CSRとは?意味とメリット、企業の活動例・取り組み事例、SDGsとの違いを解説

近年、地球温暖化などあらゆる社会問題への対応が迫られており、企業でもCSRの取り組みがより重要視されるようになりました。

この記事では、CSRの基本的な内容を踏まえた上で、メリットデメリットや、具体的な取り組み事例なども紹介します!

CSRとは

CSRとは、Corporate Social Responsibilityの略で、企業の社会的責任のことです。

代表的な取り組みについては、以下の4つにまとめられます。

  • コンプライアンス:法律やその他の社会規範を遵守する
  • ディスクロージャー:情報を開示する
  • トランスペアレンシー:企業活動の透明性を高める
  • アカウンタビリティ:ステークホルダーに対する説明責任を果たす

この他にも、社会貢献活動や、人権や環境問題を含む社会問題への対応なども含まれます。

企業が社会的責任を果たす範囲は?

企業の社会的責任は、企業活動に関わる全てのステークホルダーに対して果たすことが重要です。具体的には、消費者から取引先、投資家、従業員、地域、社会全体など、多岐にわたります。

ではなぜ、全てのステークホルダーに対して社会的責任を果たす必要があるのでしょうか?

例えば、企業の信頼がなければ消費者は商品を購入せず、職場環境が悪ければ従業員は転職してしまいます。

つまり、社会の要求に応え続け、ステークホルダーから信頼を獲得することで、企業価値の持続的な向上につながるのです。

2000年代に入り注目されるように

今では当たり前となったCSRですが、求められるようになったのは2000年代からです。

きっかけは、食の安全性が問われる事件が多発したことです。

2000年代初頭と2007-2008年に、食品への意図的な異物混入や、表示の偽装など、様々な事件が相次ぎました。

これらの事件を通して、2000年代から消費者意識は、「商品自体だけでなく企業の姿勢にも誠実さを求めるように」変化していきます。消費者の意識の変化に対応するべく、CSRは注目されるようになりました。

CSV・サステナビリティ・SDGsとの違いは?

ここまでCSRの基本的な内容について触れてきましたが、一緒に語られることが多い、「CSV」「サステナビリティ」「SDGs」といったキーワードとは、どこが異なり、どのように関連しているのでしょうか。

CSRとサステナビリティとの違い

サステナビリティは、英語で「sustainbaility」、直訳は「持続可能性」です。一般的には、1992年の地球サミットをきっかけに普及した「持続可能な開発」の文脈で使用されます。

持続可能な開発とは、「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発」と定義づけられているが、人々と地球のために包摂的、持続可能な、レジリエント、すなわち強靭な未来を築くことを求めている。

引用:国際連合広報センター「持続可能な開発」

サステナビリティは企業に関わらず、あらゆる主体が取り組むものです。対して、CSRは企業が果たす責任について限定している点が異なります。

CSRとCSVとの違い

次に、「CSV」は、「Creating Shared Value」の略で、「共有価値の創造」等と訳されます。

CSVは、企業の事業を通じて社会的な課題を解決することから生まれる「社会価値」と「企業価値」を両立させようとする経営フレームワークである。

引用:中小企業庁「中小企業白書 2014年度版」

このように、CSVは市場での差別化を図るために、社会課題を事業に組み込む経営手法を指します。企業の社会的責任であるCSRは果たさなくてはいけない使命であり、根本的な意義が異なります。

CSRとSDGsとの違い

最後に、「SDGs」は「Sustainable Development Goals」の略で、「持続可能な開発目標」を意味します。2030年までに持続可能でよりよい社会を目指すための開発目標で、17のゴールと169のターゲットから構成されます。

サステナビリティ同様、国や自治体など様々な主体が取り組むのがSDGsであり、企業を主体としたCSRとは異なります。それだけではなく、SDGsは国際会議を通して決定された全世界共通の目標であるのに対し、CSRは各ステークホルダーの要求に対して責任を果たす活動であるため、過程にも大きな違いがあるのです。

最近では、SDGsに対する取り組みの需要は高まっています。そのため、SDGsに取り組むことで各ステークホルダーの信頼獲得、すなわちCSRにつながる場合も数多くあります。

