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バイオプラスチックとは?メリット・デメリットや問題点をわかりやすく解説!

バイオプラスチックとは?メリット・デメリットや問題点をわかりやすく解説!

プラスチックは、私たちの生活に欠かせない素材です。

その一方で、プラスチック利用によるごみ問題や海洋汚染など、様々な環境への負荷が懸念されるようになりました。そこで注目を集めるのが「バイオプラスチック」です。

従来のプラスチックとバイオプラスチックは、一体何が違うのでしょうか。この記事では基本的な知識や実際の使用例について説明します。

バイオプラスチックとは

バイオプラスチック(bioplastic)とは、英語で「生物」を意味するbioと、プラスチック(plastic)を併せた言葉で、植物や動物の糞といった自然資源を原料として作られています。

石油・化石資源を原料とする、従来のプラスチックとの大きな違いと言えるでしょう。

広くさまざまな原料を使用して製造されるバイオプラスチックですが、もう少し細かく分類すると以下のようになります。

  1. バイオマスプラスチック
  2. 生分解性プラスチック
  3. 上記2つの混合プラスチック

では、バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックとはどのようなものか確認しましょう。

バイオマスプラスチックについて

バイオマスプラスチックとは、加工・燃焼などによってエネルギーへの変換が可能な有機原料を使って出来たプラスチックを指します。

バイオマスとは、生物資源(bio)の量(mass)を表す言葉であり、生物由来の資源(石油のような化石資源は除く)で、かつ再生可能なものを原料としています。

原料

バイオマスプラスチックの原料は、主にセルロースという物質を含むとうもろこし・さとうきび由来のでんぷん質や、トウゴマのひまし油などが使われています。

生分解性プラスチックについて

生分解性プラスチックとは、主に土壌中の微生物によって分解できるプラスチックのことです。

バイオマスプラスチックの中にも土に還せる種類はありますが、生分解性プラスチックの場合、原料が必ずしも動植物だとは限りません。あくまでも「生分解出来ること」が重視されるため、化石燃料由来の生分解性プラスチックも存在します。

原料

代表的な生分解性プラスチックの原料は3つに分類されます。

  1. 微生物生産系:ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)
  2. 天然物系:セルロース誘導体、でんぷん
  3. 化学合成系:ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート系(PBS,PBSA)、ポリカプロラクトン など

このうち植物由来とされるのは、天然物系に加えポリ乳酸などが当てはまります。

バイオプラスチックの用途

バイオプラスチックの概要が分かったところで、実際にどのような使われ方をしているのかを見ていきましょう。

ビニール袋

私たちが普段の暮らしの中で、もっとも身近に感じられるバイオプラスチック製品のひとつが、ビニール袋です。バイオプラスチックのビニール袋は、ヨーロッパをはじめ世界中で普及しつつあります。

日本では、2020年7月からレジ袋の有料化が実施されていますが、海洋生分解性プラスチック(海で生分解されるもの)の配合率が100%の袋、バイオマス素材の配合率が25%以上の袋については規制の対象外とされています。

農業用マルチ

近年、日本で特にバイオプラスチックが注目される用途として、農業用のビニールマルチが挙げられます。農業用マルチは、土壌の温度を一定に保つために使用されるものです。

こちらの図をご覧ください。ABA(農業用生分解性資材普及会)が取りまとめた、生分解性マルチフィルムの利用状況・被覆面積を示しています。

従来のプラスチックは、使用後に大量のゴミが出てしまうことが指摘されていました。

対してバイオプラスチック(生分解性プラスチック)であれば、畑に敷いてから一定期間後には生分解されて自然に還ります。

ゴミが出ず、焼却による二酸化炭素排出の心配がないため、近年急速に普及が進んでいることが伺えます。

バイオプラスチックが注目されている理由

次に、バイオプラスチックが注目されるようになった背景にある、世界が抱える問題について見ていきましょう。

海洋プラごみ問題

近年、プラスチックごみによるさまざまな問題が世界中で叫ばれている中で、特に深刻なのが海洋プラスチックごみ問題です。

現在、世界の海に漂流しているプラスチックごみの量は、すでに1億5千万トンといわれています。さらに毎年、少なくとも年間800万トンのごみが流れ出ているとされ、重さにするとジェット機5万機分に当たります。私たちには想像できないほどのプラスチックごみが、毎年海に流されているのです。

