認定NPO法人 高知こどもの図書館 大木 由香さん インタビュー
大木 由香
認定NPO法人 高知こどもの図書館館長。司書、絵本専門士、JPIC読書アドバイザー
introduction
本を読むことで、私たちは新しい世界や視点を発見することができます。0歳の赤ちゃんから中学生や高校生まで、こどもたちが本に触れることで多くの感情や知識を得られます。
認定NPO法人 高知こどもの図書館は、みんなの読みたい・知りたいを叶えてくれる誰にでも開かれている図書館です。
誰にでも本に触れる機会は平等にある
—まずは団体についてご紹介をお願いいたします。
大木さん:
1999年に、全国で初めての非営利活動法人(NPO法人)が運営するこどもの本専門図書館として『高知こどもの図書館』は開館しました。
こどもの読書環境を支えたいと考える市民が基本構想を策定して、県が場所を提供してスタートした図書館が高知こどもの図書館です。
こどもや子育て家庭を主な対象に幅広い年齢層の利用者が集っていて、運営体制は多くのボランティアが参画し、その役割が非常に大きいのが高知こどもの図書館の特長です。
ボランティアをはじめとした多くの方のおかげで、開館25周年を迎えることができました。
高知こどもの図書館では、おはなし会や選書など、ボランティアの方々と理事・スタッフが協働しており、自治体からの指定管理や委託業務ではなく、当館の趣旨に賛同してくださる、個人・団体会員からの会費と寄付金、助成金といった自主財源で運営費を賄っています。
高知こどもの図書館は、私設の公共図書館でもあるため、どなたでも無料でご利用できます!
当館では、図書の閲覧や貸出しの他に、館内ギャラリーにて絵本の原画展や絵本作家を講師に招いての講演会やワークショップ、大人のための絵本講座なども開催しています。
—高知こどもの図書館で、大切にしていることなどがありましたら、あわせてお聞かせください。
大木さん:
当館の理念として「こどもに本を届け続けること」を掲げています。
この理念は、SDGs17の目標「4質の高い教育をみんなに」に深く共鳴することから、高知県の『こうちSDGs推進企業』に登録しました。
今後はSDGsの取り組みの裾野を広げ、こどもの読書推進活動をおこなっていきたいと考えています。
高知こどもの図書館では、読み終えた本で図書館を支援する取り組みとして、株式会社バリューブックス社の本を寄付するしくみである「チャリボン」に登録しています。
チャリボンでは、全国の様々な施設などから本を買い取り、インターネット上で販売しています。
チャリボンで買取ができない本は、当館主催のバザーで販売をしたり、おゆずり会で新たな読者へ本を手渡しています。
高齢化による課題
–貴団体の取り組みにより、どのようなことが社会で改善されていると感じていらっしゃるでしょうか。
大木さん:
高知県は県土の約93%が中山間地域で、中山間地域では高齢化の進行や急激な人口の減少に伴う地域活動の担い手不足など、さまざまな課題に直面しています。
全国的に問題となっている書店の閉店が相次いでいますが、高知県も例外ではなく、1998年をピークに現在では書店が半減しており、こどもが多様な本と出合う場所はかなり少なくなっています。
高知こどもの図書館では、誰でも無料で絵本や児童書と親しみ、本を通して人々がコミュニケーションを深める場として貢献しています。
また時には地域へ出かけて、絵本の読み聞かせや講座を行うことにより、こどもの読書の地域格差をなくすべく活動をしています。
—活動を通しての課題や問題点がありましたらお聞かせください。
大木さん:
長らく当館の活動を支えてくださってきた会員の高齢化に伴う会員の自然減と、新規会員の伸び悩みが課題となっています。
また会員の高齢化によりボランティアなどでまかなっていた部分の、人件費の予算捻出も問題です。
物価高騰や学費の値上げなど、現在はもちろん今後の支出も多い子育て世帯に、会員となってほしいとご支援をお声かけしづらいところも大きな課題となっています。
–この問題を解決するために今後どのように活動に取り組んでいくのか、今後の展望をお聞かせください。
大木さん:
高知こどもの図書館に依頼のある講師派遣事業や選書依頼など、こどもの本に関わる事業を拡大し、図書館運営のサービスを維持していきたいですね。
そのためには全国から高知こどもの図書館に関心を持ってくれる人をもっと増やして、ぜひ会員になってもらえるよう、支援の輪を広げたいと考えています。
高知こどもの図書館は2020年に現在の「高知県立公文書館」の1階に移転して、高知城のお濠の中にあります。
蔵書数は約2万5000冊で、貸出しは市内在住の方は10冊2週間、市外在住の方は10冊1カ月です。
高知こどもの図書館の開館日は、月・金・土・日、開館時間は午前10時から午後5時までなので、ぜひ遊びに来てくださいね!
—少子高齢化社会ではあるものの、こどもたちの夢や希望を本によって未来に繋いで行けると感じました。貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
高知こどもの図書館:https://kodomonotoshokan.org/