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グレートリセットとは?何が起こる?私たちが備えておくべきことは?

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「グレートリセット」って何?聞いたことはあるけど、よくわかってない…

グレートリセットが実現すれば、私たちの生活は大きく変わるでしょう。しかし、グレートリセットについて、しっかりと理解している人はまだ多くありません。

グレートリセットは、持続可能な世界のために必要とされる概念の1つです。グレートリセットによって何が起こるか、私たちが備えておくべきことは何か、社会への貢献とあなたの生活のリスク対策のために必ず知っておくべき内容です。

グレートリセットについて必要な知識を、わかりやすく解説します。

グレートリセットとは

グレートリセットとは一般的に、2020年に開催された世界経済フォーラムの会議の名前です。

この会議では、現在の社会のさまざまなシステム(例えば、金融や経済など)を一度リセットし、再構築することについて話し合われました。

グレートリセットの目的は、より公平で持続可能な社会を実現することです。ただし、「グレートリセット」は本来は会議の名前であり、実際に社会をリセットする具体的な計画があるわけではありません。

「持続可能な社会の実現には、今の社会の仕組みを大きく変革する必要がある」という概念が「グレートリセット」です。しかし現在では、この言葉は「社会を根本的にリセットして再構築すること」を指す場合にも使われます。

2020年世界経済フォーラムがグレートリセットと呼ばれる理由

2020年に開催された世界経済フォーラムの会議では、「グレートリセット」という概念について議論されました。この概念は、新型コロナウイルスパンデミックが引き起こした経済的な混乱や社会的な課題に対処するために、経済システムや社会システムを再構築する必要があるという考えに基づいています。

そもそも世界経済フォーラム(WEF)は、世界の重要な問題や課題について議論し、解決策を見つけるため、スイスのダボスで毎年開催される国際的な会議です。世界中から経済界や政治界のリーダー、学者、NGOの代表などが集まり、経済成長や貧困削減、気候変動、技術革新など、重要な社会問題について話し合っています。

【シュワブ世界経済フォーラム(WEF)会長と岸田首相】

グレートリセットという呼び方は、世界経済フォーラム(WEF)の創設者兼会長であるクラウス・シュワブ教授※が、2020年6月に発表した論文の中で初めて使用されました。

シュワブ教授は、この論文の中で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって、世界経済や社会が大きな打撃を受けたことを指摘し、このパンデミックをきっかけに、社会の仕組みや価値観を根本から見直し、より持続可能で公正な社会を構築する必要があると主張しました。

この考えに基づいて、シュワブ教授は、新型コロナウイルス感染症パンデミック後の社会を「グレートリセット」と呼びました。そして、この概念を広めるために、WEFの年次総会であるダボス会議で「グレートリセット」をテーマとした議論を促進しました。

また、シュワブ教授は、グレートリセットを「パンデミックによって引き起こされた危機を乗り越え、より持続可能で公正な社会を実現するための取り組み」と定義しています。この定義に基づくと、グレートリセットは、新型コロナウイルス感染症パンデミック後の社会だけを対象としているわけではありません。

しかし、新型コロナウイルス感染症パンデミックは、グレートリセットを実現するための重要な契機となりました。

クラウス・シュワブ教授

世界経済フォーラムの創設者であり、グレートリセットの提唱者。シュワブ教授は、デジタル技術の進歩や第四次産業革命の到来により、社会や経済の変革が加速していると指摘しており、この変革に対応するためには、新たなガバナンスの枠組みやルールが必要とされると主張している。

ただし、グレートリセットは世界経済フォーラムの提案の1つであり、実際にどのような形で進展するかはまだ明確ではありません。また、この概念には賛否両論があり、異なる意見や解釈が存在します。

重要なのは、この議論が持続可能な発展や共同の目標に向けた対話や行動を促進することであり、具体的な政策や取り組みが進展していくことです。*1)

グレートリセット実現のために必要なこと

グレートリセットは、より持続可能で公平な社会の実現を目指す取り組みです。グレートリセットを実現するためには、

  1. サーキュラーエコノミーの推進
  2. デジタル技術の活用
  3. 社会包摂の推進
  4. グローバルガバナンスの強化

という4つの要素が不可欠です。

サーキュラーエコノミーの推進

サーキュラーエコノミーとは、従来の使い捨ての経済(線型経済:リニアエコノミー)から脱却し、資源を循環させて利用する経済(循環型経済:サーキュラーエコノミー)です。

