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ウェルビーイングの意味を簡単に解説!5つの要素や福祉や教育の事例も紹介

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近年、企業の経営方針の中で「ウェルビーイング」という言葉を聞く機会が増えてきました。

インターネット関連サービスを提供する楽天グループでは、「従業員のwell-being(ウェルビーイング)」に取り組んでいると公表。その内容をホームページで紹介しています。

また、スポーツメーカーのアシックスも、「従業員とその家族の “Well-being(身体的、精神的、社会的に良好である状態)” 」を目指し、活動の成果を報告書にまとめて毎年公開しています!

世間に浸透しつつある「ウェルビーイング」ですが、言葉は抽象的で分かりにくいだけでなく、実際にどう行動をすればよいのか迷うことも多いかもしれません。

そこで今回は、ウェルビーイングとは何かというところから、なぜ注目されているのか、取り組むメリット企業の事例まで紹介します。

目次

ウェルビーイングとは?

ウェルビーイング(well-being)とは、心身と社会的な健康を意味する概念です。 身体だけでなく、精神的、社会的にも満たされている広い意味の幸福・多面的な幸せを表す言葉です。

世界保健機関(WHO)憲章では、健康とは何かを説明する前文にウェルビーイングという言葉が使われています。

「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること(ウェルビーイング: well-being)をいいます」

(引用:公益社団法人日本WHO協会「世界保健機関(WHO)憲章とは」、カッコ太字は著者)

ウェルビーイングの日本での考え方

日本ではどのように考えられているのでしょうか。厚生労働省ウェルビーイングを次のように定義しています。

「ウェル・ビーイング」とは、個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念。

(引用:厚生労働省「雇用政策研究会報告書概要(案)」)

WHOと日本、それぞれ表現が異なるものの、いずれもウェルビーイングの概念である「身体的、精神的、社会的に満たされた状態にあること」と説明しています。

では、ウェルビーイングとは具体的にどのような幸福を指すのでしょうか?

幸福を測る指標としては主に、

  • アメリカのギャラップ社が提唱する5つの要素
  • アメリカの心理学者マーティン・セリグマンが提唱する5つの要素

のいずれかが用いられるケースがよく見られます。1つずつ詳しく見ていきましょう!

ウェルビーイングの5つの要素①ギャラップ社

毎年発表される世界幸福度調査にデータを提供しているギャラップ社(アメリカの世論調査研究所)は、ウェルビーイングとは何かについて5つの要素を提示しています。

これは、国や文化を超えて共通した幸福の要素を統計的に調査したものです。早速見ていきましょう。

キャリアウェルビーイング

ウェルビーイング5つの要素の中で最も重要なのが、キャリア ウェルビーイングです。キャリアとは仕事だけでなく、ボランティア活動や勉強、子育ても含みます。

私たちは週の大部分を何かをするために費やしています。もしその時間が充実していて意味があると思えるのなら、キャリア ウェルビーイングが高いと言えます。キャリアウェルビーイングが高い人は、人生で2倍以上の豊さを感じているという結果もあります。※[7]

ソーシャルウェルビーイング

人生で強力な人間関係親しい友人を持つことが幸せにつながるというのが、ソーシャル ウェルビーイングです。

職場や自宅でのコミュニケーション、電話、友人との会話、電子メールなどの社交的な行動を1日1時間でもすると、幸福を感じてストレスが減ることが分かっています。(最大6時間までで、時間が多いほど効果があります。)※[8]

フィナンシャルウェルビーイング

フィナンシャル ウェルビーイングは、経済的な幸福を指す要素です。これは、収入の多さという尺度だけではありません。人は自分のためよりも、他人のため慈善団体への寄付にお金を使うと幸福を感じることが分かっています。

また、物を購入するよりも、外食や休暇などの体験を買うフィナンシャル ウェルビーイングが高まります。物は一時的に幸福を感じますが、思い出は一生楽しめると考えられているためです。※[9]

フィジカルウェルビーイング

フィジカル ウェルビーイングは、身体的な幸福を指す要素です。適度な運動を行い、睡眠を十分に取れば、体の健康や幸福につながります!

