#インタビュー

認定特定非営利活動法人CLACK|デジタルを使った支援で、困難を抱える中高生に希望を伝える

特定非営利活動法人CLACK

特定非営利活動法人CLACK 徳永百合名さん インタビュー

徳永百合名

1990年、岐阜県岐阜市生まれ。関西外国語大学卒業後、4年間ビジネスセクターで勤務。のち、(一社)サステイナブル・サポートにて精神障害・発達障害のある方や若者の就労支援に6年間従事しつつ、広報・ファンドレイジング・事務局業務全般を兼務。2023年6月退社後、CLACKに入社。准認定ファンドレイザー。

introduction

日本では9人に1人が相対的貧困であると言われており、生まれた環境の影響で、沢山のことを諦め続けている子どもがいます。

認定NPO法人CLACKでは、貧困を抱える中高生に対して、デジタルを活用した支援を行うことで、社会需要の高いスキルを教えるとともに、自分たちで生き抜く力を付けてほしいと考えています。

今回は、認定NPO法人CLACKの広報部部長である徳永さんに、困難を抱える中高生の課題と、CLACKが果たす役割についてお聞きしました。

困難を抱える中高生が、将来に希望を持てる社会を実現したい

–まずは認定NPO法人CLACKについて、ご紹介をお願いいたします。

徳永さん:

当団体では、生まれ育った環境に関係なく、子どもが将来に希望とワクワクを持てる社会を作るというビジョンを掲げておりまして、経済的・環境的に困難を抱える中高生に対してデジタルを活用した伴走支援を提供しています。

具体的には、高校生に対して、3か月間のプログラミング学習支援とキャリア支援を行う「Tech Runway」が主幹事業です。
その他にも、さらにハイレベルなプログラミング学習をしたい子向けの「Tech Runway+」、子どもたちの居場所を作る「よどかわベース」などを中心に、大阪、東京、愛媛県で合計4拠点を運営しています。

当団体名CLACKは、Clash(ぶつかる)+Lack(不足)の造語で、何かが不足している状況に負けじとぶつかっていく決意と、CLACK=苦楽として、苦しさも楽しさも知ったうえで、たくましさとやさしさを持った人になって欲しいという願いが込められています。

CLACKが立ち上がった経緯をお聞かせください。

徳永さん:

立ち上げの原点は、当団体の代表である平井の過去の経験にあります。

平井は、中学生の時に、両親が持つ飲食店がつぶれ、離婚が重なったことにより、相対的な貧困状態を経験しました。

平井自身は、周囲の支えと幼いころから勉学に励んでいたため、進学校に進みましたが、貧困を理由に諦めてきた選択肢もあったといいます。

そのため、自分と同じような境遇で、頑張りたくても頑張れない子どものために、大学在学中から任意団体を立ち上げたのが、CLACKの始まりです。

任意団体として立ち上がったのが2018年、その後も活動を続け、2019年にNPO法人化を果たしました。
最初は平井一人で始まった当団体も、現在は正社員が11名、エンジニアやボランティアも含めると、50人近くの人がCLACKにご協力いただいています。

貧困の連鎖、3つの不足、支援の穴

–CLACKが持つ課題意識について教えてください。

徳永さん:

まず大きな課題として貧困の連鎖があると考えています。

両親の年収が、子どもの大学進学率や学歴に影響を与え、さらには学歴が正規雇用率に影響を及ぼし、年収格差が生まれてしまうのが、今の社会構造です。

当団体としては、この社会構造を変えていきたいという想いがあります。


さらに貧困状態にあることで3つの不足があると考えています。

1つ目が経験の不足で、旅行やアクティビティ、また学習塾に通えないなど、学校外での文化的な経験が不足してしまうこと。

2つ目がつながりの不足として、周囲に同様の家庭環境の大人が多いため、視野が狭まってしまうこと。

3つ目が、考え方の不足、つまり消極的思考に陥るということです。

幼少期からの欲求の抑圧や成功体験の少なさが積み重なって、将来に希望を持てない、自己肯定が低い状態が当たり前になってしまうんです。

また、小中学生に対する支援団体はここ数年で増加傾向にあり、子ども食堂や学習支援団体の輪が広がりつつあります。
これは本当に素晴らしい事ですが、一方で高校生に対する支援が少ないと感じています。

義務教育が終わり、行政の支援から外れてしまうという点でもそうですし、高校生本人も周りに助けを呼ばなくなるんですよね。
自分の家庭・生活環境の課題を、人に打ち明けるのって当事者からすると本当にハードルが高いと思います。
そのため、自身の居場所も見つけることが難しくなり、社会的に孤立してしまう…。

そうした背景があって、CLACKは高校生の支援にフォーカスしています。

デジタルを使った支援により、自分の足で立つ力を

–困難を抱える中高校生へCLACKが果たす役割について教えてください。

徳永さん:

私たちはミッションとして、「困難を抱える中高生にデジタルを使った伴走支援のインフラをつくる」を掲げております。

私たちは経済的困難だけではなく、不登校だったり、いじめられた経験があったりするような、様々な要因で困難がある中高生の力になりたいと考えています。

ただ、実際に困難を抱えている子どもたちに対して、私たちが支援できる期間って人生のほんの一部に過ぎません。

そう考えたときに、例えば子猫に餌をあげるのか、餌の取り方を教えてあげるのかで、将来は大きく変わってくると思うんです。

私たちは自走支援とも呼んでいますが、子どもたちには自分の足で立つ力を身に付けてほしいと考えています。

デジタルやプログラミングのスキルは今後10年、20年で増々不可欠になる能力です。

長く社会に必要とされる人材という意味で、デジタルへの抵抗感を無くし、IT人材の一歩目を進めることのメリットは大きいので、デジタルに特化した支援を行っています。

「出会う」「学ぶ」「実践する」を通して、自走力を身につける

–具体的な事業内容についてお聞かせください。

徳永さん:

私たちの事業は、「出会う」「学ぶ」「実践する」という3つのステップに別れています。
まず1つ目の「出会う」のメイン活動に当たるのが、「よどがわベース」です。

よどがわベースは利用制限も一切なく、学校と家庭以外の第3の居場所になります。

特徴としては、3DプリンターやゲーミングPCなどの最新デジタル機器が置いてある点です。私たちの支援内容でもあるデジタルについて、まずは興味を持ってもらう役割も担っています。

よどがわベースは困難を抱えた中高生が学校や家庭以外の人間と出会う場所であり、CLACKと困難を抱える中高生が出会う場所でもあります。

困難を抱えた中高生を1人にしないために、行政や他団体と協力しながら、出会える仕組みを作っています。

2つ目の「学ぶ」がプログラミング学習支援である「Tech Runway」です。

厳しい環境にいる高校生に対して、完全無料かつPC1台支給の条件で、3か月間にわたるプログラミング学習支援とキャリア支援を行います。

実際に参加者に指導をしているのは、研修を受けたボランティアの大学生達です。
高校生達にとって距離の近い存在になれるよう、少し先のロールモデルである大学生がメンターを担当しています。また、プロのITエンジニアもボランティアとして参加し、参加者の疑問がすぐに解消できるような仕組みを作っています。
Tech Runwayの目的は、プログラミングスキルの習得に加え、IT関連企業の見学や就職、進路についてのワークショップなどを通した、働くイメージの具体化です。

ただ、プログラミングスキルを習得すること自体が最終目標ではなく、Tech Runwayを通して、成功体験を増やしたり、自分で学ぶ力を付けたり、自己肯定感が上がったり。

参加者が自身の将来に希望を持てるような、そんな影響を与えられたらと考えています。

続いてのステップ「実践する」では、クラウド型ソフトウェア提供を行う大手企業と共同で「Be Pro」を行っています。

国内外の多くの企業で導入されているシステムを、学習コンテンツを利用しながら学び、即戦力として働くスキル獲得を目標としているのがBe Proです。

デジタル人材は事業や担当業務のジャンルや分野によって、求められるスキルも知識も異なります。そんな中、特定のシステムを活用できることは1つの武器になると考えられます。

また、「実践する」のステップとしてもう一つ、「クエスト」という事業を行っています。
これは当団体が外部から受注したWeb製作案件に対し、CLACKに所属するSEやデザイナーと共に、Tech Runway修了生が一部の業務に参加するという内容です。

言い換えると、高校生に対するアウトソーシングであり、彼らが自分で学んだ技術によって自分で稼ぐ経験が得られる機会となります。

これらの3つのステップを通して、最後の「自走する」というステップに高校生が至るまでをサポートしています。

Tech Runway参加者の9割が完走、達成できたことで様々な変化が…

–CLACKの事業を通して、参加者へはどのような影響がありましたか。

徳永さん:

大きな要素としては、達成感だと思います。
プログラミングを全くやったことがなかった高校生が、3か月でwebサイトやwebアプリケーションなど何かしらのサービスを作り上げられる事自体が、著しい成長であり、本人たちが抱く達成感、自己有用感も大きいはずです。

またTech Runwayの参加者のうち、9割以上が毎回完走しています。

本人たちからすると、いつでもやめようと思えばやめらえる状況で、学び続けているのは、積極的に楽しんで取り組めている証拠なのかなと思っています。

よどがわベースも含めて考えると、参加者の中には、いじめられた経験を持っていたり、友達も少なかったりする状況の子も多いです。

そういった、最初はコミュニケーションも得意ではない状態で出会って、徐々にメンターや他の参加者と話して、自分を表現できるようになって、というコミュニケーション面での変化も見られます。

Tech Runwayのプログラムを通した影響って沢山あると思うんですが、子どもたちにとって家族でも学校でもない、初めての頼れる居場所や頼れる大人を見つけられたことが、人との接し方だったり、新たな価値観だったりを考えるきっかけになると思います。

日本全国の高校生を支えるインフラになるために

–現在活動を続けている上で、課題に感じていることを教えてください。

徳永さん:

現状の事業規模や拠点数では、支援を届けられる物理的な限界を感じています。

社会を変える、インフラを作るという目標には、まだまだ事業規模を大きくしていく必要があります。

とはいえ、私達も全国展開ができるほど資源、人的リソースに余裕があるわけでないので、まずは当団体の活動の認知を広げて、活動の意義を伝えていければと考えています。

そうして、ステークホルダーの輪が繋がっていければ幸いです。

–今後の展望についてお聞かせください。

徳永さん:

先ほどの課題に対して、まず一つ事業が大きくできるところとして、2025年を目安によどがわベースの東京版をオープン予定です。
現在、東京ではTech Runway、Tech Runway+のみの展開なので、高校生と出会うための居場所を一つ増やすことができます。

また、今後数年間は私たちの事業モデルの検証期間でもあると考えています。
私たちが設定したステップをしっかり体系化し、支援をスムーズに行うための環境や流れを洗練させていく予定です。

そして、ゆくゆくは全国規模で私たちの支援を困難を抱える中高生に届けることが大きな目標となります。

–経済的貧困にある高校生が抱える課題を意識するきっかけになりました。本日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。