サーキュラーエコノミーでは、

  • 再生可能エネルギーへの移行
  • 資源の循環利用の促進
  • 廃棄物の削減

などにより、資源や製品を、できる限り長く、繰り返し使えるようにすることで、廃棄物を減らし、資源の循環を促進します。

再生可能エネルギーへの移行

気候変動は地球規模の非常に深刻な問題です。持続可能な社会の実現のためには、気候変動への具体的な対策が必要です。

例えば、従来主要なエネルギーとして流用されてきた石炭や石油などの化石燃料は、地球温暖化の原因となる温室効果ガスを排出します。そのため、化石燃料に依存した社会のままでは、気候変動対策は困難です。

一方、再生可能エネルギーは、太陽光や風力などの自然エネルギーを利用するため、温室効果ガスを排出しません。そのため、再生可能エネルギーを普及させることで、気候変動対策に大きく貢献することができます。

【関連記事】GX(グリーントランスフォーメーション)とは?企業の取り組み事例や最新動向も

資源の循環利用の促進と廃棄物の削減の具体例:プラスチックとサーキュラーエコノミー

プラスチックは石油などの化石燃料から製造されるため、限りある資源です。また、プラスチックは、自然界で分解されないため、不適切に廃棄されると海洋や陸地に長期間残り、環境汚染や生態系への悪影響を及ぼします。

プラスチックごみ問題の解決には、サーキュラーエコノミーの考え方が欠かせません。サーキュラーエコノミーの推進により、使用済みプラスチックを資源として回収し、再利用することで、

  • プラスチックごみを削減
  • 資源の節約
  • 環境負荷の低減

などにつながります。これまで、

  • プラスチックの種類や品質が非常に多い
  • リサイクルにかかるコストが高い
  • リサイクルの技術の限界
  • 消費者のプラスチック回収への意識の低さ

などの要因によって、リサイクルが難しかったプラスチックの循環利用が、技術開発や企業・消費者双方の意識の変革によって可能になりつつあります。今後私たちは、プラスチックという素材への考え方を「循環利用できる貴重な資源」と改める必要があります。

使用済みのプラスチック製品は、ルールに従って適切に処分する習慣をつけましょう。

【関連記事】サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは?リサイクルやリユースとの関係と取り組み事例

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デジタル技術の活用

デジタル技術は、グレートリセットの実現に欠かせないものです。デジタル技術を活用することで、

  • ビジネスプロセスやサービスの効率化:通勤時間や移動コストを削減
  • デジタルプラットフォームの活用:人々や企業をつなげ、資源の効率的活用や物品の共有を促進
  • 教育とスキル開発:広範な人々が教育を受ける機会を得る
  • デジタルデータの活用:意思決定や政策立案のための貴重な情報源
  • グリーンテクノロジーの推進:エネルギーの効率的利用や再生可能エネルギーの活用促進

などの、重要な役割を果たします。

【コロナ禍で進んだ様々な変化】

新型コロナウイルスによるパンデミックでも、私たちはデジタル化において大きな変化を経験しました。この変化は今後も続いていくと考えられます。

社会的包摂の推進

社会的包摂とは、すべての人が、性別、年齢、障害、国籍、民族、宗教、経済状況など、さまざまな違いにかかわらず、社会に参加できる機会や資源を平等に享受できる状態のことです。世界中の全ての人が、社会の一員として、尊厳と権利をもって生きる権利があります。

社会的包摂により、

  • すべての人が経済活動に参加し、能力を最大限に活かす
  • 社会の均衡と安定を促進し、社会的な不平等や格差を解消する
  • 貧困や社会的な排除のリスクが低減される
  • 教育や健康の普及にも力を入れることで、人々の能力や健康状態が向上

などの効果が期待できます。これらは社会の持続可能性を促進します。

社会的包摂のためには、

  • 教育の機会均等化:すべての子供が高品質な教育を受けることができる
  • 就労の機会均等化:すべての人が仕事に参加し、自立して生活できる機会を持つ
  • 社会的なつながりの促進:人々がお互いを理解し、支え合う
  • 公共サービスの普及:すべての人が公平にアクセスできる

