ディーセント・ワークとは?企業の取り組み事例やSDGsとの関わりも

「働きがいのある人間らしい仕事」を意味するディーセント・ワーク

働き方改革法案やSDGsにも深く関わることから、近年注目されている言葉です。

とはいえ、ディーセント・ワークとは具体的に何を指しているのか分からない方も多いと思います。そこでこの記事では、ディーセント・ワークの基本知識や取り組み方などを紹介します。

ディーセント・ワークの導入を考えている企業の方や就職活動中の方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。

この記事の監修者
阪口 竜也 フロムファーイースト株式会社 代表取締役 / 一般社団法人beyond SDGs japan代表理事
ナチュラルコスメブランド「みんなでみらいを」を運営。2009年 Entrepreneur of the year 2009のセミファイナリスト受賞。2014年よりカンボジアで持続型の植林「森の叡智プロジェクト」を開始。2015年パリ開催のCOP21で日本政府が森の叡智プロジェクトを発表。2017年には、日本ではじめて開催された『第一回SDGsビジネスアワード』で大賞を受賞した。著書に、「世界は自分一人から変えられる」(2017年 大和書房)

目次

ディーセント・ワークとは

ディーセント・ワークとは、「働きがいのある人間らしい仕事」のことです。

労働基準を制定するILO(国際労働機関)(※1)は、ディーセント・ワークを

権利が保障され、十分な収入を生み出し、適切な社会的保護が与えられる生産的な仕事を意味します。それはまた、全ての人が収入を得るのに十分な仕事があることです。

国際労働機関ILO

と定義しています。

【補足】ILO(国際労働機関)とは

ディーセント・ワークの説明に入る前に、まずはILO(国際労働機関)について確認しておきましょう。

 ILO(国際労働機関)は、世界の幅広い労働問題に取り組む国際労働機関です。

労働時間や母性保護、児童労働に関する法律、職場の安全や平和的な労使関係を推進する一連の政策といったさまざまな面での活動を進めています。(※2)

なかでも、労働時間に関する内容の「労働時間を1日8時間、1週48時間に制限する」(※3)という第一号条約をILOで採択して以降、これが世の中の「1日8時間労働制」の起源となり、日本でも1947年の労働基準法の施行で取り入れられました。

その他にも、労働者を労働災害から守るため、加盟国に対し健康と安全対策を促す「職業上の安全及び健康を促進するための枠組みに関する条約(2006年6月15日採択)」や、仕事の世界における暴力と、身体的・精神的な嫌がらせ(ハラスメント)を禁止する「仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約(2019年6月21日採択)」といった、労働に関するあらゆる条例を制定し、環境改善に力を入れているのです(※4)。

次に、ディーセント・ワークはいつ、どのように広まったのかを見ていきましょう。

1999年の第87回ILO(国際労働機関)がきっかけ

ディーセント・ワークは、1999年に開催された第87回ILO総会の中で、事務局長であるファン・ソマビア氏によって初めて用いられた言葉です。(※5)。

世界には職がなくて苦しむ人や、職があっても危険であったり、待遇格差や仕事に見合っていない収入などで苦しむ人がたくさん存在しています。そのような労働者の置かれている状況を改善するためにも、ILOはすべての人にディーセント・ワークを保障することを求め、世界各国に普及されるよう推進していったのです。(※6)。

日本もILOに加盟しており、ディーセント・ワークの実現に向けた政策を実施しています。次の項では日本の取り組みについて確認していきましょう。

日本では2019年4月に働き方改革が施行された

日本におけるディーセント・ワークは、2019年4月に施行された働き方改革関連法によって大きく動き出しました。

働き方改革とは?

