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株式会社アップガレージグループ | リユース店の拡大が循環型社会の構築を後押しする

株式会社アップガレージグループ

株式会社アップガレージグループ 菅沼さん インタビュー

菅沼 一孝

2001年入社後、アップガレージの全国フランチャイズ展開に大きく貢献。2008年には同社の取締役に就任後、取締役営業本部長を経て2016年には㈱アップガレージの代表取締役に就任。現在は、㈱アップガレージグループの執行役員兼総務部長として、幅広い人脈とネットワークによりFCを含めたグループ全体の横断的な連携とマネジメントにまい進している。
アップガレージグループは、カー&バイク用品のリユース専門店「アップガレージ」の運営を中心として、新品タイヤ専門ブランド「タイヤ流通センター」、自転車専門リユース事業「アップガレージサイクルズ」など様々な事業を展開。中古カー&バイク用品専門店としては、全国シェアNo.1、店舗数は240店舗以上。ブランドスローガンである「Good Mobility, Happy Life」を提供するため、様々な挑戦を続けている。

introduction

創業25周年を迎える中古カー・バイク用品の買取・販売店「アップガレージ」。

リユース業を主軸に、車業界に特化した人材紹介サービスやFC加盟店への卸売業など、幅広い業務を通して環境保全に貢献されています。

今回、創業期メンバーである菅沼さんに、環境への取り組みや今後の展望について詳しく話を伺いました。

「中古カー用品のリユース拡大」=「CO2の削減」

最初に、御社の事業内容について教えてください。

菅沼さん:

弊社は、中古のカー・バイク用品を買取・販売する「UP GARAGE(アップガレージ)」を運営しています。

今でこそ全国に240の店舗を展開していますが、昔は本当に車やバイクが好きな人たちだけにしかニーズはありませんでした。ですが、徐々に一般のカーユーザーが増え、最近では逆転し、全ユーザーの7〜8割が一般カーユーザーとなっています。

その理由として考えられるのが、中古カー用品の価格の安さと安全性の確立にあります。多少使用感があるものの、新品の半額以下で手に入り、しかも充分使えることが認知され始めたことが背景にあると考えています。

アップガレージ店舗内の商品が陳列されている様子

タイヤは命を守るものですから、安全でなければなりません。しかしながら、当初は中古タイヤは危ないという認識があったことも事実です。そこを全国展開し、認知度を上げることで「中古でもきちんとした企業が徹底した管理のもとに扱っているならば、安心してはける。それであれば価格が安いに越したことがない。」という考えに転換することができました。

— 中古品のニーズが高まっているのですね

はい。これは、車の中古品販売店の前身の話になりますが、もともと中古品は解体屋さんでしか取り扱っておらず、業者や知人でないと買いづらかった時代がありました。加えて価格は工場長次第といった、いわゆる時価です。

その中で専門店が、明瞭化された価格で販売するようになったこともニーズが高まっている一因になったのではないかと思います。

スタッドレスタイヤ

これに伴い、「中古品を買う人」だけでなく、「中古品を売る人」も増えています。

なかでも一番多いのが、スタッドレスタイヤです。車種が変わるとタイヤのサイズも変わるので同じものは使えません。そのため、捨てるか、タイヤ屋さんに引き取ってもらうことになりますが、廃棄料や引取料がかかります。この出費が、売ることで現金化できる。「捨てずに売ればいいんだ」という点に気づいてくれた方が増えた証だと思います。

不法投棄を減らしたい!使えるまで使って、最後は燃料に

次に、御社のサステナビリティへの取り組みについて教えてください。

菅沼さん:

「買取→チェック・修理→販売」と商品を循環させ、最終廃棄までのスパンを長くさせることで、CO2の削減に貢献しています。

もともと我々の業態自体が「もったいない・捨てない」ところから始まっているため、新しい施策として取り組んでいるわけではありません。サステナビリティやSDGsが話題になる以前より、基本ポリシーとして循環型社会の形成を掲げています。