などが必要です。しかし、ここでの「均等化」は共産主義や社会主義の社会で目指されるものとは違います。「全ての人が、それぞれの特性を活かし、活躍することで適切な評価を受けることができる社会」と考えましょう。

【日本の経営に必要なインクルージョン(包摂)の実現】

上の図は、社会的包摂の上で欠かせない「インクルージョン」※を説明しています。インクルージョンが実現することで、誰もが生き生きと暮らせる社会を創ることができます。

インクルージョン

本来は「混入物」や「異物」を意味する言葉。しかし、社会的包摂においては、誰もが社会の一員として受け入れられ、参画する機会を持つことを意味する。これは、社会的包摂の理念が「あらゆる人々が、その多様性を尊重され、社会の一員として活躍できる社会」であるためで、社会的包摂におけるインクルージョンは、差別の解消・機会の均等化・社会的なつながりの促進の3つの要素によって構成される。

グローバルガバナンスの強化

ガバナンスとは、組織や社会の運営や管理を指す言葉です。具体的には、意思決定のプロセスや権限の配分、ルールや規範の策定、監督・評価の仕組みなどが含まれます。ガバナンスの目的は、公正性や透明性、責任の明確化など、組織や社会の健全な運営を実現することです。

グローバルガバナンスは、国際的な問題や課題に対して、国家や国際組織、市民社会などが協力して取り組む仕組みや枠組みのことを指します。具体的には、国際連合(UN)や世界貿易機関(WTO)などの国際組織や、G7やG20などの国際会議が挙げられます。

グローバルガバナンスの強化は、

  • 国際問題の解決:国家や地域を超えた問題に取り組む
  • 国際経済の安定:国際的な経済ルールの策定や取り決めを行う
  • 国際的な平和と安全:国際的な安全保障の枠組みや協力体制を整備
  • 公正な社会の構築:社会的な課題や格差の解消

などの取り組みを進めるために不可欠です。

【日本国内のコーポレートガバナンスの実務指針】

上の図は日本国内においてのコーポレートガバナンス※を実質化するための指針です。グローバルガバナンスの強化においても、同様な取り組みを国際的な規模で求められます。

コーポレートガバナンス

企業の経営を適切に行うための仕組み。株主、取締役会、監査役会などの機関が、それぞれの役割を果たし、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図る。

グレートリセットは、単なる経済や社会の復興ではなく、より良い未来を築くための大きな転換を意味しています。経済成長や利益追求のみに焦点を当てる従来のアプローチから脱却し、環境保護や社会的公正、技術の活用など、より広い視野で社会の課題に取り組むことを提唱しています。*2)

グレートリセットが注目されている背景

近年、世界はさまざまな課題に直面しています。「グレートリセット」が注目されている背景には、

  • 新型コロナウイルス感染症などのパンデミック
  • 気候変動や環境汚染などの環境問題
  • 格差の拡大や貧困などの社会問題

などがあります。

ダボス会議で「グレートリセット」について議論される

冒頭でもお伝えしたように、2020年、世界経済フォーラム(WEF)の年次総会であるダボス会議で、「グレートリセット」という概念が取り上げられました。この議論は世界中の人々の注目を集め、グレートリセットへの関心が高まりました。

新型コロナウイルス感染症などのパンデミック

新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は、社会や経済に大きな影響を与えました。感染拡大を防ぐためのロックダウンや制限措置は、多くの企業や労働者に打撃を与え、経済の停滞や雇用の減少を引き起こしました。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックをきっかけに、社会を根本的に再構築するという「グレートリセット」という考え方は、このパンデミックによって打撃を受けた人々にとって非常に興味深いものでした。

気候変動や環境汚染などの環境問題

 地球温暖化や環境汚染は、持続可能な未来を脅かす重要な問題です。森林の伐採や化石燃料の使用による二酸化炭素の排出などが、気候変動を引き起こし、生態系や生物多様性にも悪影響を与えています。

これらを解決するためには、大きな社会のシステムの変革が必要と考える人が増加し、グレートリセットは注目を浴びました。

格差の拡大や貧困などの社会問題

経済成長の恩恵が一部の富裕層に偏り、格差が拡大しているという社会問題があります。貧困や社会的排除は、人々の生活や機会に大きな影響を与えており、社会の不安定化や不平等を引き起こす要因となっています。

