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株式会社つぼ市製茶本舗|幕末に創業したお茶問屋が、持続可能な社会のためにできること

株式会社つぼ市製茶本舗 ブランド推進部・六代目 谷本さんインタビュー

株式会社つぼ市製茶本舗

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Introduction

株式会社つぼ市製茶本舗は、幕末の嘉永三年(1850年)に大阪・堺で茶問屋として創業した、170年以上の歴史がある企業です。お茶の製造販売はもちろん、日本茶カフェも運営し、おいしいお茶やお茶の飲み方を紹介しています。

マイボトル推進や、子どもたちへの「お茶の淹れ方講座」の開催など、SDGsにも力を入れているつぼ市。今回は同社六代目で、現在はブランド推進を担当している谷本康一郎さんに、事業内容や今後の展望について伺いました。

製造販売とカフェ運営でお茶の持つ魅力を伝える

-本日はよろしくお願いします!早速ですが、御社の事業内容を教えてください。

谷本さん:

株式会社つぼ市製茶本舗は、お茶を製造してスーパーや百貨店に卸すことはもちろん、直営店での販売やカフェ運営を通して、みなさんにおいしいお茶を楽しんでいただいています。多くの方にお茶を楽しんでいただきたい、という想いは、「いっぱいのお茶を通じて世の中の安らぎと和に貢献する」という経営理念にも込めています。

-素敵な経営理念ですね。どのような時に経営理念を意識することが多いですか?

谷本さん:


商品開発の際に意識することが多いですね。「この商品を作るのはつぼ市じゃなくても良いよね」といった判断をする際や、「つぼ市だからこその商品」を見極めるときに頭に浮かびます。毎朝唱和しているので、社員はみんな覚えていると思います。

-御社だからこそ提供できる商品を追求しているのですね。

谷本さん:

そうですね。例えば業務用のお茶パウダーを販売する際には、おいしいお菓子に生まれ変わって、そのお菓子を食べたお客様が喜ぶ姿までイメージします。「商品を販売したら終わり」ではなく、つぼ市の商品を使ったからこそお客様が喜んでくださり、販売相手の事業が継続していく。この一連の流れが「安らぎと和に貢献する」ことに繋がると考えています。

様々な製品や体験を通して、未来を担う子どもに喜びを

-つぼ市では、SDGs達成へ向けてどのような取り組みを行なっていますか?

谷本さん:

現在は、「さかいSDGs推進プラットフォーム」に参加し、子ども食堂や小学校で「お茶の淹れ方講座」を開催しています。

さかいSDGs推進プラットフォームとは

堺市が作った、SDGs推進のためのプラットフォーム。堺市が企業・団体・地域と連携し、会員同士が交流することで、SDGsの目標達成に向けた取り組みを推進している。

参考:堺市

-「さかいSDGs推進プラットフォーム」に参加なさったきっかけは何でしょうか?

谷本さん:

私が現在住んでいる堺市が、国からSDGs未来都市に選ばれたことが大きいですね。広報誌にもSDGsの取り組みが掲載されていて、興味を持つようになりました。また、つぼ市の理念もSDGsが目指すゴールと近いので、社内でもすんなりと受け入れられたと感じています。

お茶本来の楽しみ方を伝えるために、子ども向けの淹れ方講座を開催

-「お茶の淹れ方講座」を、子どもたち向けに開催している理由はありますか?

谷本さん:

私の妻の前職が学校の先生で、子ども食堂に関わった経験もあったことが大きいです。現在、つぼ市でも子ども食堂を運営していますが、お茶を通じて子どもたちに何かできないかと考えた結果、お茶の淹れ方講座を行うことになりました。

-お茶に親しむにしても、お菓子を作ったりお茶の葉を育ててみたり、様々な方法がありますよね。その中でも、「淹れ方」に着目なさったのはなぜでしょうか?

谷本さん:

日本茶は本来、誰かを想いながら急須で淹れるものだと考えていますが、最近では多くの方が手軽なペットボトルのお茶に慣れてしまっていますよね。本来のお茶の楽しみ方を伝承していくためにも、これからの時代を担う子どもたちに、誰かを想ってお茶を淹れる機会を作ってあげたいなと考えました。思いやりや心の繋がりも感じて欲しいと思っています。

-講座を受けた子どもたちの反応はいかがですか?

谷本さん:

「家に帰ったら、お父さん・お母さんに淹れてあげる」と言ってくれる子は多いですね。あとは、「急須で淹れた緑茶は本当に緑色だ!」とビックリする子も多いです。また最近は、お茶を茶葉から抽出することを知らない子も増えているので、食育としても意義があると感じます。

-確かに、ペットボトルの緑茶に慣れている方は、茶葉そのものを目にする機会があまりないかもしれませんね。

子どもの未来を守るために、パッケージにもひと工夫

-他にもSDGsについて取り組んでいることはありますか?

谷本さん:

お茶のパッケージに、虐待防止マークを印字するようになりました。この取り組みは、10年以上前に、虐待についての報道を見かけた社員が「つぼ市でも何かできることがあるのではないか」と考えたことがきっかけです。

谷本さん:

虐待防止マークの印刷は、NPO法人児童虐待防止協会と一緒に取り組んでいます。子育て世代がよく手に取ってくださる商品を選んで印刷しており、少しでも悲しい思いをする子どもたちが少なくなるといいなと思っています。

社内の反対がありつつも、信念を持って商品化したパンケーキミックス

谷本さん:

お茶のパッケージ印字の他にも、子どものために生まれた商品もありますよ。例えば、私が開発した商品に、「ママの愛情♡野菜パンケーキミックス」があります。すでに人気のあった「こども青汁」シリーズで発売したものです。

-お茶屋さんがパンケーキミックスですか。ちょっと意外でした!

