NPO法人ASOVIVA | 学校に行かない選択をした子ども達を受け入れ、自主性を育てるデモクラティックスクール

NPO法人ASOVIVA 長村さんインタビュー

長村 知愛

2003年生まれ、大阪出身の現在19歳。11歳で学校に行かない選択をし、母とともに居場所づくり活動を始める。15歳の春NPO法人ASOVIVAを設立し、代表理事に就任。現在は大阪の河南町にて、築100年の古民家を使って不登校の子供たちが社会的な自立へと向かうためのスクール、デモクラティックスクールASOVIVA!を運営している。

introduction

大阪府南河内郡河南町にある「デモクラティックスクールASOVIVA!」は、様々な理由で学校に行かない選択をした子どもが通う場です。11歳で不登校になった経験を持つ長村さんが、母親と周囲のサポートを受けて15歳のときにNPO法人ASOVIVAを設立。現在は代表理事として、日々子ども達の成長を見届けています。

今回、長村さんにASOVIVAの活動内容や子ども達の様子、立ち上げの経緯などについて伺いました。

授業もテストもない、子どもの自主性を尊重する「デモクラティックスクールASOVIVA」

–早速ですが、ASOVIVAとはどんなところか教えてください。

長村さん:アメリカ発祥の「デモクラティックスクール」の概念で作った学校です。デモクラティックスクールとは、1968年に設立されたアメリカのサドベリーバレースクールが先駆けで、「人は自ら学び、育つことができる」を教育理念に掲げています。

ASOVIVAでは、「先生」ではなく「スタッフ」と子ども達が対等な関係を築き、子ども自身の必要なタイミングで学びが起きることを信じています。

ASOVIVAには5〜18歳の子どもが通い、授業や宿題、テスト、成績表もありません。学年やクラス分けもなく、決まったプログラムやカリキュラムもありません。子ども達は自分のやりたいことを主体的に行うのです。カードゲームをする子もいれば、川に行って魚やエビを獲る子もいるし、料理やギター、絵、鶏の世話をする子など様々です。

私たちは、教科学習だけが勉強ではないと考えています。たとえばお菓子作りにしても、材料を計るときには計算が必要だし、買い出しに行くと消費税のこともわかりますよね。そうやって、遊びや生活の中で生きる力を身につけています。中には自主的に学校の勉強をする子もいますし、子どもが持っている興味関心を尊重しています。

不登校の経験と周囲のサポートによって誕生したASOVIVA

–ASOVIVAを作った経緯について、教えていただけますか。

長村さん:私自身が、小学5年生の時に不登校になったことがきっかけです。いじめや勉強についていけなかったわけではなく、もともとHSCの気質を持っていたのが原因です。聴覚や嗅覚が鋭かったりと、人よりも感覚が敏感なので学校にいること自体にストレスを感じていました。

HSCとは

Highly Sensitive Childの略語。とても敏感・繊細で、豊かな感受性を持った気質の子どもを意味します。同様の性質を持つ大人は、HSP(Highly Sensitive Person)といいます。

学校だと「みんなに合わせないといけない」と感じてしまい、とてもつらかった。ストレス度が高まり、隣の教室の音まで全部聞こえるようになってしまったんです。それで学校に行かない選択をしましたが、約2年半つらい時期が続きました。「私はダメな子なんだ」と自分を責めていたんです。

私が住んでいる地域にはフリースクールもなく、行くところが見つからずにずっと家にいる期間が続きました。そんな中で、母が居場所を探してくれていたんです。私が外に出られるようにいろいろと動いてくれて、そのうち「いつかフリースクールを作りたいね」と話すようになりました。

そして元気になってきた時に「私は何をしたいか?」を考えたところ、「不登校になった子どもやお母さんが、学校に行かない選択をしても自信を持って生きてほしい」と強く思ったんです。

私は母や周りの人に恵まれていて、学校に行かないことを誰からも責められなかったんです。それでも元気になるのに2年半かかりました。じゃあ、親や周りから責められている子どもは、立ち直れないんじゃないか?と。だから、学校に行かない選択をしても誰からも責められない、安心して通える居場所を作りたかったんです。

そこで私が中学2年生になった頃、私の母だけではなく、他の保護者や地域の方が集まり、準備会を発足しました。メンバーでどんな学校がいいか意見を出し合い、たどり着いたのがデモクラティックスクールです。2019年4月に開校し、私は15歳で共同代表になりました。そして、同年5月にNPO法人を設立し、17歳で代表理事になったのです。

ASOVIVAに入って大きな変化を見せる子ども達

–現在、ASOVIVAに通うのはどんな子ども達ですか?

