
中間 玖幸
1979年生まれ。山口県出身。筑波大学在学中に、環境問題を中心とした社会課題を強く意識。その解決のための企業の情報発信の在り方と生活者の行動変革に興味を持ち、広告代理店に入社。食品、通信、トイレタリーなど様々なジャンルの商品のマーケティング活動に携わる傍ら、2012年の同協会の設立をサポートしていたが、協会発起人であった配偶者の他界後にその運営を引き継ぎ、2019年より専務理事として活動することとなる。現在は、ソーシャルプロダクツに取り組む企業のマーケティング支援や企業間のマッチングによるソーシャルプロダクツ開発、生活者の意識と行動変容に繋がる各種イベントの企画など市場活性化のための様々な事業に取り組む。二児の母であり、次世代へより良い社会を繋いでいくことを目指し、日々奮闘している。
introduction
持続可能な社会の構築に向け、社会課題の解決を「ソーシャルプロダクツ」を通して行おうと、様々な切り口でアプローチする一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会。「消費」に着目し、事業者・生産者と生活者それぞれが「社会性」を身近に感じることができるよう、社会貢献の一歩となる仕組み作りを行っています。
今回、同協会の中間さんに、社会にとっての可能性を秘めた「ソーシャルプロダクツ」と、活動について伺いました。
社会課題に配慮したソーシャルプロダクツで、より良い社会を創造する
–はじめに、事業内容を教えてください。
中間さん:
当協会は、「ソーシャルプロダクツを通じて世界を変える」を理念に、より良い社会の実現を目指し、ソーシャルプロダクツの普及を進めている団体です。
–ソーシャルプロダクツとはどういうものですか?
中間さん:
ソーシャルプロダクツとは、人や地球、地域社会にやさしい商品・サービスの総称です。主に8つのジャンルに分かれており、エコ(環境配慮)、オーガニック、フェアトレード、寄付、地域の活力向上、伝統の継承・保存、障害者支援、復興支援があります。
–具体的にはどういったものがありますか?
中間さん:
例えば、環境負荷の少ない原材料で作られた洗剤や、オーガニックコットンのタオル、リサイクル素材で作られた鞄、フェアトレードカカオを使用したチョコレート、伝統工芸アクセサリーなど、地球環境や人権に特別な配慮がなされており、社会課題の解決に寄与するような商品を指します。
もしかすると少し馴染みのない商品という印象を持たれる方もいるかもしれませんが、例えば皆さんにとって身近な「セロテープ」なども、石油系の原材料を使わない100%天然素材の商品で、環境に優しいソーシャルプロダクツと言えます。最近こういった商品はとても増えてきています。
–それらの商品の普及を促進する活動をされているんですね。
中間さん:
はい。これらが世の中に増えることで、様々な社会課題を解決していけると考えています。
社会性のある商品を作る事業者・生産者が増えることで、社会に良いインパクトをもたらすことはもちろんですが、ソ-シャルプロダクツを購入する生活者も気軽に社会貢献をすることができ、より良い社会づくりに参画することが可能になります。
事業者・生産者と生活者双方にとって社会貢献のきっかけに
–社会課題解決の手段としてソーシャルプロダクツに着目されたのはなぜですか?
中間さん:
私たち人類が直面している幅広い社会課題を解決するには、限られた人による小さな活動だけでは難しく、多くの方々の力が必要だと感じています。
そこで、ソーシャルプロダクツを広め、商品を購入する際の選択肢に加えてもらうことで、「何が私たちの未来にとってよいのか」「何を子どもたちの世代に残してあげたいのか」を多くの生活者に考えてもらい、そこから生まれる「消費の力」を活用して、みんなでより良い社会を実現していこうと考えています。
–ソーシャルプロダクツを通すことで、私達が普段何気なくしている「消費」が社会課題の解決につながるのですね。
中間さん:
その通りです。事業者や生産者の視点でも、ソーシャルプロダクツを生み出すことは社会貢献となります。事業者・生産者、生活者双方にとって社会貢献に関わるきっかけを作り、それぞれの活動を世の中に広めていくことが当協会の役割です。

ソーシャルプロダクツをさらに広げるために
–具体的にはどのような事業を展開されているのですか?
中間さん:
大きく4つあり、メインとなるのは「ソーシャルプロダクツ・アワード」の運営です。持続可能な社会の実現につながる優れた「ソーシャルプロダクツ」に光をあて、社会性と商品性の両面を評価する、日本ではじめての表彰制度です。


