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キャンプ女子株式会社|キャンプを通じて自然の大切さを伝え続けていくためにできることとは?

キャンプ女子株式会社 橋本さん インタビュー

橋本 華恋

1990年熊本県出身。北九州市立大学を卒業後、 美容室専売品のメーカー株式会社ナプラに営業職として就職。九州エリア全域を担当。美容室の経営サポート·イベント企画実施商品開発などを手掛ける。
7年間のサラリーマン生活の中で週末の趣味だった 「キャンプ」の素晴らしさを多くの方に伝えたい! という想いが強くなり、キャンプ女子に関するビジネスを発案。2018年6月インスタグラム『camjyo/キャンジョ』を立ち上げ、アカウント運用スタートからわずか3ヶ月でフォロワー1万人を突破。同年11月には、起業準備のためにデジタルハリウッドが運営するG’s Academyに入学・プログラミングを学ぶ。2019年6月には学内制作発表会GGAにて優勝。2019年6月に、キャンプ女子株式会社として法人化し、全ての人にキャンプを届けることをミッションに活動。多数のメディア出演や講演会を行いキャンプブームを牽引している。2022年初代プレスリリースエバンジェリストを受賞。現在は、最高のキャンプを求めて 地元熊本県にキャンプ場を建設中。

introduction

キャンプブームの前から、Instagram「camjyo(キャンジョ)」としてスタートし、「キャンプを知ってもらえる機会づくり」、「ずっと最高のキャンプ体験ができる環境づくり」をめざし活動するキャンプ女子株式会社。現在のフォロワー数は約7万人にのぼります。

「キャンプに行くことが自然を守ることにつながる。」そう語るのは、インフルエンサーでもある代表・橋本華恋さんです。キャンプを通じて感じた、環境を守るために必要なことについてお話を聞きました。

camjyoの立ち上げから山を購入するまでに起きた心境の変化

–はじめに、事業概要について教えてください。

橋本さん:

現在は、Instagram「camjyo」のコミュニティ運営をはじめ、キャンプ道具のレンタルサービス「福岡キャンプレンタル」や、これまでの知見を生かしたキャンプ場コンサルティング、SNSプロモーションなどを手がけています。2021年からは、「キャンジョバンド」として、音楽活動も始めました。

事業を構想したのは2018年ですが、その頃はキャンプブームは全くなく、「女性がキャンプに行くなんて」と思われるような時代でした。

アウトドアショップに行っても、重たくて大きなキャンプ道具が多く並んでいたり、WEBで情報を得ようとしても女性目線の発信はほとんどありませんでした。

それでもキャンプに行っていたんですけど、女性が参加しにくい雰囲気があったり、女性目線での情報が少なかったりするのはすごく不便だと感じたんです。その観点で、社名の由来でもある「キャンプ女子」のみんなを集めて、女性が楽しめるような会社を立ち上げられないかと思って、まずはInstagramから始めました。

立ち上げから3ヶ月でフォロワーさんが一気に1万人に増えて、1年後には会社にしてキャンプ女子のみんなが求めるような事業をやっていくことにしました。

キャンプへの想いは、立ち上げ当初から変わっていないんですけど、事業内容はだいぶ変わりましたね。当初は環境問題に関しては、全く取り組んでいなかったんですが、現在の事業はほとんどをそちらに転換しています。

–幅広く活動されているんですね。環境問題を意識されるようになったのはどんなきっかけがあったのですか。

橋本さん:

熊本県に私たちが運営している「ritacamp aso」があります。このキャンプ場を作るために、自分たちの山を購入したところから一気に考え方が変わりました。

「キャンプ女子」っていう名前を使って活動していた1、2年目の頃は、全国のキャンプ場を借りて、フォロワーさんに会ったり、オフ会のようなイベントを開催していたんですけど、「自分たちのメインスペースとなるキャンプ場をいつか作りたいよね」ってずっと思っていたんですよ。

そこで2021年9月にやっと理想の土地を購入しました。キャンプ場というよりは遊び場と生活空間のような場所をイメージしていました。専門業者に依頼して工業的に作るのって面白くないと思って、ほとんど手作りでキャンプ場を作りましたね。

とは言っても社員は2人だけなので、友達やフォロワーさんと一緒に作っていきました。やりたい人が集まって、木を切れる人が来て、トイレ作れる人が来て、大工さんが集まってトイレ小屋を作ったりして。

そこで直面したのが、何もないところで生活することの大変さです。山の中なので、電気や水道、トイレなんてありません。生活していたら当然ゴミも出ます。生ゴミはコンポストへ、紙は薪ストーブの着火剤として使っているのでまだよかったのですが、ペットボトルやプラスチックはずっと残って処分できません。

