河野 優花
1993年10月28日生まれ、熊本県熊本市出身。2016年以降、熊本で起きた大地震や集中豪雨で身近な人々が被害に遭ったことをきっかけに、環境問題を意識するように。2017年から専門商社でサプライチェーンと貿易実務を学ぶ中、旅行で訪れたマレーシアで、イベントを主催していたキュアテックスに出会う。海外とより深く関わる仕事がしたいという思いから、2020年に株式会社キュアテックスへ転職。会長の秘書業務をはじめ、和紙繊維事業の海外営業、ハラールフード事業の営業、海外物流業務、キュアテックスマレーシアのマネジメント、海外イベントの主催など、多岐に渡って従事している。2021年には「循環型未来共創プロジェクト」の運営メンバーに選ばれ、現在プロジェクトを推進中。プロジェクトに参画してくださる方々と共にSDGsを達成すること、そして世界中の人々がより豊かな自然環境の中で、安心・安全に生活できる未来を目指している。
introduction
癒しを意味する「キュア」、糸・織物・生地を表す「テックス」。2つの言葉を組み合わせて名付けられた”株式会社キュアテックス”は、エコロジーをテーマに掲げ、人や地球環境にやさしい製品、サービスを提供することで社会貢献を目指しています。
現在、キュアテックスはSDGs達成に向けて、これまで培ってきた事業の強みを活かした新たなプロジェクトを開始しています。
そこで今回、プロジェクトに尽力する河野優花さんにお話を伺い、キュアテックスが目指す未来についてお話いただきました。
「人と環境を癒す=キュア」を根幹にした事業
–本日は宜しくお願いします。はじめに、事業内容を教えてください。
河野さん:
和紙繊維〈CURETEX®〉製品の製造販売と、キュアフーズというフード事業の2つをメインに進めています。
「エコロジー×機能性」を叶えた和紙繊維製品
–では1つずつ詳しくお話を伺っていきたいと思います。まず、和紙繊維製品の事業について教えてください。
河野さん:
和紙100%で出来たストール、ハンカチ用の薄地製品から綿混、麻混など他の繊維との組み合わせによるファブリック製品を製造し、企業様向けと個人の方々に販売しています。
製品は、製紙会社から仕入れた和紙を独自製法で糸にし、それを生地にして作っています。製造過程にとても長い時間を要しますが、その分、和紙の特徴が十分に活かされたものに仕上がります。
–なぜ和紙に注目されたのでしょうか。
河野さん:
私たちは人と環境にやさしいものづくりを目指しており、和紙は、これを実現できると感じました。
–どのような面からそう感じたのでしょうか?
河野さん:
私たちが取り扱う和紙繊維〈CURETEX®〉は、マニラ麻という天然の多年生植物を使用し、独自製法により、環境に負荷をかけずに和紙繊維製品をご提供できます。
さらに和紙繊維〈CURETEX®〉は土に還る生分解性があるため、早ければ1か月で土に還り、土壌改良効果もあるので、製品を使い終わった後も環境負荷をかけずに済むんです。
–土に還るとは驚きです!ゴミが出ないんですね!ちなみに人に対してはどのようなメリットがあるのでしょう?
河野さん:
和紙繊維〈CURETEX®〉は機能性にも優れています。例えば消臭、抗菌抗ウイルス、UVカット効果が期待できます。さらには、調温調湿効果もあるためサラッとした肌触りを実感できるんです。
–特徴や効果を伺っていると和紙製品が気になってきます。身近に取り入れられる製品はありますか。
河野さん:
ご好評頂いているのが和紙100%でできたマスクです。
和紙でできたマスクと聞くと、使い捨てなの?と思う方もいるかもしれませんが、何度も洗って使える上に、抗菌、抗ウイルス、調温調湿といった機能性も持続します。
乾燥に悩む方や敏感肌の方はもちろん、あらゆる方にお使い頂けます。もちろん、こちらも土に還るのでゴミが出ないんですよ。
–まさにエコロジーと機能性を同時に叶えた製品ですね!
