ルッキズムとは?『ルッキズムの権化』から脱却し『やめたい』あなたへ。使い方と対義語を解説」

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わたしたちの日常には、メディアやSNSによって様々なイメージが氾濫しています。なかには、社会において「魅力的な人」を位置づけようとするものも多く、若者を中心としてメンタルヘルスに悪影響を及ぼす場合もあるのです。

そうした「外見」にまつわるルッキズムは、世界で大きな社会現象になっています。

この記事では、ルッキズムの持つ性質や心身への影響に加え、わたしたちがルッキズムを脱するためのヒントをご紹介します。何気なくやってしまいがちだからこそ、一度立ち止まってルッキズムについて考える機会を作ってみて下さい。

目次

ルッキズムとは?わかりやすく解説

ルッキズム(Lookism)とは、外見で人を判断することを指し、それによって差別を行うことを言います。

かねてから、テレビに映画・雑誌といったメディアを中心として、人気の俳優やモデルが登場するたびに、若者を中心に多くの人々が「あの人のような外見になれたら」と憧れを抱いてきました。

近年はSNSの普及も影響し、より多くの人々にとってルッキズムが身近になっています。

ルッキズムの歴史

ルッキズムという言葉は、1978年にアメリカのメディア・ワシントンポストによって作られた造語です。英語で「外見・容姿」を意味するLookと、「主義」をあらわす-ismを合わせて出来ました。

当時の記事では「身体的に”魅力的でない”とみなされる人々に対する差別的な扱いは、主に職場だけでなく、デートやその他の社会的な場でも行われる」としてルッキズムが紹介されています。

「ルッキズム」という言葉こそ、誕生してからまだ時間があまり経っていませんが、それ以前から「外見で人を判断する」という行為は社会にはびこっていました。

年齢や性別だけでなく、出身地・人種・宗教といったさまざまな要素から、相手を外側だけで決めつけ、社会的あるいは人間的な価値を勝手に判断してしまうのです。

そうしたルッキズムにまつわる差別によって、昔から奴隷や職業的な制限・外見によるいじめのような深刻な問題が後を絶ちません。

実際にアメリカでは、1970年代まで「醜形法」という法律が存在し、見苦しいとされる病気や醜形を持つ人は、人前に出てはいけないとされていました。

つまり、社会の中では魅力的な外見を持つ人たちが肯定され、魅力的でないとされる人々は不利な境遇にあったのです。

このような歴史があることを踏まえたうえで、改めてなぜ「今、ルッキズムが問題なのか」について、もうすこし詳しく見ていきましょう。

ルッキズムの対義語や正しい使い方は?

「ルッキズム」という言葉には、対義語が存在します。ここでは、対義語とルッキズムの正しい使い方について詳しく解説します。

ルッキズムの対義語

ルッキズムの対義語として「アンチルッキズム」「内面至上主義」が挙げられます。アンチルッキズムは、ルッキズムに反対する人のことを指す言葉です。SNSの台頭や美容産業の発展に伴ってルッキズムが深刻化する反面、アンチルッキズムの人々も増えています。

また、内面至上主義は、人間の外見ではなく性格などの内面を重要視する考え方のことです。他にも「性格重視」という言葉や、不細工とされる人を好む人のことを指す「B専」といった言葉もルッキズムの対義語だと考えられる場合があります

ルッキズムの正しい使い方

ルッキズムの正しい使い方として、例文を3つ紹介します

「かかりつけの病院の受付が美人ばかりで、ルッキズムな光景に驚いた。」

病院の顔としての役割を果たす受付を、美人ばかりにすることを「ルッキズム」と表現しています。

「美人はルッキズムで羨ましいが、タイプとはかけ離れた男性からも好かれて大変そうだ。」

顔の美しい女性は人生が楽しそうで羨ましいと感じる反面、タイプではない男性からも好意を寄せられてしまう点は気の毒に思う人の例文です。

「彼はルッキズムなので、美しい見た目の女性としか付き合わない。」

彼は外見至上主義なので、見た目が美しい女性にしか見向きもしないという内容の例文です。

日本ではいつからルッキズムがいわれるようになった?

