障害者雇用とは|企業義務や法律、助成金、相談先まで解説

CSRやSDGsへの取り組みなどが企業の価値となる今、障がい者を雇用することは重要な意味を持っています。障害者雇用促進法においても、一定規模の民間企業は障がい者を雇用する義務があると定められているため、これを達成できるかできないかは大きな関心事です。

そこでこの記事では、これから障害者雇用を検討する際に必要な知識や手順、取組事例などを紹介します。相談できる関係機関などの支援も受けながら、障害者雇用の一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。

目次

障害者雇用とは

障害者雇用とは、民間企業や国、地方公共団体などが、本人の希望や能力、適性に応じた職に就けるように障がい者を雇用することです。日本では、障害者雇用を推進するための法律、「障害者雇用促進法(障害者の雇用の促進等に関する法律)」が定められ、企業に障がい者の雇用が義務付けられています。

世界に目を向けると、日本と同じく障害者雇用制度により障がい者の雇用義務のある国は、ドイツやフランス、オーストラリアです。一方、アメリカやイギリス、スウェーデンは制度自体が差別に当たるとして、一般の雇用制度の枠組みに組み入れられています。

国により取り組み方は異なりますが、障害者雇用の考え方の出発点は、障がい者への差別を禁止する「合理的配慮」です。※[i]

これは、障害のある人とない人が、均等に雇用される機会をつくることを言います。なお、日本において合理的配慮は、これまで民間事業者の努力義務とされてきましたが、2021年5月の改正障害者差別解消法により義務化されることになりました。この法律は、公布日の令和3年6月4日から起算して3年以内に施行される予定です。

日本では1976年に義務化

日本の障害者雇用の歴史を振り返ってみると、第二次世界大戦直後において障がい者の多数を占めていたのは、傷痍軍人や戦傷病者でした。障がい者の生活が困窮する中、政府は救援策として職業紹介や訓練を実施。しかし、実際には軽度の障がい者ばかりが対象とされ、うまく機能しませんでした。

大きな転機になったのは、1960年(昭和35年)に身体障害者雇用促進法が制定されたことです。この法律では、障がい者が適切な職業に雇用されることを目的としています。この時点では、企業が障がい者を雇用するのは努力義務とされていました。

しかし、障がい者の雇用が期待通りに進まなかったことから、1976年(昭和51年)に義務化されます。そして1987(昭和62)年の法律の改正時に、法律名が「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用推進法)」とあらためられ、今に至ります。※[ii]

現在の障害者雇用推進法とはどのような内容なのでしょうか。次の章で確認していきましょう。

障害者雇用促進法とは

障害者雇用促進法(障害者の雇用の促進等に関する法律)とは、障がい者の職業の安定を図ることを目的とした法律です。大まかに6つの内容により構成されています。

職業リハビリテーションの推進

障害者雇用推進法における職業リハビリテーションとは、障がい者に対して職業指導、職業訓練、職業紹介などの措置を講じ、その職業生活における自立を図ることを言います。公共職業安定所をはじめ、厚生労働省の設置する障害者職業センターや、都道府県知事の指定する障害者就業・生活支援センターなどは、これらを促進していくことが求められます。

障がい者に対する差別の禁止

民間企業は募集や採用時に、障がい者に対して障がい者でない者と均等な機会を与えることや、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用などの待遇に関して、不当に差別をしてはなりません。また、障がい者の障害の特性に配慮した、必要な施設の設備や、援助を行う者を配置しなければなりません。

障がい者の雇用義務などに基づいて雇用を促進

国と地方公共団体、民間企業などは、法定雇用率の達成の義務を負います。民間企業がこの率を上回ると、障害者雇用調整金が支給されます。一方、未達成の場合は、障害者雇用納付金を支払わなければなりません。その他、障害者手帳を持っていない者以外の精神障害者などに関する助成金の支給や、在宅で就業している障害者などに業務発注をした場合の特例調整金の支給などについて定められています。

紛争の解決

障害者である労働者との間に紛争が起きた場合、民間企業は自主的にその解決に努めなければなりません。また、都道府県労働局長は、どちらか一方、もしくは双方から援助を求められた場合、必要な助言、指導、勧告ができるとしています。ただし、民間企業は、障がい者である労働者が援助を求めたことを理由に、解雇や不利益な扱いをしてはなりません。

