乳児死亡率とは?日本と世界の違いとSDGsの関係性

530万人。

これは2018年の1年間に世界で命を落とした子どもの数で、その半数が1ヶ月以内の乳児です。

この問題を解決するために大切なワードが”乳児死亡率”です。これはどこの国でどのくらい子どもが亡くなっているかを表す数値ですが、日本に住んでいる私たちにとっては、あまり身近な言葉ではないかもしれません。

そこで今回は乳児死亡率とは何なのか、新生児・5歳未満児死亡率との違い、SDGsとの関係も踏まえて解説します。

乳児死亡率とは

乳児死亡率とは「生まれてから満1歳になる日までに死亡する確率」です。以下の計算式で導き出され、出生数1,000人あたりの死亡数で表記されます。

       (c)年間乳児死亡数×1,000

(a)乳児死亡率=――――――――――――

        (b)年間出生数

厚生労働省がまとめている人口動態総覧を参考に、日本を例にして計算してみましょう。

  • (b)に入るのが、2018年の年間出生数918,400人
  • (c)に入るのが年間乳児死亡数1,748人。

つまり、(a)乳児死亡率は1,000人あたり1.9人となります。

乳児死亡率は各国ごとに数値がまとめられており、その国の衛生状況や医療情勢などを把握するのに役立ちます。

乳児死亡率と混同しやすい死亡率に「新生児死亡率」「5歳未満児死亡率」があります。この2つは生まれてからの期間に違いがあるため、次で確認しましょう。

新生児死亡率との違い

新生児死亡率とは「生まれてから生後28日以内に死亡する確率」のこと。

つまり、生まれたての赤ちゃんの健康状態に焦点を当てています。乳児死亡率と同じく、表記は出生数1,000人あたりの死亡数を指します。

5歳未満児死亡率との違い

5歳未満児死亡率とは「生まれてから5歳未満に死亡する確率」です。

上記2つの死亡率と同じように、1,000人あたりの死亡数を表します。

この2つの指標はどちらも貧困、衛生問題について考える際には大切なものなので、覚えておくと良いかもしれません。

【世界の現状】乳児死亡率が高い国をデータから

乳児死亡率の定義や、新生児・5歳未満児死亡率との違いがわかったところで、次は世界の現状をデータから見ていきます。

とりわけ乳児死亡率が高い国

日本ユニセフ協会によると、乳児死亡率が高いのはサハラ以南のアフリカ、西部・中部アフリカ地域です。

特に、中央アフリカ共和国・シエラレオネ・ナイジェリアなどといった国の乳児死亡率が高くなっています。ヨーロッパやアジアの国と比較しながら確認してみましょう。

まずは、2018年の乳児死亡率が高い国を5つ抜粋しました。

1位は中央アフリカ共和国で、乳児死亡率は1,000人あたり84人。1990年の乳児死亡率と比べてみると低下している傾向にありますが、いまだに多くの乳児が犠牲になっています。

1990年の乳児死亡率(出生数1,000人あたりの死亡数)2018年の乳児死亡率(出生数1,000人あたりの死亡数)
中央アフリカ共和国11784
シエラレオネ15678
ソマリア10877
ナイジェリア12576
チャド11271

上記で挙げた5つすべてがサハラ以南のアフリカ地域の国です。下記の地図を見ても、乳児死亡率が高い国が密接していることがわかります。

では、ヨーロッパやアジア地域の乳児死亡率はどのようになっているのでしょうか。こちらもユニセフのデータをもとに表にまとめました。

ヨーロッパの乳児死亡率

ここでは5つの国をピックアップしました。なかでもフィンランドは、1,000人あたり1人と死亡率を抑えられています。その他の国々も全体的に死亡率が低いことがわかります。

1990年の乳児死亡率(出生数1,000人あたりの死亡数)2018年の乳児死亡率(出生数1,000人あたりの死亡数)
フィンランド
フランス
オランダ
ベルギー
チェコ10
日本ユニセフ協会をもとに筆者作成

次にアジアの国も見てみましょう。

アジアの乳児死亡率

アジアは地域によって数値が大きく異なるため、ここでは東アジアと南アジアにわけて乳児死亡率を見ていきましょう。まずは東アジアの乳児死亡率をご覧ください。

1990年と2018年の乳児死亡率を比べると減少傾向にあります。中国とモンゴルに関しては1990年からかなり減少しているのがわかりますね。

1990年の乳児死亡率(出生数1,000人あたりの死亡数)2018年の乳児死亡率(出生数1,000人あたりの死亡数)
日本
韓国13
中国42
モンゴル7714
日本ユニセフ協会をもとに筆者作成