垣根を越えて食事を楽しみたい「キュアフーズ事業」
–続いてはキュアフーズ事業についてお伺いします。2018年に立ち上げられたということですが、具体的な内容を教えてください。
河野さん:
はい。イスラム教を信仰しているムスリムの方々が、日本を訪れた際に食べられるハラールフードというものを輸入、もしくは国内製造し、ホテルやレストラン、百貨店向けに販売しています。
–ハラールフードとはどのような食べ物なのでしょうか。
河野さん:
イスラム教を信仰するムスリムの人々が食べられるものです。イスラム教は食習慣に関しては豚肉、アルコールを口にすることを禁止されています。また、豚肉以外の食材にも決まりがあります。
–世界には様々な食習慣がある中で、なぜムスリムの方々に注目されたのでしょうか。
河野さん:
私どもの会社は、ムスリムの方々が多くいらっしゃるマレーシアやシンガポールと繋がりが深いんです。その方々が来日された際、”食べられるものを見つけられない”、”入れるお店がない”と、お食事に困っている姿を見てきました。
それがきっかけで、生活習慣の違いという垣根を越えて一緒に食事を楽しめるようにと願いを込めてキュアフーズ事業を始めました。
また最近では、ヴィーガンやグルテンフリーなど、より食の多様性に配慮した商品も展開し、注目を集めています。
このように幅広い方に楽しんで頂きたいという思いもあり、事業を展開しています。
–和紙繊維とキュアフーズ、どちらの事業も人と環境に配慮されていますね。
河野さん:
はい。私たちの社名に”癒し”を意味する「キュア」という言葉が入っているように、人と環境にやさしいものづくりにこだわることが、事業の根幹なんです。
事業を組み合わせて始まったプロジェクト。SDGs達成に向けたキュアテックスの挑戦
–これまで伺ってきた2つの事業それぞれがSDGsで言うと環境、社会という部分に貢献されています。加えて新たにSDGsの達成に向けたプロジェクトが始まっているとお聞きしました。詳しく教えて頂けますか。
河野さん:
はい。様々な企業と連携してSDGs達成を目指す”循環型未来共創プロジェクト”というものを立ち上げました。
パートナーシップでSDGs達成を目指す「循環型未来共創プロジェクト」
–どのようなプロジェクトなのでしょうか。
河野さん:
企業、団体、自治体にキュアテックスの製品を導入、活用していただき、“ものを捨てずに循環させる”社会を広める取り組みです。
–なぜ循環に注目されたのでしょうか。
河野さん:
私たちの事業である、和紙繊維とキュアフーズは互いに循環しています。
先ほど、和紙は土に還り土壌改良効果があるとお話しました。製品の製造過程で出る余った生地や回収後の製品を土に還して、そこでキュアフーズで提供する野菜を育てます。
こうした循環型の仕組みに共感頂いた企業、団体、自治体とパートナーシップを結び、それぞれの知見を交換したり、それぞれが持つネットワークを活かしながら、SDGsの達成を目指しています。
–連携を結んだパートナーはどのような取り組みを始められるのでしょうか。
河野さん:
製品開発からソーシャルビジネスに至るまで、包括的にSDGsの達成に貢献できるプロジェクトを共同で行う予定です。また、パートナーシップを結ばなくても、店舗やオフィス用品を〈CURETEX®〉製品に替えていただけます。
使い終わった製品は回収し、提携ファームで土に還し、そこで収穫された食材を社員食堂や福利厚生にご活用いただきます。
こうしてできた食材は、宮崎県にあるテストファームで生分解させながら、農薬を頼らず育てられます。安心・安全で栄養価の高い野菜なので健康にとても良いんです。
身近な製品をキュアテックスの和紙繊維製品に「SDGsアクション」
–オフィスで使っていたものが食材となって返ってくる、まさに循環ですね。
現在、多くの企業・団体が協賛していると伺いました。パートナーになっていただく際はどのようなアプローチをされているのでしょうか。
河野さん:
「SDGsに取り組みたいけどどう行動を起こせばいいか分からない」という方は多いと思います。
そのため、難しい言葉は使わずに「身近なものを和紙繊維〈CURETEX®〉製品に変えるだけで、気軽にSDGsに取り組めますよ」とお伝えします。プロジェクトの中では”SDGsアクション”と呼んでいます。
例えば、化繊のコースターを使われている飲食店には、和紙製に替えるだけでゴミが減って焼却する必要がなくなる、そうすることで”二酸化炭素排出量が減らせて温暖化対策、脱炭素社会の実現に貢献できます”とご説明します。
まずは簡単なことからチャレンジしてみようと意識していただけたら嬉しいです。
–協賛企業が増えてプロジェクトが広まることで、循環型社会の実現に大きく前進しますね!