雑則

雑則には、厚生労働大臣は、障害者雇用の実施状況が優良な中小事業主に対して認定を行うことができるとあります。また、国と地方公共団体、民間企業は、障がい者の雇用の促進と継続を図る障害者雇用推進者や、職業生活に関する相談や指導を行う障害者職業生活相談員を選任しなければなりません。

罰則

罰則の章では、民間企業や団体などが規定に違反した場合の罰則について述べられています。重いものでは1年以下の懲役、もしくは百万円以下の罰金に処せられます。※[iii]

このように、障害者雇用促進法は障がい者の自立のほか、国や地方公共団体、民間企業が守るべき障害者雇用の義務について定められています。

障がい者の雇用義務とは

障害者雇用促進法において、民間企業が果たすべき義務はいくつかあります。それらの中心は、障害者雇用のルールとしてまとめられているので、内容を詳しく見ていきましょう。※[iv]

1.障害者雇用率

民間企業の障害者雇用率は2.3%と定められており、従業員が43.5人以上いれば、障がい者を1人以上雇用しなければなりません。

■現行の障害者雇用率 (令和3年3月1日から)

(引用元:厚生労働省「障害者雇用率制度の概要」)

加えて、障害の種類ごとに決められた割合を満たす必要があります。

■障害ごとの障害者雇用率

(引用元:厚生労働省「障害者雇用率制度の概要」)

雇用義務を履行しない場合、ハローワークより行政指導が行われます。

特例子会社制度

特例子会社制度とは、民間企業が子会社を設立して一定の要件を満たす場合は、その労働者を親会社に雇用されているものとして法定雇用率に算入できることを言います。

その他にも、企業グループ全体で実雇用率の通算ができる企業グループ算定特例や、事業協同組合とその組合員である中小企業の事業協同組合等算定特例という制度もあります。

【補足】障害者雇用率に算定される障害者の範囲

障害者雇用率に算定される障がい者とは、次のような範囲を指します。

  • 身体障害者(身体障害者手帳の所有者)
  • 知的障害者(療養手帳の所有者)
  • 精神障害者(精神障害者保健福祉手帳の所有者)

ただし、短時間労働者は原則0.5人としてカウントされます。

2.障害者雇用納付金

法定雇用率を達成していない企業の中で、常用労働者が100人を超える場合は、障害者雇用納付金を納めなければなりません。この納付金は、法定雇用率を達成している企業の調整金や報奨金、助成金に使われます。(詳細は後述の「障害者雇用納付金」「障害者雇用調整金」を参照してください。)

3.障害者の差別禁止と合理的配慮の提供

障がい者に対して、賃金や教育訓練・福利厚生その他の待遇に不当な差別的扱いをすることが禁止されています。また、募集や採用などにおいて、障害のある者とない者に均等な機会を与えなければならない合理的配慮が必要です。

4.障害者職業生活相談員の選任

障がい者を5人以上雇用する場合は、障害者職業生活相談員を選任し、障害のある従業員の職業生活の相談や指導をさせなければなりません。なお、この相談員は、資格認定講習を修了するなどした従業員から選ぶ必要があります。

5.障害者雇用に関する届出

従業員が43.5人以上の企業は、障がい者の雇用に関する状況(障害者雇用状況報告)を毎年ハローワークに報告する義務があります。また、障がい者を解雇する場合も、ハローワークへの届け出が必要です。

6.障害者の虐待防止

障がい者を雇用する場合、虐待を防止するための研修を従業員に対して実施するほか、本人やその家族からの苦情を処理する体制を整えるなどの措置を講じなければなりません。なお、研修とは、障がい者の人権や本人の特性に配慮した接し方や仕事の教え方などを言います。

以上、企業はこれらの障害者雇用に関する6つの義務を果たす必要があります。

障害者雇用納付金制度とは

障害者雇用納付金制度とは、「障害者雇用は企業が共同して果たすべき責任」という理念に基づいてつくられました。この制度により、障がい者の雇用の促進と職業の安定を図るのが目的です。※[v]内容を詳しく見ていきましょう。

