#インタビュー

NPO法人チャリティーサンタ|全ての子ども達にプレゼントと思い出を。困窮家庭への支援で皆を笑顔に。

NPO法人チャリティーサンタ 河津さん インタビュー

河津 泉

大学生時代より、地域づくりやボランティア活動に従事。大学卒業後は一般企業、大学職員などの経歴を経て、NPO業界へ。現在NPO法人チャリティーサンタで主に子どもの貧困に関わる事業や行政との協働事業などを担当。チャリティーサンタでは「家庭での大切な思い出」を大切にし、ボランティアがサンタクロースに扮して行うチャリティー活動と、それによって集まった収益金で世界中の子どもたちを対象に支援を行っている。社会的認知度が高く、格差が現れやすい行事にフォーカスしながら、クリスマスをスタートとして、個人や企業が手を取り合い「社会全体で子どもを支え合う」気運を醸成していくことを目指している。岡山県岡山市出身。

introduction

2008年から途上国支援や東日本大震災への支援など、さまざまな活動を行ってきたNPO法人チャリティーサンタ。現在は、サンタクロースとして困窮家庭へプレゼントや思い出を届ける支援事業を中心に行っています。今回は、NPO法人チャリティーサンタの河津さんに、活動内容や子どもの貧困に力を入れようと思った理由、今後の展望を伺いました。

サンタクロースを通じて、困難な状況にある子ども達へもプレゼントが届くチャリティー活動

–早速ですが、チャリティーサンタとはどのような団体か教えてください。

河津さん:

ボランティアがサンタクロースになり、12月24日の夜に依頼を受けたご家庭へプレゼントや思い出を届けに行く事業を中核に活動している団体です。2008年の設立当初は、途上国支援として世界中の子ども達へチャリティー(寄付)を届けたり、2011年には東日本大震災の支援を行ったりもしました。2014年に法人化し、現在は子どもの貧困への支援に力を入れています。

–中核の事業は「サンタ活動」と言うそうですね。具体的にどんな仕組みで活動されているのですか?

河津さん:

依頼のあったご家庭へ、クリスマスイブにサンタクロースが伺い、子どもたちへプレゼントを贈ります。サンタクロースがやってきたという大切な思い出づくりの役割も担っています。その際ご家庭から預かったチャリティー金(寄付)で、世界中の困難な状況にある子ども達への支援を行っています。

–素敵な取り組みですね。現在は子どもの貧困への支援に注力されているとのことですが、具体的にはどんな形で支援していますか。

河津さん:

「ルドルフ基金」という困窮家庭の思い出を支援する基金を立ち上げています。赤鼻のトナカイの名前がルドルフというんですが、子ども達の未来を照らすという意味を込めてこの名前をつけました。集まった支援金を元に、困窮家庭へのサンタ活動をはじめとした思い出の体験支援を行っています。

–他にも「ブックサンタ」という活動がありますね。これは本を贈るサンタ活動なのでしょうか?

河津さん:

はい。ただこちらは寄付金よりも本自体の寄付が中心のプロジェクトです。書店さんにご協力いただき、お客様が書店で絵本を購入し、そのまま寄付をすることで参加できるチャリティー活動です。集められた本は困窮家庭へお届けしています。2021年で5年目を迎え、今では寄付冊数が約3万冊とかなり大きな反響をいただいています。

困窮家庭の存在を知り支援を決意

いろいろな形のチャリティー活動があり、参加しやすそうですね。そもそもどうして、困窮家庭を支援対象にしようと思ったのでしょうか。

河津さん:

活動当初は子どもの貧困をあまり意識していなかったんです。でも、プレゼントを届けている家庭への顧客調査を行ったことがきっかけで変わりました。調査では、これまで「サンタ活動」を利用している家庭の世帯年収が、日本の中央値よりも少し上の所にある裕福な家庭が多いことに気づき、同時に「所得が低い家庭では思い出やワクワクするイベントを必要としていないのかな」という疑問が浮かんだんです。

きっと生活の状況から応募ができないだけで、思い出やイベントを必要としていないわけではないんじゃないかと思いました。

実際に調査活動を行っていく中で、ひとり親世帯の10家庭に1家庭は経済的な理由で「うちにはサンタクロースなんて来ない」と子どもに伝えていることが分かり、このことは朝日新聞の夕刊でも大きく取り上げていただきました。

–そういった経緯で子どもの貧困に対する支援が始まったのですね。実際にチャリティーサンタを利用した家庭の子ども達の反応はいかがですか?

