【SDGs未来都市】岡山県真庭市|再生可能エネルギー・木質バイオマスとは?SDGsとの繋がりも

岡山県真庭市 森田さんインタビュー

森田 学

1980年岡山県真庭郡久世町(現在真庭市)生まれ。2003年3月岡山大学工学部卒業、同年4月岡山県真庭郡美甘村(現在真庭市)へ入庁。2005年3月31日真庭市合併により、同年4月1日より、真庭市林業振興課へ配属。その後、商工振興課、バイオマス政策課、林業・バイオマス産業課と、林業・木材・バイオマス産業に係わる事業推進に携わる。2016年4月より美甘振興局地域振興課で地域振興に携わり、2019年4月より内閣府へ出向し、2021年4月より現職。

Introduction

林業や木材産業が盛んな岡山県・真庭市。木材を利用したエネルギー開発に力を入れ、地域の活性化のために、様々な取り組みを行ってきました。今回の取材では、真庭市が誇る「木質バイオマス」によるエネルギー開発の実態やその利点を中心に、SDGsとの連携や今後の展望もお伺いします。

森林が8割を閉める土地柄を強みに変えるエネルギー開発

インタビュアー
インタビュアー

本日はよろしくお願いします。早速ですが、真庭市について教えてください。

森田さん
森田さん

真庭市は、岡山県北部に位置する人口約4万3000人の都市です。
面積は828㎢と岡崎県内で最も広く、その8割を山林が占めているため、林業や木材産業が盛んです。林業での間伐や、木材を加工する過程で出る端材などの副産物を利用した再生可能エネルギーの開発は以前より進めており、最近では再生可能エネルギー自給率100%の達成へ向け展開しているところなんですよ。

インタビュアー
インタビュアー

廃棄予定だった枝や木の破片を活用しているのですね。環境にも良さそうです。

森田さん
森田さん

はい。真庭市では、端材を燃料にしてエネルギーを得る「木質バイオマス発電」はもちろん、持続的に燃料の元となる木質資源を確保するための「産業の強化」にも取り組んでいます。

木質バイオマスとは

樹木を伐採したり木材に加工する際に出る枝や葉などの林地残材、木製品の製造工場などから発生する樹皮や木くずなどのほか、街路樹の剪定枝などのことです。

木質バイオマス発電とは

木質バイオマスを燃料として活用して電気エネルギーを得ることです。森林が成長する過程で二酸化炭素を吸収し酸素を排出するため、大気中の二酸化炭素濃度に影響を与えないというカーボンニュートラルな特性を有しています。このため、石油などの化石燃料の代わりに木材を利用することにより、二酸化炭素の排出の抑制が可能となり、地球温暖化防止に貢献できると考えられています。

自然に優しい「木質バイオマス」から23.1億円分の電気を発電

インタビュアー
インタビュアー

まずは、「木材バイオマス発電」について教えてください。

森田さん
森田さん

はい。先にもお伝えしたように、真庭市は約8割森林で覆われているため、森林の保全や木材の加工の過程で出る端材を使って「木材バイオマス発電」を行っています。
現在公共施設の80カ所以上がこのエネルギーを利用し、売り上げは23.1億円を超えているんです。

インタビュアー
インタビュアー

23.1億円分ものエネルギーを、廃棄または使われない予定の森林資源から作り出すことができたのですね。

森田さん
森田さん

そうですね。電気の販売で得た資金で、地元の木材関係事業者から木質資源を燃料として購入することで、地域経済に還元できています。また、使わなくなった木材を使用することでゴミの削減にも役立ちますし、化石燃料を使わない、カーボンニュートラルな燃料なので地球温暖化問題にも貢献できるんです。

さらに、まだ実証実験の段階ですが、木質バイオマスの他に「液肥化事業」というものも動いているんですよ。

インタビュアー
インタビュアー

液肥化事業では、森林資源以外のものを使っているのですか。

森田さん
森田さん

液肥化事業で活用しているのは、真庭市で出る可燃ゴミの3割~5割を占めている生ゴミです。
大量の生ゴミを発酵させて液肥とバイオガスに分け、液肥は農場に肥料として無料で配布、バイオガスからできる電気は再生可能エネルギーとして液肥化プラントで活用しています。

インタビュアー
インタビュアー

生ゴミからも、電気や新たな資源を作ろうとしているのですね。

森田さん
森田さん

その役割を担っているのが「バイオガス・バイオ液肥実証プラント」です。こういったプラントなど関連施設への視察の希望が増えてきたため、2006年からは「バイオマスツアー真庭」という環境問題への理解を深めるツアーも実施しています。

<生ごみ等資源化実証プラント>
森田さん
森田さん

以前はプラントを見てすぐ帰ってしまう方が多かったのですが、4割程度の方が真庭に宿泊してくださり、ツアーを通して真庭市の良さを体感してくださっています。

インタビュアー
インタビュアー

真庭市の魅力を肌で感じるいい機会になりますね。

建築資材をリサイクル!?里帰りプロジェクトとは

インタビュアー
インタビュアー

では次に、2つ目の柱である「木材産業の強化」についても教えていただけますか。

森田さん
森田さん

はい。真庭市では、木質バイオマスの原料となる端材を持続的に確保するために、主産業である林業や木材産業も強化しています。新しい木材の活用法として、CLT(Cross Lamineted Timber)という板材を貼り合わせたパネルの製造を編み出しました。