働き方改革とは、日本の課題である労働人口の減少や、長時間労働による過労死の問題、さらには労働者のニーズの多様化という背景から、一人一人が力を発揮できる環境を整えることで(※7)、働くすべての人がより良い将来像を描けるようになることを目指したものです。

具体的には、

  • 長時間労働の是正
  • 正規、非正規雇用の格差解消
  • 多様な働き方の実現

に取り組みました。

これにより、長時間労働の解消テレワークの導入時短勤務・時差出勤といった労働環境の改善だけでなく、個人のスキルアップを目指せるよう副業を奨励する企業が増えるなど、これまでの環境が見直されるようになりました。

次の章では、ディーセント・ワークの条件について解説していきます。

ディーセント・ワークの条件とは

ディーセントワークの基本的な概念は世界共通ですが、文化や環境が異なることから国によって条件や取り組み方は様々です。

日本においては、厚生労働省の「ディーセントワークと企業経営に関する調査研究事業報告書(※8)にて4つの条件が掲げられています。

1.働く機会があり、持続可能な生計に足る収入が得られること

尊厳を持って生きるには、十分な収入を安定して得ることが重要です。仕事があっても十分な収入を得られなければ貧困に苦しむことになります。また、十分な収入があっても労働条件が過酷なものであれば働き続けることは出来ません。すべての人々が、継続的に働き続けられ、そして十分な収入を得られる仕事を確保できることが求められます。

2.労働三権などの働く上での権利が確保され、職場での発言が行いやすく、それが認められること

日本には労働三権などの法律が定められています。労働者が働きやすい環境を得るには、働く上での権利が確保され、職場で発言がしやすくなる風土づくりが必要です。

労働三権とは

日本国憲法第28条で定められた労働者の権利。

労働者が、雇う側と対等な立場で話し合うために、労働組合を作り加入できる「団結権」、団結した労働者が雇用者と労働条件などを交渉できる「団体交渉権」、労働条件改善のため、一旦労働力を引き揚げストライキを実行できる「団体行動権」の3つから成る。

日本労働組合総連合会

3.家庭生活と職業生活が両立でき、安全な職場環境や雇用保険、医療、年金制度などのセーフティーネットが確保され、自己の鍛錬もできること

働きがいは、労働の安全性や権利が保障されていること、そして私生活の充足感があってこそ成り立つものです。

職場は、労働者が継続的に働き続ける環境であることは勿論、ワークライフバランスが取れること、そして雇用保険や医療・年金制度に確実に加入していることが求められます。

さらに、資格取得プログラムや職業訓練など、スキルアップする機会を得られる環境であることも重要です。

4.公正な扱い、男女平等な扱いを受けること

すべての人が、性別や障がいの有無、雇用形態に関わらず、公正・平等に活躍できることも重要な条件です。

そのためには、能力が正当に評価される制度を設け、待遇格差を是正していくことが必要となります。

日本におけるディーセント・ワークの条件が分かったところで、次の章では日本の労働環境の現状について見ていきましょう。

日本の現状

日本の労働環境は様々な問題を抱えています。ここでは代表的な3つの問題を説明していきます。

男女間の待遇格差

日本には男女間における待遇格差が存在します。

厚生労働省によると(※9)、男性労働者の平均賃金を100とした場合、女性はその約70%しかもらえていないというデータがあります。

また、女性管理職の割合は全体の11%と低いことも男女差の観点から取り上げられる問題です(※10)。

厚生労働省によると、このような女性への待遇格差が生じる理由は、

  • 企業内で女性の役職や社内資格が低いこと
  • 勤続年数が男性と比べて短いこと

が挙げられます(※11)。

これらの解消が求められているものの、まだまだ「子育ては女性の仕事」という考え方が根強く存在します。例えば出産であれば、それを契機に退職しなければならないケースも多く、管理職の道はおろか、働くことも諦めなければなりません。その結果、賃金格差にも影響しているのです。

正規雇用・非正規雇用の格差

正規雇用と非正規雇用の賃金格差も生じています。

正規雇用とは、正規採用されていることで、一方で非正規雇用とは、契約社員、派遣労働者、個人事業主、パートやアルバイトで働くことです。

内閣府によると(※12)、正規雇用と非正規雇用には3割の賃金格差があると報告されており、雇用形態が違うとはいえ、仕事内容や量が同じであっても賃金の格差や賞与の有無など待遇に差があることが社会問題となっています。

