【わかりやすく】トランプ関税の日本への影響とは?影響や中国との関係について解説

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2025年1月20日、アメリカ合衆国で第二次トランプ政権が発足しましたが、発足後にトランプ氏が発表している一連の関税措置に対し、日本を含む世界各国から驚きと不満の声が寄せられています。この関税措置を「トランプ関税」といいます。

トランプ政権はなぜ世界各国の反発を受けること必至のトランプ関税を敢行するのでしょうか?

トランプ関税実施に至る経緯や概要、日本の産業への影響などを解説します。

トランプ関税とは?概要や対中関税について解説

関税とは、外国からの輸入品の量や価格に応じ、輸入した側が収める税金で、関税は自国の収入を増やすことと、自国の産業を保護・発展するために設けられます。

トランプ関税の目的もアメリカの国益を高めてアメリカの産業を保護することですが、その関税のかけ方が「常識を超えている」と少なからぬ非難の声が上がっているのです。

そのトランプ関税の概要と対中関税、トランプ関税で引き上げられた日本の品目を見てみましょう。

トランプ関税の概要

トランプ関税は、アメリカ・ファーストを掲げているトランプ政権の経済政策の一環です。

アメリカ・ファーストが生まれたのは1850年代に米国下院議員であるレヴィン氏が設立したアメリカン党が由来です。

アメリカ第一主義とも呼ばれ、アメリカの外交政策の姿勢の中で孤立主義を強調するためにも使われている言葉で、近年ではトランプ氏が2015年11月に大統領選を控えた論説でこのスローガンを掲げたことで有名になりました。

そのアメリカ・ファーストを土台にしたトランプ関税で掲げている措置は以下の通りです。

  • 中国・カナダ・メキシコへの追加関税
  • 貿易相手国ごとの追加関税
  • 鉄鋼とアルミニウム製品に関する追加関税
  • 自動車と自動車部品に関する追加関税

トランプ関税が掲げる目標について、追加関税があるとされている産業界が震撼しています。

トランプ関税では、大きく分けると以下の4種類の関税をかけると宣言しました。それぞれの性質を表で示します。

関税の種別性質
国別関税特定の国・地域からの輸入品全てを対象とする関税
相互関税アメリカと互いに輸入し合っている相手国がアメリカ製品を輸入する際の関税率によって決められる関税
ベースライン関税(一律関税)全ての国と地域からの輸入を対象とする一律(10%)の関税
品目別関税自動車・鉄鋼などのアメリカが輸入する特定の品目を対象とする関税

2025年4月2日時点に公表された各国との相互関税は以下の通りです。ここでは3カ国分のみ表記します。

国名アメリカからかける関税アメリカにかけている関税
日本24%46%
中国34%67%
欧州連合(EU)20%39%

2025年4月9日、トランプ氏は多数の国に対してかけると予告した相互関税適用を90日間停止すると共に、ベースライン関税の10%を適用すると発表しています。

しかし、中国との相互関税は上の表よりも大きく跳ね上がりました。アメリカと中国の間で相互関税を上げる報復合戦が展開されていたからです。

次は、アメリカと中国が報復し合っていた理由を見てみましょう。

米中が報復し合っている理由

前項で解説した4種類のトランプ関税のうち、特に関心が集まっているのは品目別関税と国別関税です。特に高い関税をかけると宣言している国との間にすでにトラブルが発生しています。それが中国です。

トランプ氏が2025年4月9日に「多数の国にベースライン関税10%を適用する」と発表したのは前述の通りですが、中国に対しては相互関税率を145%に引き上げることを表明しています。

この措置に対して、中国はアメリカ製品に125%の関税を課すことで報復しました。

トランプ関税措置を発表した当時は、中国に対する相互関税率は34%でしたが、それに対して中国がアメリカに対抗措置をとると発表したことにより、トランプ政権は4月8日に中国との相互関税率を84%に引き上げると発表したのです。

しかし、5月になってアメリカと中国は90日間の停戦合意に達し、アメリカは関税率を145%から30%へ、中国は125%から10%へ引き下げています。

トランプ関税によって引き上がった日本の品目を紹介

品目課税率引き上げ幅
鉄鋼(種類により変動)3~10%25%
アルミ10%25%
自動車(車種により変動)2.5~25%27.5~50%
農産物10%24%

トランプ関税発表前の税率は「課税率」、2025年3月以降に引き上げられた税率を「引き上げ幅」として表記しています。

その後、2025年4月9日にトランプ政権は「90日間ベースライン関税の10%を適用」と発表したので、2025年5月現在の課税率は自動車や自動車部品以外は一律10%です。