CSRは何をすればいい?活動例

CSRについてわかってきたところで、具体的にはどのようなことをすればいいのかを活動事例をもとに見ていきましょう。

ボランティア活動

「企業市民」と言う言葉があるように、企業は社会を支える一員であり、地域と密接に関わっています。そのため、地域社会の課題に応じて社会貢献活動に取り組む必要があります。

ボランティアと聞くと、ゴミ拾いや学校への出前授業などが一般的ではありましたが、最近ではその活動範囲は広まっています。例えば、仕事を通して身につけた専門知識や技術を活用して社会貢献活動を行うプロボノ、活動資金が不足しているNPOへ寄付することを目的としたチャリティランなど、新たなボランティア活動が増加傾向にあります。

他にも子ども食堂への協力などが挙げられます。

子ども食堂とは、地域の子どもたち(主にひとり親、低所得者層に見られる居場所がない子ども)に無料または低価格で食事を提供する場を指します。

子ども食堂では食事提供以外にも勉強を教える、相談に乗るなど様々な役割があるため、多くの社員が参加できる特徴があります。

これらの活動を通して、社員一人ひとりが地域とのつながりを持つことで、地域社会からの信頼を獲得することができます。

ユニバーサルデザイン

そもそも、ユニバーサルとは「普遍的な」を意味します。そこから、ユニバーサルデザイン」とは「すべての人のためのデザイン」「みんなにやさしいデザイン」という意味を持ちます。

例えば、スロープを取り入れて歩きやすくする、シャンプーとリンスのボトルの違いがわかる刻みをつけるなど、様々な商品に取り入れられています。

このように、商品にユニバーサルデザインを取り入れることも、あらゆる人への社会的責任を果たすことにつながります。

CSR活動が日本企業で必要となった理由

先述したように、2000年代に食品業界をはじめとした様々な事件から、CSRが重要視されるようになりました。具体的には、どのような事件があったのでしょうか?ここでは、食品の安全性に関わる事件から、電車の脱線事故、粉飾決済事件などから経緯を探っていきます。

食品の安全に関わる事件

繰り返しになりますが、2000年代の食品業界では様々な問題が起こりました。

その中でも、特に代表的なものは、2008年の中国製冷凍ギョーザ食中毒事件です。食品会社の従業員が冷凍ギョーザに注射器で殺虫剤を入れ、日本と中国合わせて重症1人を含む14人に健康被害が出ました。

他にも2002年には、雪印食品株式会社による補助金詐取が問題となった、雪印牛肉偽装事件もありました。牛海綿状脳症(BSE)対策事業を悪用して外国産の肉を国産と偽装し、2億円の補助金を騙し取っていたというものです。

このように、食品の安全に関わる事件を通して、「消費者がわからなければ偽装してもいい」という企業の姿勢に消費者は厳しくなりました。

鉄道の脱線事故

日々の生活で欠かせないものとなっている鉄道も、2005年のJR福知山線脱線事故が問題になりました。

塚口駅〜尼崎駅間で発生した列車脱線事故は、乗客と運転士合わせて107名が死亡、562名が負傷するなど、大きな被害が出ました。原因は運転士の速度超過でしたが、その背景にはJR西日本の経営姿勢が影響していると言われています。当時、私鉄各社での競争が激化しており、スピードアップによる本数増加や所要時間短縮を目指すあまり、乗客の安全対策が疎かになってたのです。

この悲惨な事故を通して、消費者の生死に関わる問題に対し、企業の責任が厳しく問われるようになりました。

粉飾決算事件

商品やサービス自体への問題だけでなく、経営のごまかしも大きな問題となりました。

代表的なのは、カネボウの粉飾決算事件です。1979年に多角的な日用品の事業展開により成長するも、バブル崩壊を経て、化粧品事業の黒字が他の事業の赤字を補填する状況が続きました。そして2001年から債務超過を隠すため、粉飾決算が繰り返されることになります。2003年に債務超過が発覚し、2005年に上場廃止。経営陣が証券取引法違反で逮捕される事件となりました。

