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Green Science Alliance(冨士色素株式会社グループ)|【科学の力で脱炭素】世界を変える最先端の化学材料

Green Science Alliance(冨士色素株式会社グループ) 森良平さん インタビュー

森 良平

1973年11月9日、兵庫県川西市生まれ。

京都工芸繊維大学卒業後、修士課程から京都大学大学院に進学して、京都大学 博士(工学)を取得。ハーバードビジネススクール GMP 修了。

日本写真印刷株式会社にて(現 NISSHA)で欧州駐在員として勤務後、冨士色素株式会社へ入社。2017 年に同企業代表取締役となる。
2010 年に冨士色素株式会社の社内スタートアップ企業の形で GS アライアンス株式会社を設立。同代表取締役を務める。2020 年に、GS アライアンス株式会社は国連機関であるUNOPS KOBE からスタートアップ企業として認定された。

Introduction

環境、エネルギー分野向けの最先端材料の研究開発、製造販売を行っているGreen Science Alliance。
次世代エネルギーや次世代電池、生分解性プラスチックなど、展開する事業は多岐に渡りますが、元々は石油を使って製品をつくる会社でした。
なぜ環境に配慮した製品の研究開発に舵を切ったのか。今回、Green Science Allianceの代表である森さんに、事業への想いやこれからの展望についてお聞きしました。

生分解性プラスチックに、新たな燃料電池?!最先端の科学技術

-まず、事業内容について教えてください。

森さん:

最先端レベルで、SDGs向け技術の研究・開発、提供をしている科学会社です。

複数の柱をもとに事業を進めていますが、今日はそのうちのいくつかを紹介します。1つは、マイクロプラスチックに対応する生分解性プラスチックの開発、製造販売です。

生分解性プラスチック

通常のプラスチックと同様の耐久性を持ち、使用後は自然界に存在する微生物の働きで最終的にCO2と水にまで分解されるプラスチック。生物資源由来のものと、石油由来のものの2つがある。

-それはどういうものでしょうか?

森さん:

通常の生分解性プラスチックには、石油由来の成分が含まれていることがあります。対して私たちは、天然100%の素材を使い、石油製品をできるだけ使わずに生分解性プラスチックをつくっています。

-環境への負荷がより少ない生分解性プラスチックなんですね。

森さん:

このような生分解性プラスチックや、この生分解性プラスチックをコーティングや塗料に使った、生分解性塗料や生分解性インクをつくっています。

<3Dプリンタ用生分解性プラスチック>
<100%天然バイオマス生分解性ペットボトル>
<生分解性プラスチック樹脂ペレット>

森さん:

2つ目が、再生可能エネルギーに貢献する二次電池の研究です。二次電池とは、スマホに搭載されているリチウムイオン電池など次世代型の蓄電池のことです。
そもそもこのリチウムイオン電池は環境に優しいものなのですが、私たちはそれをさらに発展させ、安全性が高く、リサイクルもしやすいアルミニウムを使った蓄電池を開発しています。

<アルミニウム系二次電池>

森さん:

3つ目が、白金や水素を使わない燃料電池についての研究です。
水素を使った燃料電池は環境に優しいのに、なかなか実用化されていません。その理由は、水素は貯めておくのが非常に困難な物質だからです。
そこで貯蔵しやすい異なる液体燃料を使った燃料電池をつくっています。

「CO2を燃料に、新たな物質をつくり出す」研究開発に従事

-環境を第一にした事業を展開されているんですね。他にも、CO2を燃料にする試みも実施しているんですよね。詳しく教えていただけますか?

森さん:

CO2は温暖化の原因であり、削減していく方向性ですが、実は燃料にして、新しい化学物質や電気をつくることができるんです。
これは、人工光合成という有名な技術で、人工の植物のようなものです。
環境・脱炭素において、最先端の研究開発となっています。

-どのようにCO2を燃料にするのですか?

森さん:

具体的には、独自の特殊な触媒を使って、CO2と水、擬似太陽光(ソーラーシミュレーター)から、ギ酸と呼ばれる物質をつくります。ギ酸は、それ自体を分解するか、合成して他の物質にすることで、プラスチックなどの化学品や、燃料の原料にすることができるんです。
また、CO2からはギ酸だけではなく、メタン・メタノール・水素などもつくれます。
メタン・メタノールはそのまま燃料として使うことができますし、そこからまた違う製品の原料になっていきます。

<人工光合成>

-使い道は無限大ですね。

森さん:

はい。
ただ、世界中の大企業や大学の力をもってしても、実用化はかなり厳しそうだと言われています。
私は「やってやる」という熱い志を持っていますが、小さい会社なのでどこまでやれるかという感じですね。

一足先にSDGs。そのきっかけとは

-環境に配慮した事業を展開するきっかけは何かあったのでしょうか?

森さん:

なんとなくそんな時代が来るだろうなと思っていたので、先にやっておこうと思いまして。テレビやマスコミは結構、環境問題を取り上げるんですが、具体的にどうするのかはあまり言っていない印象がありました。そのため、「これが解決策です」というものを、うちがバーンと答えるつもりでやろうと。

-事業とSDGsを絡めようと思ったきっかけもそのような状況からだったのでしょうか?

森さん:

きっかけは、思いつきもあるのですが、僕自身が環境問題に関心があり、こどもの頃から自然の中にあるゴミが汚いと感じていたこともあります。

-小さい頃から環境問題に関心があったんですね。

森さん:

アメリカやヨーロッパに行くことが多く、現地の人から影響を受けていたのかもしれません。特にヨーロッパは国が主導して石油製品に税金をかけたりしていて、全体的に進んでいます。もう1つあるのは、Green Science Allianceが冨士色素というグループ会社の一部であることです。この冨士色素は私の祖父の会社で、私がその後を継ぎました。

森さん:

冨士色素という会社は、塗料の会社、つまり石油をたくさん使う会社なので、「後になってから問題になるな」と感じていて、それならば先に方向転換しておこうと思ったんです。社長になると、全責任が自分にかかるので、継ぐからにはやってやろうと。

-大変なこともあったのではないでしょうか?

森さん:

そうですね。冨士色素の事業とかけ離れているし、新しいことを勉強しなければならないという負担もあります。それにより対立もありました。でも、ここ数年で世の中が変わってきたので、そういったことも減りましたね。

-取引先の反応はどうでしたか?

森さん:

私たちの事業を見て、それに共感してお付き合いいただける取引先がほとんどなので、社内よりは前向きな反応がありましたね。
そして世の中の流れから、取引先の企業もそうしないといけなかったというのもあると思います。

協力者は誰でも歓迎。地域を超えての事業拡大

-今後、どのような世の中にしていきたいですか?

森さん:

有難いことに最近では問い合わせが多く注目されていると感じています。この流れで会社を大きくして、上場企業を目指したいです。
他にも、外国の社員を雇って海外展開を強化していくことも考えています。

-海外展開、楽しみですね。

森さん:

人工光合成や天然材料というと、海外の方が反応が良いんです。とはいえ、どこの国や地域かよりも、前向きに協力してくれるのなら、海外でも国内でも一緒に仕事がしていければ良いなと思っています。

-より多くの人が関心を持って協力してくれるといいですね。改めて科学の力はすごいということが分かりました。本日はありがとうございました!

Green Science Alliance(冨士色素株式会社グループ) 関連リンク

>> Green Science Alliance:https://www.gsalliance.co.jp/