#インタビュー

一般社団法人プロギングジャパン|楽しむことから始めるプロギングでSDGsに貢献する

プロギングジャパン代表 常田 英一朗さんインタビュー

常田 英一朗

1995年7月24日、愛知県知多郡生まれ。幼い頃から海・森・山など自然の中で遊びながら育つ。2014年滋賀大学に入学しワンダーフォーゲル部に入部。その後2年間の休学も含めて登山やクライミングに没頭。
どうすれば多くの人と共に自然に対して恩返しができるかと考える中「プロギング」の存在を知る。体力作りと環境保護目的で始めたがそれら以上に「楽しい」と感じることに気づき、プロギングの可能性を実感。オリジナルのアップデートを加えて日本全国に普及を目指す一般社団法人プロギングジャパンを設立。スローガンは「ポジティブな力で足元から世界を変える」。どうしても義務感や責任感が先行してしまう社会問題に対し、自分が楽しむためにするフィットネスとしてプロギングを展開。様々な自治体や企業、個人との協業を経て、社会課題を解決しながら街も人も元気にする新たな価値を生み出している。

introduction

SDGsを体現し伝播させるフィットネスとして広まりを見せる「プロギング」。その新しいフィットネスを日本に広げるため、2019年に設立されたプロギングジャパンで会長を勤める常田英一朗さんに、プロギングとはどんなフィットネスなのか、SGDsとどのように関係するのかなどをお伺いしました。

楽しみながらSDGsに貢献できるフィットネス・プロギング

-「プロギング」とはどのようなものか、教えてください。

常田 さん:

プロギングは、ゴミ拾い(PlockaUpp)とジョギング(Jogging)を合わせたフィットネスです。

2016年にスウェーデンで誕生したばかりですが、すでに世界100か国以上で楽しまれています。ゴミ拾い活動ではありますが、環境活動・エコ・SDGsなどの言葉は一切使わないのが特徴です。野球やサッカーなどをするのと同じように、「楽しいから」という理由で気軽に参加していただける活動ですね。

-楽しみながら環境に良い活動ができるというのは魅力的ですね。

常田 さん:

ゴミ拾いのようなボランティアや社会貢献活動は、知識をベースに義務感から行動に移すことが多いと感じます。海にゴミが多く、生物に悪影響があると知ったから、浜辺のゴミ拾い活動に参加するという形です。一方プロギングは、楽しいから参加しているうちに、知識が身についたり、視野が広がったりしていく。ほかの社会貢献活動とは逆で、行動しているうちに知識が身についていくことを目指しています。

-多くの人を巻き込んでいくには、「しなければならない」を伝えるより、「楽しい」と感じてもらう方が効果的だと感じました。

プロギングジャパンとしては、どのような活動をしているのでしょうか。

常田 さん:

プロギングをベースに、観光や教育、また親子の活動などいろいろなものを掛け合わせて楽しめるイベントを主催しています。ほかにも、他団体のプロギングイベントの支援や、学校での講義も行っています。

参加者の視野を広げ、社会貢献活動への一歩を踏み出すきっかけとなりたい

-活動を始めたきっかけを教えてください

常田 さん:

多くの人と共に、自然に恩返しがしたいと思ったのがきっかけです。私自身、自然がとても好きなんです。大学時代は4年間ワンダーフォーゲル部(登山部)に所属し、その後2年間大学を休学して世界中の山を登り歩くほどのめり込んでいました。その中で出会ったのがプロギングです。

-元々環境問題に興味があったのですか?

常田 さん:

関心はありましたが、ゴミ拾いといったような直接的な活動はとっつきにくい印象があり参加してきませんでした。貢献したい気持ちはあったけれど、参加することにハードルの高さを感じていたのです。

環境に関心がある自分ですらこうですから、関心のない方まで巻き込むには楽しさが必要ですよね。

-プロギングはまさにその思想とぴったりですね。

常田 さん:

はい。そこで楽しさに加え、さらに健康になれる、親子で参加できるなどの付加価値をつけ、プロギングをアップデートしたイベントを開催することにしたんです。

ゴミ拾いを手段として、交流や観光の場をつくるのがプロギングジャパンです。

-ゴミ拾い活動に参加するハードルがぐっと下がります。

常田 さん:


私達の活動が、環境問題への取り組みの一歩を踏み出す入口になればいいなと思っています。

走りながらのゴミ拾いなので、拾える量には限りがありますし、私達の活動だけで日本中からゴミをなくすことはできません。でも、その一歩目を踏み出すことで、ほかの社会貢献活動に目をむけるきっかけになってもらえればと思っています。

-参加者の方の反応はいかがですか。

常田 さん:

一番多いのは、楽しかったという声で、その次にこんなにゴミが落ちているなんて気付かなかったというものです。

イベント参加者の約6割がはじめてゴミ拾いに参加される方です。視野を広げるきっかけを提供できているのではないかと感じています。

プロギングはSDGsを包括した体験ができる

-事業目的の中に「プロギングを通じたSDGsの浸透」という項目が入っていたり、ご自身もSDGs検定に合格されたりと、SDGsとプロギングは関連が深いと思います。どのように考えていらっしゃいますか?