食料を買いに行くのに下山しないといけないのでガソリン代はかかるし、簡易トイレを借りても、数トン単位で近くの水源に水をくみにいかなければなりません。

もう本当に、自然の恩恵を受けずに生活することはできませんでした。その時、海や山、川という自然は有限なんだと気付き、自分たちで守っていかなければらないと思うようになりました。

「キャンプ女子」として、Instagramを街中で更新したり、商品プロモーションやマーケティングのサポートだけを事業にしていたら、この問題には気付けなかったと思います。

この経験をきっかけにプラスチックの製品はプライベートでもほとんど使わなくなりましたね。使い捨ての物は、処分ができないため繰り返し使えるエコ製品へとシフトしました。福岡と熊本を往復しているので2拠点生活にもなり、私生活の意識もガラッと変わりました。

自然の力を土台に、人同士のコミュニケーションを高める場づくりを目指す

–山の中にゼロからキャンプ場を作ったんですね。現在はどんなキャンプ場になっているのでしょうか。

橋本さん:

「ritacamp aso」は大自然を感じ、環境のことを考えるキャンプ場としてスタートしましたが、現在もテスト運用の段階です。

実はキャンプ場ってどこも平日ガラガラなんです。

平日にいろんな人に使ってもらい、かつ「自然って本当に良いよね」って思ってもらえるような、キャンプ場の新しい活用の仕方をまず自分たちで作っていきたいと思っています。そのため、一般公開はまだですが企業や大学の方にご利用いただいています。

私たちは、大学のゼミとも共同研究を行っているんですけど、夏休みの時期にそのゼミの成果発表会を「ritacamp aso」で行いました。完全オフグリッドのキャンプ場なので、ソーラーパネルで蓄えた電気でプロジェクターにスライドを映して、野外で発表会を行ったんです。

その後はみんなでキャンプ飯体験を行ったのですが、びっくりした会話を耳にしました。

「名前なんて言うの?」

って言ってたんです。ゼミ生同士が初対面だったんですよ。

特に今の大学3年生って、2年間コロナ禍だったので完全リモート授業なんですよね。カフェとかでイヤホンしながらZOOMでゼミに出てるんですよ。みんなマスクしているから顔も分からなかったんですね。

ゼミの先生も、「自然の中でコミュニケーションが取れて安心した。非常に良かった」とおっしゃってましたね。

人って自然の中に行くだけで開放的になって気持ちが上がるんですよね。何より会話が生まれます。

これからの時代は子どもから大人まで外での経験が必須

–企業に対してはどのような取り組みを行っていますか。

橋本さん:

福岡市の企業さんに行ったプログラムでは、新入社員研修の「チームビルディング」という項目を担当させていただきました。

30名くらいの新人の方たちに、動きやすい服装で福岡市内のキャンプ場に集まってもらいました。まず園内にある木を使ってテントを立てて、その後火おこしから始めて食事を作ります。

この研修に参加された人事の方は「自然の中なので自然体でいる社員の人となりを見ることができました。協調性があるだけじゃなくて、優しさがあるとか、力が強いとか、できない人に対してサポートできるとか、人それぞれの良い面がしっかり見れて良かった。この後の人事の参考にさせていただきます」とすごく喜んでくれましたね。何より、参加された社員さんもすごく楽しそうでした。

「楽しい」と思うことって、仕事においても非常に大事なことだと思うので、やっぱり外でプログラムを提供することは、間違いなくこれからの時代は必要になってくることだと思います。

–コロナ禍で人との関わりが減っている中、自然と触れ合うことで自然の大切さを感じるだけでなく、リアルなコミュニケーションも生まれるんですね。

橋本さん:

今の子どもたちってマスク生活で、結構コミュニケーションがままならない子たちも多いんですよね。自然の大切さを伝えることはもちろんなんですけど、自然の中で子どもたちにコミュニケーション力を高めるような体験をしてもらいたくて、教育に関わることにも力を入れていますね。

他にも、福岡市植物園という公的な場所を使って、子ども向けの焚き火教室を無料で開催しています。

自然を大切にすることだけでなく、火の怖さや素晴らしさ、便利さを子どもたちに体感してもらうための取り組みです。

火というのは、食べ物を作る上でも、暖を取る上でもすごく大切な役割をもっているんですよ。植物園には剪定された枝がたくさんあるので、それをみんなで集めて燃料にして温まったり、たまには焼き芋やマシュマロを焼いたりして、「火はただ見るだけじゃなくて体を温めて食べ物を作ることができる」ということを伝えています。