このような事件が明るみに出ることで、企業のCSRはより一層重要視されるようになります。

これらの問題が起きたことが、CSRに取り組む企業が増えてきた背景となります。では、企業にとってCSRに取り組むメリットはあるのでしょうか。

CSR活動のメリット

ここで挙げるメリットは、①コンプライアンス意識の向上、②従業員満足度の向上、③企業イメージの向上、④地域とのつながり強化 の4つです。

①コンプライアンス意識の向上

コンプライアンスとは、企業が法令やルールを遵守することです。コンプライアンス違反は、企業に大きな打撃を与え、最悪の場合、倒産の危険性すらあります。そのため、CSRへの取り組みを通し、コンプライアンス意識を向上することは、会社の持続可能性につながるでしょう。

②従業員満足度の向上

CSR活動が浸透し、誰もが働きやすい職場になることで、従業員満足度の向上につながり、離職率の改善や生産性の向上が期待されます。

そのためにも一人一人の個性を尊重し、差別的な扱いをされない職場環境・採用を作ることが重要です。

③企業イメージの向上

CSR活動への積極的な取り組みは、企業のイメージアップにつながります。

例えば、SDGsへの取り組みは国際的に求められているだけでなく、消費者からも需要は高まっています。2022年4月に株式会社電通の行った「第5回 SDGsに関する生活者調査」では、SDGsに積極的に取り組む企業のイメージを調査しました。

積極的にSDGsに取り組む企業に対しては「イメージが良くなる(40.0%)」「好感が持てる/応援したくなる(35.2%)」「信頼がおける(26.6%)」などと評価が高い。好印象だけでなく、「その企業の商品やサービスを利用したくなる(18.1%)」という回答も2割近く見られた。

(株式会社電通HP「電通、第5回「SDGsに関する生活者調査」を実施」より引用)

積極的にSDGsに取り組む企業のイメージ(回答上位順)

このアンケート調査から、消費者からも企業の社会的責任への需要が高まっていることが分かり、SDGsにもつながるCSR活動に取り組むことで、企業イメージの向上が期待されます。

④地域とのつながり強化

ボランティア活動を含め、地域の人と協働することで、信頼関係を構築することができます。積極的に地域住民とコミュニケーションをとり、良好な関係を保つことで、応援される企業となるでしょう。

CSR活動のデメリット

しかし、CSR活動にはデメリットも存在します。ここでは、①コストが発生する、②慈善事業の面が強く、利益を上げにくい、③社員の教育が必要の3つが挙げられます。

①コストが発生する

CSRに取り組む場合、必要に応じて専門的な外部コンサルタントを招聘したり、新たなシステムの構築が必要になったりと、コストが発生する可能性もあります。

そのため予算を組まなければならないケースもあり、取り組みを検討していても企業の体力に左右される側面を持っています。

②慈善事業の面が強く、利益を上げにくい

CSR活動の中でも、特にボランティアなどの社会貢献活動は、売上に直結しないのが現状です。先に挙げたメリットは、継続的な活動を通して享受されるものが多いため、それらを見据えて長期的な視点で取り組むことが重要になります。

また現状では、直接的な利益をあげることへの批判もあることを理解しておきましょう。社会貢献を企業のイメージアップや儲けに利用していると指摘されるケースも稀に見受けられます。

そのため、実施する取り組みについては慎重な検討が不可欠です。

③社員の教育が必要

CSRは本業の余剰で取り組む活動も多く、その場合は別途、社員に教育する必要があります。教育への時間を割くことで本業が疎かになると、短期的な人材不足に陥る可能性も否めません。CSRに取り組むには、社員の負担を増やすのではなく、うまく本業と調整できるような環境を整える必要があります。

CSRに取り組む日本の企業事例

最後に、今まで見てきたCSR活動は、企業では具体的にどのように実践されているのでしょうか?今回は、トヨタ、富士フィルム、KDDIの3社の取り組みを紹介します。

トヨタ

日本車を扱うトヨタでは、環境への取り組みや社会貢献活動が盛んに行われています。

まず、環境への取り組みについて、電気自動車やCO2排出量の少ない自動車の開発をしています。他にも、再エネの導入により、工場でのCO2排出量削減も目指しており、脱炭素の取り組みが盛んです。

