#インタビュー

株式会社Freewill|消費者が「無意識のうちに」地球環境を改善できる世界を創る

株式会社Freewill 取締役&CMO&広報担当 白木さん インタビュー

白木 賀南子

幼少期をロサンゼルスで過ごし、東京外国語大学英語専攻を卒業後、IT企業へ入社。ヘルプデスク&インストラクターとして、ヘルプデスクの立ち上げや内部統制・運用改善プロジェクトに従事。採用、新入社員・リーダー教育などの人材育成にも注力。 2015年に独立し、外資系企業の広報マーケティング担当、イベント運営・司会業、出版プロデューサーなどの仕事を経て、2019年よりFreewill,Inc. 取締役兼CMOに就任。二児の母であり、Freewill, Inc. の人材育成にも携わる。広報担当として、社会課題の解決とSDGsを達成する新たなエコシステム”Sustainable eco Society”の形成への貢献を目指している。

introduction

株式会社Freewillは、2019年に現在の社名に改称したICT事業に携わる会社です。改称前から数えると17期目であり、ITによる企業のグローバル支援、DX支援、マネージドサービスやコンサルティング、ITの運用・改善などの事業に携わっています。

株式会社FreewillはSDGsという言葉が広く注目されるよりも前から、関連する事業に取り組んでいます。今回、取締役かつCMO兼広報担当である白木さんに、エシカルオンラインマーケット「tells market」を中心にお話を伺いました。

100年先まで残したい商品が集まるtells market

本日はよろしくお願いします。まずはじめに、事業内容について教えてください。

白木さん:

私たちはデザイン的思考と、ITをはじめとしたテクノロジーとを組み合わせて、クライアントの課題を一緒に解決するコンサルティング事業をメインとしています。

今まで、エネルギー関連、金融機関、製薬企業、電子機器メーカー等、様々な業種で活躍する企業をサポートしてきました。課題を見つけるところから、AI技術などを駆使したIT戦略の立案、プログラム設計、運用保守までワンストップで行うことができるのが強みです。

課題解決まで一貫して伴走して下さるのは心強いですね。

白木さん:

そうですね。また最近は、弊社が2021年10月にオープンした、買い物をするだけで森が増えるエシカルオンラインマーケット「tells market」も大変ご好評をいただいています。

tells marketとはどのようなサービスですか?

白木さん:

tells marketは、お客様が買い物をするだけで森が増えていく「エシカルオンラインマーケットサービス」です。「エシカルには物語がある」がコンセプトで、商品も、サービスも「100年先まで残したいものを伝える」という意味が込められています。

エシカル(ethical)とは

エシカルとは、「倫理的・道徳的な」という意味を持つ形容詞です。最近は、SDGs等への注目が高まるにつれて、「人や、地域・社会全体、地球環境について十分配慮されたモノを購入・消費すること」という意味合いがあります。

tells marketは、弊社がプラットフォームを作り、出店者とお客様を繋ぐイメージの構造です。エシカルやサステナブルな観点を考慮した商品を扱っている企業やブランドに、こちらからお声がけして、掲載に賛同していただいた企業の商品を掲載しています。

tells marketを訪れれば、様々な環境に優しい商品を一度にたくさん見ることができるのですね。掲載にあたってはどのような基準を設けていますか。

白木さん:

基準としては、商品が環境に優しい素材から作られているとか、製造工程が明らかであるとかだけでなく、生産者の想いやなぜその製品を作ったのかというストーリーを重視しています。

商品紹介ページには必ず「ストーリー」を

具体的にどのような商品を扱っているのでしょうか。

白木さん:

例えば、「100年先まで受け継ぎたいモノ」として、伝統工芸品を取り扱っています。

伝統工芸の業界では、後継者や経営面で課題を抱えている職人さんも少なくはありません。広告費を捻出したり、新しいオンラインショップをオープンしたりすることも難しいため、若い人たちに知ってもらえていないという問題もあると思いますが、tells marketで少しでも多くの方に想いを届けて、販路の拡大になればと思っています。

確かに、伝統工芸品を手にする機会は少ないかもしれません。

白木さん:

他にも、環境に配慮した商品も多数扱っています。「アップルリュック」は廃棄されたリンゴの皮から作られていますし、「サボテンレザー」というアニマルフリーのレザーを使っているんですよ。先程の伝統工芸品も地方創生につながるなど、広い意味でSDGsに関わった商品を取り扱っています。