常田 さん:

プロギングは、SDGsを包括する取り組みだと考えています。

例えば、自然と関連の深い目標14・15はもちろん、目標3・4の健康や教育、目標6の安全な水、目標11のまちづくりにも関わりがあると思います。その他にも、目標12のつくる責任つかう責任や、目標17のパートナーシップについて考える場面もありますね。プロギングを通じてSDGsのすべての目標を知り、共に貢献していければと思います。

-では企業や団体がSDGsに取り組むためにはどうしたら良いと思いますか?

常田 さん:

「目標15の達成のために〇〇を行う」といった形は、半分正解で半分間違いだと思っています。SDGsの各目標は、それぞれと密接に関わっているからです。環境破壊の原因に、貧困や教育が関係していることがあるように。

なので、私が思うSDGsは「身の回りの人にちょっと優しくする」です。難しく考えずに、自分に関係のあるところから始めることが大切だと思います。身近な人やその好きな人のためになることをしてみる。自分の目の前の仕事に一生懸命取り組んで、誰かの役に立つ。そういう小さな優しさが積もり積もって連鎖していくことでSDGs達成に近づくと信じています。

できることから地道に継続。徐々に仲間を増やした

-プロギングジャパン以外にも団体ができるなど、徐々に日本でもプロギングが広がっていますね。これまでどのように活動を広めてきたのでしょうか。

常田 さん:

地道に継続していたことですね。

大学在学中に団体を立ち上げた頃はFacebookで参加者を募集していました。最初は3人、4人と小規模でしたが、あるとき京都でイベントをすると、東京・新潟・愛知・広島などから12人集まってくださったんです。全国各地から参加してくださる人がいることに勇気をもらいました。

-活動を続けるなかで、徐々に参加者を増やしてきたのですね。

その後、2020年常田さんが大学を卒業するタイミングで法人化されています。

常田 さん:

「私達はプロギングジャパンという団体で、こんな活動をしています。よろしければ一緒に楽しみませんか?」と声を上げ続けることで、徐々に仕事につながっていったという形です。

-とても順調に活動されてきた印象を受けます。

常田 さん:

そうでもありません。法人化した2020年4月は、コロナウイルスの感染者が急増した時期で。予定していたイベントがすべて中止になりました。

-イベントが主な事業なので、開催できない時期が長く続いて苦しい状況だったかと思います。どのように状況を打破したのですか。

常田 さん:

できることをやるしかないと、メンバーと2人だけでプロギングを始めることにしました。

毎週水曜日に愛知の名城公園でプロギングを続けていたら、「毎週楽しそうなことをしていますね。何をやっているんですか?」といったお問い合わせをSNSでいただいたり、直接声をかけてもらったりして。4人、7人、9人……と徐々に参加者が増えていきました。

そうしているうちに名古屋市からもお問合せがありました。結果「プロギングツアー名古屋」という名古屋市とのコラボ企画が生まれ、現在も続けています。

思い描いた形でなくても、目の前のことに一生懸命取り組みそれをやり続けることが大切だと実感する出来事になりました。

プロギングで真のパートナーシップを生み出したい

-今後の展望について教えてください。

常田 さん:

プロギングを通して、企業・行政・個人などより多くの方と関わり、パートナーシップを結んでいきたいと考えています。

プロギングはまだまだ歴史が浅いものです。制約をつくることなく自由に取り組んでいただき、より楽しく取り組める形を皆さんとつくれたらと思います。野球やサッカーのように、プロギングも文化にしていきたいですね。

-パートナーシップを活性化することは、SDGsの目標でもあります。

常田 さん:

プロギングは、真の意味でのパートナーシップをつくるハブになれると思っています。

今のパートナーシップでは、同業他社が連携したり、異業種の方と知り合う機会がほとんどないなど、課題が多く残されていると感じます。

一方で、環境活動のほか健康促進、他者との交流といった多面的な要素を持つプロギングなら、資本主義の壁を乗り越え、つなぐことが可能です。飲食業の方、スポーツ用品の方、製造業の方など、関わる機会の少ない業界の方も一緒になって明るい未来をつくっていきたいです。

-自身にメリットがあることに楽しみながら取り組み、SGDsの目標も達成していく方法として、プロギングがもっと広まればいいなと感じました。

常田 さん:

ありがとうございます。SDGsという世界的に大きな目標達成を目指していますが、そのためには目の前のことを一生懸命やるのが何より大切だと感じています。

プロギングジャパンでは、イベントに参加してくださった方に満足して帰っていただくことを目標に、改善を繰り返し発展させてきました。今後も楽しんで参加していただけるかっこいいフィットネスを目指します。

-本日はありがとうございました。

取材 大越/ 執筆 荒川

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