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北海道大学理事・副学長 横田さん|広大なフィールドを活かしたSDGs×北海道大学の取り組み

北海道大学理事・副学長(国際、SDGs担当)横田さん インタビュー

横田 篤

1979 年北海道大学農学部農芸化学科卒業。
1984 年同大学大学院農学研究科博士課程修了。5年間の民間企業勤務の後、1989 年北海道大学農学部助手に採用、1992 年同助教授。
1996 年〜1997 年オランダ王国フローニンゲン大学研究員。
2000 年北海道大学大学院農学研究科教授。
2015 年〜2019年同大学農学研究院長・農学院長・農学部長。
2020 年より現職。  

introduction

大学で行われるSDGsの取り組みにフォーカスしインタビューする本企画。今回は、SDG大学連携プラットフォーム(SDG-UP)に参加する北海道大学理事・副学長 横田篤さんへインタビューさせていただきました。大学インパクトランキングで上位にランクインしている北海道大学では、どういった取り組みが世界的に評価されているのでしょうか?インタビューを通して見えてきたのは、北海道という広大な土地を活用し、「実学」に重きを置いたオリジナリティ溢れるSDGsへの取り組みでした。

「大学インパクトランキング」で2年連続国内1位の好成績を収める

–本日はよろしくお願いします。

北海道大学は、SDGsへの取り組みを行う大学の社会貢献度を評価したTimes Higher Educationの「大学インパクトランキング」で、2020年から2年連続で国内1位に輝いています。どのような取り組みを行っているのでしょうか?

横田さん:

大学が元々持つ強みや得意分野を活かしたSDGsに取り組んでいます。

2021年SDGs目標別ランキングのでは、SDGs目標2「飢餓をゼロに」で15位、SDGs目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」で47位、SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」で82位、SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」で94位と、4つの目標でトップ100にランクインしています。

まさにこの4つが、北海道大学が行うSDGsへの取り組みの柱となっております。

北海道大学のSDGsの特徴

–具体的な取り組みを教えてください。

横田さん:

3つの特徴について、関連するSDGsの目標とともに説明させていただきたいと思います。

1つ目は、広大な農場を活かした食料生産技術開発に力を入れている点です。

この写真は無人トラクタの協調運転をしている様子です。その他にも、農場を使った様々な技術開発を行っています。こういった取り組みは食料の安定確保に繋がるため、SDGs目標2の「飢餓をゼロに」へ貢献していると言えるでしょう。

2つ目は、本学が所有する研究林を活用した研究です。生物多様性や環境保全の研究、温室効果ガスの観測など、カーボンニュートラルの達成に向けて様々な取り組みを行っています。これはSDGs目標15の「陸の豊かさも守ろう」に関連した取り組みです。

3つ目は、大学では珍しい非常にハイスペックな練習船「おしょろ丸」を保有し、水産学の研究はもちろん海洋環境の研究も同時に行っている点です。これは、SDGs目標14の「海の豊かさを守ろう」への貢献を意識して取り組んでいます。

研究林や農場といった大きな設備や練習船があることで、極域までをもカバーしたフィールドサイエンスが行えることが一番の特徴であると考えています。

SDGsと北海道大学の歴史

–では、北海道大学様がSDGsに力を入れることになったきっかけを教えてください。

横田さん:

実は、北海道大学が設立された経緯や発展の歴史に関連しています。本学は、寒冷地での農業技術の開発や農業従事者の人材育成を目的とし、1876年に札幌農学校として設立されました。

最初の校長(教頭)は、皆さんもご存知のクラーク先生ですが、その後を受け継ぎ約40年に渡って、札幌農学校から本学の前身である北海道帝国大学の学長を勤めたのが、クラーク先生から直接教えを受けた本学第一期生の佐藤昌介先生でした。

佐藤先生は、ジョンズホプキンス大学に留学し米国の土地利用を研究、博士号を取って帰国された方です。

佐藤先生は、米国の州立大学が連邦政府から付与された広大な土地を財産として学校運営をしている点に着目し、北海道庁や政府に対して農場や研究林の必要性を説いた結果、広大な資産を付与されることとなりました。これは日本の大学として初めてのことです。

–その広大な農場や研究林を活かして、様々なSDGsへの取り組みが行われているのですね。

横田さん:

はい。SDGsという言葉が聞かれるようになった以前から、広大なフィールドを活用した取り組みを行ってまいりました。北海道の道北にある研究林は、約7万ヘクタール、国土の0.2%を占め、世界最大規模です。佐藤先生が教育研究の環境を整えてくださった功績が、大学インパクトランキングでの評価に繋がっていると言っても過言ではないでしょう。

北海道大学が目指す「サステイナブルキャンパス」とは

–北海道大学では「サステイナブルキャンパス」の実現にも力を入れられているようですね。これは一体どういった取り組みなのでしょうか?

