海流とは?仕組みや種類・特徴、温暖化との関係も

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地球全体に張り巡らされたダイナミックな水の流れ、それが海流です。その壮大な仕組みや多様な種類、そしてそれぞれの特徴は、地球の気候や生態系を根底から支え、私たちの暮らしにも密接に関わっています。

近年、地球温暖化が進行する中で、海流はかつてない変化を見せており、その影響は世界の漁業や災害リスク、さらには持続可能な開発にも及んでいます。この変化を深く理解することは、良い海洋の未来を考える上で重要です。

本記事では、海流について詳しく解説します。

海流とは

海流とは、海水が一定の方向にまとまって流れる現象で、

  • 風や地球の自転
  • 海水の密度差
  • 地形

などさまざまな要因によって形成されます。例えば、赤道付近の暖かい海水が極地に向かって流れるように、地球規模でのエネルギーの移動手段とも言えます。

この海流は、数百〜数千キロメートルにわたって流れ続けるものもあり、季節や年によって多少の変動はあるものの、比較的安定した経路と速度を保っています。身近な例では、日本の気候や漁業に大きな影響を与える黒潮や親潮があります。

一方で、似たような言葉に「潮流」や「海洋循環」がありますが、それぞれ意味やスケールが異なります。

海流と潮流の違い

海流と潮流は、いずれも「海水の動き」ですが、その原因と性質が異なります。

  • 海流
    風や水温・塩分差、地球の自転(コリオリの力)などによって生じる、長期間にわたり広域で続く海水の流れ。黒潮や親潮のように、地球規模での熱や塩分の分配を担う重要な役割を果たしています。
  • 潮流
    主に月と太陽の引力によって生じる潮の干満に伴う流れ。1日や数時間単位で変化し、主に沿岸部で観測されます。潮汐の一部として考えられ、海流よりも変化が早く、局地的な現象です。

海上保安庁は、「潮流は潮の流れ、海流は風や密度の影響による大きな流れ」と明確に区別しています。

海流と海洋循環の関係

海流は、地球全体の海水の流れを構成する一部であり、海洋循環という、より広い概念の中に含まれます。

海洋循環(海洋大循環)は、地球規模での海水の流れの総称で、表層から深層に至るまでの長期的で複雑な動きのことです。例えば、赤道付近で温められた海水が極地に向かい、冷えて沈み、深層を通ってまた戻るような流れ(いわゆる「熱塩循環」)も含まれます。

海流はその中でも、主に表層の比較的浅い部分で起こる流れであり、特に風によって駆動される「風成循環」が知られています。

【海洋表層の循環】

気象庁は、海洋循環を「エネルギーと物質の長期的な輸送経路」と定義し、地球の気候安定に欠かせない役割を果たしているとしています。

海流は、風や水温・塩分差、地球の回転などによって生じる広域で持続的な海水の流れであり、潮流とは異なり、より大きなスケールで地球全体に影響を及ぼすものです。

海流は「海洋循環」という包括的な枠組みの中に位置づけられ、気候や生態系、そして私たちの生活にも深く関わっています。次の章では、海流がなぜ流れ続けるのか、その仕組みについて探っていきましょう。*1)

海流の仕組み

広大な海が、まるで意志を持っているかのように規則的に流れるのはなぜでしょう?その巨大な水の動きは、いくつかの自然の力が複雑に組み合わさって生み出されています。

海流のスケールや向きを決める背後には、地球ならではの普遍的な物理法則が働いています。この、海流の発生に関わる主なメカニズムを見ていきましょう。

海流を生み出す主な力

【大気循環の立体的な図解】

海流を生み出す主要な原動力は二つあります。これは、

  1. 海面で吹く風の力
  2. 海水の密度の違い

です。

海面で吹く風の力

海面で吹く風は、海水との間に摩擦を生じさせ、海水を動かす力となります。地球規模で一年を通して比較的一定方向に吹く貿易風や偏西風などの「卓越風」は、広範囲にわたる表層海流の主な原動力です。風が強く吹くほど、海面近くの流れは速くなります。

