#インタビュー

ティーエムエルデ株式会社|「リサイクルステーション」で環境問題に取り組み、循環型社会の育成を目指す

ティーエムエルデ株式会社 藤井さん インタビュー

藤井 健

1974年3月18日 滋賀県彦根市生まれ。1997年近畿大学理工学部卒。1998年環境への取り組みを社業とする同社理念に共感し入社。カスタマーサービス部部長を経て、2021年取締役に就任。エコ・アクション・ポイント事務局を継承し、事業立ち上げと運営を担う。

introduction

ぱっと目をひくカラフルな「ecoひろば」は、ティーエムエルデ株式会社(滋賀県長浜市)が小売店などに販売・設置するリサイクルステーションです。会員登録をした地域住民は、リサイクルに参加するごとにポイントがもらえて、買い物や商品への交換を楽しめます。自治体と協働する「エコドーム」では、小型家電や布団なども受け付けます。

環境省推奨の環境ポイント「エコ・アクション・ポイント」の事務局でもあるティーエムエルデ。今回は、同社の藤井健取締役に「豊かな未来の環境づくり」のためのお話を伺いました。

リサイクルの効率的なシステムを作る「リサイクルサービスプロバイダー」

–まずは、御社の業務内容と、社名の由来を教えてください。

藤井さん:

環境問題への取り組みを社業とし、「豊かな未来の環境づくり」を目指す会社です。具体的には、リサイクルステーション推進事業、エコポイント事業が二つの柱です。これらを通じて地域住民の環境活動への参加を促し、協働する自治体や小売店を含む参加者全体のためになるプラットフォームをご提案しています。

具体的な事業内容は、以下の4つです。

  1. 店頭回収システムの運営と販売(小売店などに設置するリサイクルステーション) 
  2. 拠点回収システムの運営と販売(自治体と協働するドーム型の回収スペース) 
  3. 環境関連機器の販売 
  4. 環境省推奨の全国共通環境ポイント「エコ・アクション・ポイント」事務局

これまでに培ったリサイクル分野の専門知識とノウハウにより、効率的で効果的なシステムを構築する「リサイクルサービスプロバイダー」として、便利で楽しいリサイクルを提供しています。

循環型社会の形成と育成に貢献できる取り組みや、社会的価値を創出するしくみ作りを目指しています。

社名「ティーエムエルデ」は、トータルマネジメントの「TM」に、ドイツ語で地球を意味する「エルデ」を合体させたものです。

社会貢献で始めたリサイクル活動事業が、環境意識の高まりで収益ビジネスに

–環境への取り組みを社業とされたきっかけを教えてください。

藤井さん:

現会長である高橋政之が、環境破壊や地球温暖化などに危機感をおぼえたのがきっかけです。使用済み資源の廃棄も地球環境悪化の要因の一つと考え、環境問題に貢献できる仕事を目指しました。現在の弊社の企業理念は3項目あります。

  • 「環境問題」への取り組みを「営み」とする。
  • 「循環型社会」の形成と育成に貢献する。
  • 地域の人達とのふれあいを大事にする。

とはいえ最初の一歩は、業務用生ごみ処理機と小型焼却炉の販売でした。当時は、焼却でゴミを減らすことが善とされていましたし、コンポストについては、生ごみを堆肥に変え、野菜を作って循環させる、という目的がありました。

1997年に「容器包装リサイクル法」が施行された時に、ペットボトルや空缶のリサイクルができないかと考え、作った回収システムが岐阜県瑞穂市(当時は穂積町)に採用されました。行政と協働したこの取り組みは、社会貢献的なものでした。25年ほど前は、こういう業者もあまりなくて、収益ビジネスとして成立するとは思っていなかったそうです。

環境への意識が高まるにつれ、予想を越えて取り組みが事業として拡大し、現在では多忙をきわめる状態にさえなっています。

環境省推奨の「エコ・アクション・ポイント」とは?

–行政との協働がスタートだったからこそ、環境省推奨ポイントの事務局にもつながったんですね。「エコ・アクション・ポイント」について詳しく教えてください。

藤井さん:

一言でいえば、「環境に良い行動をして貯める全国共通のポイント制度」です。

このプログラムには、環境省のガイドラインにそって登録された事業者や団体の「エコアクション」の情報が集まっています。

「エコアクション」の中身は、環境に配慮した製品・サービスの購入、環境に配慮した行動そのもの等です。これらを会員に向けて呼びかけ、会員が自分にできるものを選んで実行すると、「エコ・アクション・ポイント」として還元される仕組みです。

2008年に環境行動促進モデル事業がスタートし、2011年からは環境省の監督のもと、民間事業者による運営が開始されました。当社は2019年から運営を委託され、事務局・プラットフォーマーとして、アプリの導入などでシステムを一新してきました。

会員は付与されたポイントを使って好きな商品と交換することができますが、この「ポイント付与」の形式も自治体や参加事業者に合わせて柔軟に変えることが可能です。

現在は、滋賀県草津市、三重県志摩市、京都府宇治市などの自治体と協業し、民間企業の参加を募り、エコアクションの普及を目指しているところです。

システムや活動の詳細は、エコ・アクション・ポイントの公式サイトで御覧いただけます。

ポイント付与で住民の環境意識を喚起し、地域の循環経済につなぐ「ecoひろば」

–御社の店頭回収システム「ecoひろば」をご紹介いただけますか?