運動を週に2日以上する人は幸せで、ストレスが大幅に少なくなることが分かっています。また、ぐっすり眠れば前日のストレスが解消され、エネルギーが湧いてくるだけでなく、高い幸福度を得られる可能性があります。※[10]

コミュニティーウェルビーイング

自身が、他人やグループ、コミュニティーに影響を与えられると、幸福を感じるというのがコミュニティー ウェルビーイングです。

献血をした後に良い気分になったというのも一例で、ある組織に貢献したり参加したりすると幸福が得られます。また、このような行動を通じて自分の能力に自信が持てるようになります。※[11]

ウェルビーイングの5つの要素②PERMA理論

ギャラップ社ウェルビーイングの要素が統計から導き出されたものであるのに対して、PERMA理論は、アメリカの心理学者マーティン・セリグマンが考案した定義です。

5つの要素の頭文字をとってPERMA理論と名付けられています。一つずつ詳しく見ていきましょう!

ポジティブな感情(Positive emotion)

ポジティブな感情を持つことは幸せの指標になるほか、身体的、知的、心理的、社会的な豊かさにつながります。ポジティブな感情とは、希望、興味、喜び、愛、思いやり、プライド、感謝の気持ちなどです。

例えば、ポジティブな感情を高める方法として、次のような行動があります。

  • 大切な人と過ごす
  • 趣味などの楽しめる活動をする
  • 感謝していることやうまくいっていることを振り返る

エンゲージメント(Engagement)

エンゲージメントとは、仕事などの活動に完全に集中している状態を指し、幸福の一つです。この状態は、フロー状態とも言い表せます。

例えば、エンゲージメントを高める方法として、次のような行動があります。

  • 好きな活動に参加する
  • 日常の活動や仕事に集中する練習をする
  • 自分の強みを知り、発揮する

他者との良好な関係(Relationship)

他者に支えられ、愛され、大切にされていると感じることが良好な関係です他者とは、パートナー、友人、家族、同僚、上司、コミュニティーが含まれます。

例えば、他者との良好な関係を築く方法として、次のような行動があります。

  • 興味のあるグループに参加する
  • よく知らない人に質問するなどして、相手をもっと理解する
  • しばらく関わりのなかった人と連絡を取る

生きる意味や意義の自覚(Meaning)

仕事やボランティア活動、コミュニティー活動などを通じて人生に目的を持つことは幸せにつながるほか、挑戦したり逆境を乗り越えたりするときにも役に立ちます。

例えば、生きる意味や意義を自覚する方法として、次のような行動があります。

  • 目的を見つけたり、組織に入ったりしてみる
  • 新しくて創造的な活動をしてみる
  • 他者の役に立つことに情熱を注ぐ

達成感(Accomplishment)

達成感とは、目標に向かって取り組むことや、それを達成すること、そして努力をすることで得られた結果のことです。達成感は自信を強められるため、幸福を感じられます。

例えば、達成感を得る方法として

  • 具体的、測定可能、達成可能、現実的、期限付きの目標を設定する
  • 過去の成功を振り返る
  • 達成できたときは自分を褒める※[12]

このように、ウェルビーイングには仕事だけでなく、さまざまな場面での生きがいや喜び物質的な満足から精神的な豊かさを含めたものです。

近年、このウェルビーイングが様々な場面で注目されています。次では、その理由を見ていきましょう。

なぜウェルビーイングが注目されている?理由や背景を解説

WHO憲章ウェルビーイングが言及されたのは1946年です。その後、幸福度を測る研究なども行われ、ウェルビーイング社会の関心を集め、国際的な会議で議題に上がったり、経済と掛け合わせた形態が登場したりと、動きが見られるようになりました。ここでは、世界の主な動きを3つ紹介します。

世界経済フォーラム(ダボス会議)

2021年世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では、金融や社会経済などのシステムを一度すべてリセットして再構築する「グレート・リセット」がテーマになりました。グレート・リセットは、パンデミックや気候変動、社会的な課題などの解決に必要な、持続可能な経済システムをつくる手段であるとしています。※[1]

世界経済フォーラム創設者であり会長のクラウス・シュワブ氏は、グレート・リセットにより「人々のウェルビーイングを中心とした経済に考え直すべきだ」と述べ、困難な世界状況の中で、経済をウェルビーイングの視点から構築しようとしています。※[2]

ウェルビーイング・エコノミーの登場

世界の経済を再設計して、誰もが快適で安全、そして幸せに暮らせる世界をつくろうという考え方、ウェルビーイング・エコノミーが登場しました。※[3]