日本でルッキズムという言葉が使われるようになった正確な時期は、はっきりとは分かりませんが比較的最近だと言われています。2000年代後半~2010年代ごろに、メディアやSNSを通じて徐々に大衆に知られていったとされています。

欧米では1970年代から問題視されていたルッキズムですが、日本ではこの考え方は最近まで浸透していなかったのです。今では、日本のテレビ番組やネット、SNSなどで広く取り上げられるようになりました。ジェンダーやダイバーシティに関する議論が進んでいることも、ルッキズムという言葉が日本で普及した要因として考えられます。

社会問題となっているルッキズム

ルッキズムが社会問題として注目を浴びるようになったのは、従来のメディアの存在に加え、SNSの登場が大きな要因となっています。

ルッキズムが社会問題となっている背景

SNSの台頭によりルッキズムが社会問題に

これまでは、人前に立つ仕事といえば、政治家や俳優・モデルなど、一部の人々に限られていました。

登場する人物や場所は限られており、彼らの外観が「魅力的な男性・女性像」として扱われることはあったものの、その存在をさほど身近に感じられないという人も多かったことでしょう。

しかし、2000年代にスマートフォンが登場し、2010年代には若者を含む多くの人々にとっての必需品となりました。

さらに、InstagramやFacebook・TikTokのようなソーシャルメディア(SNS)の登場によって、一般の人が気軽に写真や映像を投稿できるようになりました。

よって、よりたくさんの人々が「魅力的な外見」を発信できるようになり、同時にその情報を消費者として受け取る機会も多くなったのです。

また、インフルエンサーやYouTuberのように、ある一定の影響力を持つ人たちが、企業と提携し、美容製品・エステサロンといった商品を宣伝する広告に触れる機会も増えました。

大人であれば「これは広告だ」「自分と他人は違う」と認識し、自身の外見と切り離して捕えることは難しくないでしょう。しかし多くの子どもは、現実と広告を切り分けて考えることは困難です。

このような時代の背景によって、現代に生きるわたしたちは、「魅力的な外見」に関する情報を、より多く目にするようになりました。

それに伴い、社会的に「魅力的」だとされる人々のイメージ像を、テレビや雑誌からだけでなく、SNSからも受け取るようになり、他人と自分を比較しやすい状況になっているのです。

具体的な社会問題

ルッキズムが社会に浸透することで、個人の尊厳が傷つけられるだけでなく、社会全体にも様々な歪みが生じています。具体的には、以下のような深刻な問題が起きています。

雇用や職場における差別・格差

本来、個人の能力や適性、経験に基づいて評価されるべき場面で、外見が不当な判断基準として持ち込まれることがあります。

  • 採用活動での「顔採用」
    業務内容と直接関係がないにもかかわらず、容姿の良し悪しが採用の可否に影響を与えるケースです。履歴書への顔写真の添付義務が、こうした差別の温床になっているとも指摘されています。
  • 職場内での不平等な扱い
    外見によって、昇進や昇給、重要なプロジェクトへの配置、顧客対応などの業務分担に差がつけられることがあります。
  • 収入格差
    複数の研究により、外見が「魅力的」とされる人の方が、そうでない人よりも生涯賃金が高くなる傾向(「美貌格差」)があることが示唆されています。

心身の健康への深刻な悪影響

社会から押し付けられる画一的な「美の基準」は、特に若い世代を中心に深刻なプレッシャーとなり、心身の健康を蝕んでいます。

  • メンタルヘルスの悪化
    他者やメディア上の理想像と自分を比較し続けることで、自己肯定感が著しく低下します。これが、うつ病、不安障害、あるいは自分の容姿を極端に醜いと思い込む「醜形恐怖症といった精神疾患の発症につながるケースも少なくありません。
  • 摂食障害の誘発
    「痩せていることが美しい」という価値観に縛られ、過度なダイエットや拒食・過食を繰り返す摂食障害に陥る問題です。SNSの普及による他者との比較が、これに拍車をかけていると見られています。
  • 美容整形への依存とトラブル
    コンプレックスを解消したいという強い思いから、美容整形に依存的になったり、低年齢(中には小学生)から整形を望んだりするケースが増えています。また、高額な契約を巡る消費者トラブルも後を絶ちません。

人間関係における誹謗中傷といじめ

外見に関する偏見は、他者を傷つける直接的な言動として現れます。

  • SNS上での容姿中傷
    匿名性の高いインターネット空間では、他人の容姿に対する誹謗中傷や「ルッキズムいじり」が横行しやすい環境があります。これは深刻な人権侵害であり、当事者に大きな精神的苦痛を与えます。
  • 学校や職場でのいじめ
    外見的な特徴(体型、顔のパーツ、あざや傷跡など)を理由にからかったり、仲間外れにしたりするいじめは、ルッキズムが背景にある典型的な問題です。

