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東京都東村山市|オープンラボを活用し、市民・事業者全体で楽しく進めるまちづくり

東京都 東村山市 企画政策課 高木さんインタビュー

高木 文彬
東京都東村山市経営政策部企画政策課主査。1987年11月4日、東京都台東区生まれ青山学院大学卒業後、2012年に東村山市役所に入庁。1年目から6年目まで保険年金課で国民健康保険の給付事業、制度改正に関する業務を担当。2018年に東京都総務局行政部市町村課に派遣され、都内市町村の行政運営に関する業務を経験。派遣終了後、2019年から行政経営課で第5次総合計画の策定に携わり、2021年に企画政策課に異動、総合計画や創生総合戦略、SDGsの推進などを担当。持続可能性をテーマとした将来都市像「みどり にぎわい いろどり豊かに 笑顔つながる 東村山」の実現に向けて、SDGsをきっかけに、楽しくまちづくりに参加できる仕組みづくりに取り組んでいる。写真で手に持っているのは東村山市公式キャラクター「ひがっしー」です。

introduction

東村山市では、まちづくりの方向性を定める市の最上位計画SDGsの要素を織り込み、「東村山市第5次総合計画~わたしたちのSDGs~」と名付けました。市民が自由に集えるオープンラボなどを介して、東村山市全体で持続可能なまちづくりを推進しています。今回、東村山市企画政策課の高木さんに、どのような取り組みを行っているのか、お話を伺いました。 

SDGsを通じ、まちに関わる全ての人が一体となったまちづくりをめざして

ーまず、SDGsを市の政策に取り入れるようになった背景について教えてください。

高木さん:

2019年に第5次総合計画※を策定している際に、今後10年間のまちづくりの方向性について議論を行いました。その中で、全国的な人口減少・少子高齢化などの社会構造の転換期である今、誰一人取り残さない社会を実現するSDGsや持続可能性は東村山市にとって重要なテーマだと考えました。

総合計画

地方自治体が総合的かつ計画的な行政運営を行うために、目指す将来都市像を定めたり、そのためにどのような施策を進めていくのか、様々な分野の事務事業について記載しているものです。

参考:東村山市

ー総合計画のサブタイトルにも「SDGs」のワードを盛りこんでいますね。

高木さん:

はい。この計画は、市民、事業者、市民団体の幅広い世代の方々から声を吸い上げながら策定しました。市民や行政、まちに関わる全ての人にとっての「東村山市版SDGs」との思いを込めて、サブタイトルに「わたしたちのSDGs」を掲げました。

ー2021年の計画策定後、まずどのようなことから取り組んだのでしょうか?

高木さん:

もともと東村山市では、第5次総合計画策定以前から公民連携への意識が高く、民間事業者からの提案制度がありました。第5次総合計画では、この土台を活かしながら、より多くの市民の皆さんと共にSDGsを進めていきたいという思いがあり、「わたしたちのSDGsオープンラボ (以下、「オープンラボ」)」を立ち上げました。

ー具体的にはどのようなものでしょう?

高木さん:

オープンラボとは、SDGsをキーワードとして、持続可能なより良い東村山の実現のために、行政、市民、事業者、団体等の市に関わる全ての人が自由に交流・連携していくための仕組みです。事例の共有や意見交換を、Zoomや対面で行っています。

ーオープンラボを立ち上げて、まちに関わる人の横のつながりを深める場を設定されたのですね。

高木さん:

はい。オープンラボではSDGsを共通のゴールとして、市民、事業者、NPO、金融機関、教育機関など様々な関係者と繋がり、協働・連携したいと考えています。
SDGsというと、地球規模の非常に大きな課題解決に取り組むものとして日常のアクションとして捉えにくいところもありますが、わたしたちにできることのひとつひとつの積み重ねがそれらの課題解決に繋がっていると考えています。

SDGsの理解促進、取り組み認知拡大にオープンラボを活用

ーオープンラボではどのような取り組みをされているのでしょうか?

高木さん:

初回のオープンラボでは、まずはSDGsを知るところから始めたいと思い、青年会議所と連携してSDGsに関する勉強会を開催しました。東村山市で飲食業を営んでいる和蔵さんなどの取り組みが事例紹介としてありました。
例えば和蔵さんでは、コロナの影響でテイクアウト需要が高まっている中、鍋を持参いただいたお客様にはその鍋にテイクアウトの品物をお入れして、容器代として100円引きをする、といった顧客にも環境にも配慮した取り組みを行っています。

ーお客様にもメリットがあることで利用しやすくなる取り組みですね。他にも取り組んでいることはありますか?