横田さん:

サステイナブルキャンパスとは、簡単に言うと「教育・研究・社会連携・キャンパス整備を通して、持続可能な社会の構築に貢献する大学」のことです。

単に「環境負荷の少ないキャンパス」というだけでなく、大学全体の方針として、社会的課題に根差した教育・研究を展開したり、周辺地域と調和したキャンパス整備を実施することで、社会全体の幸福を多面的に支えることを目指しています。

1996年に、キャンパスの秩序ある整備を行うための骨子となる「キャンパス・マスタープラン」を策定しました。その後も2016年に「サステイナブルキャンパス構築のためのアクションプラン2016」を、2018年には「キャンパスマスタープラン2018」を策定しました。

こういった取り組みの積み重ねが、統一的な美しいキャンパスを実現するに至っているのではないかと感じています。

「札幌サステイナビリティ宣言」で述べられた大学の役割

–SDGsへの取り組みについて、大学としてどのようなことが求められているとお考えですか?

横田さん:

2008年に世界初となるG8大学サミットが札幌で開催されました。

そこでは、G8諸国の27大学およびG8メンバー国以外の主要国の7大学、また国連大学が集い、サステイナビリティの実現のために大学は何をすべきか、大学の責任について議論しました。

この会議で採択された「札幌サステイナビリティ宣言」に、大学が果たす役割が集約されているのではないかと感じています。

–具体的にどういったことが述べられているのですか?

横田さん:

大きく分けて、3つの観点があります。

1つ目は、持続可能な社会を実現するために、研究を通して解決策を提示していくということ。

2つ目は、研究を通して得られた知識を世間に広めることで、知のネットワークを構築していくこと。

3つ目が、持続可能な社会を実現するために、キャンパスを実証実験の場として活用していくということです。

北海道大学は、研究を通して持続可能な社会の実現に向けた道筋を示すという点では、かなり特徴的かつ多面的な研究ができていると思います。今後は、ゼロカーボンキャンパスを実現するための実証実験にも積極的に取り組んでいく予定です。

–北海道大学さんは、やはり広大なフィールドを使った研究が特徴的だなと感じています。

横田さん:

そうですね。本学はフィールドサイエンスを活かした「実学」を強みとしていますので、そこでの研究成果を外部に発信していくことが一つの大きな役割になるのではないかと考えています。

ステークホルダーと連携した取り組みの広がり

–SDGsへの取り組みを通してどのような成果を感じていますか?

横田さん:

1つは、先ほどご説明した大学インパクトランキングにて高い評価をいただけたことです。今後も「SDGsに貢献する大学」を目指して、様々な取り組みを進めていきたいと改めて感じております。

もう1つは、大学だけではなく国連や日本政府、自治体、北海道や札幌市などの地方自治体、産業界あるいは教育研究機関などの様々なステークホルダーと連携した取り組みが増えてきたことです。

様々な活動を通して、本学がこれまで蓄積してきた事柄を外部にも広げていきたいですね。

また中高生の方向けに、SDGs特設サイトも設けています。SDGsに関する本学の取り組みや、授業科目などを具体的に紹介していますので、是非目を通してもらいたいと思います。

北海道大学×SDGsの特設サイト
外部のステークホルダーと連携した様々な活動やプロジェクトが紹介されている

持続可能な未来をともに実現するために

–最後に、今後の展望を教えてください。

横田さん:

現在大学として向こう6年の中期計画をまとめているところなのですが、取り組みの全ての出口をサステイナビリティやSDGsに関連したものにしたいと考えております。

また、2023年頃を目処にSDGsに関する講義のラインナップを充実させる予定です。今まで以上にSDGs、サステイナビリティを強調したカリキュラムが提供できる環境を整えて参ります。

常に「社会の中にある大学」という視点を忘れることなく、外部のステークホルダーとのエンゲージメントを高め、大学の知を外に広げる取り組みを意識的に行っていきたいと思います。

–本日はありがとうございました。

インタビュー動画

関連リンク

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