次に南アジアのデータをご覧ください。南アジアはサハラ以南のアフリカ地域と同じく貧困が多い地域となっています。そのため、まだまだ乳児死亡率が高くなっているのが現状です。

1990年の乳児死亡率(出生数1,000人あたりの死亡数)2018年の乳児死亡率(出生数1,000人あたりの死亡数)
タイ30
ベトナム3716
インド8930
ミャンマー8237
日本ユニセフ協会をもとに筆者作成

1990年の乳児死亡率に比べるとインドやミャンマーは低下していますが、1,000人あたり30人が死亡しているため、改善する必要があるでしょう。

このようにどの国も1990年から比較すると状況が改善されつつあることがわかります。とはいえ数値が高い国はまだまだ多いのが現状です。

乳児死亡率の高い国が偏っているのはなぜ?

では、なぜ乳児死亡率が高い国は偏った地域に集中しているのでしょうか。

乳児死亡率が高い理由として

  • 医師不足
  • 栄養失調
  • 出産後の定期健診がない

などが挙げられます。それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。

医師が不足している

私たちは、

「具合が悪いなら病院で診てもらったら?」

「妊娠したかもしれないから産婦人科に行ってみようかな」

などといった会話を当たり前のように交わしますよね。しかしそれは、十分に医者や病院があるから成り立っているもの。

日本は、人口約400人に対し医者が約1人いる計算ですが、乳児死亡率が高い国では、数万人に1人医者がいるかどうかという現状です。※1

ただでさえ乳児は免疫がなく病気のリスクが高いのに、万が一病気になっても治療が受けられず、そのまま亡くなってしまうケースが多く発生しています。

妊娠・出産時の母親の健康状態が良くない

そもそも妊娠・出産時の母親の体調が良くない可能性があります。

サハラ以南のアフリカ地域においては、貧困問題が解決していません。さらには干ばつや洪水などの自然災害により、貧困が加速してしまっている状況です。

貧困地域で暮らしている妊婦は、安全な水はもちろん十分な食事をとることができません。そのため胎児にも栄養が行き渡らず、生まれたあとも体が弱く、栄養失調で亡くなってしまう事態が起きています。※2

出産前後の定期健診が受ける割合が低い

乳児死亡率の高い国では、出産前後の定期健診を受けている女性の割合が少ない傾向にあります。

2017年の日本ユニセフ協会のデータによると、サハラ以南のアフリカでは46%しか定期健診を受けられていない結果が出ています。※3

健診を受けていなければ、乳児の健康状態や妊婦・胎児の病気の早期発見ができません。

また、産後に健診を受けられないと授乳や育児の相談ができないため、何かあった際に母親が対応できないケースもあるでしょう。乳児死亡率を下げるためは、出産前後の定期検診がいかに大切なのかがわかります。

このように、乳児死亡率が高い地域では、共通する課題を抱えているのです。

これらの問題は、日本の数値と比較すると、より深刻さを実感できます。

日本の乳児死亡率が低い理由

日本ユニセフ協会が出している2019年のデータによると、2018年の日本の乳児死亡数は1,000人あたり1人となっています。

1990年以降、日本の乳児死亡数は減少しており、他国と比べてもかなり少ない数で抑えられています。日本の乳児死亡率が低い理由として、1960年~1970年の高度経済成長期以降、

  • 公衆衛生の改善
  • 医学の発達
  • 日本発祥である母子手帳の普及

などの対策が挙げられるでしょう。※4

このように国によって大きく数値が異なる「生の不平等」はあってはならないもので、早急に改善しなければならない課題と言えるでしょう。

SDGsとの関連性

ここまで乳児死亡率の大まかな概要について確認してきました。実は近年、乳児死亡率の改善に対する関心が高まりつつあります。その背景にはSDGsの存在があるのです。

この章では、乳児死亡率とSDGsの関係について見ていきましょう。

SDGsとは?

まずはSDGsの概要を確認します。

SDGsとは「Sutainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。2015年9月の国連サミットで、参加国すべての国が賛同し採択されました。SDGsでは「地球上に誰一人取り残さない」という誓いとともに、2030年までに解決すべき17の目標と、達成に向けた具体的な行動指針として169のターゲットが掲げられています。

目標3「すべての人に健康と福祉を」と関係

「乳児死亡率」は17ある目標のうち、特に目標3「すべての人に健康と福祉を」と関係しています。

目標3では「母子保健を増進し、主要な感染症の流行に終止符を打ち、非感染性疾患と環境要因による疾患を減らすことを含めて、あらゆる年齢のすべての人々の健康と福祉を確保する」という目標が掲げられています。

なかでも乳児死亡率と関係しているのは、目標3のターゲット2です。

すべての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12件以下まで減らし、5歳以下死亡率を少なくとも出生1,000件中25件以下まで減らすことを目指し、2030年までに、新生児及び5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する。

ターゲットでは直接、乳児死亡率については触れていません。しかし、生まれてから28日以内の新生児や、5歳未満児の予防可能な死亡を根絶するのは、1歳未満に亡くなる乳児を減らすことが重要になるのです。

では、乳児死亡率を減らすための解決策として、どのようなものが挙げられるでしょうか。

SDGs3「すべての人に健康と福祉を」の現状と取り組み事例、個人でできること

乳児死亡率を減らすための解決策は?