障害者雇用納付金

障害者雇用納付金は、法定雇用率未達成の企業(常用労働者100人超)が支払うものを言い、次の金額が定められています。※[vi]

■法定雇用率未達成の企業における障害者雇用納付金額

(引用元:厚生労働省「障害者雇用納付金制度の概要」)

支払った納付金は、障がい者の雇用水準を引き上げる目的で、法定雇用率達成企業に対して調整金や報奨金、補助金として支給されています。

障害者雇用調整金

障害者雇用調整金は、法定雇用率を達成している企業のうち、常時雇用している労働者が100人を超える事業所に対して支給されます。

■法定雇用率を達成した企業に対する障害者雇用調整金額

(引用元:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者雇用納付金制度の概要」)

支払われる金額は、法定雇用率を超えて雇用している障害者数をもとに計算します。

在宅就業障害者特例調整金

在宅就業障害者特例調整金とは、障害者雇用納付金申告もしくは障害者雇用調整金申請をした企業のうち、前年度に在宅就業障害者、または在宅就業支援団体に対し仕事を発注し、業務の対価を支払った場合に支払われる調整金です。

■在宅就業障害者特例調整金の計算式

調整額2万1千円 × (当該年度に支払った在宅就業障害者への支払い総額 − 評価額35万円) = 在宅就業障害者特例調整金

法定雇用率未達成企業は、在宅就業障害者特例調整金の額に応じて、障害者雇用納付金が減額されます。

報奨金

報奨金は、各月の雇用障害者数の年度間合計数が一定数を超え、かつ常時雇用している労働者数100人以下の企業に対して支払われます。※[vii]

■報奨金額

(引用元:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者雇用納付金制度の概要」)

一定数とは、①各月の常時雇用している労働者数の4%の年度間合計数、②72人、のいずれか多い数を指します。支払われるのは、超過している数に対してのみです。

在宅就業者特例報奨金

在宅就業者特例報奨金は、前項の報奨金を申請した企業のうち、前年度に在宅で働く障がい者や在宅就業支援団体に仕事を発注し、対価を支払った場合に支払われる報奨金です。

■在宅就業者特例報奨金の計算式

報奨額1万7千円 × (当該年度に支払った在宅障害者への支払総額 – 評価額35万円) = 在宅就業者特例報奨金

通勤が困難でも就業が可能な障がい者の就業の機会を増やすのが目的です。

特例給付金

特例給付金は、1年を超えて雇用され(見込みを含む)、週所定労働時間10時間以上、20時間未満である労働者を雇用した企業に支払われる給付金です。※[viii]

■特例給付金額

(引用元:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「特例給付金のご案内」)

なお、所定労働時間が20時間以上の障がい者については、次のように数えます。

■週所定労働時間20時間以上の障害者のカウント方法

(引用元:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「特例給付金のご案内」)

特例給付金は、短い時間ならば働くことができる障がい者を雇用する企業を支援する目的でつくられた制度です。

障害者雇用に関する助成金について

障害者雇用納付金制度のほかに、障がい者を雇い入れたときに受けられる助成金があります。※[ix]

①トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)

就職が困難な障がい者を、ハローワークなどの紹介により、試用すると受けられる助成金です。障害の種類やトライアル雇用期間により金額が異なりますが、最長6カ月間、1人当たり月額4~8万円が助成されます。

②トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース)

直ちに週20時間以上勤務することが難しい精神障害者や発達障害者を、3~12か月の間、20時間以上勤務を目指して試用すると受けられる助成金です。支給対象者1人につき月額最大4万円(最長12か月間)を受けられます。

③特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)

障がい者などの就職困難者を、ハローワークなどの紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れた場合に受けられる助成金です。助成額は、障害の種類や企業規模により異なりますが、最大3年間、240万円が助成されます。

④特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)

発達障害者や難病患者を、ハローワークなどの紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れた場合に受けられる助成金です。労働者の労働時間や企業規模により異なりますが、最大2年間、120万円が助成されます。

