#インタビュー

株式会社CRS埼玉|中古車がバッグに変身?! ネジ一本まで無駄にしないアップサイクルとは

株式会社CRS埼玉 広報課 担当課長 米川さん / サポート課 主任 糟谷さんインタビュー

糟谷 賢一

1965年3月12日、東京都墨田区生まれ。2019年3月、31年勤務したシステムインテグレーション企業を退職後、現CRS埼玉に入社し現在に至る。入社後にSDGs推進担当を拝命し、社内普及の推進と並行し、活動と取り組み広く世の中に広めるべく、様々な登録制度に応募し当社のSDGsへの取り組みを広めた。現在は、健康経営とSDGsの両輪で会社の付加価値や、従業員モチベーションアップを試みています。

米川 剛史

1984年5月20日、茨城県鹿島町(現:鹿嶋市)生まれ。立正大学法学部を卒業後、司法書士を目指し、資格浪人。3年間挑戦し、資格取得を断念。リーマンショックのあおりを受ける中、2010年11月に、CRS埼玉へ入社。入社後に、営業担当として埼玉県内の自動車修理工場などへ訪問して車の仕入れ活動・工場内での自動車リサイクルの処理作業・車から部品を取り外し、商品化して、中古部品の販売などCRS埼玉各セクションの業務を経験し、4年前に新設された監理部Webマーケティング課(現:運営本部広報課)へ異動。現在、広報担当として社外・社内に向けて広報活動を行い、社内マーケターとしてマーケティングを行う。

introduction

自動車の解体業務をメインに、リサイクルパーツの販売・輸出を行う株式会社CRS埼玉(※ 文中「CRS」と表記)。リサイクル業界の中でもいち早くSDGsの考えを取り入れ、先進的な活動が多方面から注目を集めています。

SDGsの取り組みによって会社がどのように変化したのか、事業に厚みを持たせるための秘訣はどこにあるのか、広報課の米川さんとサポート課の糟谷さんにお話を伺ってみました。

乗れなくなった古い自動車に、新しい未来を与える会社

–本日はよろしくお願いします。まず始めに、御社の事業内容を教えてください。

糟谷さん:

乗れなくなった自動車(ELV)※を引き取り、車の状態に応じてリユースする卸売業をメインに行っています。

ELVとは

ELVはEnd-of Life Vehiclesの略で、総走行距離や車の状態から判断し、廃棄予定となった自動車のことを指します。2000年10月には、EU(欧州連合)で、自動車に関わる産業の環境負荷を軽減することを目的としたELV指令も発表されています。

引用:https://www.kyoshin-k.co.jp/products/elv.html
写真提供:株式会社CRS埼玉 使用済み自動車(ELV)

弊社では、3段階に分けて自動車をリサイクルしています。

  1. 車の状態が良ければ中古車として販売
  2. 難しい場合は解体して利用可能なパーツのみを再販
  3. 品質検査で利用が難しいと判断した部分は素材別に仕分けて電炉会社へ

電炉会社へ提供された素材は、金属に戻り様々な製品に再利用されます。

–使えなくなった部品でも、すぐには捨てずに素材として循環させているんですね。

糟谷さん:

そうですね。”ネジ一本まで無駄にしない” という精神のもと、役目を終えた自動車が再び私たちの生活に貢献できるように、「アップサイクル」することを大切にしています。

–アップサイクルとはなんでしょう?

糟谷さん:

私たちは、単純にリサイクルするだけではなくて、製品の持つ特長をグレードアップさせることをアップサイクルと呼んでいます。お客様にとって、本当に役立つもの、「これ使いたいな!」と心から思っていただけるものに生まれ変わらせられるように工夫しています。

アップサイクルとは

捨てられるはずだった不用品や廃棄物を活用し、付加価値をつけて新しい商品に生まれ変わらせたもの。不用品や廃棄物を一度粉砕したり融解したりして、製品が作られる前の形に戻すリサイクルとは異なり、不用品の素材や特徴をそのまま活かして、より良い新しい製品を作り出すことを指します。

参考:https://www.trans.co.jp/column/sdgs/sdgs_upcycle/

元々は自動車だったかも?! 街を支える自動車部品たち

–自動車部品はどのように再利用されているのですか。

糟谷さん:

鉄橋や陸橋、建築物の土台となる鉄筋など、街のインフラ設備に生まれ変わっています。
自動車は大半が鉄でできているので、鉄製品に生まれ変わることが多いですね。

写真提供:株式会社CRS埼玉 
自動車プレスの様子 自動車から鉄製品に生まれ変わるまで

他にも、車のバンパーは様々な熱源として活用されています。

バンパーの原料はポリプロピレンというプラスチックです。役目を終えた後は5mmほどに粉砕し、発電や温水プールに焼却熱が使われます。廃棄物を燃やす際の熱を再利用することを、サーマルリサイクルと言うんですよ。

写真提供:株式会社CRS埼玉 粉砕されチップとなったバンパー

–乗らなくなった自動車部品が、鉄資源やエネルギーのもととして再利用されるのですね。

糟谷さん:

使用済み自動車と街のインフラの繋がりは、想像つかなかったと思います。

私たちは廃棄予定だったものを、地域社会のモトになる素材に変えて提供することで、人々の生活に貢献しているんですよ。

自動車部品をアップサイクル!毎日使える丈夫なバッグに変身

–自動車部品のアップサイクルという点では、どのような取り組みをなさっていますか。

糟谷さん:

自動車部品を使って、様々なバッグを作っています。例えばこちら。どんな素材から作られていると思いますか?

