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佐賀市上下水道局|循環型下水道処理で海や田畑が豊かに!バイオマス技術でできた地産地消のサイクル

佐賀市上下水道局 下水道施設課長 花島さん インタビュー

花島 勲

1963年10月1日、佐賀県佐賀市生まれ。佐賀大学理工学部卒業後 1987年に佐賀市水道局へ入庁。営業課、工務課、総務課、浄水課を経て、2012年の上下水道事業統合後、2018年から下水プロジェクト推進部 下水道施設課長として、佐賀市下水浄化センターで下水処理施設の運転及び維持管理業務に従事。下水処理を適切に行いながら、処理場から発生する廃棄物を資源として活用する処理場は、全国から注目され年間100組近くの視察を受け入れる循環型の下水処理場。計画中の地域バイオマスを活用した電力自給率の向上への取り組み等により、更なるSDGsへの貢献を目指している。

introduction

佐賀市は、九州北部に位置する佐賀県の県庁所在地です。佐賀県最大の人口を有する地域で、有明海から背振山までを縦断しており、とても自然が豊かです。佐賀市を流れる一級河川の筑後川は、合唱曲としても有名で、阿蘇山から熊本・大分・福岡・佐賀の4県を渡り有明海に流れ着きます。

佐賀市上下水道局は、佐賀市一円の上下水道事業を担っています。給水人口は197,157人、1日最大給水量は 66,165m³です。佐賀市上下水道局は、上下水道事業を通じてどのようにSDGsに取り組んでいるのでしょうか?佐賀市上下水道局の花島勲さんに話を伺いました。

「佐賀市バイオマス産業都市構想」で環境と経済を発展させる

 佐賀市が取り組んでいる「バイオマス産業都市さが」とは、どのような活動ですか? 

花島さん:

「バイオマス産業都市さが」は、平成26年7月に策定された当市の都市構想です。バイオマスと呼ばれる動植物由来の有機資源(燃料や製品のもと)を活用して、環境と経済の両方を発展させようという取り組みです。

バイオマスには環境に対してどういったメリットがあるのでしょう?

花島さん:

有機資源を生成する過程で出るCO2と同量のCO2を、バイオマスの大元である植物が成長する際の光合成で吸収できるため、CO2による大気への影響が少ないとされています。

佐賀市では、もともとは廃棄予定だったものをエネルギーや資源として再利用し、「価値を生み出しながら循環するまち」の実現を目指しています。

バイオマスとは

バイオマスとは、生態学において生物資源(Bio)の量(mass)を表したものが語源です。
石油などの化石資源をのぞき、動植物に由来した有機性資源(燃料や製品の原材料)のうち再生可能な(資源として永続的に利用できる)ものをバイオマスと表現することがあります。
バイオマスは化石資源に比べ短期間で作ることができ、再生可能である上に、CO2の排出が少ない資源です。バイオマスは、廃棄物系バイオマス、未利用バイオマス、資源作物バイオマスの3つに分類されます。温室効果ガスの排出量と生成過程での吸収量を同じ量にすることが可能(カーボンニュートラル)で、環境にやさしい資源として注目されています。

きれいなだけでなく豊かな海へ

佐賀市では「循環」を目指しているのですね。

花島さん:

佐賀市上下水道局で扱う水も、山や川、海を巡るという意味で循環の一部ですよね。
現在は、民家や工場から出た汚水をどのように処理していますか?

汚水をそのまま流すと、川や海が汚染されてしまいますから、下水浄化センターで処理します。下水処理は、私たちがきれいな水を利用するためになくてはならないものです。 

佐賀市は、平成17年に1市3町1村を、平成19年には南部3町と市町村合併しました。合併する町には、まだ下水処理場がない地域があったんです。そこで合併後、一部の地域は下水道を旧佐賀市の下水浄化センターにつなぐことにしたんです。

下水浄化センターにつなぐ計画は順調に進んだんですか? 

花島さん:

残念ながら、この計画を説明すると、反対の声が上がりました。佐賀は海苔の養殖が盛んで、日本一の生産量を誇っています。きれいに処理をした後の下水であっても、海に流すことで、町の一大産業である海苔の養殖に影響があるのではないかという心配の声があがったんです。

有明の海苔は有名ですもんね。地場産業に影響が出ることを心配する気持ちもわかります。

花島さん:

そこで、下水処理の方法を工夫することにしたんです。それを季節別運転と言います。海苔の成長には栄養塩が必要なので、海苔の養殖時期である冬場に、処理水中に海苔の養殖に必要な栄養塩を増やして放流します。

この下水処理方法はうまくいったんですか?

花島さん:

実はこの方法にも「せっかく処理した水に、わざわざ栄養塩を増加させるのは下水処理場としてどうなのか」と異論もありました。

そこで、下水処理場の使命として、公共用水域の水質は守りつつ、水産資源にも配慮する運転方法を実施しました。

季節別運転による海苔養殖への効果はあったのでしょうか? 

花島さん:

ええ。季節別運転の効果を確かめるために、佐賀大学や佐賀県環境科学検査協会と共同研究しました。その結果、夏季の通常運転時期と比較すると、海苔の養殖時期に放流水の影響範囲において、栄養塩濃度の増加が確認されたんです。

下水浄化センターの季節別運転が、きれいなだけではなく豊かな海の実現に貢献できているとわかりました。

流れ出る下水にもしっかり配慮しながら、環境と地域産業に貢献できるのは素晴らしいです。

下水処理で出る汚泥が農業で大活躍

この他に、水道局で行っている取り組みはありますか?