社会の多様性の阻害

ルッキズムが社会のスタンダードになると、内面的な価値や多様な個性が軽視されるようになります。

  • 画一的な価値観の強化
    メディアや広告が特定の「理想の容姿」を繰り返し提示することで、「こうあるべき」という固定観念が社会全体に刷り込まれていきます。
  • 能力や個性の軽視
    外見で人を判断することが常態化すると、その人が持つ本来の能力、性格、努力、経験といった内面的な価値が正当に評価されにくくなります。これは、社会全体にとって有能な人材や多様な才能を見過ごす損失につながります。

例えばどんなことがルッキズムになる?

ここでは、ルッキズムがどのような場面で生まれやすいのか、また「魅力的」だとされる人々はルッキズムによってどのような待遇を受けているのか、具体事例を見ていきましょう。

外見によって、社会での優遇が変わる

アメリカの複数の調査によると、外見が魅力的だとされる人々は、そうでない人に比べ、就職の面接で高評価を受けやすく、また給与も高い傾向にあることが明らかになっています。

例えば、外見が魅力的でないとされる人々は、魅力的な人々に比べると生涯で25万ドル(約373万円)もの収入を逃しているとされています。外見による社会的な待遇の違いはルッキズムの大きな弊害といえるでしょう。

外見で勝手に人格を判断する

ルッキズムは、個人による差別にも大きな影響をもたらしています。

例えば、「見た目が好みでないから付き合いたくない」「魅力的でない女性は頭が悪い」のように、実際の性格を理解せず、外見だけでその人の人格を判断する事例が挙げられます。

また性別だけでなく人種の違いによっても「日本人は大人しそう」「ヨーロッパの人は肌が白くて背が高いのでモテそう」といったように、見た目で勝手なイメージを作り出し、日常生活でのさまざまな判断材料として利用してしまうことがあります。

見た目による判断だけで誹謗中傷の的にする

学校や職場・メディアといった場所では、外見の良し悪しによって、いじめや誹謗中傷の的にされやすい傾向があります。

特に大罪を犯したわけでもないのに外見が目立つことを利用され、「あの人は悪いことをした」と一方的な批判を受けるケースが少なくありません。

こうしたルッキズムによる差別は、差別された側の人々に大きな影響をもたらします。

ルッキズムをやめたい人がするべきこと

ルッキズムをやめたいと思った時にできることは、何があるのでしょうか。

アメリカで行われた2006年の調査によると、生後2か月の新生児でさえも「魅力的な顔」を識別していることが分かっています。

このように、より魅力的な外見を判断することは、ある意味では人間の視覚的な本能だということもできるでしょう。

しかし、そのうえでわたしたちがルッキズムに対してできることはあるはずです。

ここでは、そのためのヒントを3つ挙げてみました。

SNSとの付き合い方を考える

まずは、SNSやメディアとの付き合い方・距離の取り方を考えることです。

近年、特に若い人たちにとってSNSは、様々な情報を得る手段であり、友人・知人との連絡ツールとしても欠かせない存在となっています。

そのため、1日に何度も他人の投稿を目にする機会があると、周りからの「魅力的な」外見に関する写真や動画を観てしまいがちです。

元気な時は良いかもしれませんが、落ち込んでいたり精神的に弱っていたりした場合には、つい情報に流されて他人と比較してしまい、ルッキズムの呪いに陥る可能性があります。

そこで投稿フィードはなるべく見ないように心がけ、あくまでも「SNSの投稿はその人の”広告”である」と割り切ってしまうのも手です。

連絡手段として他人とやり取りする場合は除き、SNSを見るのは1日〇回・〇時間まで、と決めておくとよいでしょう。

どうしても止められない場合は、リマインダー設定で制限時間をかけるか、スマホアプリやキャリアが提供しているサービスを利用するのもおすすめです。

ルッキズムについて学ぶ

ルッキズムがどのように日々の生活に潜み、どうすれば対策できるのかを知りたい場合、まずルッキズムに関する情報を集める必要があります。

そこでおすすめなのが、本を読むことです。SNSで発信している情報を読むのももちろんよいのですが、本であればほかの情報に惑わされず、文字に集中してルッキズムを勉強することができます。