私たちは、本当に良いものを多くの方に紹介したいと考えているので、前述した職人の方々でも掲載しやすいよう、初期費用や月額費用は一切いただいていません。

モノが売れたときだけ手数料をいただく仕組みを採用し、掲載ハードルを下げることで、商品が持つストーリーをたくさんの方に知っていただきたいと考えています。

商品の持つストーリーを伝える、とても素敵なコンセプトですね。

白木さん:

ありがとうございます。商品を掲載する際には、製作者の方にヒアリングをして、そこに込めた想いを必ず紹介ページに添えるようにしています。これがまた大変で(笑)。

例えば「ぶどうのかご」は孫の代まで100年間も使えるバッグで、使い込むにつれて、だんだん色味が変わって風合いがよくなるんですよ。最高齢82歳のおじいちゃんたちが5mもの木に登りツルを採り、群馬の小さなアトリエで手作業でカットして編んでいきます。

商品の特長だけでなく、どんな方がどんな想いで作っているかを知れるのはいいですね。

白木さん:

ただ、希少価値があるため価格が高く、手を出すには勇気のいるものも中にはあります。価格の裏にある価値をどう伝えるのかというのは、現在の課題であり、伝え方を探すことにやりがいも感じています。

商品を出品した方からの反応はいかがでしょうか?

白木さん:

tells marketのようなサービスを待っていたと言ってくださる方が非常に多く、嬉しい限りですね。他のマーケットプレイスだと手数料が高く出店しにくいという声をよく聞きます。また、なぜ商品を作ったのかというストーリーを大切にして、消費者に伝えたいという弊社のスタンスに共感される方も多いですね。

購入者の反応はいかがでしょうか?

白木さん:

商品にご満足いただいたという声も多いですが、実は「サイトがおしゃれで素敵!」というご感想も、本当によくいただくんです。

tells marketは、トルコ人のメットというデザイナーがCDOとしてサービス全体のデザインを担当しています。無理に「地球にやさしい」というのを押し付ける感じではなく、自然と商品に対するストーリーが伝わってくるのが特長です。

おしゃれなサイトに素敵な商品が並んでいると、眺めているだけでワクワクして幸せな気分になりますもんね。何度もサイトを訪れたくなっちゃいます。

買い物をするだけで、地球に”いいこと”がどんどん起きる

tells marketは「お買い物をするだけで森林が増えていく」とお伺いしましたが、どのような仕組みなのでしょうか。

白木さん:

お客様には、お買い物金額の1%が「サステナブル・エコ・コイン」として付与されます。このコインは、よくあるお買い物ポイントのように次回の商品購入の際に活用することも可能です。コインが1か月で失効すると「森の苗木」に変わります。

「森の苗木」としてストックされたコインは、1サステナブル・エコ・コインにつき1円分が地球環境を改善するための団体の活動に寄付される仕組みです。

地球の才能を育む、弊社のストーリーファンディングサービス「SPIN」でも、同じ仕組みを活用しています。

具体的には、どのような団体に寄付されているのでしょうか。

白木さん:

現在は、坂本龍一さんが代表されている森林保全団体の「more trees(モアトゥリーズ)」や、本国ではハリソン・フォード氏が理事を務めている国際NGO「コンサベーション・インターナショナル」の日本支部に寄付しています。将来的には、海の生物を守るための活動や、気象変動に関する活動など、様々な国際NGOやNPOに寄付していきたいと思っています。

「知らず知らずのうちに貢献していた」くらいがちょうどいい

ITやAIに強い企業だということを忘れてしまいそうなくらい、環境を守る活動にも力を入れていらっしゃるのですね。

白木さん:

そうですね。弊社は従来の企業とは違う、利益主義からの脱却を目指しています。

例えば株式会社の場合は、事業で得た利益を株主に還元しますよね。一方で弊社の場合は、株主への配当金をなくして、計上された利益をソーシャルサービスや自社の独自のサービスの開発費用に充てているんですよ。

なぜそのような形を取ったのでしょうか。

白木さん:

環境問題を解決するのに時間をかけてはいけない、という創業者の想いが背景にあるからだと思います。

ぜひ詳しくお聞かせください。

白木さん:

ファウンダー(創業者)兼CEOであるToshi Asaba(麻場俊行)が19歳の頃に、バックパッカーとして世界40ヶ国以上を回りました。今から20年以上前のことですが、日本など大量生産や大量消費をしている資本主義の国々の裏側で、長時間労働や子どもの就労問題といった課題はすでに起きていて、とても深刻な状況でした。

Asabaは「こうした状況はよくない」と思い立ち、ボランティアではなくビジネスとして、現在のSDGsにまつわる諸問題を解決できないかと、模索していました。

そして、シリコンバレーに住んでいる会長のHal Amano(天野雅晴)と出会い、ITの力で、消費者が「無意識のうちに」世界中に潜む課題を解決できる仕組みづくりをスタートしたのです。

どうして「無意識」であることが大事なのでしょうか?

