加藤貿易株式会社 加藤 克也さん インタビュー
加藤 克也
加藤貿易では、「持続可能な未来を次世代に届けたい」という信念を大切に、SDGsの目標達成に向けた取り組みを続けています。ガレー(Galler):ベルギー王室御用達のチョコレートブランドとして、100%フェアトレードのカカオを使用し、カカオ農家の生活を支えるだけでなく、持続可能な生産を推進しています。また、パーム油や人工添加物を使用しない製品づくりを通じて、環境保護にも積極的に貢献。お客様に安心と喜びを届ける一方で、地球にも優しい選択を提供しています。nuts link(ナッツリンク):サステナブルなナッツ専門のギフトブランド。環境に配慮した自然素材の梱包を採用し、製造過程でのフードロス削減を推進。素材そのものの魅力を最大限に活かし、贈り物を通じて「美味しさ」と「想い」を届けています。ナッツを通じて持続可能な未来を支えるというビジョンのもと、一つひとつの商品に心を込めています。人と社会、そして地球との調和を大切にしながら、加藤貿易はこれからも温かく未来に繋がる事業を展開していきます。
introduction
加藤貿易株式会社は、2024年にフェアトレード・フロントランナー・アワードを授賞したベルギー王室御用達のチョコレートブランド、ガレー(Galler)の日本のオンライン販売における総販売代理や、「人と人をつなげるサステナブルギフト」と銘打って開発された自社ブランドのnuts link(ナッツリンク)を取り扱うことでSDGsの達成に貢献しています。
社会に対して価値を価値を産み出す事業を展開する同社の想いについて、代表の加藤克也さんにお話を伺いました。
フェアトレードのガレー(Galler)チョコレート
–まずは会社概要について教えてください。
加藤さん:
弊社は、OEM/ODM事業とモノプロダクション事業を主に行う会社です。OEM/ODM事業では、機能性下着を中心にオリジナルブランドを創りたい企業様に対して、商品企画から製造に至るまでワンストップでサービスを提供しています。モノプロダクション事業は大きく2つに分かれており、アライアンスセクションといって、弊社で独占的に販売させていただいてる他社ブランドの商品と、自社ブランド商品があります。
SDGsと特に関わりが深く、現在力を入れている商品はモノプロダクション事業で取り扱っているアライアンスセクションのガレー(Galler)のチョコレートと、自社ブランドのnuts link(ナッツリンク)です。
–創業のきっかけを教えてください。
加藤さん:
学生時代、就職活動の際に自己分析を行った結果、自分で起業したいという強い想いが出てきました。そのため、就活の面接時から「1年で退職して起業する」という人生計画を伝え、ベンチャー企業へ就職しました。就職後1年半経ったタイミングで退職の希望を伝えると、会社側から「出資するから中国で会社を作ってみないか」という話をいただきました。これをきっかけに、24歳の時に中国で起業することになったんです。この時、出資してくれた会社から何か指示があったわけでもなく、現地に知り合いがいたわけでもないので、0から全て自分で考えて試行錯誤しながら、本当に様々なビジネスに挑戦しました。
ただ、こうして毎日必死に数字と向き合いながらビジネスを進めていく中で、「自分たちの数字を重要視するあまり、利害関係者の人たちに皺寄せがいってしまっているのではないか」という疑問が浮かんだんです。「お客様へ誠実な商品やサービスが提供できていないのではないか」、「お取引先様に対して不当な圧力がかかってしまってないか」「社員に肉体的、心理的に過度な負担をさせていないか」など、様々なことを考えるようになりました。
そのため、何か社会に対して価値を生み出せる仕事をしたいと思い、弊社を2009年に立ち上げました。その意味では、自社ブランドのナッツリンクとガレー(Galler)のチョコレートは特に関係が深い事業といえます。この2つはギフトとして贈っていただくことを前提に販売しています。それは、人との繋がりが希薄になりつつある現代社会の中で、贈り物を贈ることで人と人を繋ぎ、少しでも距離を縮めるきっかけにして欲しいと思ったからです。
–では、ガレー(Galler)のチョコレートについて教えてください。
加藤さん:
ガレー(Galler)というのは、8つあるベルギー御用達チョコレートブランドのうちの1つです。1994年に「ベルギー御用達ブランド」として認定され、その後2020年からチョコレートに使用するカカオを100%フェアトレードにすることで、SDGsの達成に貢献しています。2024年には、フェアトレード・フロントランナー・アワードを授賞しました。その時の記事では、ガレー(Galler)のチョコレートによるカカオからの収入が12%増加したことや、ガレー(Galler)生産者の95%が極度の貧困から抜け出したなどの成果が報告されています。
このガレー(Galler)のチョコレートのECサイトでの販売を、弊社が独占で請け負っています。
–取り扱い始めたきっかけは何ですか?
