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国際ボランティアNGO NICE | 「NICE版・SDGs」に込められた想い

NICE(ナイス)代表 開澤さん 「NICE版 SDGs」インタビュー

開澤 真一郎

神奈川県出身・在住。一橋大学を休学中に世界をまわり、帰国後の1990年にNICEを結成。日本とアジア13ヶ国で、地域の方々と国際ワークキャンプを立ち上げる。

1997年にアジアのネットワーク・NVDAを創設し、現代表。2002年から国士舘大学で3種の授業を運営。2004年に国連ユネスコにある世界ネットワーク・CCIVSで史上最年少・東アジア初の代表に就任。2010年に政策提言ネットワーク「市民キャビネット」で国際部会を統率。2013年にアジア初の国際親子ワークキャンプを開始。2016年からLocal SDGsと気候変動防止事業SCCをアジアで推進。24ヶ国で2.1万人が82万本を植林した「世界七夕アクション」、ベトナムのスラムの女性達と協働する「エコたわしアクション」を創設。

Introduction

NICE(ナイス)は1990年に設立された、国内外(約90か国)でボランティアやワークキャンプ等の事業を展開しているNGO団体です。今回は、代表の開澤さんに「NICE版 SDGs」に込められた想いについて伺いました。 

どんな目標でも、自分達が目指すものとどこが同じで、どこが違うのかをしっかり咀嚼することが大切

–NICEでは、「NICE版・SDGs」を掲げていると知りました。これを作られた経緯を教えてください。

開澤さん:

SDGsが採択される前、MDGs(ミレニアム開発目標)というものがありました。その目標の内容を目にした際に違和感を持ち、まずMDGsに疑いを持ったんです。

MDGsとは

ミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)は、開発分野における国際社会共通の目標です。2000年9月にニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットで採択された国連ミレニアム宣言を基にまとめられました。

引用:外務省「ODA(政府開発援助)」

–どのような部分に違和感を感じたのでしょう?

開澤さん:

たとえば、MDGsの最初のターゲットに「1990年から2015年までに、1日1ドル未満で生活する人々の割合を半減させる」が掲げられています。

これはSDGsでも同じように目標1「貧困をなくそう」のターゲット1.1の項目に入っているものです。「お金がないと生活に困る」という目標の意味や狙いはわかりますが、私は、豊かさはドルの収入だけで測れるものではないと考えています。

–詳しくお聞かせください。

開澤さん:

例えば食糧やエネルギーをある程度自分で作っている人はお金を使う必要がより少ない生活をしています。そういう人の自給自足を壊してお金でモノを買うようにさせれば、収入も支出も増えて目標達成には近づきますが、それが幸せや豊かさにつながるとは限りません。

自分で作った安心できるものだけを食べたい場合もありますし、経済に左右されて不安定にもなります。他にも子どもの世話を保育園にお金を払わずに近所や親せきに頼める人、バーベキューをお金と時間をかけて遠くまで行かなくても庭先でできる人、自分で家具を作れる人など、お金に頼らなくても得られる豊かさは色々あります。

物価が国や地域によって違うのに、ドル収入で比べるのもナンセンスです。

–たしかに、自給自足している人たちは、お金を稼いだり使ったりする必要はないので、それがないと達成できない目標というのもおかしい気がします。

開澤さん:

SDGsには今の世の中に必要な部分や、良いなと思う部分もたくさんあります。ただ、先ほどのようにツッコミどころも結構見つかったので、ちゃんとみんなで議論していこうと思ったんです。そこでNICEの中で話し合って意見をぶつけ、NICE版SDGsを作ろうとなりました。

–そのような背景があったんですね。

開澤さん:

2016年に国内外のボランティアや住民・協力団体の方々の声も集め、理事会や総会で話し合って作成しました。その後も話し合いながら補強や更新をしています。

NICE版SDGs

目標1-1(原文)1日1.25ドル未満で生活する人をなくす。

→(NICE版)全員が最低レベル以上の衣食住を持つ暮らしを営めるようにする。

意見:最低レベルっていうのも曖昧なので、“最低レベル以上“を具体的にすべきでは?