河津さん:

依頼していただいた保護者の方から「いつも思い出を用意してあげられないんだけど、すごく喜んで、サンタさんが帰った後ソファに突っ伏して嬉し泣きをしていました。私も本当に嬉しくて、気持ちが高ぶって涙が出ました」と言われたことがあります。

本当に苦しい思いをされている家庭の子どもだけではなく、保護者の方からの嬉しい声も毎年沢山届いているなあと感じます。

–とても素敵なお話ですね。河津さんご自身が思い出に残っているエピソードはありますか。

河津さん:

昔チャリティーサンタで思い出を届けた子どもが、中学生になって「私も、サンタになってチャリティー活動をしたい」と連絡をくれたことがありました。

–それは嬉しいですね。

河津さん:

私たちも、ずっとそういう時が来てほしいと願いながら10年間活動していたので、とても嬉しかったです。実は、初めて会いに行くお家には手紙も送っているんですけど。

–どのような手紙ですか?

河津さん:

「あの日、君の家に行ったのは本物のサンタクロースじゃなかったけれど、あの夜君に笑顔になってほしいと思ってくれた誰かがいたから、君のお家に行くことができたんだよ。君が笑顔になることで、もう一人の誰かを笑顔にすることができたんだ。実は、あの日あの夜君自身も、誰かのサンタクロースだったんだよ」という感じの内容です。

–「誰かが見てくれていた、こういう活動をしてくれる人がいた」ということによって、「自分もしてもらったからこそ、誰かの役に立ちたい」そんな心が芽生えそうですね。

誰一人取り残される子がいないように。会いに行けない子にもサンタクロースから手紙が届く

–参加されているボランティアの方々は、全国で何人ぐらいいらっしゃるんですか?河津さんのように、「子ども達を笑顔にしたい」と思っている方が多いのでしょうか?

河津さん:

だいたい毎年2,000人くらいがスタッフとして参加してくれていて、「今まで私は、色々なボランティアをしてきました」「すっごいボランティアが好きなんです」という人達よりは、ボランティアの始めの1歩になっている傾向が強い気がします。

–2022年時点で、27都道府県に施設があると聞いたのですが、各都道府県でサンタクロースに来てもらいたい家庭を募集をしてその地域に行く形になるのでしょうか?

河津さん:

各地域によって活動エリアを決めています。例えば希望者が多い東京には、いくつか支部があります。その中で募集をかけ、そのエリアを中心に活動しているボランティアが行かせていただく感じになります。ただ、エリア以外でも勿論サンタクロースからの思い出を希望しているお家はあるので、その場合はサンタクロースからの手紙を届けています。

–サンタクロースの手紙というのは?

河津さん:

手紙に書かれている絵の中に、自分の名前を入れ特別感を演出しています。例えば、昨年はクリスマスプレゼントのタグに名前が入る形をとりました。文章もカスタマイズできるので世界で自分だけの手紙になります。

–子ども達も喜びそうですね。今後、サンタクロースの活動以外に、力を入れていきたいことはありますか?

河津さん:

困窮家庭の子どもたちの誕生日支援をしていきたいです。自分が生まれた大切な日だから、子ども達がその日を大切に思えるような取り組みをしていきたいなと思っています。その一環として今、岡山県で誕生日ケーキをお渡しする企画を試験的にさせていただいていて、将来的には全国に広げていく予定です。仕組みとしては、参画してくれるケーキ屋さんを増やし、希望した家庭にはケーキ屋さんへ受け取りに行っていただく形を作っていきたいです。

–サンタクロースとしての活動からスタートし、書店やケーキ店など様々な企業を巻き込んで活動を拡げていらっしゃるのですね。

河津さん:

はい。2014年に法人化したことで、色々な企業と一緒にできることがすごく増えました。基盤が整い、さまざまなことにチャレンジしやすくなったと実感しています。

大人が手を取り合える社会を築き、子ども達に「愛された記憶」を届け続ける

–最後に、今後の展望についてお願いします。

河津さん:

これからも、「愛された記憶」を子ども達に届けることや、その先にある全ての大人が子ども達のために手を取り合える社会をつくっていくことは変わらず目指したいですね。また「クリスマスに誰かを笑顔にするって嬉しいな」と感じた人を増やすことにも、引き続き取り組んでいきたいと思っています。今あるベースを大事に、届けられる笑顔をもっと増やしていきたいです。

–ありがとうございました。

取材・山内 信子(かりんとう)/ 執筆・鶴田有紀

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