花島さん:

下水汚泥を肥料化し、緑地還元して肥料にして農業に役立てています。
下水汚泥とは、下水処理の際に水処理施設の最初沈殿池と最終沈殿池から沈殿物として引き抜いた汚泥のことです。

下水汚泥を農業に利用するのは昔から行われてきたのですか。

花島さん:

以前の佐賀市では、下水処理で発生する汚泥の再利用方法として、焼却処理した後に建設資材として利用してきました。ですが、その建築資材を作る焼却炉の老朽化をきっかけに、新しく緑農地還元を進めることにしたんです。DBO(デザイン・ビルド・オペレーション方式)で事業を行いました。

DBOとは何ですか?

花島さん:

DBOとは、汚泥肥料化の手法(デザイン)の提案と、そのために必要な施設の建設(ビルド)、実際に肥料を作成する作業(オペレーション)の3点をセットで進めることです。

事業の推進が認められ、平成21年に施設が完成して肥料の製造を開始しました。現在では、下水処理で出るすべての汚泥を肥料にしています。

最初の1年はお試しとして、近隣の農家さんに無料で配布しました。農家さんの反応を聞き、効果を確かめた後、平成23年度から10㎏20円の価格で販売しています。

 肥料を使った農家の方の反応はいかがでしたか?

花島さん:

正直な話、販売開始当時は下水の汚泥からつくられた肥料ということで、抵抗感を持たれることを心配していました。下水から製造しているので、重金属の混入も懸念される可能性がありましたからね。

それについては、センターとしてどう対処したのですか?

花島さん:

当局では、肥料中の重金属を3か月ごとに測定し、結果をホームページで公表しています。安全性に十分配慮していることが伝わってほしい一心でした。

心配な気持ちもありましたが、肥料を使用した農家の方からは「作物がよく育つ」と大変好評で、とてもほっとしています。
平成23年の販売開始以降、製造したすべての肥料が完売しています。今では毎年約3,000人の農家や家庭菜園等の利用者が購入してくださっているんですよ。

下水汚泥肥料は、効果も安全性もバッチリなんですね。

花島さん:

ええ。実際に使用している農家さんからは好評です。佐賀市は、大規模な工場がなく、重金属の混入が少ないのもよかったと思います。

あとは「下水」という言葉のイメージアップですよね。
こちらについては、国土交通省が下水汚泥由来肥料の普及を推進しています。

「BISTRO下水道」と銘打って、下水由来肥料を使って育てた生産物を「じゅんかん育ち」と名付けてブランディングしています。このようなPR活動で下水汚泥由来肥料のイメージアップが図れるといいですね。

確かに、すぐにはいいイメージに直結しづらいのかもしれません。

花島さん:

そうですね。当局でも何かできないかと思い、下水浄化センターのイメージアップのためにセンターを改装しました。下水処理のシステムを多くの人に理解してもらえるよう一階の展示室をリニューアルしたんです。今はコロナ禍で中止していますが施設見学も行っています。

汚泥肥料が持続可能な食糧生産システムに役立つ

下水汚泥肥料を使うことで、他にメリットはありますか?

花島さん:

一般的に農業で使われる肥料は、ほとんどが化学肥料です。化学肥料は海外からの輸入に頼っています。しかし、下水汚泥肥料は国内かつ地元産で、低価格。農家の方から、汚泥肥料を使うようになって生産経費がグンと抑えられたと聞きました。

その結果、農家さんの収入につながり、後継者を育てる余裕ができたところもあるそうです。これは、SDGs目標である「持続可能な食糧生産システム」と、「廃棄物の削減、再利用」につながっていると思います。

脱炭素化へ新たなエネルギー源!下水汚泥処理による消化ガスで発電

さらに言えば、下水汚泥を処理する際に発生するガスで発電もしているんですよ。

汚泥から電気を作れるのですか?どのように発電するのでしょう。

花島さん:

汚泥を処理する際にタンクから発生する消化ガスは、メタン濃度が60%で可燃性なんです。このガスを燃やして発電機を動かします。

以前は発生したガスを汚泥焼却炉の燃料に利用していたのですが、汚泥を焼却せずに肥料にするようになったため不要になったんです。そこで、このガスを使って発電することにしました。
今は、佐賀市の下水浄化センターで使用する40%の電力を消化ガスでまかなっているんですよ。

発生するガスも有効活用しているんですね。

花島さん:

はい。さらに、ガスを燃やした際に発生する熱は、消化槽を加熱する熱源としても利用しています。電力と熱を利用するコージェネレーションシステムと呼ばれています。

まさに下水処理の過程で生まれる資源のすべてを、余すことなく有効活用しているんですね。 

花島さん:

そうなんです。このシステムの発電によるCO2削減の環境負荷価値は、グリーン電力証書として国内の他の企業でも購入・活用されているんですよ。
これはSDGsの目標である「再生可能エネルギーの拡大」と「気候変動の緩和」につながりますね。

佐賀市の電力自給率を底上げ!下水リノベーション計画

最後に、今後の展望について教えてください。

花島さん:

佐賀市下水浄化センターでは、下水道だけでなく、市内から集まる「し尿」と「浄化槽汚泥」、佐賀市内にある「味の素(株)九州事業所の汚泥」を地域バイオマスとして受け入れる予定です。

これらのバイオマスを資源として活用し、消化ガスから発生する電力量をアップさせる計画を立てています。

この計画で、どのくらい発電できるんですか?

花島さん:

この計画が実現すると、佐賀市の電力自給率を現在の約40%から58%へ引き上げられると考えています。この事業は国土交通省の「下水道リノベーション計画」に認定されており、令和5年度から開始する予定で準備を進めています。

下水処理がこのように様々な形で人々の生活に役立つと知り、大変驚きました。ありがとうございました。

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