雇用形態によって待遇格差が生じる理由として、

  • 仕事上の責任や負担が比較的少ないと考えられている
  • 教育訓練を受ける機会が少なく人的資本形成が不利

などが挙げられ(※13)、本人の力だけでは解決されない問題を抱えているのです。

人的資本とは

労働三権とは

職場訓練,学校教育によって新たに労働者個人に付加される能力をいう。教育という投資により,蓄積される知識や熟練を資本とみなす。

コトバンク

障がい者の雇用支援制度が十分ではない

また、障がい者雇用率の低さや、支援制度が充実していないことも問題です。

厚生労働省によると、日本にいる約936万人の障がい者のうち、職を得ている人は57万人と報告されています。(※14)。

日本では、「障害者雇用促進法」という法律によって、障がい者を雇用する義務があり、2021年3月からは民間企業においての雇用率が2.2%から2.3%へと引き上げられましたが(※15)、まだまだ多くの人が働く環境が整っていない現況があります。

このように、日本は様々な問題に直面しており、ディーセント・ワークが十分に普及しているとは言えない状況です。ディーセント・ワークを実現するには、どのような取り組みを行えば良いのでしょうか。そこで参考になるのが、ILOが作成している4つの戦略目標です。次の章で詳しく見ていきましょう。

ディーセント・ワーク実現における4つの戦略目標

国際労働機関(ILO)は、ディーセント・ワークを実現するために4つの戦略目標(※16)を掲げています。

1.仕事の創出

まず、すべての人に仕事があることがディーセント・ワークの基本です。

ILOでは、仕事の創出が景気回復や経済効果につながると述べており(※17)、その前提として働きがいのある人間らしい雇用を増やすための企業づくりが重要としています。

仕事の創出を円滑に進めるには、

  • どの分野で雇用を増やす可能性があるのか
  • どのような人材が必要になるのか
  • どのような教育体制をすべきか

を把握する必要があります。

厚生労働省(※18)によると、雇用を増やすきっかけとして、地域や身近で困っていることを洗い出して事業を考えることで大きな効果が得られると注目しています。

2.社会的保護の拡充

生産性も向上するような環境の整備をすることを目指しています。

社会的保護とは、安全な職場環境十分な休息と休暇家庭事情への配慮所得低下時に受けられる補償を示します。これらが確保されることで、労働者は安心して働けるようになり、仕事への意欲につながり、生産性の向上が見込まれます。

3.社会的対話の推進

ILOは、社会的対話がディーセント・ワークの実現でもっとも重要なカギとなると示しています(※19)。

この戦略目標は、職場で起きた問題を労働者と社員の話し合いによって平和的に解決するというものです。

労使間のコミュニケーションは生産性の安定や企業成長にも有益だと考えられ、対話を推進している企業は業績が良く、その一方で経営危機を経験する割合が低いというデータも出ており、企業の安定につながります(※20)。

他にも、対話を推進するメリットとして、社員同士の目的共有や情報共有が増え、関係性の向上や定着率にもつながります。

4.仕事における権利の保障

この目標は、働く人の仕事における権利が認められ、保障されていることを意味します。特に、貧困や移民、家庭内労働者など不利な立場に置かれて働く人々においては、被害を受けやすいことを配慮して、権利と保障を尊重することが課題となります。

乳母、料理、洗濯、掃除といった家事を仕事にする人に対して、ILOが制定した「家事労働者の適切な仕事に関する条約(2011年6月採択)」で、他の労働者と同じ基本的な労働者の権利を認められるものと示しています(※21)。

これら4つの戦略目標は相互に関連し、支え合うものです。つまり、1つとして欠けることなく全てを達成することでディーセント・ワークが実現するのです。

ディーセント・ワークを取り入れるメリット

ディーセント・ワークを推進することは、これまでの労働条件を改善することでもあり、事業者にとっては負担が生じる場合があります。

しかしディーセント・ワークを取り入れることは、その負担を上回るメリットが生まれると言われています。ここからは企業や労働者、それぞれのメリットについて紹介していきます。

【企業側】人手不足の解消

ディーセント・ワークを取り入れることは、人手不足の解消につながります。

現在の日本は、

  • 少子高齢化により新たな人材を確保することが難しい
  • 離職による人手不足

が生じています。

日本では働き方改革を掲げてから、就活生が企業選びにおいて魅力を感じるポイントとして、

  • 社内の雰囲気が良い
  • 成長する機会がある
  • 給与、待遇が良い

を重視する傾向があります(※22)。

また、入社後の働き方に対しては、やりたいことにチャレンジできる環境、つまり社員が働きがいを感じる環境を求める声が多く、企業はディーセント・ワークを実践する姿勢が求められます。