海水の密度の違い

海水の温度や塩分濃度によって生じる密度の差も、海流、特に深層の大きな流れ(密度流)を生み出す重要な要因です。冷たく塩分濃度の高い海水は密度が大きく重いため、沈み込みやすい一方、暖かく塩分濃度の低い海水は密度が小さく軽いため浮かびやすい性質があります。

この密度の違いによる重さの差が、海水の上下方向の動きや深層での水平方向の動きを引き起こし、地球規模の海洋循環全体を駆動する重要な要素となっています。

【海洋循環】

地球の自転が流れを曲げる:コリオリの力

海流のように大規模な水の動きは、風や密度差による力だけでなく、地球の自転による影響も受けます。地球上で運動する物体は、自転の影響により見かけ上の力を受け、その進行方向が北半球では右向きに、南半球では左向きにずれるように見えます。

これは「コリオリの力」と呼ばれます。コリオリの力は、台風や低気圧の回転方向などで観察でき、海流の動きにも影響を与えています。

【北半球の低気圧は反時計回りに回転(左)、南半球の低気圧は時計回りに回転(右)】

海流は広範囲かつ長期間にわたって流れるため、このコリオリの力を絶えず受けます。結果として、海流は直線ではなく曲線的な経路を描き、地球上の主要な海域で大きな円を描くように流れる環流(ジャイア)を形成します。

例えば、北太平洋の亜熱帯環流や北大西洋環流など、地球規模の海流システムはこのコリオリの力が大きく関わってその形が決定されています。

暖流と寒流はなぜ生まれるか

海流は、その温度によって一般的に暖流寒流に分類されます。この分類は、海流そのものの温度が絶対的に高いか低いかではなく、

  • 周囲の海水と比較して相対的に温度が高いか低いか
  • その海流がどちらの緯度地域から来たか

によって決まります。

通常、赤道に近い低緯度地域で太陽によって暖められた海水が高緯度へ向かう流れを暖流と呼びます。日本の沖を流れる黒潮や、北大西洋を流れるメキシコ湾流などがその代表例です。

対照的に、極地や高緯度地域で冷やされ密度の大きくなった海水が低緯度へ向かう流れを寒流と呼びます。日本の東岸を流れる親潮の一部や、南大西洋を流れるベンゲラ海流などがこれにあたります。

【深層循環の模式図(青い線は深層流、赤い線は表層流)】

つまり、暖流と寒流は、海流が地球上で熱をどのように輸送しているかを示す指標と言えます。

これらのメカニズムが複合的に作用し、地球規模の海水循環が維持されています。次の章では、この基本原理が生み出す多様な海流の姿に迫ります。*2)

海流の種類と特徴

地球の広大な海を縫うように流れる海流は、私たちの生活や地球環境に深く関わる重要な自然現象です。まるで青い惑星の血管のように機能する海流は、熱を運び、生態系を支え、気候を調節する役割を担っています。

世界中の海域には様々な特徴を持つ海流が存在し、それぞれが独自の役割を果たしています。主な海流の種類とその特徴について見ていきましょう。

地球上の主な海流システム

地球上の主要な海洋には、貿易風や偏西風などの恒常風とコリオリの力によって形成される巨大な円を描く環流(ジャイア)が存在します。これらの環流には、亜熱帯域に形成される比較的暖かい亜熱帯環流や、高緯度地域に形成される冷たい亜寒帯環流などがあります。

【世界の環流】

環流の代表的なものとして、

  • 西岸境界流:大陸の東岸(海洋の西側)を流れる、概して速くて狭く深い暖かい流れ(例:黒潮、メキシコ湾流)
  • 東岸境界流:大陸の西岸(海洋の東側)を流れる、概して遅くて幅広く浅い冷たい流れ(例:カリフォルニア海流、ペルー海流)

が挙げられます。これらの大規模な海流システムが、地球全体で熱や物質を輸送する主要な役割を担っており、世界の気候に大きな影響を与えています。

【世界の海流】

日本近海の代表的な海流

日本列島は、北太平洋の主要な海流の影響を強く受けており、特に重要な四つの海流が周辺を流れています。

【日本近海の海流】

黒潮

日本の南岸沿いを流れる黒潮は、北太平洋の亜熱帯環流の一部であり、世界でも有数の速くて強い暖流です。フィリピン沖から東シナ海を経て日本の南海上を北東へ流れ、その後太平洋を東へ向きを変えて黒潮続流となります。