長村さん:現在31名が在籍しています。ASOVIVAの対象年齢は5〜18歳で、今は小学生21名、中高生10名が在籍し、自分たちのペースで通っています。

ASOVIVAに来る理由として、学校が合わない子や人とコミュニケーションを取るのが苦手な子、自分の気持ちを口に出して伝えるのが苦手な子など、様々です。

ASOVIVAに来た時は、緊張して肩が上がって「うん、ううん」しか言えなかったのに、2週間ほど経つとすごく元気になって甘えん坊になった子もいます。ASOVIVAが本当に安心できる場所かどうか、確かめていたんでしょうね。

また、建物の中に入れない子もいました。建物の中だと「逃げられない」という感覚になってしまうのか、ずっと外で過ごしていたんです。ASOVIVAは、その子自身のやりたいことをやる場なので、それでもまったく問題はありません。すると、ある時急に家の中に入ってきて、今は普通に過ごせるようになりました。

ASOVIVAでは、学校に行くことを促すことはしません。でも、ここに来て元気になった子の中には、学校に行く選択をする子もいます。遠足やテストだけ行く子もいれば、週1回だけ行く子、完全に学校に戻った子もいます。それもすべて子ども達が自分で選ぶのがいいという考えです。

–長村さんが、子ども達と触れ合う中で気を付けていることは何ですか?

長村さん:いろいろあります。

まず、「子ども扱いしない」ことです。未熟者として接すると、子どもはすぐわかってしまうんですよね。なので、対等な人として接するようにしています。

「先回りして決めない」ことも大事です。「このままだと、失敗するかも」と思っても、ぐっと踏みとどまり、求められていないのに勝手に助けないようにしています。困った時に、勇気を出したり、他人に助けを求めたりすることも子どもにとって大事な経験です。その経験を奪ってしまわないように気を付けています。

そして、「決定権は必ず子ども本人にある」ことも意識しています。子どもの意思を尊重することが大事です。

ASOVIVAでは高校卒業も目指せる!通信制高校のサポート校

–ASOVIVAでは、通信制高校に通うことも可能と聞きましたが、どのような仕組みでしょうか。

長村さん:沖縄に本校がある八洲学園大学国際高等学校(通信制高校)と提携しており、ASOVIVAはサポート校となっています。高校進学を希望する子どもはASOVIVAに通いながら、通信制高校に行くことが可能です。現在、ASOVIVAでは7人の子どもが、八洲学園大学国際高等学校にも在籍しています。

高校からは1年分の課題が与えられ、年に1回は沖縄本校へのスクーリングがあり、子ども達はここで6泊7日を過ごします。このスクーリングでは勉強だけではなく、マリンスポーツや沖縄観光など、子ども達が楽しめるイベントもありますよ。

–ASOVIVAを卒業した子ども達は、どのような進路に進んでいるのでしょうか?

ASOVIVAはまだ設立4年目なので、卒業したのは実は私1人だけなんです。ただ、1〜2年後に卒業を控えている子ども達は、今進路を考えている真っ最中です。通信制の高校で高卒資格を得て大学進学を目指している子もいれば、まだ模索している子もいます。

ASOVIVAを卒業したら終わりではなく、継続して関わっていきたいと思っています。卒業した後も、気軽に遊びに来てほしいですね。

ASOVIVAの運営と課題

–ASOVIVAはどのように運営されているのでしょうか?