白木さん:

より早い問題解決には、無意識のうちにSDGsに貢献できる仕組みが必要だと考えているからです。

今までの生活に追加したり、生活を一変させたりして、環境に良い選択をすることは、決して悪いことではありません。ただ、そのような方法だと、取り入れるのにハードルが高くなり、良い選択が普及して地球環境が改善されるまでに時間がかかりすぎてしまうんです。

確かにエコバッグの普及も、レジ袋が有料化される前は、進捗がゆっくりでしたね。

白木さん:

そうなんです。そこで、消費者の生活は変えずに仕組みで解決することにしたんです。例えば商品を購入すると、知らないうちに森林が増えているとか、地球の裏側で起きている貧困問題がいつの間にか改善しているとか。弊社の tells market やSPINといったサービスも、「無意識のうちの環境貢献」という考え方から生まれました。

世の中に本当に必要とされるサービスを作るために、利益を株主への配当ではなく各種サービスへの投資に使うことにしているんですよ。

納得しました。それにしても、SDGsの考え方が普及する前から、このようなプロジェクト支援の活動をなさっていたのはすごいですね。

白木さん:

SDGsへの注目が集まったのは弊社としても喜ばしいことでした。

注目度が高まるにつれて、プロジェクトの支援に興味を持ってくださる方も増えます。表面上は取り組んでいると高らかに宣言しつつ、実態は何もしていない団体が出てくる可能性もあります。

そのため、弊社のSPINでスタートするプロジェクトは必ず、各プロジェクトがSDGsのどのゴールに該当するか明記するようにしています。

別の例では、フィリピンのコーヒー農家を支援するプロジェクトには、SDGsの項目「1. 貧困をなくそう」「9. 産業と技術革新の基盤を作ろう」「13. 気候変動に具体的な対策を」といったように、活動に関わるゴールはすべて表記しています。

自分が支援したいゴールに関係している事案なのか、知ることができていいですね。

白木さん:

そうですね。きちんと取り組み内容を確認した上で掲載していますので、安心して支援していただくことにも繋がっているかと思います。

体験・モノづくり・出会いの場を提供できるプラットフォームに

最後に、今後の展望について教えてください。

白木さん:

tells marketに関しては、商品を購入する場としてだけでなく、体験する、モノを作る、出会いを提供するといった項目を増やす予定です。

例えば、実際に伝統技術を体験できるワークショップを開催したり、モノを作るレッスンを販売できるようにしたり、美術品など高額な商品をレンタルしたりするなど、人と人とが出会えるプラットフォームにしたいと思います。

近々開催予定のイベントなどはありますか。

白木さん:

渋谷の「Trunk Hotel」というサステナブルホテルで、今年9月のグランドオープンの際に、環境やSDGsをあまり意識していなかったという方向けの大きなイベントを開催する予定です。

それは楽しみですね。どのようなイベントが行われるのですか?

白木さん:

「100年先まで残したいモノ」をテーマにサステナブルな未来に向けたイノベーション、エシカルショッピングやライブショーなど、おしゃれで楽しいイベントを計画しています。その場で商品と出会い、購入したら、無意識のうちに地球環境が改善しているという、弊社のテーマをそのまま体感していただけるような場にする予定です。

海外展開なども考えているのでしょうか?

白木さん:

はい。単にエシカルショップではなく、世界中の方々との出会いの場をプラットフォーム上で実現するよう、開発を進めています。英語に対応したシステムを作ることで、国内の商品を海外に発送したり、逆に海外の商品を日本で購入できたりするなど、世界との懸け橋になれるようなサービスの開発を目標にしています。

本日は、貴重なお話をありがとうございました!

関連リンク

株式会社Freewill HP:https://www.free-will.co/

tells market:https://tells-market.com/

spin:https://spin-project.org