髙木 正太郎
1981年8月5日、福岡県福岡市生まれ。幼少期の夢は、盲導犬の訓練士、アナウンサー、CMクリエイター。
会社経営を行う中で、2014年福岡青年会議所に入会、福岡JCを通じて福岡をより魅力的なまちにするための活動をはじめる。2018年8月には、福岡国際センターと福岡市科学館にて『こどもFUKUOKA未来博』を実施。約60の体験ワークショップブースに来場者9000人以上。また同年2030SDGsファシリテーターの資格を取得し、現在までに企業から学校まで多数のSDGsセミナーを行う(セミナー実施数 100回以上)。2020年7月に福岡SDGs協会を設立し、10月に福岡市科学館にて『みんなのSDGs展2020』を実施。福岡SDGs協会を通じて、福岡のひとづくり、まちづくりを行っています。
introduction
『誰ひとり取り残さないまち福岡』を実現するために、情報発信やSDGs活動団体の支援など、様々なSDGs活動を行っている一般社団法人福岡SDGs協会。
アジアの玄関口と言われる福岡は、博多どんたくや山笠などの祭、太宰府天満宮など歴史と人情にあふれた街として有名です。福岡SDGs協会は、福岡で暮らす学生や社会人を中心に、セミナーやイベントを通してSDGsについて学ぶ機会を提供しています。
SDGsについて学ぶことの意義や、教育にかける想いについて、福岡SDGs協会の理事・髙木正太郎さんに話を伺いました。
理事は全員・完全無報酬!SDGsに関する情報発信や導入支援がメイン
–本日はよろしくお願いします!早速ですが、福岡SDGs協会について教えてください。
髙木さん:
福岡SDGs協会は、「活動支援」「情報発信」「導入支援」を柱にSDGsにまつわる活動をサポートする、福岡県の※一般社団法人です。例えば、フードバンクや子ども食堂といった、SDGs関連の活動をしている団体に寄付をしたり、SDGsを導入したい企業のコンサルティングを行ったりしています。
–SDGsの導入支援とは、具体的にどのようなサポートをなさるのですか。
髙木さん:
SDGsが注目されたのはまだ最近のことなので、解決したい課題が明確になったとしても、具体的にどのように活動すれば良いかわからない場合があるんです。
そんな時に、私たちが支援団体と企業の橋渡しをしたり、SDGsについての相談に乗ったり、必要に応じて企業でのセミナーも行っています。
–解決したい課題に応じた団体を紹介してもらえるのは、すごくいいですね!
髙木さん:
そうですね。信頼のおける活動団体と企業とをマッチングすることで、SDGsウォッシュ※を防ぐとともに、『誰ひとり取り残さないまち福岡』を目指しています。
今までも、様々な企業のSDGs活動を支援させていただきました。
–どういった経緯で福岡SDGs協会を設立なさったのですか。
髙木さん:
もともとは、2018年頃から個人でSDGsについて講演をしていましたが、より多くの人を巻き込む必要があると考えて、2020年7月に一般社団法人化しました。
私の本業は映像制作会社と雑貨卸業の経営であるため、福岡SDGs協会はボランティアとして活動しています。僕を含めた理事10名は、全員が完全無報酬でやっているんですよ。
–えっ!皆さん、ボランティアなんですか?驚きました。
髙木さん:
SDGsの活動を始める前から、ボランティアで子どもや地域のためのイベントを開催していた経験がルーツになっているかもしれないですね。僕にとって、大切なことを子どもたちに伝えたい、という想いが根底にあるのだと思います。
実際、福岡SDGs協会としての活動は、小学生〜大学生の学生たちへの出張授業といった情報発信がメインになっています。
–子どもたちに貢献したい気持ちがベースにあるのですね。本日は、メインであるSDGsの情報発信について、ぜひ詳しく教えてください。
髙木さん:
わかりました。よろしくお願いします!
未来を担う子どもたちに、多様性の大切さを伝えたい
–SDGsの情報発信において、どのような取り組みをなさっていますか。
髙木さん:
小学生から大学生まで、幅広い年齢層の学生たちにSDGsに関する授業を行っています。授業の他にも、KBCラジオでは毎月第一土曜日に“今日からできるSDGs”をテーマにお送りするコーナーを担当しており、RKB毎日放送の70周年プロジェクト「カラフルマンス」にも参加し、テレビ出演も経験しました。
–色々な形で情報を発信なさっているのですね。学生向けの授業では、どのように子どもたちにSDGsについて教えるのですか。
髙木さん:
小学生に向けて説明する際には、カードゲームを用いてみたり、謎解きクエスト形式にしてみたり、楽しみながら学んでもらえるように色々と工夫しています。
–面白そうですね!SDGsについて学ぶハードルも下がりそうです。
髙木さん:
ありがとうございます。中高生になると、より具体的に、「なぜ自分がSDGsに取り組むのか」を考えてもらう形に変化させています。SDGsを、世界的な課題意識から自分ごととして考えるきっかけになればいいなと思っています。
–SDGsについて知ることから、考えることにシフトするのですね。髙木さんは、なぜ子どもたちにSDGsについての教育が必要だと思われたのですか。
髙木さん:
一番は、多様性について早いうちから知ってほしいと思ったからです。
現代社会の風潮として、人に対して批判的な見方や意見が多かったり、SNS映えや「いいね」の数ばかりに気を取られたりして、発言や挑戦をためらう子どもたちが増えてきているように感じます。どんどん生きづらくなっているというか…。
–確かに、私たちが子どもの頃よりずっとインターネットやSNSが進歩していますもんね。
髙木さん:
教育現場でも、問題行動を取る子どもたちへの対処法がずいぶん変わってきたと聞いています。アニメで見るように、廊下に立たせたり、「ばかもーん!」と怒鳴ったりするのは、今では考えられないことですから。
人権的には正しい反面、先生たちも生徒たちも、問題を抱えた子とはおそるおそる関わるようになってしまうんだそうです。その結果、コミュニケーションが取れず孤立が進むという悪循環が生まれるんです。
–問題を抱えて、手を差し伸べられるべき子どもが、腫れ物のように扱われて取り残されてしまうケースが出てくるのですね。
髙木さん:
そうなんです。もし、クラスメイトや先生たちに多様性に関する知識や理解があれば、状況は変わるかもしれない。そう思って、子どもたちに多様性の話を伝えるようになりました。
–お互いの考え方や価値観の違いを、受け入れられるようになることは大切ですね。
髙木さん:
さらにいうと、困っている友達に手を差し伸べることができる習慣や環境が整えば一番のぞましいですね。
–学校全体がそのような状況なら、安心して学校に通えますね。
子どもから大人へ、SDGsへの「関心の輪」を広げていく
髙木さん:
また、子どもたちにSDGsについて伝える目的の1つに、子どもから大人へ関心の輪が広がっていくことも含まれます。大人が大人に説明するよりも、子どもの純粋な学びとして保護者の方に伝えてもらったほうが聞き入れてもらいやすいですからね。
–子どもたちがキラキラした目で話してくれたら、親御さんも興味がわきますね!