加藤さん:
2014年頃に、当時のガレー(Galler)の日本総販売代理店である商社からお話があったのがきっかけでした。その時ガレー(Galler)チョコレートは、バレンタインの時期だけ催事場で販売されていたのですが、売れ残ってしまった分を販売してくれる企業を商社側が探していたんです。
ただ、この時はガレー(Galler)本社(ベルギー)もSDGsに対する意識はあまり強くありませんでした。その中で、2015年に世界中でSDGsへの取り組みが始まったことをきっかけに、弊社からもその視点から早めにアプローチをすべきだと意見を出させていただきました。その結果、2020年にGaller Internationalのリブランディングが行われ、カカオのフェアトレードが始まりました。弊社の意見が直接反映されたかはわかりかねますが、やはり声をあげることは大切だと思っています。
リブランディング後は、消費者からも「フェアトレードのチョコレートを購入したい」という旨のお問い合わせをいただくことが年々増えてきています。そしてこのお問い合わせは、個人の消費者よりも企業のギフトとしていただくことが圧倒的に多いんです。そして、このような問い合わせを受ける中で、自社でも企業のギフトとして使える商品を開発しようと考え、ナッツリンクというブランドを作りました。
サステナブルな自社ブランド食品 ナッツリンク
–自社ブランドのナッツリンクについて教えてください。
加藤さん:
ナッツリンクは、ナッツパティシエというナッツのスペシャリストの協力のもと、非常にこだわって味付けを行なったフレーバーナッツです。黒糖きなこアーモンドやハニーバターアーモンド、ラズベリーカシューナッツなど、様々なフレーバーを用意しています。フレーバーが付いてはいるものの、ナッツの素材の味も一緒に楽しんでいただけるのが特徴です。在日フランス大使館総料理長にも推薦していただいた、自信のあるフレーバーナッツです。
ナッツは非常に栄養価が高く、健康に良い食物ですし、保存容易性もあるため、食料問題解決の1つとして注目されている食物でもあります。このような特徴を加味した結果、SDGsにアプローチするための高いポテンシャルを持っている食物だと思い、ナッツを選びました。ただ、ナッツの場合はフェアトレードが成り立たないんです。
というのも、フェアトレードというのは、生産者とバイヤーの間にある格差を埋めるために存在しています。しかし、今使用しているナッツの殆どはアメリカから輸入したものです。アメリカのナッツ生産者は大規模経営のため、そもそも生産者の方が立場が強いのでフェアトレードが成り立ちません。そこで、今後の商品の一部に、アフリカ西部にある世界で最も貧しい国の1つ、ニジェールという国で生産可能なタイガーナッツを使用したいと考えています。しかし、2023年8月に国内でクーデターが発生したことで、現在その企画が中断してしまっています。
そのため、自社ブランドであるナッツリンクは、現在ストレートにSDGsを表現できず、非常にもどかしい思いをしていますが、商品は少しでも環境に配慮した形でご提供したいと思い、包装紙やパッケージにはプラスチックを使用せずにクラフト紙を使用するなど工夫を行なっています。
ニジェールとナッツリンク
–ニジェールのナッツを利用したいとお考えになったきっかけはありますか。
加藤さん:
アフリカの少年兵の支援を行っている、テラ・ルネッサンスというNPO法人の創設者、鬼丸昌也さんのお話を聞いて、非常に感銘を受けたのが始まりでした。そのお話を聞き、物心ついた頃から拳銃を持たされ、自分の意思とは関係なく人を殺さなければいけない少年兵がいるという現実を知り、何もしないわけにはいかないという想いに駆り立てられたんです。その後、テラ・ルネッサンスの繋がりで、日本で起業しているニジェール人と知り合いました。その彼がニジェール領事に就任するために弊社がサポートを行ったことがきっかけで、ニジェールと弊社を繋いで何かできないかと企画を行ったんです。
その時、また別の知人がアフリカで氷を売るビジネスを行っており、そのビジネスモデルをヒントにしてアイスプラント事業を始めました。アフリカでは、汚染された水や食品が原因で下痢性疾患が発生し、これが子どもの主要な死因の一つとなっています。この問題の背景には、安全な飲み水の不足や食品保存環境の整備が進んでいないことが挙げられます。冷蔵庫の普及は理想的な解決策の一つですが、現実的には多くの家庭で導入が難しい状況です。そのため、氷を作る機械を導入し、作った氷を家庭に届けることで食品の保存状態を改善しようと考えたのが、このビジネスの出発点でした。機械を導入した後は、現地の人に使い方をレクチャーし、以降の運用は全て現地に任せています。この手法は、とてもサステナブルな事業運営の形だと考えています。
そして、農業の分野で同じようにニジェールに技術指導を行おうと考え、数回に渡りオンラインで授業を行いました。
–現地の方々の反応はどうでしたか?
加藤さん:
実際にヒアリングを行いながら指導をしてみると、現地の人たちは農業においてほとんど知識がないことが分かりました。厳しい現実だと感じましたが、一方で、ちょっとした知識や情報を与えるだけで、ニジェールの農業の状況は今より遥かに好転していくのではないかという前向きな気持ちにもなりました。
とはいえ、オンラインで授業を行うことになった時、最初はイヤイヤながらも集まってきている人が多かったですね。やはり現地では現地のやり方や環境が当たり前で、自分たちのやり方が悪いと思っていません。それに対して急に日本人が何か教えてくれると言っても、あまり乗り気ではない人が多かったんだと思います。ただ、どんなコミュニティでもそうですが、その中には今のままではダメだと思っている人もいて、そういった一部の人間がやり始めて、成功していく姿を見せていくことで、みんなが少しずつ真似をしていくんだと思います。
–今後の展望を教えてください。
加藤さん:
私は、世の中は平等ではないけれど、公平ではあるべきだと思っているんです。チャンスは公平に与えられるべきで、そのチャンスを掴むか掴まないかは自分次第だという考えです。ただ、テラ・ルネッサンスの創設者の方の話を聞いて、アフリカが貧しい国であることは知っていましたが、それにしても、あまりにも不公平すぎると思いました。
現在、クーデターの影響でニジェールの情報が全く入ってこない状況が続いていますが、将来的にはナッツリンクのナッツの一部をニジェール産にしたり、ニジェールにおいて現地の人だけで成り立つ事業を立ち上げたりしたいと思っています。そしてアフリカの貧しい国の人々が、少しでも公平にチャンスを掴めるようになれば良いと思います。
会社全体としては、ビジネスである限り利益がなければ継続できないためお金を無視することはできません。でも、お金以外の価値を感じることのできる商品やサービスを提供していきたいと考えています。そのためにも、常に自分の身近な人の幸せについて想いを巡らせ、自分に出来ることが何なのか考え続けていきたいです。
– 貴重なお話をありがとうございました!
関連リンク
加藤貿易株式会社:https://katotrade.com