例えば、前川裕奈氏の「そのカワイイは誰のため? ルッキズムをやっつけたくてスリランカで起業した話」という本では、若いころからルッキズムに悩まされた筆者が、海外滞在を通して気づいたルッキズムについて、容姿コンプレックスを克服するまでの経過が綴られています。

特に女性は、男性に比べてルッキズムによる精神的な障害を抱えやすいことから、こうした当事者の本を読み、ルッキズムにつて「どのような対応がルッキズムにつながるのか」「ルッキズムに対抗するにはどうしたらよいのか」といった知識を学べるでしょう。

いつもの暮らしの中でアンテナを張ってみる

ルッキズムをある程度学んだら、日常生活で自分や周りの発言を意識してみましょう。

情報や発言を客観視することで、ルッキズムの輪郭が掴めてくるはずです。

自身の発言やSNSでの発信の際にも「これはルッキズムに当てはまらないだろうか」と立ち止まって考える癖をつければ、自然とルッキズムとの関係を断てるのではないでしょうか。

ルッキズム対策に踏み切った国々とその政策

ここでは、実際にルッキズムからの離脱を図るために行われている社会の取り組み事例をご紹介します。

広告の規制とルールの改正(ノルウェー)

北欧の国・ノルウェーでは、かねてから広告の種類が厳しく規制されてきました。

テレビやSNSといったメディアではもちろん、町中の広告を見ていても、酒類やエステなど、ある一定の種類の広告を目にすることはまずありません。

例えば、12歳未満の子どもに対するテレビ広告は禁止されています。したがって、おもちゃを始めとした子ども向けの製品に関する広告は見かけないのです。

おもちゃを紹介するカタログなどはありますが、「女の子はピンク」「男の子は青」といったステレオタイプに基づく商品はほとんどありません。

また、化粧品に関する広告にも、厳しい規制がかけられています。これは若い女性を中心に特定のボディイメージが決めつけられ、心身への影響が出るのを懸念しているためです。

近年はノルウェーの人気ドラマ「Skam」に出演した人気俳優・Ulrikke Falch(ウールリッケ・ファルチ)が、かつて自身も悩まされた摂食障害や、幼少時代に「女の子らしく」いられなかったことへの葛藤などの経験をもとに、若者へのボディポジティビティ(ありのままの身体を愛すること)を伝えるなど、影響力のある人物によるルッキズムの発信もさかんになっています。

そんなノルウェーでは、この数年でさらに広告への規制を強めたことで話題となっています。

SNSでの投稿写真・広告に関する新ルールとは?

そのひとつとして、企業やインフルエンサーがSNSに掲載する広告写真についての新ルールが挙げられます。

2021年、ノルウェーでは、フォトショップなど写真編集ソフトを使用した際に「加工しています」という情報の開示を義務化する法律が可決されました。

これはまさしく、若者が加工された写真を見て「自分もこうなりたい」とルッキズムの呪いに陥るのを防ぐのが目的です。

今では写真の編集ソフトの発達によって高度な加工が実現し、肌の毛穴を隠してトーンを上げるだけでなく、ウエストやバストといった身体の調節まで可能になっています。

広告の目的に沿って制作された「加工された美しさ」を本物だと思い込み、ルッキズムに陥った若者の心身にダメージを与えないよう、ノルウェーではこうした写真加工の情報開示が義務化されたのです。

可決された当時は賛否両論ありましたが、国外からも「似たような法律を作ってほしい」といった声が寄せられ、ルッキズムからの脱出を図りたい人々にとっては、ノルウェーの広告に関するルールが今後どのような効果を発揮するのか、注目が集まっています。

アメリカ(ニューヨーク市)|雇用・住居などでの差別禁止

アメリカ合衆国では、連邦法レベルで「容姿」は保護対象とされていませんが、ニューヨーク市は2023年に独自の条例改正に踏み切りました。

政策内容は、雇用・住居の提供・公共施設(レストランや店舗など)の利用において、個人の「身長」および「体重」に基づく差別を禁止となりました。

この政策により、採用や昇進、アパートの入居審査などで、体型や身長を理由に不利益な扱いをすることが違法となりました。

ニューヨーク市人権法 (New York City Human Rights Law) の改正

フランス|モデルの健康保護と広告規制

ファッション業界の影響力が強いフランスでは、特に「痩せすぎ」がもたらす深刻な健康問題(摂食障害など)への対策として、法律が導入されました。政策内容は以下の通りです。