ほかにも、社員の定着率向上にも繋がり、人手不足を解消します。

厚生労働省「平成30年雇用動向調査結果の概況」によると(※23)、離職理由として「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」「仕事内容に興味を持てなかったり能力・個性・資格を生かせなかった」などが挙げられています。

このように、就活生や離職者はどちらも職場の福利厚生や、どのような働き方ができるかを重視していることがわかります。

企業が率先してディーセント・ワークを実践することは職場の魅力を高めることに繋がるため、人材確保および従業員の定着率向上を見込めるのです。

【企業側】社会的イメージの向上

労働者を大切にする職場環境を整えることは、社会的イメージの向上に繋がります。

長時間労働の改善、女性や若者が働きやすい環境整備、ワークライフバランス向上などの取り組みを積極的に行っている企業は社会から評価されやすい傾向にあります。例えば経済産業省では、社員の健康を経営的な側面から取り組んでいる企業に対し、「健康経営優良認定制度」という制度が認定されます(※24)。

この認定を受けた企業は、認定ロゴマークを表示できる権利があり、企業価値を高めるアピールポイントとなります。

このほかにも、ワークライフバランスの向上といった取り組みは、企業の経営の安定性や成長性を見込めるため、投資家の判断基準になります。

【従業員】仕事と生活のバランスがとれるようになる

充実した暮らしを過ごすにはワークライフバランスが大切です。仕事とプライベート、どちらかに比重が大きく傾いてしまっては生活が辛く苦しいものとなってしまいます。

ディーセント・ワークはその人にとっての仕事と生活のバランスを適切に保つため、プライベートの充実と働く意欲を両立させながら生きていくことが可能です。

また多様な働き方を選択できるようになれば、育児中や介護中の方でも個々の状況に応じた環境(リモート勤務やフレックス勤務、時短勤務など)での勤務が可能となります。

これまで苦渋の選択で退職せざるを得なかった人達が、仕事を続けていくことができるようになることは、従業員だけではなく企業側にとっても良いメリットとなります。

ディーセント・ワークを実現するための課題

ディーセント・ワークは企業・従業員のどちらにとってもメリットがあることが分かりました。では、日本でディーセント・ワークを実現するには、どのような課題をクリアする必要があるのでしょうか。

労働環境の改善

ディーセント・ワークの実現のために、早急に解消したい課題が労働環境の改善です。

先述した通り、安定して働き続けるためにはワークライフバランスが重要です。

そのため、待遇や福利厚生を充実させることはもちろん、勤務形態の多様化やキャリアアップのための社員教育の充実、育児・介護休暇の推進、個人の悩みを相談できる場を設けるなど、労働者それぞれの生活背景にまで配慮する環境を整えることが必要となります。

格差のない雇用環境

性別や雇用形態の待遇の差を解消することもディーセント・ワークには必要です。待遇格差は賃金だけでなく、福利厚生、キャリア形成・能力開発などの不平等も含まれていますが、改善のためには同一労働同一賃金の普及が有効です。

同一労働同一賃金とは、正規雇用労働者と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間の不合理な待遇差の解消を目指したものであり、どの雇用形態を選んでも、適切で公平な待遇を得られるようにする制度です(※25)。

厚生労働省では同一労働同一賃金のガイドラインを掲載しています。

詳しくは、こちらをご覧ください。

日本企業の取り組み

ここからはディーセント・ワークに取り組む企業と実践内容を紹介していきます。

【100人いたら100通りの働き方を採用】サイボウズ株式会社

人を大切にする、というのはディーセント・ワークにおいて重要な事柄です。

インターネットなどのネットワークを介してサービス提供を展開するサイボウズ株式会社では、「100人いたら100通りの働き方」を方針に、従業員のワークライフバランスを向上し、ディーセント・ワークを進めています。

基本の働き方とは別で、働く時間を決められる!