写真提供:株式会社CRS埼玉 アップサイクルバッグ

–ツヤツヤしていて綺麗な素材ですね。車の素材なんですか?

糟谷さん:

こちらはシートベルトからできています。命を守るベルトですから、とっても丈夫で耐久性に優れているんですよ。車種によって色合いが微妙に異なるので、組み合わせによってはおしゃれなストライプ柄のように見えるのもいいですよね。

–シートベルトですか!確かに、今流行りのくすみカラーでかわいいですね。

糟谷さん:

では、こちらはどうでしょう。

–こちらは普通の布のように見えますが…すみません、お手上げです!

糟谷さん:

一見すると普通のカバンですよね。
でも実は、こちらは車のエアバッグからできています。エアバッグは、小さく折り畳まれて自動車の随所に格納されていますよね。でも、いざとなれば膨らんだ形を保って衝撃から人体をしっかりと守らなければならない。そのため、薄くて・軽くて・破れにくいという、バッグに適した特長があるんですよ。

–確かに、軽くて丈夫ならエコバッグに向いていますね!

糟谷さん:

現在は、縫製会社とタッグを組んで、様々なエアバッグ製品を手がけています。

2022年の4月には、エアバッグで上履き袋を作って、会社の近くにある2つの小学校に、100個ずつ寄贈したんです。

シートベルトもエアバッグも、もともとは廃棄予定だった素材をきれいにして使っているので、環境に優しいのも魅力のひとつです。

今後はネットショップでの販売も予定しているので、少しでも多くの方に手に取っていただけたら嬉しいなと思います。

–アップサイクルの輪がどんどん広がっていくといいですね。

社員一丸となってSDGsに取り組む会社を目指して

–どういった経緯で、SDGsに関する取り組みに力を入れるようになったのでしょうか。

糟谷さん:

もともと、弊社の事業内容はSDGsに沿ったものでしたが、力を入れるようになったのは社長の強い想いがあったからです。

SDGsが日本に広まる初期には、社長は「まさにうちの会社が目指すところだ!自動車リサイクルの代表としてSDGsを進めよう!」と行動を始めたんです。

–どのような行動からスタートしたのでしょうか。

糟谷さん:

SDGs推進担当を任命し、まずは「SDGsとは何か」を社員全員に周知することから始めました。自動車リサイクル事業が目指すところは、まさにSDGsのゴールと同じなんだと広めていきました。

SDGsのテストを実施!徹底した社内教育

–社員全員に周知するのは大変ではなかったですか。

糟谷さん:

そうですね。専用のテキストを作成し、社員全員参加型の講座を開きました。知識レベルを測定するためにテストも実施し、社長の厳しい考えに沿い、100点を合格点として合格するまで何度も再試験を受ける仕組みを作ったんです。

写真提供:株式会社CRS埼玉 SDGs講習会の様子

–かなり徹底されていますね。テストを実施された社員の方々の反応はいかがでしたか?

糟谷さん:

前向きな声が多くてホッとしています。
「今まで捨てていたものをどうしたら再び活用できるかを考えるようになった」と、気づきを感じてくれる社員が多かったです。

また、テストには「SDGsのために自分にできること」という項目も入れていたので、テストを受けた後に社員たちがSDGsを意識して行動するようになり、嬉しい変化だなとも思っています。

–個々人にしっかりと、SDGsに関する考え方が根付いている証拠ですね。

糟谷さん:

仕事へのモチベーションにも繋がっていると思います。

SDGsを学ぶことで自分の行っている業務が地域に役立って、人々に喜ばれているんだと改めて実感し、仕事に愛着を持てるようになったようです。

–日々の業務にやりがいを感じられる方が増えたんですね。素晴らしいです!

糟谷さん:

今は動かなくなってしまったけれど、どの車も現役だった頃は私たちの生活を支えていました。そうした過去があって、未来に再び生まれ変わって戻ってくる。こうしたサイクルの繋ぎ手にいるのが私たちです。

使用済み自動車を未来へと繋ぐ仕事をしていることにやりがいを感じながら、目の前の仕事を愚直に行っていくことが、SDGsの達成につながると信じています。

みんなを大切にする会社であり続けたい、社長の想いの健康経営。変化に柔軟に対応しながら、社員も地域も大切にしていきたい

–最後に、今後の展望を教えていただけますか。

糟谷さん:

今の事業を大切にしながら、社会のニーズにも柔軟に対応していきたいですね。

電気自動車の登場や自動運転技術の発展、自動車の素材も鉄から樹脂に変わる部品が出てくるなど、自動車を取り巻く状況は常に変化しています。
自動車部品の素材を扱う卸売業者として、どうすれば地域社会や環境に貢献できるかを意識しながら、有効活用できる方法を考えていく。そんなチャレンジが続いて行く事でしょう。

–変化をおそれないという会社の姿がとても素敵ですね。

糟谷さん:

ありがとうございます。そして同時に、「健康経営」についての取り組みも進めていきます。

–健康経営とはどんなものですか?

糟谷さん:

従業員の健康を大事にしながら成果を出し、経営面も健康にしていくという意味合いです。

弊社は健康経営を進める会社として、官公庁の認定も受けています。

–御社で働く皆さんにとって、健康面にも配慮してもらえるのは、嬉しいですね。

糟谷さん:

そうですね。社員の健康管理の徹底や、先ほどお伝えしたモチベーションアップの取り組みも、私たちの重要な役目だと考えています。こういった取り組みすべてに、「仕事に楽しさを見出してほしい」という社長の想いが根付いていると思います。

–今後もCRS埼玉のご活躍を期待しています。本日はありがとうございました。

関連リンク

株式会社CRS埼玉ホームページ