グレートリセットによって、これらの問題を解決できるのか、現在でも議論が続いています。

陰謀論の存在

新型コロナウイルスのパンデミックやグレートリセットに対して、さまざまな陰謀論が流布しています。この陰謀論は、世界を支配する少数の人々が、一般人には知らされていない計画を実行しているという考えに基づいています。

このような考え方は、世界に対する不信感や不安を抱いている人々に受け入れられやすい傾向があります。しかし、次の章で詳しく解説しますが、陰謀論は事実に基づいていないことが多いため、グレートリセットに関する情報を得る際には、冷静に判断することが重要です。

この、グレートリセットが注目される背景の1つとも言える陰謀論について、次の章でもう少し詳しく知っておきましょう。*3)

グレートリセットに対する陰謀論

グレートリセットは、世界の経済や社会をより持続可能なものにするための提案です。しかし、陰謀論によって誤解され、批判されることもあります。

グレートリセットに対する陰謀論とは、世界を支配する少数の人々が、

  • 世界経済を支配するために、パンデミックを意図的に引き起こした
  • 世界経済フォーラム(WEF)が、パンデミックを利用して、世界を支配する新世界秩序を実現しようとしている

などの主張です。これらの陰謀論は、パンデミックによる社会の混乱と世界経済フォーラム(WEF)の活動に対する不信感により生まれ、メディアによって拡散されたことにより広まったと考えられています。

グレートリセットと陰謀論

一部のアメリカの極右派※や保守派※の人々が、グレートリセットフォーラム※が始まると同時に、陰謀論を広め始めたと言われています。さらに、一部の指導者が「リセット」という考え方を採用したことによって、この陰謀論はますます広まりました。

しかし、世界経済フォーラム(WEF)が、パンデミックを利用して世界を支配しようとしているという証拠はなく、一般的にはフェイクニュースとされています。この陰謀論は、Twitterや8kun※などで広まっていますが、これらの情報は信頼性に欠ける場合があり、注意が必要です。

極右派

伝統的な価値観やナショナリズム、民族主義、排他主義などを重視し、しばしば反移民や反多文化主義の立場を取る政治的意見を持った人々。一部の極右派は、暴力や過激な手段を使用して政治的な目標を達成しようとすることもあるが、極右派の意見や行動は多様であり、一括りにすることはできない。

保守派

伝統的な価値観や社会の安定、個人の自由と責任、小さな政府を重視し、社会の変化や急進的な政策に慎重な姿勢を持つ人々。伝統や文化の保護、経済の自由市場原則の支持を主張する。保守派の意見や主張も多様であり、一括りにすることはできない。

グレートリセットフォーラム

世界経済フォーラム(WEF)が主催する、グレートリセットの実現に向けた議論や提言を行う会議。グレートリセットフォーラムは、グレートリセットの実現に向けた重要な取り組みとして、今後も継続的に開催される予定。

8kun(旧称:8chan)

匿名掲示板サイトの1つ。ユーザーは特定のトピックに関するスレッドを作成し、テキストや画像を投稿することができる。自由な表現を重視し、ユーザーが匿名で意見を交換できる場として知られている一方、過激なコンテンツや違法行為の推奨も見られるため、注意が必要。

このような情報に対しては、

  • 情報の信憑性を確認する
  • さまざまな視点から情報を取捨選択する
  • 自分の考えを持ち、自分で判断する

などを心掛け、冷静に判断することが大切です。グレートリセットについても、まずは正しい知識を身につけ、さまざまな意見に触れて、自分の意見を導き出しましょう。*4)

グレートリセットが実現した場合に期待できること

グレートリセットが実現した場合、世界経済や社会の仕組みは現在と比べて、大きく変化すると考えられます。具体的に考えられるグレートリセットが実現した社会の姿を予測してみましょう。

再生可能エネルギーの普及

グレートリセットが実現すると、再生可能エネルギーへの移行が加速されるでしょう。例えば、太陽光や風力などのクリーンなエネルギー源の利用が増え、化石燃料による環境汚染や気候変動の問題が軽減されます。

教育の普及と格差の縮小

グレートリセットにより、教育の普及が進むことが期待されます。教育の普及は、人々の能力向上や機会均等の実現につながります。特に途上国や貧困層における教育の普及は、格差の縮小につながり、持続可能な社会の実現に貢献します。

社会的包摂とパートナーシップによる問題解決

グレートリセットが実現すると、社会的包摂が進むことが期待されます。これは、社会のあらゆる階層やグループが参加し、協力して社会問題解決に取り組むようになることを意味します。例えば、国際的な協力体制の強化や、地域コミュニティの活性化などが促進されます。

SDGsの目標が達成された世界とどう違うの?