サイボウズは、2012年から働く時間の自由化として「ウルトラワーク制度」を導入しました。この制度の特徴は、「単発」で普段の働き方と異なる時間で働けるというものです。例えば、この日は仕事を早く切り上げたいから出勤時刻を前倒しする、というように柔軟な働き方が可能となっています。

育児中の困ったを解決!子連れ出勤制度

子育て中の方でも安心して働けるよう、2014年に開始したのが「子連れ出勤制度」です。その名の通り、子どもを連れて出勤可能なこの制度は、チームの生産性を下げないという条件はあるものの、子どもの預け先が見つからない、など緊急対応が必要な際に活用できます。

サイボウズは他にも様々な取り組みを行っており、従業員の多様な働き方を支えています。その結果、離職率は28%から3%まで下がり採用コストを抑えられるようになるなど、雇用側にとっても嬉しい効果が生まれています。

【すべての人の働きやすさを追求】株式会社レオパレス

株式会社レオパレスは、従業員にとって働きやすい環境を整えることでディーセント・ワークを進めています。

女性活躍推進の試み

レオパレスは、女性社員の活躍や就業継続を推進するため、女性が働きやすい環境づくりに注力し、時短勤務やテレワークの実施など、仕事と家庭の両立支援に積極的に取り組んでいます。

その結果、2014年から2018年にかけて女性管理職の人数が2倍に増加するなど、女性のキャリア形成が促進されています。

障がいのある従業員へのフォローアップ

また、障がいのある社員へのフォローアップ制度も充実しています。

フォローアップ面談(入社1ヶ月後と半年後の計2回)や座談会、意識調査アンケートを実施することで、障がいのある社員にとってより良い職場環境を整えています。

従業員の働きやすい環境を追求することで、残業時間が減少したり有給休暇取得率が向上するなど、ワークライフバランスも改善されており、社員の定着につながっています。

海外の取り組み

海外におけるディーセント・ワークの取り組み事例も見ていきましょう。

【国全体にディーセント・ワークが浸透】オランダ

オランダでは古くからディーセント・ワークの考え方が定着しており、多様な働き方が推進されています。

負担の少ない労働時間

オランダの労働環境は、政府がワークライフバランスのとれた働き方を推奨していることもあり、労働時間が短く負担が少ない、という特徴があります。

週の労働時間は29時間、週休3日が定着しているにもかかわらず、平均所得は470万円と、短時間労働でも十分な収入を得ることが出来る、良い見本となっています。(※26)。

多様な休暇制度

オランダでは多様な休暇制度によって労働環境が守られています。

例えば、制度の1つである父親休暇制度は、配偶者の出産後に2日間の有給休暇を取得でき(※27)、休暇中は所得の100%が保証されます。

他にも緊急・短時間休業があり、車が故障した、家電が壊れた等の緊急対応が必要な状況に応じて休暇を取得できます。申請すると通常半日以下の範囲で、合理的な範囲であれば、数日間休暇取得することができます。この期間は所得の100%が保証されます(※28)。

【92%の企業でフレキシブルワークを導入】フィンランド

世界幸福度ランキングで4年連続1位となったフィンランドは、労働時間や勤務場所に対して世界で最も柔軟な国であると言われており、ディーセント・ワークが進んでいます。

企業の92%がフレキシブルワークを導入

フィンランドでは、働く時間や勤務場所、休暇の自由度の高いフレキシブルワーク(働く時間、場所、休暇の自由度を高めた働き方)を導入する企業が92%に上ります(※29)。

もともとフィンランドは、1996年に「Act on Working Hours(労働時間法)」という法律が可決され(※30)、労働者は仕事の開始・終了時刻を最大3時間前倒し・後ろ倒しができる権利が与えられるなど、労働環境の自由度が高い国ではありました。

しかし2020年にフレキシブルワーク法が施行されたことにより、フィンランドの労働環境はさらに労働者の意思に委ねられたものとなりました。この法律は、「1週間の労働時間40時間のうちの半分を、いつ・どの場所で働くか」を労働者が決めて良いとしており、ディーセント・ワークの実践を後押し出来る制度となっています

SDGsとの関わり

最後にディーセント・ワークとSDGsの関係を確認しましょう。まずはSDGsについて簡単に見ていきます。

SDGsとは

SDGsとは、Sustainable Development Goalsの略で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されています。「経済」「社会」「環境」の面において、世界中の人を誰1人として取り残すことなく、持続可能な世界を実現するための目標です。SDGsは17の目標と、それを達成するための169のターゲットから成り立っており、その中でもディーセント・ワークと深く関わっているものが目標8です。