しかし、91日目以降の課税率はまだ公表されていないため、アメリカと日本の交渉の結果次第で引き上げ幅として記載した税率よりも高い税率になる可能性があります。

また、自動車・自動車部品には2025年4月3日から25%の追加関税がかけられています。従来は普通自動車が2.5%だったのが27.5%まで上昇し、トラックなどの大型車両が25%から50%に上昇しました。

同年5月3日からは自動車部品にも25%追加関税がかけられています。

農産物の課税率については、4月9日以前にもはっきりとした課税率を公表していません。

最終的な関税の課税率及び引き上げ幅は、2025年4月9日から90日後に当たる同年7月8日前後のトランプ政権の発表をお待ちください。

トランプ関税による日本の産業への影響

2025年7月まで暫定的に10%のベースライン関税が適用されますが、自動車産業には4月3日から25%の追加関税が適用されています。

こうした関税の措置により、日本の産業がどういった影響を受けたのかを産業ごとに見てみましょう。

自動車産業

トランプ政権は、自動車産業への25%の追加関税措置を2025年4月3日から実施することに続いて、5月3日からはエンジン・トランスミッションなどの主要な自動車部品にも25%の追加関税をかけています。

自動車産業は、日本からアメリカへの輸出品の約30%を占めている基幹産業なので、トランプ関税で受ける影響は非常に大きくなると見られています。

アメリカの自動車メーカーが日本から輸出されている自動車部品を輸入しているという事情から、トランプ政権は負担軽減措置をとると公表しています。

しかし、対象となるのはアメリカ国内で生産された自動車のみなので、日本が受ける恩恵は少ないです。

アメリカ側では、日本自動車産業及び自動車部品産業が工場などをアメリカに移し、生産をアメリカに移管させたいという目的に沿って負担軽減措置を行うようです。

しかし、日本側は、アメリカへの移管によって人件費高騰といった問題が発生するため、当面は25%の追加関税を払い続けるという厳しい状況が続く可能性があります。

鉄鋼・アルミニウム業界

従来は、日本からアメリカに輸出される鉄鋼製品には関税割当措置が実施されており、1年間に125万トンまでは追加関税がかかりませんでした。

アルミニウムは10%の追加関税でしたが、トランプ関税によりどちらも25%の追加関税が課せられることになったのです。

トランプ関税では、鉄鋼とアルミニウムの派生製品も追加関税の対象に加えると発表しています。

アルミニウムの2024年の国内生産量は約166万トンでそのうちアメリカへの輸出量は2万トンなので、トランプ関税に際しての大きな影響は現状ではありません。

しかし、鉄鋼は、第1次トランプ政権で高い関税がかけられた結果、関税措置が行われる以前の2017年の176万トンという輸出量に比べ、2024年は111万トンでした。

このときは約37%の減少という大打撃だったため、今期のトランプ関税でもかなりのダメージになると予測されています。

農業分野

トランプ関税発表を受けて、農林水産省は「農林水産物・食品分野に係る米国の関税措置対策チーム」を設置して対策を講じています。

トランプ関税が実施される原因となったアメリカの貿易赤字のうち、農産物全体の貿易赤字が増加しているため、日本の農作物に対しても高い関税をかけると懸念されています。

しかし、実際には農産物関連では日本とアメリカではアメリカ側の方が黒字の状態を維持しているので、農作物については自動車産業・鉄鋼とアルミニウム業界に対する措置よりもゆるやかになるのでは、という見られているのが現状です。

2025年5月時点では一律10%のベースライン関税がかけられているのみなので、今後追加関税がかけられた場合には、現状よりも米・野菜などの価格が高騰する可能性があります。

トランプ関税による経済・株価への影響

トランプ関税は、日本を含む世界各国の経済・株価に少なからぬ影響を及ぼしています。

2025年4月2日の相互関税政策発表後、世界各国の株価が急落しています。それ以外の影響も見ていきましょう。

企業のコストが増加

トランプ関税は、輸出入を行っている企業のコストを増加させています。まず、アメリカへの直接輸出のコストが上がるだけではなく、中国・カナダ・メキシコなどを介したアメリカへの輸出コストも上がります。

また、アメリカに多く輸出を行っている中国・メキシコの景気が悪化する可能性が高く、そうなった場合に日本からの輸出も従来のようにはいかないようになります。

企業全体の消費コストが上昇する結果、事業縮小、最悪の場合倒産する企業が増えることが懸念されています。

貿易摩擦による景気減少が懸念される

貿易摩擦によって景気が減少する恐れもあります。特に、アメリカと中国の貿易摩擦の影響は全世界の経済に影響を与えると予想されています。

しかし、5月16日、90日間とはいえアメリカと中国は関税率を大幅に軽減する措置を行ったので、現状では大きな影響は出ていません。

追加関税適用まで90日間の猶予が与えられているのは中国以外の国も同様ですが、「90日後の関税率がどう変化するかによって新たな貿易摩擦が生じるかもしれない」といった懸念の声が上がっています。

