりあん」は、

  • 藤女子大学食物栄養学科(隈元ゼミ)
  •  NPO法人Kacotam 
  • NPO法人ぱすとらる
  • 麻生商店街

が運営するコミュニティスペースです。

普段は日替わりシェフによるランチ営業や、ひとり親世帯の食と学びの支援「まちの教室」などを行っており、2016年から子ども食堂の運営を開始しました。

また、麻生地域全体で団結し支援したいという想いから「麻生発・こどもネットワーク会議」を立ち上げています。地域全体の連携を強めることで、困窮家庭の悩みにいち早く気づき、相談・対応できる状態を当たり前にすることが狙いです。

困窮家庭の支援を行うと同時に、「あざぶ」という地域が互いに支え合う温かい場所づくりを行っているのです。

【三重県鈴鹿市】りんごの家

特定非営利法人shiningが運営する子ども食堂「りんごの家」は、ただ食事提供をするのではなく、子どもと一緒に簡単な料理をすることもあります。コミュニケーションをとれる以外に、普段食べている料理がどのように作られているのか知るきっかけにもなるでしょう。

実際に料理をすることで、最初は積極的に関わろうとしなかった子どもが少しずつ心を開き、今では率先して片付けまでしてくれるようになったと言います。子ども達は、家族以外の大人や子どもと一緒に料理をするなかで、自然と協調性や社交性を身につけているのです。

また鈴鹿市は、外から引っ越してくる人が多い地域でもあります。移住すると、知り合いもいない見ず知らずの土地で孤立しがちであるため、そういった親を減らすためにも子ども食堂が開催されています。

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子ども食堂でボラティアはできる?私たちにできること

ここまで、子ども食堂について詳しく見てきました。現状などを知ると、私たちにも何かできることはないかと考える方もいると思います。そこでここでは、子ども食堂の支援として、私たちにできることを紹介します。

ボランティア

まずはボランティアです。

【子供食堂の立上げにあたり感じた課題】でも触れたように、子ども食堂では、スタッフが確保できない、仲間を見つけられないといった悩みを抱えています。そのため、ボランティアに参加することはとても大きな意味を持ちます。

ボランティアを募集している子ども食堂を探す際には、全国のボランティア情報を掲載している「アクティボ」が便利です。調理スタッフから子どもの学習支援、情報発信など様々な役割を募集しているため、自身のスキルに合い、且つ近い場所の子ども食堂がみつかります。

ぜひ一度目を通してみてはいかがでしょうか。

>>アクティボはこちら

寄付

寄付も私たちにできることの1つです。こちらもボランティアと同様に、【子供食堂の立上げにあたり感じた課題】では、「資金不足」が挙げられていました。

少額だったとしても、多くの方々が寄付することで大きな力となります。方法としては、支援団体に寄付が一般的です。例えばNPO法人 全国こども食堂支援センターむすびえでは、

  • クレジットカードで月々1,000円から寄付
  • 銀行振り込みで寄付
  • Tポイントで寄付
  • 使わなくなったアクセサリーやブランドバッグ、骨董品の寄付
  • 読み終わった書籍、DVDの寄付

など様々な種類の寄付を受け付けています。

他にも寄付を募っている団体があるので、ぜひ一度探してみてはいかがでしょうか。

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子ども食堂はSDGsの目標達成にも貢献

圧縮済みSDGs画像

最後に子ども食堂とSDGsの関係について確認します。

子ども食堂の存在は困窮家庭の親や子どもにとって、経済面だけではなく心の支えにもなります。そして徐々にその輪が広がっていくことで、SDGsの目標達成にもつながるのです。

SDGsとは、2015年に開催された国連総会にて全加盟国が賛同した国際目標です。2030年までに環境・社会・経済の課題解決を目指し、17の目標と169のターゲットが設定されました。私たちは、SDGsの目標を達成することで「誰一人取り残さない」世界の実現を目指します。

そして、子ども食堂はSDGsのあらゆる目標と関連しています。そのなかでもここでは、特に関連の深い目標1と3について見ていきましょう。

SDGs目標1「貧困をなくそう」

SDGs目標1は、

  • 貧困で苦しむ人が多い発展途上国の問題解決
  • 日本でも問題となっている相対的貧困・子どもの貧困の解決

など、貧困に関するあらゆる課題の解決を目指す内容です。

そのため子ども食堂が普及し、1つでも多くの貧困で困っている家庭に手を差し伸べられるようになると、目標1の達成に近づくのです。

SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」

SDGs目標3は、

  • あらゆる年代のすべての人々が、健康的な生活を確実に送れるようにする
  • 福祉の推進を目指す

などが盛り込まれています。

子ども食堂は1日3回の食事ができない、または量が少ない家庭に温かい食事を提供し、空腹で辛い思いをしている子どもに支援を行っています。十分な栄養が取れれば子どもの成長や健康にもつながり、目標3の達成が近づくのです。

まとめ

貧困や飢餓は、途上国だけの問題ではありません。日本でも、私たちの気づかないところで苦しんでいる子どもや親がいます。このような問題を解決し、すべての人々が平等に健康的な生活を送るための支援として存在するのが子ども食堂です。

しかし子ども食堂の運営には、未だに多くの課題が残されています。私たちが子ども食堂を広めるためには、まず課題を把握し、他の子ども食堂がどのように運営しているのかを知ることも大切です。

とはいえ、子ども食堂がなくても安心して食事ができる、生活ができる環境を整えなければなりません。この前提を見失わずに、子ども達が飢餓で苦しむことのない世界を目指して、できることから始めましょう。

〈参考文献〉
こども食堂について|むすびえ
子ども食堂活動の意味と構成要素の検討に向けた一考察|吉田祐一郎
厚生労働省「相対的貧困の年次推移」
NPO法人みなと子ども食堂のビジョン|NPO法人みなと子ども食堂
子ども食堂における食事の安定供給に関する比較研究|東北大学小林廉太郎・井元智子
子供食堂と地域が連携して進める食育活動事例集|農林水産省
子ども食堂応援企画|厚生労働省
こどもの居場所づくり事例集|こども応援ネットワーク埼玉
SDGs(持続可能な開発目標)|蟹江憲史