  • 痩せすぎモデルの活動禁止
    モデルは、BMI(体格指数)などが基準を満たし、健康であることを証明する医師の診断書を提出することが義務付けられました。
  • 「修正写真」の明記義務
    商業広告で使用する写真において、モデルの体型を画像修正した場合、「修正済み(Photographie retouchée)」という表示が義務付けられました。

公衆衛生法典 (Code de la santé publique) の改正を含む「我が国の保健システム近代化法」(Loi n° 2016-41 du 26 janvier 2016 de modernisation de notre système de santé)

韓国(ソウル市)|公共の場における美容整形広告の規制

美容整形が盛んな韓国では、外見至上主義を過度に助長するとして、公共交通機関での広告が社会問題となりました。

政策内容は、ソウル市の地下鉄構内において、外見コンプレックスを過度に刺激するような美容整形広告(特に手術のビフォー・アフター写真など)の掲出を全面的に禁止する方針が打ち出されました。

これは、市の管轄下にあるソウル交通公社の広告審議基準の変更によって実施されました。

国の法律(医療法など)による広告規制に加え、ソウル交通公社の内部規定(広告審議基準)の改正。

オーストラリア(ビクトリア州)|差別禁止項目に「身体的特徴」

オーストラリアの一部の州では、差別禁止を定める法律の保護対象として、外見に関連する項目を明確に含めています。

政策内容は、雇用・教育・サービス提供などの場面で、「身体的特徴(Physical features)」に基づく差別を禁止しています。この「身体的特徴」には、身長、体重、体型、顔の特徴、髪、あざなどが含まれると定義されています。

法令名: 平等機会法 (Equal Opportunity Act 2010)

ルッキズムに関するよくある疑問

ここで、ルッキズムに関してよくある質問を取り上げ、答えていきます。

ルッキズムとアイドルの関係は?

ルッキズムとアイドルには、大きな関係があると言えます。

なぜなら、アイドルは外見をひとつの売りとしている職業のため、多くの人々があこがれの対象として見る傾向にあるからです。

アイドルを「魅力的な」外見を持つ人だとみなし、異性や社会からの待遇を期待してしまい、同じような顔や体型に憧れて真似ようとする人は少なくありません。

またアイドル自身も「常に外見でジャッジされる」という意識が強くなり、精神的なダメージを受けてしまい、休業や引退に追い込まれるといった事例も起きています。

もちろん、アイドルを「自分とは違う人」と割り切って楽しんでいる人も多くいますが、ルッキズムによって外見だけでその人の魅力を判断してしまい、他人と自分を比べて悩んでしまう人がいるのもまた事実です。

ルッキズムに対してやりすぎと言われている理由は?

近年、日本では古くから続いてきた大学のミスコンが廃止になったり、お笑いのネタとして相手の外見をいじることが自粛されたりと、ルッキズムに関して少しずつ変化が起きています。

こうした取り組みを「やりすぎ」ととらえる人もいるようです。

その理由として、「魅力的な人にスポットライトがあるのはいいこと」「過剰になりすぎると何も言えなくなる」といった意見が見られます。

しかし、外見をひとつの基準にするからこそ「きれい」「ブサイク」と対局な価値観が生まれますし、特に後者に関する表現を他者から受けるのは、誰にとっても気持ちが良いものではないはずです。

いくらそれが相手にとって「優しさ」や「愛」だとしても、言われたほうは少なからず傷つきますし、やがて感覚がマヒして他人にも同じような行動を起こす可能性があります。

また、ルッキズムを利用して相手を攻撃する人に関しては、その多くが相手よりも社会的に有利な立場にあり、いわば「何でも言える(と錯覚した)特権を持っている」状態にあります。

誰もが自分にしか持っていない身体の特徴や魅力があることを認識し、外見だけでなく内面から判断するのが普通な社会にするためには、ルッキズムから脱するための取り組みを進めていくことを優先するべきではないでしょうか。

ルッキズムはもうどうしようもないこと?

ルッキズムは自分だけの問題ではなく社会全体の問題であるため、すぐに改善するものではありません。そういった側面では、「どうしようもないこと」だとも考えられます

周りの環境からルッキズムがなくならない限り、他社から受ける差別や偏見はなくならないためです。

また、個人単位でも「ルッキズムをやめたいのにやめられない」と悩んでいる人は多く、どうしようもなく感じている人も少なくありません。

とはいえ、個人個人がルッキズムを辞めることを意識して行けば、長期的に考えると社会全体が変化する可能性は十分にあります

ルッキズムを克服した社会はどうなる?