長村さん:経済状況は大変厳しいです。民間のフリースクールは公的な補助金が一切ないので、自分たちで運営費用を用意しなければいけません。

メインの運営費は学費でまかなっています。学費もあまり高くしたくないので、今は月2万5,000円に抑えていますが、月に5万円以上のスクールもあるんですよ。ここは悩みどころですね。

他には、月500円〜の「マンスリーサポーター」も募集しています。企業のスポンサーなどがついてくれたらとは思っていますが、運営面ではまだまだ課題だらけです。

また、ボランティアの「スキルサポーター」も募集しています。これはパン教室やピアノ、英語の先生、趣味で編み物をやっている人など、得意なことを子ども達に教えてくれる人々のことです。

ASOVIVAではスキルサポーターのファイルを作り、子どもが興味を持ったら連絡して、技術を教えてもらっています。子ども達の興味を、学びにするためにとても大切なサポートの一環です。

そして、他の課題もあります。ASOVIVAにいると、外の人と関わる機会があまりないので、社会とつながる機会を作っていきたいです。ASOVIVAに通えるのは18歳までなので、ここを卒業して社会に出たときのために大人と関わる機会を増やしたいと考えています。

というのも、ASOVIVAに来る子どもの中には、学校の先生や親戚などからいろいろ言われて「大人=悪」だと思ってしまっている子もいる。それってすごくもったいないですよね。大人と言ってもいろんな人がいます。今のうちからたくさんの大人と関わっておけば、自分の進路を考えるときにも選択肢が広がるはずです。

このような想いから、大人や社会とつながる場を作るために立ち上がったのが「くつろぎ自由研究室」です。

子ども達と地域がつながる場「くつろぎ自由研究室」

–「くつろぎ自由研究室」とは、どんな取り組みですか?

長村さん:ASOVIVAから歩いて2〜3分のところにある空き物件を改装して、子どもと地域の人々がつながる居場所になるように始めたプロジェクトです。

昔、薬屋さんを営まれていた物件で、40年以上使われておらず「有効に使えないか?」と地域の方からお話を聞いたのがきっかけです。この場所を改装し、子ども達がやりたいことに挑戦できて、なおかつ地域の人とつながる場にしよう!とプロジェクトを始めました。

改装費用を集めるために2022年6月末までクラウドファンディングを実施して資金を集め、これから改装に取り掛かります。

くつろぎ自由研究室では、ASOVIVAの子ども達がやりたいことを主体的にやってもらおうと思っています。手作り雑貨や駄菓子の販売、物々交換など子ども達が興味を持っていることに取り組み、地域の方と交流できる場にしていきたいですね。学びの場をASOVIVAから地域に広げていくイメージです。

地域の方には店番をお願いしたり、野菜を販売してもらったりして、子どもや地域の人が自由に行き交う場所にしたいですね。

子ども達が、社会人や経営者とつながっておくことも大事だと思っています。ASOVIVAでは、決断力や対話能力、自分で考える力を重視しています。経営者の中には、子ども達の能力を評価し、「ASOVIVAを卒業した子と一緒に働きたい」と言ってくれる方もいるんです。くつろぎ自由研究室を通して、このような大人と子どもがつながる場になれたらと思っています。

また、地域が抱える課題解決にも取り組んでいきたいです。地域の方に話を聞いていると、1人暮らしの高齢者も多く「行く場所がなくて困っている」という声も聞きました。この地域にはカフェもコンビニもなく、人々が交流できる場所が少ないんですよね。

最近は孤独死の問題もありますし、くつろぎ自由研究室が子ども達のためだけではなく、地域全体の温かい居場所となるようにしていくことを目指しています。

子ども達の選択が否定されない未来へ

–最後に、今後の展望について教えてください。

長村さん:くつろぎ自由研究室を稼働させて、子ども達の学びを地域に広げることが当面の目標です。地域の方と子ども達が直接つながれる場になるだけではなく、地域の方にとっての居場所にもなりたいと思っています。

そして、大きな目標で言うと、子ども達の選んだ選択が否定されない、子ども達の意思が認めてもらえるような社会になったらいいなと思っています。そのために、今後もASOVIVAの活動を発展させていきたいですね。

–お話を通して、ASOVIVAが今の日本社会においてとても重要な存在ということがわかりました。本日は、貴重なお話をきかせていただき、ありがとうございました!

関連リンク

NPO法人ASOVIVA 公式サイト:http://asovivaviva.org/