インタビュアー
インタビュアー

CLTとは、どんな特徴を持つ板なのでしょうか。

森田さん
森田さん

日本語では「直交集成板」と言いまして、ひき板の繊維方向が直角に交わるように接着したパネル材なんです。厚みのある大きな板なのでとても頑丈で、高層ビルや三階建て以上の建物への利用ができるんですよ。

インタビュアー
インタビュアー

このCLTというパネル材を使ってどんな取り組みをなさっているのですか。

森田さん
森田さん

2021年7月に運用を開始した「GREEN Nable HIRUZEN」という木材の里帰りプロジェクトで活用しています。

「GREEN Nable HIRUZEN」プロジェクトとは、ある場所で建築資材として活用されたCLT板を、解体後に原料の原産地である真庭で再利用するものです。最近だと、東京オリンピックの選手村の近くに建築された、建築家・隈研吾さん監修の建造物の例があげられます。

2019年の夏〜2020年の秋限定で運用された建物は、解体され真庭に戻り、新しい建造物に生まれ変わっているんですよ。

<GREENableHIRUZENN(風の葉)Kawasumi-Kobayashi Kenji Photograph Office>
インタビュアー
インタビュアー

文字通り、木材が真庭に里帰りしたんですね。

森田さん
森田さん

「GREEN Nable HIRUZEN」は持続可能な建築物として注目を集め、建物のある蒜山地域は観光および文化発信の拠点になりました。
真庭市の集客にも繋がっており、訪れる年齢層もグッと広がったのが嬉しいですね。

インタビュアー
インタビュアー

どんな方に来ていただけるようになったのでしょうか。

森田さん
森田さん

元々はファミリー層や学生が中心だったのですが、最近はミレニアル世代の方が増えたように感じます。コロナ禍で行きにくい海外旅行の代わりとして、文化や自然を楽しみに訪れてくださっています。
観光客が増えたことで、お客様のニーズに合わせた新しい飲食店や宿泊施設が建設され、地域の経済も活性化してきたと感じています。

人口減少という課題も、前向きに捉え変化に対応する

インタビュアー
インタビュアー

真庭市として、課題に感じていることはありますか。

森田さん
森田さん

人口減少は長年の課題ですね。真庭市では毎年600人ほど人口が減少している状況で、その原因は自然減だけでなく、若い世代が進学のために街を出る社会減も含まれています。

しかし、バイオマス事業などは「人口が減少しても活気のある街」を実現できる可能性を秘めています。実際、今回ご紹介したCLTを含む建築用の木材は全国的に販売しており、市の製造品出荷額は上がりました。人口減少に負けじと、生産性は上がっているのです。

インタビュアー
インタビュアー

人口が減少しても活気のある街、素敵な目標ですね。

森田さん
森田さん

若い人たちが離れてしまうのは寂しいですが、むしろ他の地域や地方で活躍することで、今の真庭市の魅力を伝えてくれるのではないかと思っています。
また、真庭市在住の子どもたちには「地域学」として市の取り組みについて知る機会を増やし、成長して真庭市を盛り上げる立場になってくれることを期待しています。

インタビュアー
インタビュアー

真庭市出身の方が魅力を伝えることで、最近流行りの地方移住の移住先として、検討してくれる方が増えるといいですね。

森田さん
森田さん

そうですね。最近の若い方々は環境思考が強く、地方に住みたいと考える人も増えているため、今後そういった都市部から移住を考える方々の人口が増加する可能性もあります。現在進行中のバイオマス事業などとは別に、若い方々が住む場所や雇用先を用意する必要もあるでしょう。

もっと地元の人たちを大切にできる自治体へ

インタビュアー
インタビュアー

最後に、今後の展望について教えてください。

森田さん
森田さん

今後は、事業を強化して地域の魅力を高めつつ、より人と人との繋がりを大切にしたいと思っています。
今までの真庭市の主な取り組みは、企業が先導的で、市民との関わりが少し薄くなっていました。これからは市民それぞれをSDGsへの取り組みに繋げることを目標としています。
現在行っている具体的な施策としては、毎年1回の「真庭SDGs円卓会議」が挙げられます。

インタビュアー
インタビュアー

円卓会議には市民の方も参加できるのですか。

森田さん
森田さん

はい。「円卓会議」では真庭市のSDGsへの取り組みを支える真庭SDGsパートナーが集まり、今年度であれば「アクションへ」というテーマで話し合いをしてもらっています。

ディスカッションを通して、新しい動きやパートナーシップが生まれることも期待しており、現在パートナーには約240団体・個人に登録していただいています。

<SDGs円卓会議の様子>
インタビュアー
インタビュアー

パートナーの方々の新たなアイディアが加わって、より良い活動に繋がりそうな取り組みですね!本日は貴重なお話をありがとうございました!

取材・大越 / 執筆 Miley

関連リンク

>>真庭市ホームページ:https://www.city.maniwa.lg.jp/
>>円卓会議:https://www.city.maniwa.lg.jp/soshiki/3/1049.html