多量の暖かい水を輸送するため、日本の気候の変動に大きな影響を与えるとされています。

対馬暖流

黒潮から分岐して、対馬海峡を通り日本海へ流れ込む対馬暖流は、日本海の海洋環境や沿岸地域の気候に大きな影響を与えています。冬季には日本海側の降雪量にも影響を与えるとされています。

親潮

一方、日本の北東沖からは冷たい親潮が南下してきます。親潮は、栄養塩を豊富に含んだ海水を北から運び、豊かな漁場を作り出す要因の一つです。

黒潮と親潮がぶつかる日本の東沖合は混合域と呼ばれ、暖水を好む魚と冷水を好む魚が混在し、多様な生物が生息する世界有数の好漁場となっています。

リマン海流

リマン海流は、日本海北西部のロシア沿岸を南へ流れる冷たい海流です。オホーツク海やアムール川からの影響を受けた、低水温・低塩分の海水を運びます。

この海流は、日本海の北西部や北海道周辺の気候、特に沿岸域の生態系に影響を与えます。対馬暖流と日本海中部で出会い、両海流の勢力によってその流れや混合状態が変化します。

特異な現象:黒潮大蛇行と親潮の季節変化

日本近海の主要な海流、特に黒潮と親潮は、常に一定のパターンではなく、ダイナミックな変動を伴います。

黒潮大蛇行

黒潮は通常、日本の南岸に沿って流れますが、時には紀伊半島・潮岬沖で大きく南へ迂回する黒潮大蛇行と呼ばれる現象が発生し、数ヶ月から数年といった長期にわたって継続することがあります。

その発生メカニズムは完全には解明されていませんが、複雑な海洋内部の変動や海底地形(例えば、紀伊半島沖の御前崎沖の海山など)が関わると考えられています。大蛇行が発生すると、

  • 沿岸の水温や海面水位が変化
  • 黒潮から分離した暖水渦・冷水渦が形成

など、沿岸環境や漁業に大きな影響を及ぼします。

【左:5月8日、右:黒潮蛇行がみられる3月28日の深さ50mの海流分布図】

気象庁によると、2017年8月から続いていた過去最長の黒潮大蛇行が、2025年5月8日現在、みられなくなりました。これは、黒潮の一部が東海沖で分かれて潮岬沖をおおむね東に流れるようになったためで、大蛇行が終息する兆しが見られます。

親潮の季節変化

親潮が南下してくる範囲(親潮の南限)は、季節によって大きく変動します。一般的に、冬季から春季にかけては南へ張り出しやすく、夏季から秋季にかけては北へ後退する傾向が見られます。

この季節変化は、

  • 冬季の強い北西季節風
  • 黒潮本流および黒潮続流の流路・勢力

など複数の要因と関連しており、日本の東沖合の混合域の位置や広がりを変化させ、漁獲対象となる魚種の分布に影響を与えるため、漁業関係者や気候の研究者にとって重要な観測対象となっています。

【親潮の南限緯度の季節変化】

日本近海は、暖流と寒流が交差し、黒潮の蛇行や親潮の季節的な変動が加わることで、世界でも特に複雑かつ動的な海流環境を形成しています。こうした多様な海流の特徴を把握することは、次の章で解説する「海流の影響」を理解する鍵となります。*3)

海流の影響

目には見えなくても、海流は私たちの暮らしや地球の仕組みに深く関わっています。気候を左右し、産業や環境問題にも影響を及ぼすその力は、想像以上に大きなものです。

海流がどのように私たちの社会や自然に作用しているのか、多角的に見ていきましょう。

気候への影響と日本の気候区分との関係

海流は、熱を運ぶ巨大なベルトのような存在で、気候の分布に大きく影響しています。日本は南から暖流の黒潮、北から寒流の親潮の影響を受ける独特な地域です。

この二つの海流の交差点に位置することで、日本は狭い国土にもかかわらず、沖縄の亜熱帯から北海道の冷帯まで、非常に多様な気候区分を持っています。黒潮は九州から本州太平洋岸を北上し、温暖な気候をもたらす一方で、親潮は千島列島から東北地方の太平洋側に冷涼な影響を与えています。