トランプ氏の発言が突然変更されることによる市場の混乱

トランプ氏の発言はよく変更・撤回されることで有名ですが、トランプ関税でも同様の発言変更・撤回が複数回あったため、市場に混乱を招いています。

たとえば、カナダ産鉄鋼に50%の関税をかけると発言したときもすぐに撤回されています。

こういったことが度重なるため、多くの投資家は「トランプ氏が方針を撤回しないか72時間前後見守ってから投資・取引を行う」というようなスタイルで、市場の混乱や自身の損失を防ぐための対策を講じています。

その結果、トランプ氏の発言の変更による被害は最小限にとどまっていますが、悪影響が全くない訳ではないのが現状です。

トランプ関税がもたらす日本人の暮らしへの影響

トランプ関税は日本人の暮らしにも影響を及ぼしています。日本人が生活面で受けている代表的な影響を見ていきましょう。

原材料の価格の上昇によって生活コストが上昇する

トランプ関税により他国から輸入している、あるいは国内で生産している原材料の価格が上昇しています。

2025年5月時点では10%のベースライン関税ですが、24%の相互関税が適用されるようになると輸出コストが大幅に上昇するため、損失を避けるために物品の値上げをせざるを得ない状況だからです。

トランプ関税が発表される以前から高騰していた米や野菜の値段もトランプ関税が発表されてからさらに上昇しているため、米や野菜を原料とする食材などの価格も上昇し、国民の生活コストを圧迫しています。

この状態はトランプ関税が適用されなくなるまで続くと予想されているため、生活コストは今後ますます上がる恐れがあります。

株価の変動によって年金や保険に影響

トランプ関税が発表された2025年4月2日以降世界的な株価下落が見られました。2025年5月にやや復活していますが、4月2日以前よりも低い状態です。

2024年に新NISAが開始されてから若年層の間でも株投資をする人が増えていますが、トランプ関税が発表されたために株安による打撃を受けることとなり、ベテラン投資家以外の投資初心者の所有株に影響しています。

また、株価は公的年金の積立金の額にも影響するため、株価と公的年金の支給額は比例している状態です。

そのため、トランプ関税の影響による株価変動が年金や保険の支給額にも悪影響を及ぼしており、相互関税復活以降はさらに大きな打撃を受けると予想されています。

輸出業や製造業の雇用やボーナスに影響

トランプ関税は輸出業・製造業の雇用とボーナスなどにも影響します。特に影響が大きいのは、トランプ政権が最もライバル視している自動車産業と鉄鋼・アルミニウム製造業です。

90日間の相互関税停止措置が実施されたときも、自動車産業と鉄鋼・アルミニウム製造業界への追加関税25%が適用されているため、これらの業界の本年度からの雇用やボーナスは従来よりも減少する可能性が高いです。

それにとどまらず、業績不振となった企業が早期退職者を募るという予測も出ています。

中小企業は雇用・ボーナスが減少するだけではなく倒産する可能性も高いため、輸出・製造関連業界は大きな不安を抱えている状況です。

トランプ関税による米国国内へのデメリット

アメリカの貿易赤字を解消するのを目的に実施されているトランプ関税ですが、アメリカ国内へのデメリットも指摘されています。予想されている主なデメリットをご覧ください。

物価が上昇し庶民の暮らしに影響が出る

トランプ関税を適用することにより、アメリカ国内の物価が上昇するという声も上がっています。関税がかかることで輸入品の価格が上昇するからです。

物価の上昇によってインフレが再び加速することにより、物価が現状よりさらに上昇する可能性が高く、その結果、アメリカ庶民の生活が大打撃を受けます。

トランプ関税は、「米国は他国に搾取されている」という思いを語り、貿易赤字を解消するための政策です。

しかし、物価が上がり続けているアメリカ国内では、庶民の生活がさらに圧迫されることを恐れているアメリカの一般市民から、トランプ関税への不安や不満の声が上がっています。

報復関税によって米国企業へ影響が出る

アメリカが高い関税をかけたことにより、相手国が報復関税を適用した場合には、アメリカの企業にも悪い影響が出ます。

報復関税といえば対中国の報復関税戦争が代表的な例ですが、度を過ぎた報復関税が自国企業・産業にとっても不利と見越したアメリカと中国は、5月に入ってから報復関税を一旦停止しています。