髙木さん:
そうですね。子どもも大人も、みんながSDGsについて学べる機会として、毎年2月に福岡市美術館で「みんなのSDGs展」を開催しています。
SDGsについて学べる情報ブースもありますし、古くなった靴や絵本を寄付できたり、捨てられてしまうものからアクセサリーやアート作品を作ったりといった体験もできます。
親子で一緒に考えて、SDGsを体感できるイベントになっています。
–「みんなのSDGs展」に訪れること自体が、SDGsへの取り組みの第一歩になるんだなと感じました。
髙木さん:
そうですね。他にも、4月に福岡市西区で開催されたビーチクリーン活動など、SDGsに興味を持った子どもたちが実際の活動に参加できるイベントも開催しています。ビーチクリーンには約50人くらいの高校生が参加してくれたんですよ。
–SDGs活動に取り組む子どもたちが、これからも増えていくといいですね!
医療を志す学生たちにもSDGsを役立ててほしい
–最近だと、どこで講義をなさったのですか。
髙木さん:
3月に福岡市博多メディカル専門学校と福岡大学看護科で講義しました。
福岡大学では、4月にも新入生オリエンテーションで講義をする予定です。
–医療関係の学生さんたちにも、SDGsの講義をなさっているんですね!実は私も看護師経験があるので、どのような講義なのか興味があります!
髙木さん:
福岡大学看護科のセミナーでは、授業終了後に任意で参加してもらうセミナーだったにも関わらず、用意した席は満席になりました。熱心にメモをとって質問してくださる学生さんもいて、意識の高さを感じました。
–医療を目指す大学生たちにとって、SDGsについて学ぶメリットはどんなところにあると思いますか。
髙木さん:
先程の学校現場の例と同じように、多様性の理解と社会問題を捉える力を養うことが挙げられると思います。
患者さんの考え方や価値観、抱えている社会的問題などは、一人一人違いますよね。多様性についてあらかじめ知っておけば、医療従事者としてどんな対応を求められているのか、導き出しやすくなると思うんです。
–医療にもジェンダーや貧困などの問題がありますし、医療従事者を目指す学生さんたちがSDGsの考え方を身につけるのはとてもいいことですね。
髙木さん:
子ども食堂でもいいし、ビーチクリーンでもいいので、ボランティアにも参加してほしいなと願っています。SDGsに関する活動は、医療など業種の垣根なくチームで取り組めますからね。
学生時代に社会とつながっておく、自分の興味のあるものにチャレンジしておくというのは、のちのち自分が医療従事者としてどのように社会貢献していくかに関わる大切な経験になると思います。
–学生のうちから視野を広げておくことは重要なのですね。
SDGsを追い風に、新しいことにチャレンジしてほしい
–SDGsについて興味を持った若い人たちに、期待することはなんですか。
髙木さん:
今の若い人たちは特に、共感する力や物事を捉える力が強いと思います。その強みを、ぜひ社会をより良くすることに役立ててほしいですね。
僕たち40代以上の世代って、考えが凝り固まってるんです(笑)。その反面、若い人たちにはアイディアもチャンスも無限にありますから。ソーシャルバッドをソーシャルグッドにしていってほしいです。
–共感力や物事を捉える力は、どのように役立つのでしょうか。
髙木さん:
共感したり物事を正しく捉える力が強いと、当たり前を疑うことができます。
興味のあることからでいいんです。今の世の中に対して「なぜそうなのか」を深堀りしてみてください。社会の中で、おかしいと感じたことを黙って受け入れるのではなく、なぜこうなっているのかを考えてほしい。おかしいことにはみんなで声を上げていきましょう。
–そのためにも、SDGsについて学び、興味のある活動に参加して、現状について正しい理解をすることが大切なのですね。
髙木さん:
そうですね。今は、SDGsが広まったことにより、世界的に「世の中をよくしよう」という動きが活発になっていますからね。今までの常識を疑うのにピッタリのタイミングなんです。様々な企業や他分野の人と共通認識を持てる、SDGsという強力なチャンネルを味方につけて、新しいことにどんどん挑戦してほしいです。
今の若い子たち、Z世代の子たちがSDGsによる新たな視点で問題を洗い出し、自ら考えてアイディアを提案することによって、今までにないサービスが生まれることを楽しみにしています。
–本日は貴重なお話をありがとうございました。