例えば、廃棄されたものが、新しい商材に生まれ変わることを想像してみてください。その過程には、熱を溶かす工程があるため、必ずといってよいほどCO2が排出されます。しかし、アレンジせずそのまま繰り返し使えば、CO2を排出することはありません。

弊社は温室効果ガス削減貢献量と排出量をデータ化し、HPで開示しています。2024年3月期の実績では、年間スギの木約661,000本分のCO2吸収量と同等の削減効果があったという指標が出ました。

リユース業態による温室効果ガス(GHG)削減貢献量データ
リユースによるCO2削減のイメージ

ご存知の通り、車関連の商品は産業廃棄物になるものが多いんです。そのため、タイヤなんかを山の中に捨てたり、海外で廃棄したりと由々しき事態が起きています。タイでは日本からの廃棄タイヤがどんどん輸出されて山奥に不法投棄される問題もあるほどです。

そうしたなか、「中古タイヤは再利用できること」をもっと知っていただければ、不法投棄を減らしていけると考えています。

そして、最終的に捨てることになったとしても、我々のところに持ってきていただければ適切に処分します。タイヤ部分はチップにして製紙工場で再燃料として活用、ホイールの鉄、アルミ部分は区分して再利用に回すため、安心してお任せいただけます。

リペア事業「アップガレージラボラトリー」の設置とタイヤホイール洗浄機の導入

— 具体的にどのように環境保全に取り組んでいるのでしょうか?

菅沼さん:

リペア事業によるCO2削減とタイヤホイール洗浄機の導入による水使用量の削減に取り組んでいます。

まず、リペア事業についてお話します。こちらは、歪みや曲がり、傷のある中古ホイールを直して使おう!というコンセプトのもと、2022年から開始した事業です。

中古ホイールの場合、傷がなかったり歪んだりしていなければそのまま買取、再販します。しかし、傷や歪みがあるとハンドルがブレてしまうため、当然ながら売り物にはならず、廃棄処分になってしまうんです。

それを直して使えば、廃棄処理にかかる燃料を使うことがないため、CO2排出削減に少しでも役に立てるんじゃないかというのがリペア事業の発想です。

とはいえ、ホイールを直すには高度な技術が必要で、数年かけ試行錯誤しながらリペア設備「アップガレージラボラトリー」を整えました。3年ほど前から形になり、今は各店舗からアップガレージラボラトリーにホイールを集めて修理し、また店舗に戻すという形態を取っています。

アップガレージラボラトリー

次に、タイヤホイール洗浄機の導入について説明します。

タイヤホイール洗浄機は、その名の通りタイヤホイールを自動で洗ってくれる機械です。

タイヤホイール洗浄機を導入した第一の目的は、従業員の負担を軽減するためでした。それまでタイヤホイールの洗浄は人の手で行っており、水を使うので冬だとしもやけになったり、洗浄剤によっては手や肌が荒れたりしていました。そういったことから解放しなければいけないという思いがありました。

第二に、コスト削減です。自動化することにより、生産性をあげるのが目的です。

結果的に水や洗剤の使用量が大きく減り、環境貢献につながりました。洗浄機でホイールを洗う際は、繰り返し使える特殊な洗浄液を用いるため、水と洗剤を大量に使わなくても、ホイール約400本の洗浄ができます。

タイヤホイール洗浄機

ホイール洗浄の需要が特に高いのは、雪国地方です。これは、スタッドレスタイヤとサマータイヤをはきかえる際にホイール洗浄をする習慣があるためです。

雪国はシーズンの間、凍結防止剤をまいていますよね。あれは原料が塩化カルシウムなのでほとんどの成分が塩です。冬の間、塩をまきあげるため、ホイールをそのままにしておくと腐ってしまいます。その防止策として足回りを洗浄する必要があるんです。

ホイール洗浄機を使えばお客様も環境に優しい方法で楽に洗浄ができます。また、業者に依頼していたものを我々が受けることで水使用量の削減につながると考えました。

株式会社アップガレージグループ
ホイール手洗浄の様子

–タイヤホイール洗浄機の導入店舗を増やすにあたって、課題はありますか?