海洋に漂流しているごみには、普段の暮らしで私たちが使用しているビニール袋やペットボトルだけでなく、漁業に必要な網・釣り糸も多く含まれます。これらは分解に相当な年数がかかり、長期間にわたって海に存在するのです。

以下の図が示す、「各ごみが分解されて細かくなるまでに必要な年数」をご覧ください。

レジ袋でも分解には20年かかり、ペットボトルやおむつに至っては、人間の寿命をはるかに上回っています。

プラスチックごみは、ウミガメをはじめとする海洋生物がエサと間違えて食べてしまい、死に至るケースも多数報告されています。プラスチックごみは海を汚すだけでなく、生物の命をも奪ってしまう恐れがあるということです。

5㎜以下のマイクロプラスチックごみも

さらに海洋プラスチックごみは、海を漂っている間に細かく砕けます。5㎜以下に分解されたものはマイクロプラスチックといわれ、人間の目には見えないほどのサイズとなります。

※マイクロプラスチックは、海中で分解されたごみ以外にも、日本では洗剤や歯磨き粉のスクラブ材・化学繊維の衣料品に多く利用されており、生活水を経由して海中に流れていることがあります。

こうした小さなプラスチックは、小魚や貝類のような生物が食してしまう恐れがあり、それらが水揚げされて市場に並べば、巡り巡って私たちが口にしてしまうリスクが指摘されています。

現在、マイクロプラスチックを体内に取り込んだ場合の健康被害についてはまだ研究段階ですが、決して安全だとはいえません。海洋環境だけでなく、私たちの身体にもプラスチックは大きな脅威をもたらしています。

地球温暖化による気候変動のリスク

地球温暖化は、主に二酸化炭素やメタンガスといった物質が空気中に蓄積され、オゾン層を破壊することによって地球の気温上昇といった気候変動をもたらす現象です。

二酸化炭素は生物の呼吸だけでなく、ものを燃やすことによって発生します。2020年においては、世界でおよそ22億4,000万トンものごみが捨てられたと推測され、これにより315億トンもの二酸化炭素がエネルギー消費によって排出されました。

私たちの消費活動によって、毎年これほどの二酸化炭素が出ており、ますます地球温暖化が加速しています。IPCCの報告書によると、21世紀中には地球の平均気温が1.5度を超えると見込まれ、すでに起きている異常気象・大規模な自然災害の頻度がますます高くなるかもしれません。

地球温暖化と、それに伴う気候変動の加速を少しでも抑えるためには、プラスチックをはじめとしたごみの量を減らし、燃焼による二酸化炭素の排出を防がなければなりません。

このような背景から、環境の視点からもバイオプラスチックが注目されるようになりました。

バイオプラスチックのメリット

ではここで、バイオプラスチックを使用するメリットについて紹介します。

通常のプラスチックと変わらない機能性

バイオプラスチックの中でも、特にバイオマスプラスチックに関しては、従来のプラスチック製品とほとんど変わらない機能を持ち合わせています。そのため、幅広い用途でバイオマスプラスチックに置き換えることが可能です。

生分解性プラスチックに関しては、樹脂の特性の違いから用途が限定されますが、耐水性は劣りません。そのため、短期間での利用や、ゴミ袋・自然環境での利用に適しています。

バイオプラスチックのデメリット、課題

次に、バイオプラスチックのデメリットについても見ていきましょう。

問題点①コストが高い

バイオプラスチックに必要な原料は、化石燃料由来のプラスチックに比べて、コストがかかる傾向にあります。

例えばバイオプラスチックのレジ袋であれば、サトウキビのでんぷん質から必要な成分を取りだすなどの工程により、従来のプラスチック製レジ袋の製造と比べると3~4倍のコストがかかります。

問題点②原料によっては、調達を輸入に頼っていることも

また、原料を国内で生産しているとは限りません。例えば、代表的なバイオマスプラスチックの原料であるサトウキビは、ブラジルやインドから輸入しています。これでは、輸送による膨大なエネルギーを消費することになり、その分二酸化炭素も排出してしまいます。