谷本さん:

社内でも、「何でお茶屋さんがパンケーキミックス?」と猛反対されました(笑)
でも、アイディアを思いついたのがちょうど私の子どもが生まれた頃で、おいしく野菜が食べられる商品があったら良いなと思っていたので、迷いはなかったです。

谷本さん:

また、開発を始めたのは新型コロナウイルスが広がり始めた頃でした。休校などで給食がない中、親御さんからの「子どもたちにおいしく野菜を食べさせてあげたい」というニーズもありました。そこで、食物繊維や野菜の栄養素がしっかりと摂れる、健康的なパンケーキミックスを作ろうと取り組み始めたのです。

-パンケーキミックスを利用したお客様の反応はいかがですか?

谷本さん:

お客様からは「お茶屋さんなのに」という声はなく、大変喜んでいただいています(笑) ありがたいことに、有名子ども用品店でも取り扱っていただいていますし、2021年には「日本子育て支援大賞」もいただきました。

日本子育て支援大賞とは

「衣」「食」「住」「日用雑貨」「グッズ類」「サービス・アプリケーション」「家電・自動車」「自治体・プロジェクト」の8つの領域が対象で、子育て世代に役立つ上に、魅力的である商品が評価される。

参考:日本子育て支援大賞

-次世代を担うお子さんに対する一貫した気持ちが、実を結んだのですね。

マイボトルとフィルターインボトルで脱ペットボトルを推進

-つぼ市では、カフェの運営もなさっているそうですが、そちらではSDGsに向けての取り組み事例はありますか?

谷本さん:

カフェでは主に、「プラスチックごみ削減のためのマイボトル普及」を実践しています。堺市にある「無印良品AEONモール堺北花田店」に、「茶寮つぼ市製茶本舗 NODATE」というカジュアルなカフェをオープンさせたのですが、そちらでマイボトル割引をしているんですよ。

谷本さん:

無印良品を運営する良品計画も、我々つぼ市も、ともに「おおさかマイボトルパートナー」に加盟しています。無印良品と協力しながら、マイボトルをもっと広めていけたらいいなとも考えています。

おおさかマイボトルパートナーとは

「おおさかプラスチックごみゼロ宣言」を行っている大阪府の取り組み。府域市町村、業界団体、企業、NPO、学校などとともに、マイボトルの利用啓発や給水スポットの普及、効果的な情報発信などを行っている。

参考:大阪府

谷本さん:

また、フィルターインボトルの普及にも力を入れています。フィルターインボトルは、茶葉を入れて冷水を注ぐだけで、簡単においしいお茶が淹れられる商品です。夏はもちろん、冬場でも暖房が効いた部屋で冷たいお茶を楽しむことができるので、季節を問わず飲んでいただけます。

-ティーバッグや紙のフィルターを削減できて、繰り返し使えるので環境にも優しいですね。ただ、フィルターインボトルは、マイボトルに比べると認知度が低いのかなとも感じました。

谷本さん:

そうなんです。そこで我々は、カフェなどでフィルターインボトルのお茶の味を紹介するようにしています。フィルターインボトルだと誰が淹れてもおいしくなりますし、何よりもお茶が甘くておいしいんです。緑茶・ほうじ茶・玄米茶・中国茶、何でも1Lの水に対して茶葉を20gほど入れるだけで簡単に作れます。

-簡単に淹れられて、色もキレイなのが嬉しいですね!私もやってみます。

茶葉でお茶を楽しむ文化を、堺の地から広めていきたい

-今後、どのように事業展開していきたいと考えていますか?

谷本さん:

これからも、喫茶文化が栄えた創業の地「堺」から、お茶についての情報を発信していきたいと思っています。

-「堺」という土地をとても大切にしているのですね。

谷本さん:

そうですね。堺は、千利休をはじめとした、日本の有名な茶人の出身地でもあります。ただ、太平洋戦争の空襲を5回も受けてしまい、お茶産業にも影響がありました。さらには京都や静岡など、大規模な茶畑のある地域の影に隠れてしまい、あまりお茶に所縁のあるところとしては知られていないかもしれません。

-確かに、喫茶文化が栄えていたイメージはあまりありませんでした。

谷本さん:

堺は有名な茶人だけでなく、一般市民も日常的にお茶を楽しんでいた地域であることが分かっています。そんな堺で創業した企業だからこそ、どんな方でも普段から気軽にお茶を楽しんでいただくために発信していくべきだと考えています。
お茶の淹れ方講座に参加したり、急須やフィルターインボトルを活用してペットボトルの量を減らしたりするなど、小さなことからお客様と一緒に、SDGsについて取り組んで行けたらいいなと思っています。

-お話を伺って、私も茶葉を使って美味しいお茶を淹れてみたいなと思いました!本日は貴重なお話しをありがとうございます。

関連リンク

株式会社つぼ市製茶本舗:https://tsuboichi.co.jp/

つぼ市製茶本舗オンラインショップ:https://www.rikyu-club.com/