高木さん:

「まずは、すでにSDGsに取り組んでいる人を応援すべきでは?」という提案があり、市民の方にもSDGsに取り組む事業者が見えるような認定制度を作ろうという意見が出ました。そういった意見を反映し、「東村山市わたしたちのパートナー認定制度」を立ち上げました。

ーオープンラボでの意見が、認定制度の立ち上げにつながったのですね。

高木さん:

はい。初回のオープンラボでの意見を施策に反映し、「東村山市わたしたちのパートナー認定制度」を2021年9月より開始しました。
この制度は、市内の個人、企業、法人、団体、個人事業主、教育機関など市に関わる全てのステークホルダーが、SDGsの達成に向けた取り組みをしている、あるいはこれから予定している場合に申請いただき、SDGsを市とともに取り組むパートナーになってもらうものです。 

ーパートナーになるとどのようなメリットがあるのでしょうか?

高木さん:

パートナーとして認定させていただいた方には、 パートナー認定証と、デジタルロゴを提供しています。また、その取り組みを市のホームページに掲載したり、市の公式SNSで広報したりしています。

デジタルロゴ(サンプル)

高木さん:

デジタルロゴは名刺に印刷するなど自由に活用いただけています。認定のハードルは下げて設定しているので、幅広く申請してもらえるような工夫もしています。2022年4月時点で45の事業者や団体、個人を認定しており、着実に増えてきているので市としても嬉しいですね。

ーどのような企業が認定されているのですか?

高木さん:

認定制度を始めた当初は教育機関からの関心が高く、現在では東村山市の市立小中学校が全てパートナーになっています。そのほか食品、エネルギー関係の事業者が認定されていて、最近では、金融機関と提携して、パートナー制度の周知を強化したおかげで、徐々に他の事業者にも興味を持っていただいています。

ー民間の事業者にもどんどん広がっているのですね。

高木さん:

例えば、最近認定した「エコランド」という企業では、一般家庭から回収した使わなくなった品物を国内外で販売したり寄付プロジェクトを通して「リユース」を促進しています。

ー今後このパートナー認定制度はどのように展開されていくのでしょうか。

高木さん:

まだアイディア段階なのですが、すでにパートナーになっていただいている東村山市の小中学校と連携して、学校で使わなくなった文具やおもちゃを集めて、海外の小中学校に寄付を行いたいなと。これにより、通学している子どもたちがSDGsを通じて、世界に目を向け、視野を広げる機会を作れないかな?と構想しています。

ーSDGsを切り口に、いろいろな関係者が関わって新しいことにチャレンジできそうですね。

高木さん:

 はい。直近のオープンラボでは、新たな取り組みとしてカードゲーム形式のワークショップを開催しました。SDGsについて理解を深めるだけでなく、多様なステークホルダーの横のつながりができ、新たなコラボレーションを生む機会になっています。

市民に楽しくまちづくりに関わってもらうために

ー半年間オープンラボ活動を推進されてきた効果について教えてください。

高木さん:

まずオープンラボを設置したことで、持続可能なまちづくりに関わってくださる方がこれまでよりも広がったと実感しています。また、情報共有の場としての機能だけではなく、オープンラボを通じて知り合った市民と団体同士でコラボレーションをするなど、市を介さないような取り組み事例も耳にしており、自律的な新しい創造の場が生まれていると感じています。

ー早速自発的な取り組みにつながっているとは、すばらしいですね。

高木さん:

そうなんです。また、パートナー制度を設立したことで、認定された企業の意識も変わってきたと聞いています。例えばふるさと納税制度の返礼品として、SDGsに絡めて新しい商品を開発している事業者もでてきています。パートナー認定をきっかけに企業の業績アップにつながるのが理想です。

ー今後の展望について教えてください。

高木さん:

今後も、オープンラボを活用しながら、経済・社会・環境の三側面で相乗効果を生み出すような取り組みについて、市民や事業者の皆さんと一緒に考え、アイディアを具現化していきたいと考えています。 実際に動いていく際には資金が必要になると思いますので、市で予算を組んだり、市内の事業者、金融機関と連携して、社会に価値を提供していければと思います。

ー市で仕組み面や資金面をしっかりサポートしてくれることで、事業者や市民の方々がどんどん主体的にアイディアを出し、形にする良い循環ができそうですね。

高木さん:

東村山には、「~たのしむらやま~東村山をたのしむ人が増えれば このまちはもっとたのしくなる」というブランドメッセージがありますが、オープンラボなどを活用して、多くの市民の方がアイディアを持ち寄りながら、楽しくまちづくりに関わってくださる方が増えたらと思います。

ーありがとうございました。

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