具体的な解決策として、

  • 字が読み書きできない人のための識字教育
  • インフラの整備と衛生教育の普及予防接種の普及
  • 予防接種
  • 女性への教育

の4つが挙げられます。

1つずつ見ていきましょう。

字が読み書きできない人のための識字教育

まず解決策として挙げられるのは「識字教育」です。

識字とは

言葉や文章の読み書きができる能力

読み書きができないと、次のような困難に陥る可能性があります。

  1. 危険な場所に行ったとしても文字が読めず回避できない
  2. 薬を手に入れても注意書きが読めない
  3. 仕事の選択肢がない

私たちは文字が読めるからこそ、危険を事前に察知できたり、説明書きを読んで物を購入できたりします。

その一方で乳児死亡率が高い国では、教育を受けられないことで文字の読み書きができない人が多数います。例えば中央アフリカ共和国やチャドなどは、成人の識字率が40%未満というデータが出ています。つまり国の半分以上の国民は、自国の言葉の読み書きができないのです。

識字教育が整えれば、どのような薬が必要なのか、妊産婦が気をつけなければならないことなどが書かれた本が読めるようになることも考えられ、乳児死亡率も下げられる可能性があります。

インフラの整備と衛生教育の普及

次に挙げる解決策は「インフラ整備と衛生教育の普及」です。

5歳未満の乳幼児が亡くなる原因は主に、

  • 肺炎
  • 下痢
  • マラリア

の3つと言われています。

それらは安全な水の確保や手洗いの習慣を身に付けることで防げる病気です。しかし乳児死亡率が高い国では、

  • 手を洗いたくても水道がない
  • 石鹸も普及していない
  • トイレがない

など、そもそもインフラが整っていません。

乳児死亡率を下げるためには、家のすぐ近くに安全な水がある、清潔なトイレを設置するなどの対策が必要です。

そしてインフラを整備すると同時に、手を洗うことの重要性などの衛生教育を普及させることも大切でしょう。

予防接種

感染症やあらゆる病気の免疫をつけるために必要な予防接種。しかし乳児死亡率が高い地域では、予防接種の普及が進んでいない現状があります。その原因としては、

  • 教育を受けられないことで予防接種の重要性がわからない
  • ワクチンを打つ技術を持つ医療従事者が不足している

などが挙げられます。

ユニセフの活動などによって接種の数は増加しているものの、大幅に数値を改善するには、さらに多くの協力が必要となるでしょう。

女性への教育

女性への教育も乳児死亡率を下げるために必要な対策です。識字教育はもちろんのこと、

  • 薬の正しい飲み方
  • 予防接種の重要性
  • 妊娠時の体のケア

など、さまざまな知識を伝えることが求められています。

とはいえ私たちが想像している以上に、サハラ以南のアフリカなどの途上国では男女間の格差は開いています。途上国で学校に行けるのは男性がほとんどで、女性は家の仕事をまかされ、自分の意思と反して結婚を強いられたり、治療を受けさせてもらえなかったりするケースが多く見られるのが現状です。

女性への教育を普及させるためにも、ジェンダー格差を是正する取り組みを同時に展開していく必要があるでしょう。

企業の取り組み

ここまで乳児死亡率について詳しく見てきました。これらの問題は、国や支援団体の取り組みだけでは解決まで多くの時間を要してしまいます。そこで大切なのが企業の取り組みです。ここでは、乳児死亡の減少に向けた取り組みを実施している企業を紹介します。

サンド株式会社

サンド株式会社は、ジェネリック医薬品やバイオシミラー(バイオ後続品)などを取り扱っている製薬会社です。SDGsの目標3の達成に向けて、高品質な医薬品や医療サービスを支援しています。

サンド株式会社は2015年「新しい命&新しい希望(New Life&New Hope)」というプロジェクトをエチオピアで立ち上げました。プロジェクト内容は以下の通りです。

