#コラム

「虹色のチョーク」の日本理化学工業の取り組み|障がい者雇用と働く幸せ

今年の24時間テレビスペシャルドラマにも選ばれた「虹色のチョーク」。

今回は、障がい者雇用と働く幸せの実現に取り組む日本理化学工業株式会社の取り組みを紹介します。

SDGs目標8「働きがいも経済成長も」は性別や障がいの有無に関わらず全ての人が働きがいのある仕事(ディーセント・ワーク)につけることを目指しています。

だれ一人取り残すことなく「働く幸せ」を手にするためにも、障がい者雇用はSDGsにかかせない要素です。
全ての人が働き手の一人として活躍する理化学工業の取り組みを知り、SDGs8の達成を目指しましょう!

「虹色のチョーク 働く幸せを実現した町工場の奇跡」とは

虹色のチョークとは日本理化学工業の取り組みについて書かれた本です。

2023年の24時間テレビの題材に選ばれたこともあり、注目を集めています。

著書の中では、日本理化学工業が障がい者雇用に取り組むまでの歴史や障がいを持って生きる方、家族の方の想いが描かれています。

障がい者雇用に取り組もうと考えている企業の方にもおすすめの一冊です。

今回はこちらの著書も参考にしながら日本理化学工業について解説していきます!

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日本理化学工業とは?

日本理化学工業とは、国内のチョークの70%を製造している文房具メーカーです。

チョークの他にもキットパスという窓ガラスに自由にかける筆記用具の製造も行っています。

日本理化学工業の特徴

日本理化学工業は障がい者雇用に取り組む企業です。

社員全体のおよそ7割が知的障がいを抱えています。

日本理化学工業の公式HPには、2023年2月時点で全社員94名中66名が知的障がい者と記載があります。

そして、障がいを抱える方を雇うだけではなく知的障がいを抱える方の力を最大限生かせるような職場環境の工夫に取り組んでいます。

その結果、障がいの有無に関係なくすべての社員が働きがいをもって職に従事しています。

知的障がいとは

知的障がいとは、文部科学省によると「認知や言語などにかかわる知的機能」に発達の遅れが認められる場合のことです。

下の図は、知的障がいの方や体に障がいを抱える人の就業率を表したグラフです。

知的障がいの方の多くが日常生活や社会生活に置いて不便を感じることが多く内閣府によると知的障がいをもつ方の就業率は30代を超えてから一般の方と比べて低くなっています。

知的障がいと発達障がいの違い

知的障がいと発達障がいは混同されることが多いです。

知的障がいとは全体的なIQが低い状態を示します。
一方発達障がいは一部の特定の能力が低い状態です。

日本理化学工業が障がい者雇用にいたるまで

ここでは、なぜ日本理化学工業が障がい者雇用にいたったのか「虹色のチョーク」を参考に経緯をまとめました。

2人の知的障がい者を雇用する|採用してわかった集中力

1959年、養護学校に通う2人の知的障がいの生徒を職業体験の一環として採用しました。

職業体験の1週間でも障がいを抱える方の採用に「責任がもてるか」という迷いもありましたが、養護学校の先生の熱意により採用を決断します。

そして、迎えた職業体験。

最初こそ不安を感じていましたが、知的障がいを抱え2人の生徒は誰よりも真摯に仕事に取り組みました。

朝は誰よりも早く出社し、仕事中も持ち前の集中力を生かし作業に励んでいました。

その姿に心をうたれた他の社員からの希望もあり、正社員としての採用に踏み切ります。

川崎市に日本初の知的障がい者多数雇用モデル工場を建設

1975年には労働省からの勧めもあり日本初の障がいを抱える方の働きやすさを追及した川崎工場が建設されました。

川崎工場は重度障がい者の雇用モデルとして今日でも日本だけではなく海外の方にも注目されています。

2009年には、障がい者雇用に取り組む姿がみとめられ、渋沢栄一賞を受賞しました。

渋沢栄一賞とは

渋沢栄一の精神を受け継ぐような企業活動と社会貢献を行っている、地域に根差した企業の経営者に送られる賞。

日本理化学工業の工夫|一人ひとりに合わせた工夫

日本理化学工業は基本的に5S(整理・整頓・清潔・清掃・習慣)に安全(Safety)を加えた6S活動を推進しています。

さらに、知的障がいを抱えている方がやりがいをもって働けるように社員それぞれの理解力に合わせた工夫を行っています。

ここではその一部を紹介します。

使い慣れたフォークを使って作業!

チョークを製造する際、余分が出てしまうことがあります。

そのような部分は手作業で取り除きますが、日本理化学工業はフォークを使ってこの作業を行います。

慣れていない方がフォークを使って作業をすると、力加減や繊細な調整が難しく綺麗な仕上がりを目指すのは至難の業ですが、従業員の方にとっては1番やりやすい手法になっています。

多くの人に使いやすい道具を使うのではなく、個人個人の理解力にあわせた最適解を目指す姿勢が伺えます。

数字が苦手でも大丈夫!天秤で重さをはかる

知的障がいを抱える方は数字を読むのが苦手な方が多いです。

しかし、チョークを作るときには正確な計量が求められます。

そこではかり以外の計量方法を検討した結果、天秤にたどりつきました。

天秤の場合、重さを視覚的に測れるので数字に苦手意識を持っている方でも正確に測ることができます。

砂時計で時間がわかりやすい!

日本理理化学工業では、時計を読むのが苦手な方でも時間通り作業できるように時計の他に砂時計を利用しています。

砂時計は視覚的にどんな人のもわかりやすく3種類の砂時計が使われています。

ここでは3つ日本理化学工業の工夫を紹介しましたが、その他にもさまざまな工夫が行われています。

もっと日本理化学工業の取り組みが知りたい方はぜひ小松成美さんの「虹色のチョーク」をご覧になってください!

障がい者雇用とSDGsとの関係

SDGsは2015年に国連総会で、環境・社会・経済の問題解決にむけて採択された17の国際目標です。

日本理化学工業の取り組みと関わりのあるSDGs目標はSDGs8「働きがいも経済成長も」です。

SDGs8「働きがいも経済成長も」

SDGs8「働きがいも経済成長も」は全ての人がやりがいのある仕事につき、経済成長も同時に目指すための目標です。

ターゲット8.5には、

2030年までに、若者や障がい者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。

と定められています。

日本理化学工業は障がいの有無に関係なく「働く幸せ」を追及している企業です。

障がいをもつ方を雇用するだけではなく、生産性を持って働けるように働き方を工夫する取り組みはSDGs8と非常に親和性が高いです。

まとめ

今回は日本理化学工業の取り組みを紹介しました。

性別や障がいの有無にかかわらず、全ての人が社会に参画するためにも(ソーシャルインクルージョン)、障がい者雇用に取り組むことは大切です。

日本理化学工業の取り組みをヒントに、自分の会社なら…立場なら…と「自分ごと」として捉え自分にできることを少しずつ積み重ねていきましょう。