「グレートリセットが実現した場合に起きること」を読むと、

  • 「これは、SDGsの目標が達成された世界と同じでは?」
  • 「SDGsとグレートリセットはどう違うの?」

という疑問を持つ人も少なくないでしょう。SDGsとグレートリセットには、

  • どちらも、貧困や飢餓、環境汚染などの社会課題の解決を目指す
  • どちらも、持続可能な開発を実現することを目指す

という共通点があります。一方で、

  • SDGs・将来も持続可能な世界と社会のため、社会課題の解決を目指す取り組みの指針
  • グレートリセット:既存の社会の仕組みを根本から見直し、新たな社会を構築することを目指す取り組み

という違いもあります。SDGsは、グレートリセットを実現するための基盤となるものです。SDGsの目標が達成された世界は、グレートリセットの実現に近い社会と言えるでしょう。*5)

グレートリセットに備えて私たちが準備すること

グレートリセットは、私たちの未来を大きく変えるかもしれません。その変化に適応するために、今から準備しておきましょう。

今、私たちの社会はさまざまな面で、急速な変革の最中にあります。このスピードはしばらくは加速しながら続くと予想されています。

グレートリセットへの備えは、将来のリスク対策として、すぐにでも始めた方が良いでしょう。また、常に状況を把握して、必要な時にリスク対策の方法の修正をすることも大切です。

日本でグレートリセットが起こるのはいつ?

グレートリセットは、世界経済や社会の仕組みを根本から見直し、より持続可能で公正な社会を構築するための取り組みです。そのため、グレートリセットが実現するためには、世界的な合意や大きな変化が必要であり、短期間で実現することは難しいと考えられます。

日本においては、グレートリセットの実現に向けて、政府や企業、市民社会などがさまざまな取り組みを進めています。しかし、これらの取り組みが具体的な成果を上げ、グレートリセットが日本で実現するまでには、まだ時間がかかると予想されます。

具体的な時期を予測することは難しいですが、2030年頃までにグレートリセットが実現する可能性もあると考える専門家もいます。ただし、これはあくまでも予想であり、グレートリセットがいつ実現するかは、今後の社会情勢や世界経済の動向によっても大きく左右されます。

新たな日常への適応

グレートリセットによってもたらされる新たな日常への適応のために、

  • 柔軟性と適応力の向上:自身のスキルや知識を継続的に向上させる
  • デジタル技術の活用:効率化や遠隔ワークの実現など、新たな働き方や生活スタイルに適応する
  • 持続可能な社会のための行動:環境への配慮や社会的責任を意識した行動
  • ネットワークの構築:新たなビジネスやキャリアの機会を見つけるため、関係者とのネットワークを構築
  • 心の健康への配慮:ストレス管理や自己ケアに時間を割く

などを心がけることが大切です。グレートリセットが実現した後の社会に適応するための取り組みは、個人や組織の状況や目標に応じて異なるかもしれません。自身の状況を見極めながら、適切な対策をとることが重要です。

リスクに備え資産防衛

グレートリセットが実現した場合、経済や社会が大きく変化する可能性があります。その結果、資産価値が下落し、資産運用の失敗につながるリスクも考えられます。

そのため、グレートリセットに備えて、

  • 現金や預金などの流動性の高い資産を一定量保有する
  • 株式や債券などのリスク資産の保有割合を減らす
  • 資産運用のリスクを分散させる
  • 資産運用に関する知識を身につける

など、資産防衛のための準備をしておくことが必要と言われています。また、グレートリセットに備えた資産防衛のためには、以下のことに注意して適切な対策を講じましょう。

  • 資産運用は自己責任であることを理解する
  • 無理のない範囲で資産運用を行う
  • 定期的に資産状況を確認する

もちろん、グレートリセットが実現しても、資産価値が下落しない可能性もあります。しかし、グレートリセットは世界経済や社会の仕組みを大きく変える可能性がある取り組みであり、資産価値が大きく変動するリスクがあることを、しっかりと認識しておくことが重要です。*6)