障害者雇用による企業のメリット

障害者雇用による企業のメリットについて主な3つのポイントを挙げて見ていきましょう。

企業の社会的責任(CSR)

障害者雇用を積極的に行い、さらに法定雇用率を達成することは、希望する障害者に就労の場を提供するという社会的責任を果たすことに当たります。それにより、ステークホルダーと良好な関係を築くことができるほか、企業価値の向上も期待できます。

企業の社会的責任(CSR)とは

企業活動に関わる消費者や取引先、投資家など、すべてのステークホルダーに対して、法令順守や情報開示などの企業が果たすべき責任を言います。

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優秀な人材の獲得

障害があっても業務を問題なく行える人や、得意な分野やスキルを持つ人がいます。障がい者の特性や強みを把握して、それを生かすことができれば、企業にとって大事な戦力になるばかりでなく、人材不足の解消にもつながるでしょう。

ダイバーシティの推進

障害者雇用により、多様な見方や考え方を企業活動に取り入れることが可能です。それにより、ビジネス環境の変化に柔軟に対応できる、競争力の高い組織をつくることができます。

ダイバーシティとは

「多様性」の意味で、年齢、性別、人種、障害の有無など、さまざまな違いがある人が集まった状態のことです。ビジネスでは、これらの違いを積極的に活用するダイバーシティ経営が注目されています。

【関連記事】ダイバーシティ(多様性)とは?注目理由と日本・海外の取り組み事例、SDGsとの関係性

障害者雇用の日本の現状

日本において障害者雇用がどのくらい進んでいるのかを、

  • 雇用障害者数・実雇用率
  • 法定雇用率達成企業の割合

の2つの点から見ていきましょう。

雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新

民間企業に雇用されている障がい者の数と実雇用率は、平成14年よりほぼ上昇の一途をたどっており、令和3年には過去最高を更新しています。

(引用元:厚生労働省「令和3年 障害者雇用状況の集計結果」)

また、雇用されている障がい者の内訳を見てみると、前年と比較して身体障害者は0.8%、知的障害者は4.8%、精神障害者は11.4%と増加しています。特に精神障害者の伸び率が大きく、雇用を取り巻く環境が改善していることがうかがえます。

法定雇用率達成企業の割合は低下

雇用障害者数や実雇用率が過去最高を記録した一方で、法定雇用率を達成している企業の割合は低下しています。

(引用元:厚生労働省「令和3年 障害者雇用状況の集計結果」)

企業規模別の達成企業割合は、令和3年にいずれも減少。全体で見た達成企業の割合は47.0%で、前年と比べて1.6ポイント低下しています。

ただし、令和3年の実雇用率自体は全体で2.20%と、前年比0.05ポイント上昇した結果となりました。法定雇用率は、令和3年に2.2%から2.3%に引き上げられた背景があり、このことが達成企業の減少の原因にあると考えられます。

雇用障害者数は年々伸びていますが、法定雇用率も上がっているため、引き続き障害者雇用を推進していくことが必要です。

日本の障害者雇用の課題

障害者雇用を進めていく中で、課題もいくつかあります。主な3つの問題について見ていきましょう。

障害者雇用のノウハウがない

障害者雇用が初めての場合、

  • 障がい者の受け入れ環境の整備
  • 職場内での障害特性の理解

など、どのように進めたら良いのか戸惑う企業が多いのも事実です。不十分な体制のまま受け入れた結果、障がい者が職場に定着しにくいなどの問題を抱えるケースもあります。

障害者の特性に合う業務の割り当てが難しい

障がい者が自社で働いた場合、どのような業務を担当してもらうのかをイメージできないという企業の声も多いようです。障がい者のために新たに仕事をつくる方法もありますが、今ある業務を割り当てる工夫も必要になるでしょう。

障害者雇用への社内理解が進まない

障がい者を受け入れる現場の理解が進まないという場合もあります。人事担当者や経営者だけの意向だけでは、障害者雇用の成功は見込めません。障害者雇用について良く知ってもらう努力も必要です。

障害者雇用には以上のような課題がありますが、①知識や雇用事例を知って理解する、②障がい者一人一人を知る、③支援機関を利用することで、解消することも可能です。③については後述しているので、参考にしてください。