藤井さん:

「ecoひろば」は、小売店などに設置するリサイクルステーションです。現在は東海、関西、北陸地区を中心とした西日本で展開しています。回収対象は、ペットボトル、飲料缶、アルミつき紙パック、古紙、段ボール、衣料です。

飲料容器自動回収機のとなりに、それ以外の回収物スペースがセットされています。今後は、更に回収品目を増やしていく予定です。

店頭や駐車場にスペースを設け、会員が買い物ついでにリサイクルに参加してポイントも貯められます。

当社の「ecoひろば」は小売店との協働ですので、発行カードは「ecoひろばポイント」として、その小売店のポイントカードに紐づけらることが多いですね。たとえば、nanacoカードやWAONカードもその例です。貯まったポイントはその小売店での買い物などに使え、地域での循環経済の一環となります。

本来、環境問題への取り組みとしてリサイクルが進むことは理想ですが、そこに至るまでのプロセスとして、ポイント還元というインセンティブで意識が促されることも第一歩だと考えます。リサイクルが習慣化されれば、やがてはポイントが不要となるかもしれません。

また、将来的には「ecoひろば」の会員としてリサイクル活動をすることで、環境省のエコ・アクション・ポイントへの参加につながることも見越しています。例としては、三重県で28店舗を展開するスーパー「ぎゅーとら」さんの「ecoひろば」では、エコ・アクション・ポイントに紐づけされたカードが発行されています。

–御社が販売・設置する飲料容器自動回収機とはどのようなものなのでしょうか?

藤井さん:

ノルウェーTOMRA社の飲料容器自動回収機を採用しています。2008年に住友商事(株)と合弁して、トムラ・ジャパン(株)を設立、新体制での活動を始めました。

従来の回収ボックスでは、廃品がすぐに溢れ、設置店舗が何度もボックスの交換をし、その保管スペースも取らねばならない難点がありました。当社の回収機は、ペットボトルを圧縮(減容量1/3)して収納するため、清潔で快適な回収スペースを提供でき、交換作業も少なくすみます。

見た目もカラフルな機器ですし、いつでも好きなときに、楽しい気持ちでリサイクルに参加していただければ嬉しいですね。

回収後に目指す理想は「水平リサイクル」

–写真で拝見するだけでも、気持ちが明るくなるような綺麗なスペースですね。「ecoひろば」は店舗回収システムですが、拠点回収システムの「エコドーム」はどのような違いがあるのでしょうか。

藤井さん:

エコドームは、管理スタッフが常駐する資源回収システムで、開設時間内であれば、いつでも資源を持ち込めます。回収対象は、電化製品、布団、古紙など多岐にわたります。現在は岐阜県を中心とした自治体と協働しています。

エコドームのしくみは、それぞれの行政ルールにのっとって作られています。輪之内町と協働したエコドームはNPO監督のもとで当社のシステムを導入し、住民にカードを配布して、ポイント付与のプログラムを実施しています。

住民が廃品をしっかり分別できることで資源価値も上がり、運営費用を抑えられています。

–「ecoひろば」「エコドーム」で回収された廃品は、その後どのような道をたどるのですか?

藤井さん: その後の取り扱いの権利が、小売店・自治体にあるのか、それとも弊社にあるのかによって変わります。とはいえ、基本的に弊社は資源の扱い量も多く、ルートも持っていますので、ペットボトルに関しては弊社が買取し、リサイクラーを通じてボトラー(清涼飲料水や酒類などをボトルに詰める会社のこと)などに売る場合が多いですね。

例としては、拠点ごとにネットワークのある回収業者にさまざまな品目を回収してもらいます。そこから再資源化のリサイクラーに売却されるまでを一連として事業化しています。

基本的に、環境には水平リサイクルが一番よいという認識のもと、ペットボトルはボトラーに売却されてペットボトルに再生される、というようなシステムを目指しています。

環境問題はパートナーシップでしか解決できない。その輪を拡げていきたい

–環境関連機器も販売されていますね。どのようなものがあるのでしょうか?

藤井さん:

弊社は長年、環境に関連する商品を多く扱っていますが、現在はリサイクルステーションとポイント事業に注力しているため、「ご相談いただければいろいろな商品をご紹介できますよ」というスタンスで、特に宣伝はしていないんです。

最初の事業設立から販売している生ごみ処理機、変わったところでは、廃食油をリサイクルしてディーゼルエンジンの燃料を作る装置も扱っています。

これらはみな、弊社の親会社である金属加工業「高橋金属」が製造し、弊社が販売するかたちです。

「高橋金属」では、溶剤で金属製品を洗浄していたのですが、環境に負荷をかけないアルカリイオン水の洗浄装置を開発して、自社の製造ラインで使用し、その後、自社製品として装置の販売をさせていただいております。その電解技術を応用して生まれたのがサンティウスで、安全・安心な電解除菌水として用具や机などの除菌用として販売しています。

–生ごみ処理機や食廃油リサイクルに興味を示す飲食店などもありそうですね。この記事で見つけていただきたいものです。最後に今後の展望をお聞かせください。

藤井さん:

弊社のビジネスは、いろいろな方に参加いただいて成り立ちます。したがって、参加者全体の情報が集まるという利点があります。そのようなデータをうまく活用し、エコ活動をさらに普及しつつ、正確な環境問題対応の情報をお伝えできる仕組みを作ろうと考えています。

「環境問題はパートナーシップでしか解決できない」というのが弊社のモットーです。これからも、さまざまな協働により、持続可能な循環型社会の形成を目指したいと思います。

–「ecoひろば」の全国展開が待たれます。今日はありがとうございました。

関連リンク

ティーエムエルデ株式会社HP:https://www.tm-erde.co.jp/