社会全体でルッキズムを克服することはできれば、外見にとらわれない自由な社会が構築されると言われています。美を追求することに捉われず、「誰もが自分らしく生きられる環境」が整い、見た目ではなく個人が持つ能力・個性がより上手く活かされるようになるでしょう。

また、「見た目に捉われない価値観」が広く普及すれば、他人同士がお互いのことを受け入れやすくなると考えられています。これにより、人間関係がより良くなるのは言うまでもありません。

仕事の面でも見た目に関係なく能力がしっかりと評価され、公平性が増すことでしょう。美しい人が見た目だけを理由に優遇されることがなくなる他にも、美しい人の仕事の能力もしっかりと評価されるようになります。

子供のルッキズム問題に対して親ができることは?

ルッキズムは、子供に自己肯定感の低下・対人関係の悪化・将来への不安などの悪影響を及ぼす可能性があります。親ができることとしては、子供の前で人の外見についてあまり発言しないことや、人の魅力は外見だけでなく、内面や能力などさまざまであると教えることなどです

また、SNSを始めとするインターネットに書かれている情報が、必ずしも正しいとは限らないことを教えることも重要です。親自身がルッキズムに捉われている場合、まずは自分自身のルッキズムを治していくことも大切です。子供がルッキズムに捉われないように、注意して教育して行きましょう。

ルッキズムとSDGs

最後に、ルッキズムとSDGsとの関係性について確認しておきましょう。

2015年、国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標:Sustinable Development Goals)では、17つの目標が設定されました。

今回は中でも特にルッキズムとのかかわりが深い、SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」についてお伝えします。

SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」に関連

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SDGs目標10「人や国の不平等をなくそうでは、国籍や人種・性別にかかわらず、誰もが等しく生きられる社会システムを整えるように呼び掛けています。

ルッキズムは、主に外見によって判断・差別される事象を指しますが、ルッキズムが起こる原因はさまざまです。

  • 性別
  • 年齢
  • 職業
  • 宗教 など

こうした社会的な属性にかかわらず、誰もが平等に生きられる社会を目指すには、個人の努力だけでなく企業や自治体・国がルールを定め、みんなで守っていくことが求められます。

まとめ

今回は「ルッキズム(Lookism)」について、言葉の定義や背景だけでなく、ルッキズムを脱するために出来ることまで、幅広くご紹介しました。

外見には、確かに多くの情報が含まれています。しかしそれだけを判断材料にしてしまっては、見えない人格や特性を見落とすことになり、社会での様々な場面で不平等が生まれてしまいます。

また若者を中心に、ルッキズムに捉われて心身に負担がかかってしまっているのも事実です。

こうした状況を脱するためにも、まずはルッキズムを知り、日常の中で意識することから始めてみてはいかがでしょうか。

<参考リスト>
Lookism: The Hidden Form of Discrimination – BahaiTeachings.org
Opinion | Why Is It OK to Be Mean to the Ugly? – The New York Times
摂食障害|こころの情報サイト
摂食障害:神経性食欲不振症と神経性過食症 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
醜形恐怖症 – 10. 心の健康問題 – MSDマニュアル家庭版
Skam’s Ulrikke Falch Talks About Feminism and Body Positivity in Norway through her Instagram – PAPER Magazine
SNSの加工写真にラベル付けを義務化へ–ノルウェー – CNET Japan
Influencers react to Norway photo edit law: ‘Welcome honesty’ or a ‘shortcut’? – BBC News

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この記事を書いた人

のり ライター

東京生まれ&育ちのリトアニア在住ライター。森と畑に出会い「自然と人とが寄り添う暮らし方」を探求するように。現地で暮らし学んだ北欧の文化と植物、日本で体験したマクロビ&パーマカルチャーを糧に、食・暮らし関連を中心に執筆中。普段はほぼベジ。

東京生まれ&育ちのリトアニア在住ライター。森と畑に出会い「自然と人とが寄り添う暮らし方」を探求するように。現地で暮らし学んだ北欧の文化と植物、日本で体験したマクロビ&パーマカルチャーを糧に、食・暮らし関連を中心に執筆中。普段はほぼベジ。

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