企業が障がい者を雇用するための手順

実際に障がい者を雇用する際には、どのような手順を踏めば良いのでしょうか。厚生労働省が発行している「障害者雇用のご案内~共に働くを当たり前に~」から、初めて障害者雇用に取り組む際の流れの一例を紹介します。

パンフレットを直接確認する場合はこちらを参照してください。「障害者雇用のご案内~共に働くを当たり前に~」p6(PDF)

障害者雇用の流れ(例)

手順のポイント

障害者雇用を検討する段階から実際に職場に定着するまでの流れの中で、ハローワークや地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどの支援機関と連携することが大切です。

障害者雇用をこれから始める場合は、ハローワークで相談を受け付けているほか、地域障害者職業センターでは障害特性に応じた職務の相談もできます。積極的に利用して、不安や悩みを解消するのに役立てると良いでしょう。

企業が障がい者を雇用する際の注意点

前章の障がい者の雇用手順に沿って障害者雇用を進める上で、特に課題になりやすい2つのポイントを確認していきます。

従事可能な職務を調査する

先程の画像内にある手順②「配置部署や従事する職務を選定する」では、障がい者の特性に合う業務を探すのに苦労することもあるかもしれません。まずは、各部署に障がい者が従事できる仕事を調査するよう要請してみます。作業内容・手順、難易度、頻度、時間帯・必要時間などをまとめたアンケートを取るのも一つの方法です。

障がい者のために新たに仕事をつくり出す場合は、次のような作業例があります。

■作業例

  • 事務部門…

    社内郵便の仕分け、コピー機やプリンターに用紙を補充する、タイムカード・給料明細を全店に発送する、会議用のテーブルをセッティングする
  • 現業部門…

    ダンボールの組み立て・解体、容器や食器の洗浄、製品にラベルを貼る、POP(店舗内手作り広告)の作成、社員用休憩室の清掃

また、成功事例を調べたり、実際に障害者雇用を行っている企業に見学に行ったりするなども有効です。先入観により、障がい者は自社の業務は不向きだと決めてしまう前に、多方面から検討してみると良いでしょう。

障がい者の理解が大切

手順の③「受け入れ体制を整え、労働条件などを決める」においては、バリアフリーなどのハード面を整備することはもちろん必要です。しかし、それ以上に重要なのは、物理的に整えることのできない社内の障がい者への理解などのソフト面でしょう。

まずは、経営者が障害者雇用を推進する必要性だけでなく、配属先へのサポートをしっかり行うことを伝えることが大事です。さらに、社内の障がい者に対する理解を深めるため、支援機関などが制作しているDVDやマニュアル好事例集などを活用するのも良いでしょう。ハード面は、採用を決めた後に、本人と相談しながら整えていっても遅くはありません。※[x]

障害者雇用に関する相談先

障がい者を雇用している、またはこれから始める企業の悩みや疑問を相談できる機関は主に次の3つです。※[xi]さまざまな支援も行っているので、うまく活用していきましょう。

ハローワーク

(引用元:ハローワークインターネットサービス「障害者の方の雇用に向けて」)

ハローワークでは、障がい者の求人の申し込みを受け付けているほか、これから障害者雇用を始めようとしている企業に雇用管理上の配慮などについての助言をしています。また、各種助成金の案内も行っているので、障害者雇用の検討を始めたらサービスの内容を確認しておくと良いでしょう。

☆ハローワークのサイトはこちら

地域障害者職業センター

(引用元:東京障害者職業センター「事業主の方へのサービス」高齢・障害・求職者雇用支援機構)

地域障害者職業センターは、障がい者の雇い入れ計画や職場配置、職務設計、職場での配慮や業務の指導方法についての助言などを行っています。また、障がい者が職場に適応できるように援助する人(職場適応援助者)を派遣しています。

☆各地域の地域障害者職業センター一覧はこちら(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「地域障害者職業センター」)

障害者就業・生活支援センター

(引用元:「障害のある人に安定した 就労生活を」障害者就業・生活支援センターのご案内)