グレートリセットとSDGsの関係

先述したように、グレートリセットとSDGsは、持続可能な社会を実現するためにそれぞれ重要な役割を果たしています。SDGsの目標が達成された世界は、グレートリセットの実現に近い社会と言えるでしょう。

グレートリセットは社会や経済の変革を目指し、SDGsは持続可能な社会の実現を目指しています。この2つの関係性と、私たちが実現に向けて貢献できることについて見ていきましょう。

私たち個人には、グレートリセットとSDGsの実現に向けて重要な役割があります。

  • エネルギーの節約や廃棄物の削減など、持続可能な生活を心がけること
  • SDGsについての理解を深めること
  • 地域の環境保護活動や社会貢献活動に参加すること
  • 持続可能な商品やサービスを選ぶこと
  • 持続可能な交通手段の利用やエコライフスタイルの実践すること
  • 教育や啓発活動に参加し、持続可能な開発についての意識を高めること
  • 持続可能な農業や食事の選択に関心を持つこと
  • 社会的な格差や差別をなくすための取り組みに参加すること
  • 持続可能な投資や資金提供を行うこと

などが、グレートリセットとSDGsの両方の目指すものに貢献できる取り組みです。私たちの小さな行動が大きな変化を生み出し、持続可能な社会の実現に向かって進むことができます。

私たちが目指すのは、ずっと生き物が住み続けられる、持続可能な地球と社会です。そのためには多種多様なアプローチが必要ですが、SDGsにはあなたができることを見つけるヒントが詰まっています。

あなたの得意なこと、あなたが無理なくできることから、積極的に行動を始めましょう。グレートリセットへの道も、同じ方向に向かっているのです。

>>SDGsに関する記事はこちらから

まとめ

「グレートリセット」と聞くと、一部の人にとっては、これまでの社会をなかったものにし、ゼロから新しい社会をスタートするようなイメージを持つかもしれません。しかし、グレートリセットは、これまでの社会を完全に否定するのではなく、より持続可能な社会を実現するために、必要な部分を改善・変革していく取り組みです。

グレートリセットは、非常に長い時間の視点から見て「グレートリセット」と呼べるものの、非常に長い時間と努力が必要な変革であり、ゲームのデータをリセットするように、一瞬でこれまで積み上げたものが消されるわけではないのです。

これからの社会は、より持続可能な社会を目指して、どんどん変わっていくでしょう。

  • エネルギーの循環利用
  • クリーンな技術の普及
  • 社会的な格差の解消

など、さまざまな場面で持続可能な社会を実現するための取り組みが進んでいきます。まず私たちに必要なことは、この変化に対応するために、常に学び、新しい情報に目を向け続けることです。

また、陰謀論でも触れたように、これからの社会では、フェイクニュースや情報操作などに騙されない、判断力や信頼できる仲間とのコミュニケーションも重要です。私たちひとりひとりが、未来の地球や社会に対して明確なビジョンを持ち、そのために何を選び、どう行動するかを決められるようになれば、間違った情報に惑わされることも減るでしょう。

「グレートリセット」を成し遂げるために必要なのは、私たち個人がそれぞれに持続可能な生活・社会に向けた「小さなリセット」を積み上げることです。私たちの意識が、世界の未来を決めるのです。

あなたもできることから、より良い未来のために行動を始めてください。私たちの行動次第では、遠い未来、人類は今私たちの生きるこの時代を「グレートリセットが起こった時代」と歴史的認識を持つかもしれません。