社会貢献活動では、緑化活動や教育活動だけではなく、身体障がい者や高齢者を対象とした移送サービスも実施しています。

例えば1998年10月に刈谷・知立地区で、2003年10月からはいなべ地区で開始した移送サービス「おでかけくん」。これは、車いすを利用する身体障がい者や高齢者を目的地まで送迎します。他にも、買い物をしたり、一緒にレジャーを楽しむといった活動をしています。

このように、自社の商品を活かした独自のCSR活動は、他者との差別化にもつながるので有効です。

富士フィルム

カメラやプリンター、医療機器、化粧品や健康食品など様々な商品を扱う富士フィルムでは、自社のサービスを活かした多様な社会貢献活動が盛んです。

「自然環境」「学術・教育」「文化・芸術・スポーツ」「健康」の4つの分野から、海外へのボランティア活動にも取り組んでいます。

これだけではなく、新型コロナウィルスに関するCSR活動も盛んでした。唾液による迅速で高精度なPCRの開発や、フェイスシールドの防曇フィルムの提供、AI技術によるコロナウィルス診断支援など、自社の事業の広さを存分に活かした多角的なCSR活動が特徴的です。

KDDI

大手電気通信業者KDDIでは、「KDDI Sustainable Action」を定め、ICTの活用を通したCSR活動に取り組んでいます。例えば、災害対策については、「大規模自然災害事業継続計画 (BCP)」を定め、災害発生時の初動から本格復旧、そして被災地における支援活動までの対応を規定。そして、年2回実施する「災害対策訓練」にて検証を行っています。

海外成長地域での貢献活動も盛んで、ミャンマーの「Clean and Sustainable Water Program」では、清潔な生活用水へのアクセスが困難な村で井戸の整備を実施しました。他にも、モンゴルやカンボジア、ネパール、ベトナムといった多くの国に多様な社会貢献をしています。

まとめ

CSRという「消費者から取引先、投資家、社会全体など、あらゆるステークホルダーに対して、企業が社会に与える影響にも責任を持つ」考えは、2000年代の様々な事件を通して重要視されるようになりました。

紹介した通り、CSRへの取り組みは慈善活動が全てではありません。年々、内容は多様化しており、近年ではSDGsに則った活動が主流になっています。それらを漫然と取り組むのではなく、自社サービスの強みを活かしたCSR活動をすることで、より消費者や取引先からの信頼を獲得できます。

会社のCSR活動は企業のHPに載っていることが多いので、自分の会社や気になる会社でどのような取り組みがされているのかを、改めて調べてみてはいかがでしょうか。

〈参考文献〉
一般社団法人日本経済団体連合会「企業の社会的責任 (CSR)」
財団法人人権教育啓発推進センター「経営者向け・企業における人権啓発「CSR」で会社が変わる、社会が変わる」
企業広報プラザ「CSRと広報」
一般社団法人冷凍食品協会「食品安全ハンドブック vol.2」
日本経済新聞「中国製ギョーザ中毒事件、被告に無期懲役判決」
NHK放送史「牛肉偽装事件」
国土交通省「西日本旅客鉄道(株)福知山線における列車脱線事故について」
時事会計No.29「カネボウ巨額粉飾事件-大型経済犯罪と会計・監査-」
神戸市HP「ユニバーサルデザインとは?」
株式会社電通HP「電通、第5回「SDGsに関する生活者調査」を実施」
トヨタHP「社会貢献活動」
富士フィルムHP「CSR活動報告」
KDDI HP「サステナビリティ」

この記事の監修者
阪口 竜也 フロムファーイースト株式会社 代表取締役 / 一般社団法人beyond SDGs japan代表理事
ナチュラルコスメブランド「みんなでみらいを」を運営。2009年 Entrepreneur of the year 2009のセミファイナリスト受賞。2014年よりカンボジアで持続型の植林「森の叡智プロジェクト」を開始。2015年パリ開催のCOP21で日本政府が森の叡智プロジェクトを発表。2017年には、日本ではじめて開催された『第一回SDGsビジネスアワード』で大賞を受賞した。著書に、「世界は自分一人から変えられる」(2017年 大和書房)