「ひとつのきっかけにしてほしい」活動を通して伝えたい思い
–SDGs達成に向けて様々な取り組みをされていますが、何か実感された変化などはありますか。
河野さん:
先日、循環型未来共創プロジェクトの一環で、一般の方々が参加できる展示会に出展しました。ここには多くの子どもたちが参加してくれ、和紙が土に還る様子を見ると「土に還る!すごい!」「ゴミが出ないね!」と興味津々でした。
–子どもたちにとって大発見ですよね!
河野さん:
そうなんです。ゴミが出ていないことに感動している様子を見て、子どもたちは環境に興味を持って生活しているんだなと気付かされました。
また、プロジェクトに関わらせて頂いた私自身も、お買い物をする際に「これは環境にやさしいかな?」と意識するようになりました。
–河野さんご自身にも心境の変化があったんですね。
河野さん:
変わりましたね。
私は熊本出身ですが、地震とか集中豪雨を身近な人たちが経験しました。そこで、「いよいよしっかりと環境に向き合わないといけない」、「地球と仲良くしていかなければ」と感じた一方で、じゃあどうすればいい?と、何から始めていいのか分からなかったんです。
–きっと多くの方が、もともと河野さんが抱いていたもどかしい想いを抱えているんじゃないかなと思います。
河野さん:
そうですね。実際に展示会でお会いした方やお客様の中に、「SDGsに取り組みたいけれども、何から手をつけていいか分からない」という方が多くいらっしゃいました。
だからこそ、循環型未来共創プロジェクトを通じて、だれでも簡単に取り組めるSDGsアクションを広めることは必要だなと感じています。
身の回りの製品をすべて〈CURETEX®〉製品に統一することは、簡単に実現することではないと思っています。
けれども、私たちの活動を通じて、ゴミを出さない方法は難しいことじゃないんだよ、だれでもSDGs達成に向けて行動を起こせるんだよ、と理解していただくことで、少しでも環境にやさしいものを選ぶきっかけにして頂きたいですし、それが私たちの活動意義だと思っています。
日本の伝統文化を通してSDGs達成を目指す
–最後に、今後の展望を教えてください。
河野さん:
はい。循環型未来共創プロジェクトは、様々な企業や団体、学生の方や自治体との連携があってこそ成り立ちます。私たち自身ももっと勉強が必要なので、パートナーシップを結んで、より内容の濃いものを創り上げていきたいですし、SDGsの達成に向けた取り組みを積極的に行っていきます。
また、2025年に大阪・関西万博があります。その中で「いのち輝く未来社会のデザイン」という万博のテーマに合わせた取り組みを行っている企業団体が登録される”共創チャレンジ”というものがあります。
そこに、私たちのプロジェクトが2021年4月に登録されました。
まずは、その万博開催までに成果を積み上げ、和紙繊維〈CURETEX®〉を活かしたプロジェクトを通じて、世界中に日本の伝統文化や魅力を発信することが目標です。
–3年後ですね。楽しみにしています。本日はありがとうございました!
取材/執筆 Mayu Nishimura
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