【日本の天候】

この影響から、梅雨の分布や冬の雪の量にも違いが生まれるのです。最新研究では、黒潮大蛇行の発生によって関東地方の気温や降水量が変化する事例も報告されており、さらなる気候と海流の密接な関係が明らかになってきています。

産業への影響:漁業と物流

海流は、漁業資源の分布と回遊に直接関係しており、日本の水産業を支える重要な要素です。

  • 親潮が運ぶ栄養豊富な冷水は、プランクトンを豊富に生み出し、イワシやサンマ、サケなどの好漁場を形成
  • 黒潮はシイラやカツオ、マグロといった回遊魚を日本近海に運ぶ

といった特徴があり、海流の変動が漁業に影響を与えることもあります。近年の観測では、海流の変化により、シラスウナギの来遊数が激減していると報告されています。

【様々な水産物に恵まれた日本周辺の水域】

また、海流は航路や港湾設計にも関わっており、物流や海上交通の安全性を左右する重要な要因です。

プラスチックごみや海洋汚染への影響

海流は、海洋ごみ汚染物質の移動にも深く関わっています。特に問題視されているのが、プラスチックごみの長距離移動です。

日本近海に流れ込んだごみは、黒潮に乗って太平洋に広がり、最終的には太平洋ごみベルトと呼ばれる巨大なごみ集積域に達することがあります。シミュレーションによれば、日本周辺から出たプラスチックごみの多くが、わずか数カ月で東アジア全体に拡散する可能性があるとされています。

【ゴミの集まりやすい海域】

【海洋ごみの回収と処理の問題点】

また、海流は内湾や沿岸の水質にも影響し、富栄養化や赤潮の発生、さらには閉鎖性水域での酸素不足などの水質悪化を引き起こすこともあります。

このように、海流は気候や産業、環境問題にまで影響を及ぼす大きな力を持っています。次の章では、この海流が地球温暖化とどのように関係しているのか、より深く探っていきます。*4)

海流と地球温暖化の関係

【世界の主な海流(暖流は赤、寒流は青)】

地球温暖化が進行する中で、海流は「加速器」としても「緩衝材」としても働いています。しかしその役割は、安定したものではなく、海の流れが変わることで、

  • 気候
  • 生態系
  • 人間社会

など、海流を取り巻く環境の未来が不確定に大きく揺らぎ始めています。こうした変化を具体的に理解するために、次の三つの視点から海流と温暖化の関係を見ていきましょう。

①サンゴの白化と共生バクテリアの役割

サンゴ礁の危機は、地球温暖化が海流と共に生態系へ与える影響の象徴です。海面水温の上昇とともに、黒潮や対馬暖流の流れによって暖かい水が長期間とどまると、サンゴは共生する褐虫藻を放出して白化します。

この現象はすでに沖縄・八重山諸島などで顕著で、生態系・観光産業の両面で大きな損失となっています。海流の変化により高温の海水が特定地域に長くとどまることで、サンゴの白化がより深刻化しやすくなります。

一方、京都大学の研究では、サンゴと共生するバクテリアが天然色素「スコットニン」を放出し、褐虫藻のストレス耐性を高める可能性があると判明し、サンゴ白化を抑える新たな自然防御の可能性として注目されています。

【(左)健康なサンゴ。(右)白化(絶滅前)のサンゴ】

②変化する気候下での海洋・雪氷圏の反応

気温上昇は、海流だけでなく雪氷圏(氷河・氷床・永久凍土)にも影響し、地球全体の水循環と熱収支を変化させています。IPCC「海洋・雪氷圏特別報告書」(2020年)は、深層海洋の温暖化氷床融解が、深層循環の弱体化を引き起こす可能性を強調しています。

特に北大西洋のサーモハリン循環※が不安定になると、ヨーロッパや北米の気候は数十年単位で急変するリスクがあります。この問題を早くから警告してきた研究者は、「海は、変化を遅らせるが、限界を超えると一気に崩れる」と述べ、「臨界点=ティッピング・ポイント」の概念を提唱しています。