<参考・引用文献>
*1)グレートリセットとは
首相官邸『シュワブ世界経済フォーラム(WEF)会長による表敬』(2023年7月)
世界経済フォーラム『クラウス・シュワブ教授』
世界経済フォーラム『「グレート・リセット」の時』(2020年6月)
日経ESG『世界経済フォーラム・シュワブ会長が語る、進化続けるESG「ステークホルダー資本主義」の提唱から3年』(2022年8月)
世界経済フォーラム『「グレート・リセット(The Great Reset)」ツイン・サミット形式で2021年に始動』(2020年6月)
国際農研『 58. 新型コロナウイルス・パンデミック ― グレート・リセット』(2020年6月)
*2)グレートリセットのために必要なこと
GX(グリーントランスフォーメーション)とは?企業の取り組み事例や最新動向も
サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは?リサイクルやリユースとの関係と取り組み事例
住友化学株式会社|プラスチックリサイクルでつなぐパートナーシップと資源循環の輪:持続可能な未来を目指す革新的な取り組み(前編)
住友化学株式会社|プラスチックリサイクルでつなぐパートナーシップと資源循環の輪:持続可能な未来を目指す革新的な取り組み(後編)
環境省『新時代の地域づくりハンドブック~自立分散でつながりあう地域を目指すデジタル活用とパートナーシップ~ 』p.3(2022年7月)
経済産業省『包摂的成長(地域・中小小規模企業・文化・スポーツ等)について』p.38(2022年4月)
経済産業省『コーポレートガバナンスに関する各種ガイドラインについて』
経済産業省『令和4年度 レジリエンス社会の実現に向けた産業政策研究会(第 3 回)議事要旨 』(2023年3月)
環境省『新時代の地域づくりハンドブック~自立分散でつながりあう地域を目指すデジタル活用とパートナーシップ~ 』(2022年7月)
環境省『中央環境審議会循環型社会部会プラスチック資源循環小委員会(第8回)議事録』(2022年1月)
日本経済新聞『幸せ中心社会への転換(1) 「ウェルビーイング」の重要性』(2020年10月)
経済産業省『地域の包摂的成長-地域の活力が生み出す若者・女性の「希望」の回復と少子化社会の克服-』(2023年3月)
 Global Compact『国連グローバル・コンパクト4 分野 10 原則の解説』
環境省『 グローバル・ガバナンスの問題』
国連大学『グローバル・ガバナンス活性化のための新たな青写真』(2023年4月)
*3)グレートリセットが注目されている背景
朝日新聞デジタル『世界は「グレート・リセット」されていく 藤田康人のウェルビーイング解体新書【4】』(2022年7月)
キャノングローバル戦略研究所『「グレート・リセット」シナリオ①―「グリーン成長の未来」は夢物語だ』(2022年1月)
経済産業省『産業構造審議会第9回産業技術環境分科会』(2020年8月)
日本総研『地球と共存する経営』(2020年12月)
*4)グレートリセットに対する陰謀論
日本経済新聞『資本主義の「リセット」議論を WEFシュワブ氏 21年のダボス会議テーマに』(2020年6月)
朝日新聞デジタル『「ワクチンは殺人兵器」 大物県議がのめりこんだ陰謀論』(2021年4月)
読売新聞『ワクチンで「黒幕が人類管理」「人口削減が狙い」…はびこる陰謀論、収束の妨げにも』(2021年5月)
毎日新聞『フェイクを信じ、正しい情報に耳を塞ぐ 陰謀論者の思考とは/後編』(2021年5月)
*5)グレートリセットが実現した場合に起きること
経済産業省『産業構造審議会 第9回産業技術環境分科会 議事要旨』(2020年8月)
経済産業省『コロナ危機を踏まえた今後のイノベーション政策の在り方について』(2020年6月)
読売新聞『「グレート・リセット」時代の企業経営 組織の社会性向上が成長につながる』(2022年8月)
国際経済連携推進センター『コロナショック下の世界と日本:グレート・リセットの時代(21) 日本企業のサプライチェーン見直しの現状について考える』(2021年10月)
日本経済新聞『グレートリセット(下)「バーチャル生活」人生の半分 デジタル化、進化か退化か』(2021年5月)
内閣官房『第2回成長戦略会議 議事要旨 ポストコロナの社会像、2050年カーボンニュートラルに向けたグリーン成長』(2020年11月)
行政調査新聞『「グレート・リセット」後の世界』(2022年5月)
*6)グレートリセットに備えて私たちが準備すること
経済産業省『産業構造審議会 第9回産業技術環境分科会 議事要旨』(2020年8月)
経済産業省『新型コロナウイルスの影響を踏まえた経済産業政策の在り方について』(2020年6月)
経済産業省『令和4年度 レジリエンス社会の実現に向けた産業政策研究会(第 3 回)
議事要旨』(2023年3月)
経済産業省『コロナ危機を踏まえた今後のイノベーション政策の在り方について』(2020年6月)
*7)グレートリセットとSDGs
経済産業省『SDGs』