障害者就業・生活支援センターは、雇用管理の受付や企業訪問の支援、職場適応支援を行っています。

☆障害者就業・生活支援センターの一覧はこちら(厚生労働省「障害者就業・生活支援センターについて」)

日本企業の障害者雇用取組事例

ここまで障害者雇用について詳しく見てきました。最後に、日本で行われている障害者雇用の取り組み事例を2社紹介します。

株式会社ウチダシステムズ

株式会社ウチダシステムズは、東京都中央区にオフィスのある従業員数218人の中小企業です。オフィスの空間デザイン・設計や、家具販売、内装工事などを手掛けています。

障害のある社員数は、身体障害者と知的障害者を合わせて3名。(令和2年6月1日現在)身体障害者は営業、知的障害者はコピー用紙の補充や郵便の封函と投函、名刺裏面印刷などを行っています。

社内環境の整備として、自社で作成したピクトグラムを収納箱に貼って、中身が一目で分かるようにしています。この取り組みは、障がい者を含めた社員全員の効率アップにつながっているそうです。

障害者雇用を始めようとしたのは、2013年の会社設立時。最初は何をどのようにすればよいか分からなかったと言います。そこで、得意先の障害者福祉施設を見学したり、全社員を対象に継続的に研修を行ったりしてきました。障害の有無に関係なく、社員同士がお互いを理解し合うのは自然なことと同社は考えています。

株式会社シーエックスカーゴ 桶川流通センター

(引用元:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「令和元年度 職場改善好事例集」)

株式会社シーエックスカーゴは、従業員数4,500人の商品調達や配送を行っている会社です。埼玉県桶川市の桶川流通センターでは、身体障害や知的障害のある社員が、緩衝材を使った梱包や袋詰めなどの作業をしています。

当初は法定雇用率を上回ることを目標に障害者雇用に取り組んできたそうですが、障害のある仲間と一緒に働くことで、職場全体に配慮や気遣い、助け合いの気持ちが生まれたと言います。

障がい者の体調に合わせた柔軟な勤務時間や作業内容を設定しているほか、職場定着を図るために関係機関の支援員の派遣を活用。現在の障害者の実雇用率は5.64%と、法定雇用率の2.3%を大きく超えています。※[xii]

まとめ

従業員数が43.5人以上の民間企業である場合、障害者1人を雇用する義務があります。とはいえ、障がい者を雇用するのが初めての場合、疑問や不安もあるでしょう。多くの企業は、障がい者の職務の選定や職場の理解の推進など、雇用の受け入れ体制をつくるノウハウがないのが現状です。

その解決策として、関係機関へ相談するほか、採用できそうな事例を参考にするなども有効です。先入観にとらわれず、「自社が障がい者を雇用したら、どのようなメリットや課題があるのか」を具体的にイメージして、多様な面から障害者雇用を検討してみてはいかがでしょうか。

<参考>
労務行政研究所編「障害者雇用の実務」労務行政
二見武志著「【改訂版】障がい者雇用の教科書」太陽出版
布施直春著「これで安心!障害者雇用の新しい進め方」労働調査会
※[i] 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 障害者職業総合センター「諸外国における障害者雇用施策の現状と課題 (2008年4月)」、布施直春著「これで安心!障害者雇用の新しい進め方」労働調査会
※[ii] 山田耕造著「わが国における障害者雇用促進法の歴史」香川大学法学会
※[iii]障害者の雇用の促進等に関する法律」(e-Gov法令検索)、厚生労働省「障害者雇用促進法の概要(昭和35年法律第123号)
※[iv] 厚生労働省「事業主の方へ
※[v] 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者雇用納付金制度の概要
※[vi] 厚生労働省「障害者雇用納付金制度の概要
※[vii] 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者雇用納付金制度の概要
※[viii] 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「特例給付金のご案内
※[ix] 厚生労働省 都道府県労働局・ハローワーク「障害者雇用のご案内~共に働くを当たり前に~
※[x] 労務行政研究所編「障害者雇用の実務」労務行政
※[xi] 厚生労働省 都道府県労働局・ハローワーク「障害者雇用のご案内~共に働くを当たり前に~
※[xii] 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「令和元年度 職場改善好事例集