この理論を提唱しているのは、ウェルビーイング・エコノミー・アライアンス(WEAll)という団体です。WEAllが組織したウェルビーイング・エコノミー・ガバメンツ(WEGo)は、スコットランド他4か国が加盟し、経済によってウェルビーイングを高めることなどで協力関係を組んでいます。※[4]

OECD(経済協力開発機構)「教育2030」

OECD(経済協力開発機構)は、2030 年子どもたちに求められる能力や技能、適性についてまとめた概要書を公開しています。

その序文には、「友人や家族、コミュニティーや地球全体のウェルビーイングのことを考えられなければならない」とあり、私たちの未来は、「個人、コミュニティー、そして地球のウェルビーイングの上に築かれる」としています。※[5]

教育の分野においても、ウェルビーイング重要なキーワードとして使われているのです。

ウェルビーイングとSDGsの関係

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ウェルビーイングは、SDGsとも深い関わりがあります。まずは、SDGsとは何か確認していきます。

SDGsとは

SDGs(エスディージーズ)とは、2015年に国連サミットで採択された、17の目標と169のターゲットから成る、国際目標です。” Sustainable Development Goals” の略で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されています。

2030年を達成期限とし、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを掲げています。

では、SDGsとウェルビーイングとの関係について次に見ていきましょう。

ウェルビーイングとSDGsの関係

SDGsは、人々が健康に毎日を送り、働きがいのある仕事に就いて、平等で平和に暮らせる社会を目指しています。それは身体的、精神的、社会的に満たされた状態を言い、ウェルビーイングの概念にそのまま当てはまります。

例えば、医療や医薬品などの保健サービスをすべての人が利用できるようにすることを目指しているSDGs目標3「すべての人に健康と福祉を(Good health and well-being)」では、「福祉」の意味でウェルビーイングの単語が使用されています。

また、女性への差別をなくし、政治、経済、公共の場での意思決定で女性が参画する機会をつくるSDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」や、働きたい人が安全にそして働きがいのある仕事に就くことを掲げたSDGs

目標8「働きがいも経済成長も」なども、人々の幸福につながるウェルビーイングと言えるでしょう。

このようにウェルビーイングは、近年注目を集めるSDGsの達成にも求められる考え方となり、国内外問わず世界的に必要なものと認識されるようになっているのです。

では日本でのウェルビーイングの現状を確認していきましょう。

日本社会・会社(ビジネス)でのウェルビーイングの現状

世界の大きな流れがある中で、日本では国内の事情が理由でウェルビーイングに注目が集まっています。ここでは3つの視点を取り上げて紹介します。

社会の多様化

日本では、人種や宗教、性別など異なる背景を持つ人が暮らしながら働いています。コンビニなどの身近な場所でも外国人の働く姿を見かけるようになりました。

実際、日本で働く外国人はどのくらいいるのでしょうか。厚生労働省が公表している在留外国人労働者数の推移を見てみましょう。

外国人労働者数の総数は、2022年で182.3万人と、2008年の48.6万人から130万人以上増加していることが分かります。

仕事や日常生活で外国人と接する場面が増えれば、コミュニケーションを円滑に進め、お互いの習慣や考え方の違いなどを認め合うことが必要です。グローバルな社会が進んでいる今、ウェルビーイング日本国内でも求められる考え方となってきているのです。

人材の確保

日本では高齢化が進み、将来的に労働力が不足すると言われています。総務省労働力となる15~64歳までの生産年齢人口の推移2060年まで予想して、その数値を公表しています。

我が国の高齢化の推移と将来推計

2020年には7,341万人だった生産年齢人口も、2060年には4,418万人と大幅に減少し、それに伴い高齢化率も29.1%から39.9%に上昇する予測です。

高齢化が進み、生産年齢人口が減少すれば、労働力不足を招き経済に大きな影響を及ぼしかねません。その一つの解決方法として、※潜在的労働力を活用していく方針が打ち出されています。

潜在的労働力

就業者でも失業者でもない人のうち、仕事を探しているがすぐには働くことができない人や、働きたいが仕事を探していない人など、潜在的に就業することが可能な人のこと。

実際にどのくらいの潜在的労働力があるのでしょうか。以下は、実際に就業している人と潜在的労働力の割合をまとめたグラフです。

我が国の潜在的労働力

ほとんどの年代で、就業率よりも潜在的労働力率が上回っていることがわかります。

特に女性の20~49歳の潜在的労働力は、実際の就業率に比べ10~15%程度高くなっています。この理由として、「出産・育児のため」「適当な仕事がありそうにない」「介護・看護のため」など、働きたくても働けない事情があります。※[6]