①現地の助産師に対して研修を実施

途上国の医師は、十分な医療訓練を受けられていません。

そのため、患者にどのような治療を行うべきか判断できる医師や助産師が少ないという問題があります。現地の助産師が適切な処置が行えるようになれば、乳児死亡率を下げることにつながります。

②常に医薬品が手に入るようシステムをつくる

高品質な医薬品はコストがかかり、途上国に行き渡らないという状況にあります。

加えて、途上国には大きな病院が少なく、緊急を要する場合でも治療を受けるために2時間かけて病院に行かねばなりません。高品質な医薬品が常に手に入るようになれば、乳児だけでなく妊婦や病気になった人々の命も救える確率が上がります。

現在も、薬を必要としている人々が20億人以上いると言われており、サンド株式会社は10億人の患者に医薬品を届けるという目標を掲げています。

詳しくは公式サイトをご覧ください。

乳児死亡率の削減のために私たちにできること

乳児死亡率は問題の規模が大きいため国や団体、企業が取り組むべき課題のように見えます。しかし、私たちにも解決に向けてできることはあるのです。

ここでは個人でできる3つの方法を紹介します。

乳児死亡率が高い国の状況を知る

まず、乳児死亡率が高い国の状況を知るというアクションがとても重要です。

状況を知っていれば「寄付をする」「現地の人の話を聞いてみる」など、自分なりにどのような行動をすれば良いか考えられるようになり、今まで見てきた景色が変わってくるでしょう。

現代では、さまざまな方法で状況を知ることができるようになりました。

たとえば

  • NPO法人のサイトを見てみる
  • 乳児死亡率が高い国について書かれた書籍や映画を観る

などといった方法があります。乳児死亡率が低い日本で生活している私たちにとっては、かなり衝撃的な事実を知らされることになるでしょう。

下記に途上国の状況を知ることができるサイト、書籍を載せておいたので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

寄付をする

乳児の死亡率が高い国について知ることができたら、寄付をするのも個人でできることの1つです。寄付をすることでワクチンの普及につながります。

たとえば「認定NPO法人 世界の子どもにワクチンを 日本委員会」では、毎月募金「子どもワクチンサポーター」に参加することが可能です。毎月3,000円を寄付すると、1,800人の子どもたちにワクチンを届けることができます。

NPO法人やユニセフのサイトを見ると、詳しいプロジェクト内容や寄付できるものなど確認できるので、ぜひチェックしてみてください。

発信してみる

いろいろな媒体から情報を集めたら、周りの人たちに発信してみましょう。

「しっかり説明しないと」「情報をまとめて発信しないと」など考える必要はありません。実情を知って、自分が思ったことを自分の言葉で伝えるのがとても大切です。

多くの人が知ることで、寄付などの輪が広がったり、もしかすると新しいアイディアが生まれるかもしれません。

友人との何気ない会話で「実はこういう本or映画を読んだんだ」と発信してみるだけでも大きな一歩。得た知識を自分だけで留めるのではなく、周りに発してみましょう。

まとめ

乳児死亡率の高い国の現状を中心に、新生児・5歳未満児死亡率の違いや乳児死亡率の削減のために個人ができることについて解説しました。

いますぐに乳児死亡率を下げなければ!」と考えてしまうと、ハードルが高い印象を受けますよね。しかし1人1人が少しずつ行動すれば状況が変わるかもしれません。

まずは考えるだけでなく、行動してみることが大切です。ぜひ書籍や映画などを見て現状を知ることからはじめてみてくださいね。

参考文献
※1 ユニセフ「SDGs CLUB」
※2 国連開発計画(UNDP)ゴール4 子どもの死亡率を減らそう,国連広報センター「貧困をなくそう」,ワールドビジョン「乳児死亡率が高くなる原因は? 生まれた日に亡くなる子どもは世界で90万人」
※3 ユニセフ「世界子供白書 2017」
※4 ユニセフ「世界子供白書2019」,nippon.com「赤ちゃんが無事に育つ国 : 乳児死亡率は世界最低レベル、母子手帳も貢献」,厚生労働省「我が国における健康をめぐる施策の変遷」

この記事の監修者
阪口 竜也 フロムファーイースト株式会社 代表取締役 / 一般社団法人beyond SDGs japan代表理事
ナチュラルコスメブランド「みんなでみらいを」を運営。2009年 Entrepreneur of the year 2009のセミファイナリスト受賞。2014年よりカンボジアで持続型の植林「森の叡智プロジェクト」を開始。2015年パリ開催のCOP21で日本政府が森の叡智プロジェクトを発表。2017年には、日本ではじめて開催された『第一回SDGsビジネスアワード』で大賞を受賞した。著書に、「世界は自分一人から変えられる」(2017年 大和書房)