目標8「働きがいも経済成長も」

目標8「働きがいも経済成長も」は、「包摂的かつ持続可能な経済成長及び生産的な完全雇用とディーセント・ワークをすべての人に推進する」こと、つまり、安定した経済成長のために、すべての労働者の生活を豊かにし、誰でも働きがいを感じる仕事ができる社会をつくろう、ということです。

特に目標8には

8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、全ての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する

というターゲットが含まれており、これは、すべての労働者が労働安全衛生の確保された環境で働けるように推進することが記されています。

世界では、貧困などが原因で10人に1人の子どもが無理やり働かされています(※31)。その一方で、仕事自体がなかったり、教育が不十分で字が読めないために就職先が見つからず、働きたいのに仕事に就けない大人が約2億人存在します(※32)。

ディーセント・ワークの実践は、貧困や児童労働の撲滅など多くの問題を解決する糸口となるのです。

まとめ

この記事ではディーセント・ワークについて詳しく見ていきました。

ディーセント・ワークとは、きちんとした、働きがいを感じる仕事を指し、それは、人間らしい仕事のことです。

具体的には、

  • 生産的で公正な収入
  • 安全で衛生的な職場環境
  • 自己啓発のチャンスがあること
  • 家族の社会的保護
  • 格差のない均等な待遇
  • 家庭と職場が両立しやすい仕事

が含まれ、SDGsにおいても目標8に位置付けられており、世界共通の取り組みとして推進されています。

日本の労働環境は、男女間や雇用形態による待遇格差や障がいを持つ人への雇用支援制度が整っていないという現状から、ディーセント・ワークを実現するためには、格差解消やワークライフバランスを整えるといった労働環境の改善を行う必要があります。

現状を見る限り、日本におけるディーセント・ワークの実現は、ほど遠く感じるかもしれません。

しかし、企業が取り入れている実践例に目を向けてみると、着実に進められていることも分かります。

今後、事業に取り入れたいという企業の方や、ディーセント・ワークを推進している企業に就職したいという方は、ぜひ今回の記事を参考にして頂き、今一度関心を寄せてみましょう。

一人でも多くの人が、ディーセント・ワークに沿った働き方ができるように、声をあげていきましょう。

<参考文献・サイト>
※1:国際労働機関
※2:ILO ILOについて
※3:ILO 1919年の労働時間(工業)条約第1号
※4:ILO 条約一覧
※5:厚生労働省 日本とILO
※6:厚生労働省 ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)について
※7:厚生労働省
※8:厚生労働省
※9: 厚生労働省 令和2年賃金構造基本統計調査の概況
※10:厚生労働省「令和元年度雇用均等基本調査」の結果概要
※11:厚生労働省
※12:内閣府 第2章 働き方の変化と経済・国民生活への影響
※13:厚生労働省「非正規雇用」の現状と課題
※14: 厚生労働省令和2年 障害者雇用状況の集計結果
※15:厚生労働省障害者雇用対策
※16:国際労働機関(ILO)
※17:第103 回 ILO 総会 雇用に関する第二回反復討議に係わる決議
※18:厚生労働省 雇用創出企画会議第一次報告書
※19:ILO駐日事務所メールマガジン・トピック解説
※20:東京商工会議所 労使コミュニケーションの重要性
※21:ILO 条約一覧 2011年の家事労働者条約(第189号)
※22:株式会社i-plug「企業の魅力と働き方」に関する意識調査(2020年2月実施)
※23:厚生労働省
※24:経済産業省 健康経営優良法人認定制度とは
※25: 厚生労働省 同一労働同一賃金の概要

※26:CNN.com
※27: 厚生労働省 諸外国における両立支援制度について(法制度の概要)
※28: Buren N.V. 労働法グループ ジャパンプラクティスグループ オランダ労働法解説
※29 :BBC
※30:在フィンランド日本国大使館経済班 フィンランド経済の概要 
※31:国際労働機関「児童労働の世界推計:推計結果と趨勢、2012~2016年」
※32:国際労働機関ILO定期刊行物最新刊:遅々とした雇用回復と不平等の拡大によって新型コロナウイルスの傷跡が長く残る恐れ