目標2-4(NICE版:追加)特に農薬と化学肥料の使用を激減させ、GM作物を根絶し、各国・各地・各家庭の自給率を高め、有機・自然農法を再生・発展する方向に大きく舵をきる。

<NICE版への賛成意見>

・GM根絶大賛成。人体の遺伝子に影響を及ぼすかも。少しでもリスクがあるなら根絶したい。

・土に影響がある。虫が食べられないものは人間にとっても危険。

<NICE版への反対意見>

・2030年までの目標としては理想論で終わりそう。

・農薬のなかでも、使ってもいいものもあるのでは?

・農薬の使用基準の改訂、農薬を改良するのもありなのでは?

・科学を信じているから、科学的に大丈夫なら信用すべき。

・遺伝子に影響があるからダメなのであれば、自然の摂理に逆らい続けていた医療を否定することになる。部分的に×っていうのはおかしい。

目標2-a(NICE版:追加)自由貿易による地域産業の破壊から守るため、方向を大転換し、各国・各地域が自由に保護策を実施できるようにする。

目標2.b   (原文)ドーハ開発ラウンドの決議に従い、すべての形態の農産物輸出補助金及び同等の効果を持つすべての輸出措置の並行的撤廃などを通じて、世界の農産物市場における貿易制限や歪みを是正及び防止する。

→(NICE版)自由貿易による地域農業の破壊から守るため、方向を大転換し、各国・各地域が自由に保護策を実施できるようにする。

<NICE版への賛成意見>

・小規模の物が安く作られる大規模の物に淘汰されてしまう。

・お金を儲けるだけがゴールではない。

・自由貿易は格差を広げるだけなので、保護すべき。

<NICE版への反対意見>

・住民に聞くと、世界にもっと商品を売りたいという意見も。

・東北では地元だけで消費をするのは難しいから、国際的なモノの流通によって促進されるべき。

<その他>

・8.7 児童労働について、あらゆる形態で撲滅するのではなく、悪質なものは撲滅する一方で、良質な子どもの仕事は推奨する。

・12.3 食品ロスを減少させるだけでなく、それでも生じたロスはできるだけ、フードバンクに寄贈する等、有効に社会的な活用を行う。

・17.2 先進国の開発途上国に対するODAについて、GNI比を目標とするのではなく、貧困撲滅・環境保護等の正の成果を倍増させ、負の成果を半減させることを目指す。 など

–こう見ると、色々な意見がありますね。

開澤さん:

そうですね。多様な意見があり、全てに全員が賛成しているわけではありません。生きた目標として、みんなで話し合って、発展・更新し続けるべきだと考えています。それぞれの地域やプロジェクトによっても、目指す姿や目標が変わってくることもあります。

–ちなみに、SDGsの中でそのまま共感できる部分もあるのでしょうか?

開澤さん:

衣食住に困らない状態を目指すなど多くの点、そして「誰も取り残さない」の基本理念には大いに共感できます。そして、NICEはSDGsが叫ばれるようになる前から、貧困・差別・戦争・環境破壊などを克服していくための活動をしており、重なる部分も多いと思います。

ただ、すべてと重なるわけではないので、自分達の方針や考えに合わせて、目標を追加したり変えたりしていくこともあります。

–今後もアップデートされるNICE版SDGs、楽しみです。

開澤さん:

大切なことは誰かが作ったゴールを全て鵜呑みにしたり、逆に否定するのでもなく、しっかり咀嚼して、考えをぶつけ合い、自分達のゴールを作ることだと思います!そして、NICEのゴールや活動が少しでも気になった方は、ぜひお気軽に参加して頂きたいです!

国際ボランティアNGO NICE 関連リンク

「NICE版・SDGs」:https://www.nice1.gr.jp/sdgs1/       

「NICE版・SDGs」簡略版:https://www.nice1.gr.jp/files/user/images/about_i/SDGs-NICE.pdf

国際ワークキャンプセンターNICEホームページ:https://www.nice1.gr.jp/

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