※サーモハリン循環

海水の温度と塩分の違いによって生じる深層の巨大な海流システム。グリーンランド沖で冷たい海水が沈み込み、数千年かけて地球全体を巡る。気候変動や異常気象と深く関係し、IPCCやNOAAなどが監視・研究を続ける。

※臨界点=ティッピング・ポイント

システムがある限界を超えると、ゆっくりした変化が一気に急激な変化へと転じる境界点。気候変動やサーモハリン循環の崩壊リスクの議論で頻出。

【変化する気候下での海洋・雪氷圏】

③温暖化が海流を変え、さらに温暖化を加速させる

地球温暖化によって変化した海流は、逆に温暖化の進行を加速させる「フィードバックループ」※を形成します。東京大学の数値実験では、「ゆっくりとした温暖化」が黒潮の流路や流量を変化させ、急激な気温上昇につながる可能性が再現されています。

また、日本海の深層循環の弱体化は、CO₂を吸収する深海の能力を損ね、地球規模の炭素循環に打撃を与えています。すでに日本近海でも、黒潮の蛇行対馬海流の流量増加といった変化も記録され、変化は始まっているのです。

海流と地球温暖化の関係は、まだ完全に解明されていない部分も多い複雑なテーマです。今後の研究によって、より詳細なメカニズムが明らかになることが期待されています。*5)

海流とSDGs

海流は、地球環境の安定や生物多様性の維持、持続可能な資源利用という点で、SDGsの目指す「持続可能な社会」と深く結びついています。気候調節や生態系の保全、資源循環の基盤として、海流はSDGsの達成に不可欠な役割を果たしています。

特に、海流の健全な維持は、

  • 海洋資源の持続的利用
  • 海洋汚染の抑制
  • 気候変動への適応

など、多くの目標達成に貢献します。

SDGs目標12:つくる責任 つかう責任

海流によるゴミや汚染物質の拡散を防ぐため、

  • 廃棄物管理
  • リサイクル
  • 持続可能な生産消費の推進

が不可欠です。循環型社会の実現は、海洋環境保全と直結しています。

SDGs目標13:気候変動に具体的な対策を

海流は地球規模で熱や炭素を循環させ、気候の安定化や温暖化ガスの吸収に寄与しています。海流変動の監視や研究、温室効果ガス排出の抑制活動は、気候変動対策の根幹となります。

SDGs目標14:海の豊かさを守ろう

海流は、

  • 海洋生態系の維持
  • 漁業資源の再生産
  • プラスチックごみの拡散

に直結します。持続可能な漁業、海洋ごみ削減、海のエコラベル認証※などの取り組みが、海洋環境と資源の保全に大きく貢献します。

※海のエコラベル認証

MSC(海洋管理協議会)が運営する国際的な制度。持続可能で環境に配慮した漁業で獲れた水産物に付く。漁業認証と流通管理認証(CoC)の2段階で、第三者機関が審査。

SDGs目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

海流や海洋環境の課題解決には、国や研究機関、企業、市民社会など多様な主体が協力し、知識・技術・資金を共有するグローバル・パートナーシップが不可欠です。

  • 国際共同研究
  • 持続可能な漁業認証
  • 廃棄物対策

など、多国間の連携による活動がSDGs全体の目標達成を大きく後押しします。

持続可能な未来を実現するためには、海流という地球の生命維持システムに対する理解を深め、国際社会が一丸となって保全と賢明な活用を進めていくことが重要です。*6)


>>SDGsに関する詳しい記事はこちらから

まとめ

【日本海の海面水温平年差分布図(左)および深さ100mの水温分布図(右)(5月8日)】

海流は、地球の気候、生態系、そして私たちの産業や生活を支える巨大な海洋のシステムです。

  • 海水の密度差
  • 地球の自転によるコリオリ力

で動く多様な流れが世界中にあり、特に日本近海は黒潮と親潮、対馬海流とリマン海流がぶつかる特徴的な場所です。

最近の日本近海の海流の動向として、

  • 約8年続いた黒潮大蛇行に終息の兆しが見られる
  • 三陸沖では記録的な水温上昇が観測され、日本海北部では高温、南部では低温といった平年からの乖離が見られる

など、日本近海の海流や水温は非常に動的に変化しています。これは地球温暖化の影響を示唆し、漁業や沿岸環境への影響に直結します。

また、「千年海流」とも呼ばれる深層循環の弱化など地球規模の懸念もあり、海流の正確な観測・予測、そして異なる文化や経済状況を超えた世界的な協力が、気候変動対策や海洋保全には不可欠です。

あなたの身近な海は今、どのような状況ですか?