引き下げる前の中国への関税は145%でしたが、実際に関税を支払うのは取引を行う企業です。

そのため、中国で作った原材料を輸入して製品を製造しているアメリカの企業からは「145%も払えない」と強い反発の声が上がったのも、報復関税を一旦停止した理由の1つです。

外交関係が悪化し米国の孤立化が進んでしまう

トランプ関税は、アメリカと貿易相手国との外交関係が悪化するという結果をもたらしかねません。

高すぎる関税から逃れるため、アメリカとの貿易を他国に切り替える国や企業が増えていけば、アメリカの孤立化が進んでしまいます。

米通商代表部で高官を務めていたという前歴を持つカトラー氏は「アメリカは孤立する。あるいは世界から切り離される」と指摘しています。

その結果、他国が貿易相手国をアメリカから中国などに切り替えることもあり得ると発言しています。

トランプ政権は関税の交渉を申し込んできた国に対し、一時的に10%のベースライン関税に切り替えましたが、今後の動向次第ではアメリカが孤立化するという事態になりかねません。

トランプ関税に関するよくある質問

トランプ関税による経済的な打撃に頭を抱えている人たちがネット掲示板やSNSに投げかけている質問とその回答を紹介します。

トランプ氏が関税を強化する理由が知りたい

トランプ氏がトランプ関税を強化するのは、アメリカの貿易赤字が増え続けているという事情によるものです。

トランプ氏が就任したのは2025年で、その前年のアメリカの貿易赤字は1兆2117億ドル(日本円で約185兆円)で、前年と比べて14%増えた過去最大の額でした。

こういった貿易赤字の解消が主目的ですが、アメリカ国内の製造業を活性化しようという目標も掲げており、それらの目標を達成するために推進されているのです。

トランプ関税を回避する方法はあるのか?

日本政府は、特に重い関税をかけられている鉄鋼・アルミニウム・自動車産業の関税から日本を除外するように求めていますが、2025年5月時点では25%の追加関税が課せられている状態です。

トランプ政権は、2025年4月までに交渉を求めてきた国々に対して90日間ベースライン関税を適用すると発表しましたが、91日以降の関税については現状では明言していません。

日本及び他国の交渉次第では現状よりも税率を下げるという形で回避できる可能性がありますが、完全回避は難しいでしょう。

しかし、編めるか2025年4月11日に相互関税対象からコンピューターやスマートフォンなどを除外すると表明しています。

報復関税の応酬をしていた中国の関税でもコンピューター・スマートフォンを含む電子機器・部品を除外しているので、他の製品も除外によって回避できる可能性があります。

トランプ関税が生み出す経済効果は?

トランプ関税が生み出す経済効果は、CBO(米議会予算局)が2024年12月に「アメリカ国内においては2034年までに約2兆ドルの貿易赤字が解消される」との見解を示しました。

しかし、日本の経済を見ると、自動車産業を中心に輸出額が減少し、株価が下がることによって投資家やNISAなどに投資している一般家庭にも良からぬ効果をもたらします。

日本銀行は当面利上げを見送るという見通しで、円安の進行も懸念されています。

トランプ関税はいつまで続くの?

トランプ関税がいつまで続くのかはまだ決まっていません。トランプ政権が存続している限りは維持される可能性が高いですが、トランプ氏が次回の大統領選で再選を果たした場合、任期はさらに4年延長されるからです。

しかし、トランプ関税の課税率が現状と変わる可能性はあります。

現在は「アメリカの貿易赤字がトランプ関税によってどれだけ解消されるかによって、トランプ関税がどれだけの期間適用されるかが決まる」と見られています。

トランプ関税のおかげで消費税が廃止になる?

トランプ関税をかけるに当たり、トランプ氏が「付加価値税と関税は本質的に同じ」と発言したことから、「トランプ氏が付加価値税である消費税を否定して廃止を求めた」という噂がネット上で流れました。

しかし、実際にはトランプ氏が消費税廃止を求めたことはないため、上記の発言はほぼデマと見なされていますが、付加価値税と関税が本質的に同じだと発言したのは事実です。

まとめ

トランプ関税を打ち出したトランプ氏は、大統領就任後の演説で「アメリカは何十年もほぼすべての国に搾取されてきた」と語り、「相互関税により我々は解放される」と表明しました。

しかし、適用されて間もないため、今後どうなっていくかは不透明です。トランプ関税による世界経済の動向を見守っていきましょう。

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この記事を書いた人

fuyuhome ライター

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