#インタビュー

CRAZY KITCHEN | 社会問題をおしゃれに変える!サステナブルなケータリング

CRAZY KITCHEN 土屋杏理さん インタビュー

土屋 杏理

新卒にて広告会社に入社。営業として、アパレル会社や大手飲料メーカーを担当し、多くのTVCM・グラフィック広告の制作、商品ブランディングに携わる。7年間の勤務後、自身のウェディングをきっかけに同社を退職、株式会社CRAZYへ創業メンバーとして参画する。CRAZY WEDDINGのトッププロデューサーとして活躍後、自身の動物や食べ物に対する価値観から、「食に関わるすべての命が輝く仕事をしよう」と、2015年にCRAZY KITCHENを立ち上げ、代表を務める。「食時を、デザインする。」をコンセプトとするオーダーメードのケータリングブランドを運営。2019年秋より、未利用魚や害獣などの食材を使用した「SUSTAINABLE COLLECTIO N」をスタート。食に関わるプロデュースやディスプレイワークも行う。

introduction

2015年に創業したCRAZY KITCHENは「食時を、デザインする。」をコンセプトに、ケータリングサービスやイベントプロデュースなどを展開しています。お客様の要望を聞いて作る「オーダーメイドプラン」、そして2019年には素材にこだわった「サステナブルコレクション」を開始しました。

今回は、CRAZY KITCHEN代表の土屋さんに、この事業を始めた経緯や込められた想いについて伺いました。

CRAZY KITCHENのケータリング事業

–まず、CRAZY KITCHENの事業内容を教えてください。

土屋さん:

弊社はケータリングをメイン事業としており、大きく2つのプランがあります。1つ目はお客様のご要望を聞き、イベントやパーティの趣旨に合わせてお料理や空間を提案するオーダーメイドプランです。

オーダーメイドプランの一例

そして2つ目は、2019年から始めた「サステナブルコレクション」というケータリングサービスです。「Attention to a life -命の循環-」をコンセプトに、持続可能な食材をケータリングで提供するお料理に使用しています。

サステナブルコレクションのケータリング

–珍しいサービスですね。詳しく教えていただけますか?

捨てられていた食材を有効活用する「サステナブルコレクション」

土屋さん:

サステナブルコレクションでは、日本社会が抱えている食の問題に向き合い、フードロスや未利用資源を活用した食事を提供しています。弊社の食事を通して「こんな食材があるんだ」「この食材の背景には、こんな社会問題があるんだ」と知るきっかけになってもらえたらいいなと思っています。

–具体的に、どのような食材を使っているのでしょうか?

土屋さん:

食材の1つに、イノシシのお肉があります。今、日本では獣害の問題が深刻です。害獣により農作物が荒らされ、農家が苦しんだり、廃業してしまったりするケースがあります。そこで政府や自治体が補助金を出して害獣駆除を進めているんです。ただ、駆除された害獣の命は有効利用されることなく山にそのまま捨てられる場合が多く見られます。

–命が無駄になってしまっているんですね。

土屋さん:

この事実は一般ではあまり知られていません。そのためサステナブルコレクションでイノシシのお肉を扱うことで、おいしい料理を通して、そういった食や社会問題の背景を知っていただけたらと思っています。

イノシシのお肉を使った料理

そして「捨てるより食べた方がいい」と、イノシシの肉を買う人が増えれば、流通が活性化し、日本全体のシステムがうまくまわっていく可能性もあると思うんです。

他にも、高級食材であるキャビアが採れるシロチョウザメの身を使った料理を提供しています。

–シロチョウザメにも何か課題があるのでしょうか?

土屋さん:

シロチョウザメは、価値のある卵(キャビア)を採ったら身は捨てられてしまうことが多く、世界的に問題になっているんです。キャビアは知っているけど、チョウザメについては知らない方も多いのではないでしょうか。

シロチョウザメを使った料理

–確かに、私は知りませんでした。

土屋さん:

そこで身をおいしく食べられるよう調理し、今まで捨てられていた部分に価値を持たせます。これにより、食事をする方々の中にシロチョウザメの身が食べられるという選択肢ができるんじゃないかと。その後、どこかでシロチョウザメに出会ったら、「おいしかったらまた食べてみよう」となるかもしれませんよね。

–なるほど!サステナブルコレクションの食材から、多くのことが学べますね。

土屋さん:

そうですね。弊社のサービスが、1つのきっかけになればいいなと思います。ただ、現場では一つひとつの食材について、ここまで詳しく説明することはあまりしていません。正しさを押し付けるのではなく、まずは「おいしい、楽しい」と思ってもらえることが大事です。おいしいと思った後に、「もっと知りたい」と思うかどうかはお客様に委ねている部分です。