–どのくらいの商品が受賞しているのでしょう?
中間さん:
9回目の開催となる今年は、80以上の商品が受賞しています。創設当初は30商品ほどでしたが、徐々に規模が大きくなってきていて嬉しいです。
–世間の関心が高まりつつあるのですね。
中間さん:
そうですね。また、このアワードをきっかけに、受賞者同士での交流をしたいという声もいただいており、今後は「繋がり作り」ができるコミュニティ運営もしていき、どんどん輪を広げていきたいと考えています。
–新しい価値創造に繋がる素敵な事業になりそうですね。他にはどのような事業をされているのですか?
中間さん:
他には、企業や団体向けの事業として、ソーシャルプロダクツの開発支援でセミナーやコンサルティングを行ったり、ソーシャルビジネス開発支援を行っています。
企業収益と社会的課題解決の両立につながるソーシャルマーケティングのポイントを踏まえ、様々な観点から支援を行い、社会貢献につながるビジネスの輪を広げていきたいと考えています。
また、生活者に向けてもソーシャル消費の普及・啓蒙活動を行っています。
生産者、生活者どちらかだけに向けた活動では不十分で、両輪で走ることによってより広く早く世の中に浸透していくと考えています。
–今でこそ「サステナブル」という言葉が広まり注目されている分野だと思いますが、まだまだ広げる余地がありますね。
中間さん:
そうですね。2012年に設立した時からすると認知は広がってきていると実感していますが、まだまだだと感じています。今は世の中の流れ的にも追い風が吹いているので、待っているだけでなく、自分たちから積極的に仕掛けていこうと考えています。
社会性へのはじめの一歩「ステカタ&トレサnavi.」
–仕掛けと言うと、具体的にどのようなことでしょうか?
中間さん:
当協会の事業に対して少しずつお問い合わせも増えてきていますが、「サステナビリティ」や「社会性」と言っても何から始めていいかわからないというご相談や、それらの領域を自社の本業と切り離して捉えてらっしゃるケースが多く見られます。
–どう動いたらいいかわからない企業さんがたくさんいらっしゃるんですね。
中間さん:
現状はそうですね。なので、はじめの一歩となれるように、今すでにある商品のソーシャル性を高めていく仕組みを作りました。
–今すでにある商品が社会貢献になる、という仕組みですか?
中間さん:
はい。当協会では「ステカタ&トレサnavi.」というサービスを提供しており、商品パッケージについたQRコードから、生活者が住んでいる地域のゴミの捨て方や分別方法がわかるという無料のサービスです。
これをメーカー企業の商品に導入していただくことで、生活者のごみの分別の手助けになるとともに、結果的に資源循環型の社会の実現に貢献することになります。

–既存商品に導入するだけでソーシャル性が高まるということですね!
中間さん:
そうなんです!どうしても「サステナビリティ」とか「SDGs」というと難しく考えられがちなのですが、「よくわからない」と何もしないより、事業者の方はこういった小さな取り組みから始めて頂いても良いと思います。
それがきっかけで「こんなのもやってみよう」と徐々に広がっていくことを期待しています。
–私たち生活者としても、ソーシャル性のある消費の選択肢が増えますね。
中間さん:
そうですね!企業も生活者も、そういった小さなきっかけが「社会貢献」への関心に繋がり、それがどんどん広がっていく可能性を秘めていると信じています。
今後の展望
–本当に様々な切り口でアプローチされているんですね。
中間さん:
どれか一つの活動に注力するだけでは、広がりのスピードが落ちてしまうので、パラレルにアプローチしていくことが大切だと考えています。同時に、社会に大きなインパクトを与えるには事業者・生産者と生活者両方の力が必要なので、それぞれの視点を鑑みたバランスも重視しています。
当協会では、ソーシャルプロダクツが社会にどのようなインパクトを与えているかという調査も行っているのですが、生活者の意識はどんどん変わっています。世界情勢や異常気象など、身近な問題が増えてくるにつれて、その変化も加速しています。
特に、Z世代と言われているこれからの未来を担う世代は、生まれた時から社会課題と向き合って育ってきているため、地球環境や社会性・多様性を配慮することは当たり前のように感じている人が多い傾向にあります。
調査では実際に、生産者の中核である世代との意識の差は顕著にみられました。
–意識の差…それこそが社会課題となりそうですね。
中間さん:
そうですね。ソーシャル性の低い商品や企業が選ばれなくなるという時代はそう遠くないと予想しています。そんな中で事業者は、次世代を担う人たちと意識を合わせ、目まぐるしい変化に対応していかなければ、これからの世の中で取り残されてしまう可能性があります。
私たちの役割は、それをサポートし、背中を押すことでもあると考えているので、私たちにできることをそれぞれのバランスを考えながら積み重ね、構築し、新しいことにも積極的に挑戦していきたいです。

–「ソーシャルプロダクツ」の可能性をすごく感じました。本日は貴重なお話をありがとうございました。