様々な地域の海の現状を知り、個人レベルで海に配慮した選択や意識を持つことが未来につながります。 私たちの行動で、海の未来は確実に変えられます。

海洋の現状を知り、あなたにできることを見つけ、未来の豊かな海につなげましょう。*7)

<参考・引用文献>
*1)海流とは
気象庁『海洋の循環』
気象庁『海洋大循環モデル』
NEDO『再生可能エネルギー技術白書 第 6 章 海洋エネルギー』
日本海事広報協会『日本近海の海流』
海流情報センター『海流の知識』
日本海学推進機構『暖流と寒流』
北海道大学『黒潮と親潮をつなぐ日本東方の海水輸送過程を可視化』(2022年3月)
海上保安庁『航海安全のための海洋調査』
海上保安庁『海流と潮流はどう違うの?』
国土地理院『海流 ・ 海水温度 ・塩分濃 度』
防衛装備庁『海洋の可視化への挑戦!』(2023年)
*2)海流の仕組み
WIKIPEDIA COMMONS『Earth Global Circulation – en』
WIKIMEDIA COMMONS『Circulacion termohalina』
WIKIMEDIA COMMONS『Northern vs Southern hemisphere tropical cyclones』
WIKIMEDIA COMMONS『The Earth seen from Apollo 17』
気象庁『深層循環の変動について』
気象庁『総観気象学 理論編』(2022年3月)
気象庁『エルニーニョ/ラニーニャ現象とは』
Maruha Nichiro『海の寒流、暖流とは?どんな魚がいる?』(2024年6月)
日本海事広報協会『海流はどうしておきるの』
academist Journal『月が深層海洋大循環を引き起こす? –「乱流」との関係を探る 東京大学・日比谷紀之教授』(2018年7月)