菅沼さん:

現状では、30店舗でしかタイヤホイール洗浄機を導入できていません。我々が採用している洗浄機はドイツ製なんですが、ヨーロッパでの需要が高く、日本には年間何百台という単位でしか入ってこないんです。今後は、できれば大規模店含む全店に導入するために動いていきたいですね。

ここまでユーザーに向けたサステナビリティの話を伺いました。次に、従業員に対するサステナビリティの啓発はどのようにされているのかを教えてください。

菅沼さん:

前段でお話した通り、もともとアップガレージは環境保全への貢献を企業の業態として持つため、特に意識づけするようなことを明確には行っておりません。みなさん承知の上で、FCに加盟いただいたり、入社していただいているからです。

ただ、ひとつ徹底していることは、「どんなものでも必ず買い取りましょう。なるべく捨てないようにしましょう。」ということ。ですから、他社さんでは買い取らないようなものもうちではほとんど買う、もしくは引き取っています。これも不法投棄を防ぐためです。

弊社は、毎年富士山で環境保全の活動をしておりまして、そこに行くと必ずカー用品が富士山の樹海に捨てられているのを目にします。そういう場面に出くわす度に、その思いがより一層強くなります。

富士山の麓での環境保全活動

車やバイク以外の「モビリティリユース」を発展

今後の展望についてお聞かせください

菅沼さん:

車・バイク以外のタイヤがついている商品(モビリティ)のリユースにも力を入れたいと考えています。具体的には、自転車やシニアカー、ベビーカーなどです。

その中で今は自転車に関する取り組みを進めています。

現状、中古の自転車屋さんは多数あるものの、メインがロードバイク向けの市場がほとんどで、電動自転車や子供用自転車などは確固とした小売店がありません。我々は高価格の自転車ではなく、よく駅前などに放置されているような底辺の自転車を対象としています。

モビリティ商品

これが非常に好評でして、例えば子供用自転車なんかは子供の成長に合わせて自転車を大きくしていきますよね。そうすると短いスパンで自転車を買い替えなければなりません。ところが、常に新しいものを買い与えるのはもったいないという方へのニーズが広がっており、そういう方々が弊社で購入くださっています。

中古用品の需要が大きくなれば、新しい商品を作らなくてよいので、これもまたCO2削減につながります。

「一時だけ使えればいいので安く買いたい」そんな時に激安で販売されていたら、それはその人にとってものすごく価値のある商品になります。店舗は商品を置くスペースが限られていますから、新たなモビリティ商品を置くために、我々の店舗開発能力をどんどん強めていく必要があります。今はそれが課題ですね。

また、環境保全にも引き続き注力していきたいと思います。

現在、環境配慮のために、店舗に設備投資を行っています。主に、設置可能な店舗への太陽光発電の搭載や特殊なエアコンフィルターの取り付けなどです。フィルター取り付けにより、消費電力をおよそ3割ほど減らせています。

太陽光発電を搭載した店舗(アップガレージ平塚店)

リユース業が環境を守ることにつながっているのであれば、それを運営する店舗でもCO2排出の削減に貢献したい、企業全体でサステナビリティを体現していきたいという思いの表れです。

これからもアップガレージを利用いただくことで、環境保全に貢献いただける仕組みを追求していきたいと思います。

アップガレージを利用することがCO2の削減につながることがよくわかりました。本日は貴重なお話をありがとうございました!

関連リンク

アップガレージグループ サステナビリティの取り組み:https://www.upgarage-g.co.jp/sustainability/

ホームページ:https://www.upgarage-g.co.jp/

サービスサイト:https://www.upgarage.com/