意欲のある人が働ける環境をつくり、それを労働力につなげていくためにも、ウェルビーイングを実現できる社会になる必要があるのです。

働き方改革

最後に、働き方改革が理由に挙げられます。働き方改革とは、人材を確保するために長時間労働を是正し、多様で柔軟な働き方を実現するなどを目標にした政府の取り組みです。

経済を活性化するには、テレワークや副業・兼業、女性が活躍できる環境整備など、働く人が自身の事情に合わせた働き方を選べるようにし、労働力を増やしていく必要があるというのがその趣旨です。

経済成長と個人の幸福を両立させる流れは、世界でもグレート・リセットやウェルビーイング・エコノミーがありました。ウェルビーイングを起点に社会や経済をつくっていく考え方は、日本も同じです。

【関連記事】少子高齢化とは?日本の現状と問題点・解決策をわかりやすく解説

ウェルビーイングを導入する企業のメリット

ここまで見てきたように、ウェルビーイングは今の社会に大切な考え方となっています。では、企業がウェルビーイングを導入するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

生産性の向上

ウェルビーイングにより社員が仕事で充実感を得られると、意欲の向上につながり生産性が上がります。

厚生労働省が公表しているデータによると、「従業員と顧客満足度の両方を重視する」という企業は、「顧客満足度のみを重視する」に比べて、売上高営業利益率、売上高ともに「増加傾向」にある割合が高いことが分かっています。

生産性を上げるためには、社員のウェルビーイングの視点に立つことが必要です。例えば、社員の「業務が忙しくて休みが取れない」「長時間勤務がつらい」という声には、計画的な年休制度を導入したり業務を見直したりするなどして、労働時間の削減に取り組みます。

社員がやりがいを持って働ける環境をつくれるのかは、会社の経営戦略として重要なポイントになるでしょう。

離職率の低下

厚生労働省のデータによると、「今の職場で今後も働きたい」と思っている人は52.7%、「機会があれば転職したい」人は21.0%と、同じ職場で長く勤めたい人が半数いる一方で、転職を考えている人が一定数います。※[13]

離職率が高まると、人材の採用に関わるコストが消化できないほか、技術の継承が難しくなるなどの問題が発生することも考えられます。

実際に転職した人の理由には何があるのでしょうか。前職を辞めた理由別の割合を見ていきます。

転職入職者が前職を辞めた理由別割合
(引用元:厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況」)

前職を辞めた主な理由は、「職場の人間関係が好ましくなかった」「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」「給料等収入が少なかった」などでした。

職場の環境や労働条件を整備することは、社員の満足度を上げるための基本的な事項です。ウェルビーイングを導入して、能力評価制度やスキル、成果に応じた報酬制度をつくるなどの対応をすることで、離職者の減少が期待できます。

優秀な人材の確保

労働力不足が問題になっている今、優秀な人材の確保は企業にとって差し迫った課題です。

しかし、実際に社員の満足度を重視している企業では、過去5年の正社員の人材について「量(人数)・質ともに確保できている」と答える割合が、顧客満足度のみを重視する企業に比べて高くなっています。

社員の満足度、つまりウェルビーイングの考え方を取り入れれば、優秀な人材を確保しやすいと言えるでしょう。

最後に、ウェルビーイングのための世界の取組事例を確認しましょう。

【関連記事】健康経営とは?注目されている理由とメリット・企業の取り組み事例

世界企業のウェルビーイングの取り組み事例

まずは、世界の取り組み事例を紹介します。

Google(グーグル)

アメリカのインターネットサービス会社「Google(グーグル)」は、デバイスの利用習慣を管理し、オフラインで過ごす時間をつくるアプリ、デジタルウェルビーイングを開発しました。

具体的には、次のような機能があります。

  • 集中したいときはアプリを一時停止できる
  • メールに優先順位を付けてアラートの数を減らす
  • アプリやサイトの利用時間を管理する
  • YouTubeをカスタマイズして休憩を促すメッセージを出す
  • アプリタイマーで、アプリの 1 日の利用時間の上限を設定できる

普段、アプリの通知を頻繁に受けて気が散ったり、つい動画を見過ぎて時間を無駄にしたりすることがあるかもしれません。しかし、このアプリを使うことで、デジタル機器に生活を乱されることなく、大切な時間を有効に活用できます。※[14]