東京大学『月と深層海流』(2015年5月)
日本海学推進機構『深層の海流』
真鍋 大覚『沿岸海洋波の生成理論-32-海流潮流の日変化成分の脈動周期』
木田 新一郎『海が流れる方向はどう決まる?太平洋と日本付近の海洋循環』(2021年)
宮澤 泰正『オオミズナギドリと貨物船で海流を測る』(2017年)
石原 孟,種本 純『数値シミュレーションを用いた極値海流予測に関する研究』(2015年11月)
熊本大学『風が作り出す海水の流れ』
*3)海流の種類と特徴
WIKIMEDIA COMMONS『Oceanic gyres.png』
第八管区海上保安本部海洋情報部『世界の海流』
第八管区海上保安本部海洋情報部『日本近海の海流』
気象庁『7年9か月続いた黒潮大蛇行が終息する兆し』
気象庁『親潮』
気象庁『海流』
気象庁『黒潮』
気象庁『親潮前線と黒潮前線、混合域』
気象庁『対馬暖流とは』
気象庁『海流の診断の見方【日本近海の海流】』
海洋情報研究センター『海の事典』
魚食普及推進センター『日本の海は魚が沢山獲れる場所』
環境省『瀬戸内海の潮流』
環境省『海とのつきあい方:海域の特性に合わせる』
環境省『第3章 海洋の生物多様性及び生態系サービス』
国立環境研究所『地球の変化に敏感に反応する日本海の姿』(2007年)
Nature asia『風に抵抗する海流』
Science Portal『黒潮の蛇行が発生する仕組みが分かってきた』(2017年10月)
東京大学『海洋大循環』
宮澤 泰正『オペレーショナル海流シミュレーションの最前線』(2024年6月)
*4)海流の影響
気象庁『日本の天候』
水産庁『図で見る日本の水産業』(2023年12月)
環境省『海洋ごみ学習用教材 高校生用』
環境省『海洋ごみ学習用教材 高校生用』
東京大学『|海洋は気象と気候に大きな影響を与えている。』(2021年12月)
海洋研究開発機構『海流と生態系の関係は?』(2015年5月)
海洋研究開発機構『過去20年の海流変動は⽇本にやってくるシラスウナギの数を減らしていた』(2018年4月)
気象庁『波浪に対する海流の影響調査』(2010年)
国立環境研究所『気候変動によって海洋生物にどのような変化がある?』
磯辺 篤彦『海洋プラスチックごみの輸送シミュレーション』(2018年)
日比野 忠史『海流 の 内湾域水質 に及 ぼす影響―三陸沿岸域 を中心 と して ―」(2000年2月)
環境省『日本の海ってどんな海』
日本経済新聞『実は生命の宝庫「太平洋ゴミベルト」 驚きの調査』(2023年8月)
*5)海流と地球温暖化の関係
WIKIMEDIA COMMONS『Corrientes-oceanicas-en』
京都大学『サンゴの白化・絶滅を防御する天然の化合物を発見 -サンゴの共生バクテリアが放出する天然色素が褐虫藻のストレス耐性を上げる-』(2020年1月)
環境省『IPCC 「海洋・雪氷圏特別報告書」の概要』(2020年)
東京大学『「ゆっくり温暖化→海流の急変→温暖化の急進」が再現された』(2019年11月)
東京大学『地球温暖化で沿岸漁業は……』(2024年11月)
海洋研究開発機構『対馬海流の流量が増加している』(2021年4月)
美山 透『変わりゆく海洋環境 : 黒潮大蛇行と温暖化』(2024年3月)
笹川平和財団『地球温暖化による日本海の深層循環弱化とその影響』(2024年4月)
笹川平和財団『地球流転』(2007年6月)
日本経済新聞『温暖化で弱る「千年海流」 多雨や高潮、異常気象に拍車』(2024年9月)
環境省『第5節 自然生態系の現状』
環境省『国の取り組み(2) -海の生物多様性への影響要因の解明とその軽減策の実施-』
Wikipedia『気候変動による海洋への影響』
島田 和幸『ティッピング・ポイントを考える第4回 海(海洋)』(2021年5月)
気象庁『海面水温の長期変化傾向(日本近海)』(2025年3月)
平和政策研究所『深層海洋大循環と気候変動 ―未だ解明されない深海の謎―』(2019年8月)
Spaceship Earth『サンゴの白化現象とは?原因と生態や経済への影響・回復の可能性と対策・私たちにできること』(2025年3月)
*6)海流とSDGs
国際連合広報センター『目標 14 海洋と海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する』(2018年12月)
国際連合広報センター『国連海洋会議とは』
平木 講儒『潮流・海流発電について』(2015年)
村上 天元『海流・潮流発電の動向・展望』(2023年)
環境省『第4章 海洋生物多様性の保全及び持続可能な利用の基本的視点』
環境省『沿岸海域におけるマイクロプラスチックを含む漂流ごみ実態把握調査業務 報告書』(2021年3月)
環境省『海のめぐみって何だろう?:海のめぐみを損なう要因とは』
国土交通省『海洋ごみ問題について』(2020年11月)
水産庁『(5)漁場環境をめぐる動き』
*7)まとめ
気象庁『海面水温・海流(日本海)』(2025年5月)
日本経済新聞『過去最長の黒潮大蛇行に終息の兆し 7年9カ月、漁業にも影響か』(2025年5月)
日本経済新聞『温暖化で弱る「千年海流」干ばつや高潮、異常気象に拍車』(2024年9月)
東北大学『2023年以降、三陸沖での水温上昇は世界で過去最大』(2025年2月)
海洋研究開発機構『2025年5月26日までの黒潮「短期」予測(2025年5月7日発表)』(2025年5月)

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この記事を書いた人

松本 淳和 ライター

生物多様性、生物の循環、人々の暮らしを守りたい生物学研究室所属の博物館職員。正しい選択のための確実な情報を提供します。趣味は植物の栽培と生き物の飼育。無駄のない快適な生活を追求。

生物多様性、生物の循環、人々の暮らしを守りたい生物学研究室所属の博物館職員。正しい選択のための確実な情報を提供します。趣味は植物の栽培と生き物の飼育。無駄のない快適な生活を追求。

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