–確かに、社会課題はどちらかというとネガティブな話題なので、聞きたくないという方もいますよね。

土屋さん:

はい。ソーシャルな問題ほどエンターテイメントに変えていかないと、多くの人にはなかなか受け取ってもらえないと感じています。

CRAZY KITCHENが見た目にこだわる理由

–そういう意味でもCRAZY KITCHENのケータリングは、社会問題を一切感じない見た目の美しさがあります。

土屋さん:

ありがとうございます。ケータリングは日常食ではなく、何か特別なときに頼むものですよね。そのため味はもちろんのこと、見た目でも美しく、お客様に満足していただけるように作っています。人間は舌だけではなく、見た目でも料理を味わっていると聞きます。おいしそうな見た目にときめいて、そんな素敵なものを食べられる喜びを提供したいですね。

–写真を見ているだけで、すごくときめきます!

土屋さん:

もう1つ、私たちが見た目にこだわる理由として、食材への敬意があります。動物や植物などの命は、単なる「食品」ではなく、私たちはその生命力や栄養素をもらって健康に生きられます。彼らが持っている命のエネルギーを、食べられる最後の瞬間までちゃんと表現してあげたいという想いがあります。

–使う食材にこだわるだけではなく、美しく整えることで命への敬意を表わしているんですね。

土屋さん:

そうやって見た目にも美しく、人々を惹きつけることで、改めて食材の魅力に気づいたり、こんな食材があったんだという発見につながったりしたら、うれしく思います。

–このような取り組みがあって、2021年に一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会が主催する「ソーシャルプロダクツ賞」を受賞されてますよね。

土屋さん:

はい。その際も「ソーシャルな問題をおしゃれなエンターテイメントに変えて提供している」部分を評価いただきました。

ソーシャルプロダクツ賞2021

「社会に貢献するための仕事がしたい」

–土屋さんは、なぜこの事業を始めようと思われたのでしょうか?

土屋さん:

30歳を越えたタイミングで、自分の働き方を考えたのがきっかけでした。それまではお金を稼ぐことや自己実現、キャリアを積むことが重要だと思っていたのですが、これからは世の中のためになることにシフトしていきたいと思ったんです。

社会のために自分が力を発揮できる仕事は何だろうと考えたときに、最終的に「食」というテーマにたどり着きました。

というのも、私は以前ウェディング関係の仕事に就いており、ビュッフェスタイルのパーティーでは「料理がなくなるのはよくない」というのが暗黙の認識だったんです。

–確かに、ビュッフェで料理がなくなることって絶対にないですよね。

土屋さん:

そうですよね。食事が残ることが前提のビジネスモデルに疑問を感じたんです。また、フォアグラのような高級食材って、私たちにとってどれくらい必要なんだろうか?ということも考えていました。フォアグラが作られる生産過程を知ったときに、私はそこまでしてこの食材を食べたいのか?と感じたんです。

–強制的に大量のエサを与えるフォアグラの生産方法は、動物福祉の面で論争を呼んでいますよね。

土屋さん:

はい。そこで「高級食材だからいい」というわけではなく、「その会にピッタリの、そこにしかないメニューだから特別感がある」という価値の置き換えができるのではないかと考えたんです。そのため、お客様の想いを聞き、その日・その場所だけの特別な空間を作るケータリング事業をしようと思いました。

–高級な食材を使わなくても、お客様の気持ちを汲み取り、その会に合わせて作ることで特別になるんですね。

他社とのコラボレーションで、より多くの人に届ける

–最後に、今後の展望について教えてください。

土屋さん:

今後は自社だけで完結する事業ではなく、他社とのコラボレーションを増やしていきたいと考えています。ケータリングは特別なときに頼むものであって、日常で使うものではありません。また弊社はB to Bで事業を行っているので、一般の方まで届けるのが難しい。

そこで、例えば一般消費者向けの日常の食事に強い企業とコラボレーションして、自社だけではお伝えしきれない層に向けてアピールしていきたいと考えています。

–御社とは異なる強みを持った企業とのコラボレーションですね。

土屋さん:

はい。他社と協働することで、こだわりの食材やその背景にあるストーリーについて広く人々にお届けできるような取り組みをしていきたいですね。

また、今までは自社だけで完結していくのが強かった時代だと思います。これからは、それぞれの企業が手を取り合って、垣根を越えて協力していくのがスタンダードになっていくのではないでしょうか。非日常を彩る弊社の強みも活かしながら、様々な企業と協力して人々に届ける努力をしていきます。

–本日は、ありがとうございました!

関連リンク

公式サイト https://crazykitchen.jp/