子どもたちにはここでの体験を通じて「自然って良かったね。じゃあどうやって守っていったらいいんだろう」と小さい頃から考えてもらえるよう、私たちが伝えていかなければならないと思っています。

子供たちには、自分の目で見て、耳で聞いた、そんな体験を通して伝えていきたいです。

インフルエンサーとして環境を守るためにできること

–フォロワーさんとはどのように交流されていますか。

橋本さん:

Instagramを始めた頃は可愛いキラキラしたキャンプの写真が多いんですけど、現在「映えるキャンプ」という目線での情報発信から方向を変えています。

そもそもキャンプを楽しめるのは、海山川があるからなんです。だから、自然を守ることにつながるような発信を心がけています。

例えば、フォロワーさんに環境を守るために取り組んでいることをシェアしてもらって、特集したことがありました。最近のキャンプでは、スタッシャーという使い捨てじゃないジップロックのような食品を保存する容器を使われる方が多いですね。

<camjyoの投稿画面>

日常のお買い物では、ドラッグストアやスーパーで洗剤を買うと思うんですけど、一部のキャンパーさんは、アウトドアショップに行ってエコ洗剤を買っています。

どうしてかというと、自然の中で食器を洗うじゃないですか。すると、目の前の側溝に泡が流れていきます。その先は川なんですよ。その川で自分の子どもが遊んでいる。洗剤が流れた川の水が顔や手にかかる。より安全なものを、そして川にゴミを流してはいけないと、思う人も多いです。

子どもたちも含めてキャンプに出かけていく人は、自分たちの行動が自然に与える様子を間近で見る機会が多いので、環境に配慮された商品を選択して購入される方が多いです。

多くの人に自然のある場所に出かけてほしい。実際に行かないと、環境に配慮された商品を使う意味が分からないと思うんですよ。自然を守るためにも、キャンプに行く人を増やしたいですね。

今後も、私たちの影響力を良い方向に使って、みなさんの取り組みを吸い上げてシェアするということを企業として続けていきたいです。

一方で、全国にいるフォロワーさんには私たちの想いって届いているんですけど、どうしたらもっと幅広い世代に届けられるか考えた時に、歌にたどり着いたんです。歌って残るじゃないですか。歌を使って、Instagramの枠を超えて自然の大切さを伝えるために、2021年からバンド活動をやっています。

この活動も子どもたちにキャンプの楽しさと自然の大切さを届けることを目標にしています。キャンプ女子って言ってますけど、いつキャンプおばさんになるか分からないので(笑)

この歌を出すにあたっては、1年間ボーカルトレーニングにも通いました。本当に良いものを届けたいし、やるなら本気で全部やりたいんですよね。残るものなのでこだわりを持ってやっています。

国内には素晴らしいキャンプ場が多くあり、キャンプ場の魅力も一緒に発信をしたかったので、私たちの教育に関する取り組みでご縁のあった保育園の方たちに、振り付けをして踊ってもらった曲もありますね。

自分がただ歌いたいだけじゃなくて、みんなが歌って面白いことを混ぜながら、1つの歌を届けることができています。Apple MusicやSpotifyで配信しているのでぜひ聴いてみてください。

–キャンプに関わることが、全て環境を守っていくことにつながっていくんですね。最後に読者へメッセージをお願いします。

橋本さん:

私たちが住んでいる地球の資源は無限ではありません。しかしそれは、コンクリートの中にいて、日々パソコンやSNSに向かってるだけでは分からないことです。

まずは、自然を感じるために1泊2日でもいいのでアウトドア施設に足を運んで、自然の良さを体験して、そこで自分が流した水はどうなってるのか、自分が使ってる電気ってどうやってできているんだろうかと実感してください。そこで、自然のありがたみを知ってください。

地球環境をよくしたい、貢献したいと思っている人たちへ。みなさんがすぐできることとして、今使っている商品をエコプロダクトに買い替えて、食べる物も有機食品に変えてみてください。

何もこう、ゴミを減らそうとか、そういうことではなく、自分が今使っているものをそういう良い製品に変えていく。

そうすることで事業者さんにプラスになるんで、地球環境に良い製品やサービスが増えていきます。

まずは自分の生活から見直して、個人レベルでできることをやっていきましょう。例えば、プラスチックのものを使わないようにしたり、レジ袋を断ったりするなど、便利すぎるものを使わないようにしてみましょう。

こういう人が増えれば、きれいな地球は取り戻せると思いますので、身近なところから本気で楽しくやっていけばいいかなと思います。

–貴重な熱いお話をありがとうございました。

関連リンク

キャンプ女子株式会社HP:https://www.camjyo.com/