投資銀行マッコーリー・グループ

オーストラリアに本社を置く投資銀行の「マッコーリー・グループ」は、世界33の市場にオフィスを持つグローバル企業です。

従業員のアイデアと実行力が企業の成功に欠かせないとして、職場でウェルビーイングを推進しています。 

主な取り組み

  • 従業員家族のサポート

育児休暇の取得を推進しているほか、産後の母親の体の機能回復をサポートし、職場復帰のためのガイダンスを行う取り組みを行っています。また、育児センターを設置して、子どものケアを支援。2021年度の育児休業後の復職率は97%と高い割合を誇っています。

  • 男女共同参画の促進

報酬や昇進などの場面で、男女平等で透明性のある仕組みをつくっています。また、女性に幅広いキャリアパスを考えてもらうために、女子の大学団体を後援して、学生が金融業界で働くことを促進しています。

  • LGBTQ +の人が働きやすい職場づくり

LGBTQ+の人々が自分自身を活かして働ける環境を推進しています。従業員の教育を通じてLGBTQ+への意識を高め、コミュニティーの団結を呼びかけています。

その結果、LGBTQ+の人々の平等を推進するアメリカのヒューマン・ライツ・キャンペーン財団の企業平等指数で100点満点中100点を維持しています。※[15]

イケア

スウェーデン発祥のグローバル家具メーカー「イケア」は、ジェンダー平等多様性優れたアイデアやサービスを生み出す源であるとして、ウェルビーイングに取り組んでいます。

主な取り組み

  • 男女共同参画の促進

理事会委員会のメンバーを平等な配分にすることで、男女機会均等を推進しています。また、フランチャイズ店のある国の半数以上で男女の同一賃金を採用。OECD経済協力開発機構)などが率いる、女性と男性の同一賃金を目指したEPIC賃金平等国際連合:Equal Pay International Coalition)に加盟しています。

  • LGBTQ+スタッフとの協働

性的指向性同一性関係なく働ける職場環境づくりを進め、すべての人に平等な機会を提供することを目指しています。

また、LGBTQ+の人々の人権に対する意識を高める日、IDAHOT(国際反ホモフォビア・トランスフォビア・バイフォビアの日、毎年5月17日)をグローバルキャンペーンとして展開しています。※[16]

日本企業のウェルビーイングの取り組み事例

続いて日本企業の取り組み事例を確認しましょう!

株式会社アシックス

スポーツメーカーの「株式会社アシックス」は、スポーツ文化健康につながる商品・サービスを提供する企業として従業員の健康を最も大切な要素と位置付け、ウェルビーイングに取り組んでいます。

主な取り組み

  • 治療と仕事の両立支援

主治医・産業医・保健師・所属部署が連携して、治療と仕事の両立をサポートしています。

  • 体の健康促進

目の疲れや首・肩のこり、不眠などが現れる、情報機器(VDT)関連症状対策を実施して、生産性を上げる施策を講じています。また、BMI適正数値を目指すための体質改善策を作成しています。

  • 受動喫煙のないオフィス

たばこをやめるための卒煙アプローチを進め、グループ会社へも展開しています。※[17]

楽天グループ株式会社

インターネット関連サービスを提供する「楽天グループ株式会社」は、人材の多様性こそがイノベーションの原動力になるとして、従業員のウェルビーイングに貢献できる職場づくりに取り組んでいます。

主な取り組み

  • 従業員の段階に応じた研修制度を導入

従業員が自分の成長に応じた研修を受けられるよう、論理的思考やリーダーシップを培う「ビジネススキル研修」英語力異文化マネジメントを磨く「Englishnization Next」などを提供。従業員が各々のキャリアで成長するサポートをしています。

  • フレックスタイム制度を導入

従業員が月の所定労働時間の範囲内で日々の始業・終業時刻、労働時間を設定して柔軟に働ける環境をつくっています。業務の忙しさに合わせて労働時間を効率的に配分することで、生産性の向上につなげています。

  • 1 on 1 ミーティングを行う

チームのメンバーとマネージャーが1対1でミーティングを行う1 on 1ミーティングを実施しています。チームのメンバーはこの場で悩みが相談できるほか、目標の達成に必要なフィードバックを受けることで、次への行動のヒントが得られます。※[18]