問題点③リサイクルの難しさ

バイオプラスチックが複数種類のプラスチックと混合された場合、現状では技術が確立していないため、リサイクルが難しいとされています。

研究が進められているものの、現時点では回収からリサイクルまでに、ほかのプラスチックと分別することが好ましいといえます。

このような事情もあり、日本ではプラスチック全体のうち、バイオプラスチックの投入量は2018年時点でわずか0.5%と低いのが現実です。

バイオプラスチックに取り組む企業

これまでバイオプラスチックの概要についてお伝えしてきました。次に、バイオプラスチックのポテンシャルを活かし、実際に力を入れている企業を2社ご紹介します。

フタムラ化学株式会社(日本)

1947年に家族で創業した日本の会社・フタムラでは、植物由来のセルロースを原料としたパッケージ包装フィルム・NatureFlex™を開発しました。現在はイギリスやアメリカにも拠点を広げ、さまざまな商品のパッケージに使われています。

見た目は従来のプラスチックと変わらず、最後は生分解される点もうれしいポイントです。

NatureWorks(アメリカ)

アメリカで1989年にはじまったNatureWorksでは、Ingeoという商品名で生分解性プラスチックを取り扱っています。

主にコーン・サトウキビなどを原料とし、持ち帰り用の食器やカップだけでなく、3Dプリント用の部品としても幅広く利用されています。

バイオプラスチックとSDGsの関係

最後に、バイオプラスチックとSDGs目標との関係についても触れておきましょう。

環境に関連する目標とも大きなかかわりを持つバイオプラスチックですが、今回は特に目標12にフォーカスしました。

特に目標12「つくる責任、つかう責任」と関係

SDGs12は、生産から消費、廃棄までのプロセスにおいて、環境や人権に配慮することを目指しています。

プラスチックは、今や私たちの暮らしに欠かせないものとなっています。しかし必要以上に消費することで、ごみとして自然界に漂流したり、分解されるまでに100年以上かかってしまったりと、環境に大きな負担をかけているのが現状です。

また生産段階でも、採掘できる量のリミットが迫っている化石燃料を使用し、貴重な地球の資源を枯らそうとしているところに、消費者である私たちとしては、できれば加担したくないものですよね。

そうした問題の解決策のひとつとして、バイオプラスチックは地球環境に負担の少ない素材として期待が高まっています。

バイオプラスチックは、すべてが生分解可能ではありませんし、原料によっては化石資源を使ったものもあります。しかし植物が原料であれば、成育時に二酸化炭素吸収が行われており、生分解性があれば最後はごみとして地中・海中に残る恐れがないため、従来のプラスチックを選ぶよりは地球への負荷が小さくなります。

もちろん前提として、プラスチックの利用そのものを抑えることが大切です。そのうえでどうしても必要な際は、バイオプラスチックを選ぶことで使う側としての責任を果たせるといえるでしょう。

まとめ

今回はバイオプラスチックについて、種類や注目されている背景、実際の取り組みについて紹介しました。

まだまだ課題が残る素材ではあるものの、今後の技術の進歩次第で私たちの生活に欠かせないものとなる可能性を秘めています。消費者として、プラスチックの利用自体に気を付けつつ、選択肢があれば是非バイオプラスチックを選ぶようにしましょう。

<参考リスト>
Bioplastics – European Bioplastics e.V.
Bio- – definition of bio- by The Free Dictionary
バイオマスとは?:九州農政局
バイオマスプラスチック入門 – JBPA
環境を守る新しいプラスチックを作る――原料は植物バイオマス。使用後は用途に応じて分解速度をコントロール | Think Blog Japan
生分解性プラスチック – 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア
総務省|公害等調整委員会| レジ袋有料化について
Solid Waste Management
CO2 emissions – Global Energy Review 2021 – Analysis – IEA
1.5℃に向けて|環境省
バイオプラスチック導入ロードマップ|環境省
12.つくる責任、つかう責任 | SDGsクラブ | 日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)