東急株式会社

交通事業、不動産事業、生活サービス事業などを展開する「東急株式会社」は、個々の多様性を生かすことで、従業員の力を存分に発揮できるとして、人材戦略に取り組んでいます。ウェルビーイングにもつながるその活動の一部を紹介します。

主な取り組み

  • ワークライフバランスの推進

男性の育児休業休暇の取得を促進するとともに、子どもを育てる従業員が利用できる短時間勤務制度や事業所内保育施設の設置などを2024年3月までに行うことを計画しています。

  • 産休・育休者交流会の実施

出産休暇や育児休職中の従業員の交流会を実施しています。会社の育児支援制度を説明するとともに、復職に対する不安を取り除き、仕事と育児の両立を支援夫婦で参加できる復職セミナーも開催しています。

  • シニアの雇用支援

シニア層の活躍の場をより広げていくことを目的に、「アクティブ60s」という制度を導入し、定年後に再雇用で採用された従業員が働きがいを持てる環境をつくっています。また、65歳以降も働き続けられるよう雇用促進にも取り組んでいます。※[19]

まとめ

ウェルビーイングとは、幸福や健康という意味のほか、身体だけでなく、精神的、社会的にも満たされている広い意味の幸福を指す概念です。

ウェルビーイングが今注目されている理由として、すべての人々の幸福の上に経済や将来が成り立っているという考え方が広がってきていることが挙げられます。ウェルビーイングを推進していくことで、企業は生産性の向上離職率の低下などが期待できるだけでなく、SDGsの達成にも貢献できます。

社員のウェルビーイングを高めて企業が成長する流れをつくれば、非常に効果の高い取り組みとなります。ぜひウェルビーイングの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

参考文献
※[1] WORLD ECONOMIC FORUM「グレート・リセット(The Great Reset)」ツイン・サミット形式で2021年に始動
※[2] 『日本経済新聞』2020年10月29日「幸せ中心社会への転換(1)『ウェルビーイング』の重要性」
※[3] WELL BEING ECONOMY ALLIANCE “The Wellbeing Economy Alliance (WEAll) is the leading collaboration of changemakers working together to transform the economic system.
※[4] WELL BEING ECONOMY ALLIANCE “Wellbeing Economy Governments

※[5] OECD Publications “The OECD Education 2030 project Education” Japanese「2030プロジェクトについて
※[6] 総務省「第1部 特集 ICTがもたらす世界規模でのパラダイムシフト
※[7] GALLUP BUSINESS JOURNAL JULY 22, 2010 “Your Career Well-Being and Your Identity
※[8] GALLUP BUSINESS JOURNAL AUGUST 19, 2010 “Your Friends and Your Social Well-Being
※[9] GALLUP BUSINESS JOURNAL SEPTEMBER 16, 2010 “Your Spending and Your Financial Well-Being
※[10] GALLUP BUSINESS JOURNAL OCTOBER 21, 2010 “Exercise, Sleep, and Physical Well-Being
※[11] GALLUP BUSINESS JOURNAL NOVEMBER 30, 2010 “Giving and Your Community Well-Being
※[12] Penn Art & Sciences POSITIVE PSYCHOLOGY CENTER “PERMA™ THEORY OF WELL-BEING AND PERMA™ WORKSHOPS”, The PositivePsychology.com team “Seligman’s PERMA+ Model Explained: A Theory of Wellbeing

※[13]厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況
※[14] Google “Digital Wellbeing
※[15] Macquarie “Careers Diversity, equity and inclusion
※[16] IKEA “Ligestilling, mangfoldighed og inklusion gør vores arbejdsplads til et hjem
※[17] 株式会社アシックス コーポレートサイト「アシックスの健康経営
※[18] 楽天「従業員
※[19] 東急株式会社「(人材戦略)ダイバーシティへの取り組み

この記事の監修者
阪口 竜也 監修者:フロムファーイースト株式会社 代表取締役 / 一般社団法人beyond SDGs japan代表理事
ナチュラルコスメブランド「みんなでみらいを」を運営。2009年 Entrepreneur of the year 2009のセミファイナリスト受賞。2014年よりカンボジアで持続型の植林「森の叡智プロジェクト」を開始。2015年パリ開催のCOP21で日本政府が森の叡智プロジェクトを発表。2017年には、日本ではじめて開催された『第一回SDGsビジネスアワード』で大賞を受賞した。著書に、「世界は自分一人から変えられる」(2017年 大和書房)