生分解性プラスチックとは?問題点と普及率|企業の取り組みも紹介

私たちは、プラスチック製品に囲まれています。

スーパーの野菜や肉を包装するトレイやラップ、お菓子の袋、洗剤のボトル、テレビや電子レンジの本体に至るまで、プラスチックなしでは今の私たちの生活は成り立ちません。

一方で、ここまで世の中にあふれかえったプラスチック製品が、地球全体の環境を、ひいては私たちの未来を脅かしているとも言われています。

そうした状況を変えるべく開発が進められているのが、生分解性プラスチックです。

この記事では、生分解性プラスチックとは何か?から始まり、世界・日本の取り組み、個人ができるアクションまで踏み込んで見ていきます。

早速、生分解性プラスチックとは何か確認しましょう!

目次

生分解性プラスチックとは

生分解性とは、簡単に言うと物質が微生物などの力で細かく分解される状態です。しかもただ粉々になるだけでなく、やがて目に見えなくなって自然の状態へ吸収されるくらいまで細かくなることをいいます。

つまり、生分解性プラスチックとは微生物で分解され、自然へと還っていくプラスチックである、といえます。

日本バイオプラスチック協会による定義

日本バイオプラスチック協会では、生分解性プラスチックを、こう定義しています。

  • 微生物の働きで分子レベルまで分解され、最終的には二酸化炭素と水となるもの
  • 国際的な規定の試験方法と基準に基づき審査されたもの
  • 含有物や分解過程で、安全性などの基準をクリアしたもの

これらの定義を満たした製品のみが、「生分解性プラマーク」のついた生分解性プラスチックとみなされることになります。

非生分解性プラスチックとの違い

では、非生分解性のプラスチックは生分解性プラスチックと何が違うのでしょう。非生分解性プラスチックは大きく「化石原料由来」と「天然由来」に分けられます。

化石原料由来

まず化石原料由来の非生分解性プラスチックは、いわゆる普通のプラスチック製品として、昔から私たちの生活で使われてきた材料です。コンビニのお弁当から家電のボディまで、現在でもプラスチック製品の99%がこれにあたり、生分解されることはありません

天然由来

そしてもうひとつの非生分解性プラスチックは、サトウキビなどの植物から作られる天然由来の素材です。これは「バイオマスプラスチック」と呼ばれており、生分解性プラスチックと同一視する人も多くいますが、異なるものです。

「バイオマスプラスチック」は、「化石原料から作られていないプラスチック」ということであり、生分解してもしなくても関係ありません。したがって、生分解しないものはたとえ植物由来でも「生分解性プラスチック」ではありません。

一方で、逆に石油など化石燃料で作られていても、水と二酸化炭素に生分解されれば「生分解性プラスチック」なのです。

非生分解性プラスチックとの違い

では、もう少し踏み込んで、生分解性プラスチックの種類と原料を見ていきましょう。

生分解性プラスチックは、その原材料の由来から3種類に分類されます。1つずつ確認します。

化石素材由来

石油や天然ガスなどの化石燃料を原材料として使われる生分解性プラスチックです。

かつては化石燃料プラスチックは自然界では分解できないものでしたが、目覚ましい研究開発の結果、土中の微生物の力で水と二酸化炭素に分解される素材となっています。

代表的なものに

  • ポリビニルアルコール(PVA)
  • ポリグリコール酸(PGA)
  • ポリブチレンサクシネート(PBS)
  • ポリブチレンアジペート/テレフタレート(PBAT)

などがあります。

バイオ素材由来

サトウキビやキャッサバ、甜菜などの植物や、植物から抽出されるデンプンなどが原料の生分解性プラスチックです。主なものにポリ乳酸(PLA)ポリヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート(PHBH)があります。

・混合素材

化石燃料由来とバイオ素材由来、それぞれの弱点を補うために、両者をかけ合わせて開発されたプラスチックです。澱粉ポリエステルやバイオPBS、PLA+PBATコンパウンドが挙げられます。

理想は植物性・バイオ素材由来の生分解性プラスチック

自然環境の面でいちばん理想的なのは、植物性・バイオ素材由来の生分解性プラスチックです。その理由として、

  • 材料となる植物が育つ過程で二酸化炭素を吸収すること
  • もともと天然原料なので土壌での分解にも適していること
  • 焼却しても二酸化炭素の排出量は化石燃料由来のプラスチックより少なく済む

といった点があります。

中でもポリ乳酸(PLA)は現在最も期待される素材として研究改良が進んでいます。

ここまでが、生分解性プラスチックの大まかな内容です。続いて、生分解性プラスチックがなぜ話題になっているのかを掘り下げていきましょう。

なぜ生分解性プラスチック注目されている?

生分解性プラスチックが注目される最大の理由に、環境問題への関心の高まりが挙げられます。

脱炭素社会へ舵が切られている

近年、温室効果のある二酸化炭素(CO2)が大気中に増えすぎることで、地球温暖化が進んでいます。地球温暖化に伴い気候も変動し、干ばつや豪雨などの異常気象が頻繁に見られるようになり、自然災害が増加しました。

アメリカやオーストラリアの山火事、ヨーロッパ各地の洪水、そして日本各地での台風や豪雨での水害。これらは今や毎年のように発生し、私たちの社会にもたらす被害は甚大です。

そうした温室効果を引き起こすCO2の排出を抑えるべく、世界は脱炭素社会へシフトしつつあります。

脱炭素社会を目指す上で、プラスチックゴミは二酸化炭素の排出増加につながるため、解決しなければならない問題なのです。

プラスチックゴミによる二酸化炭素の増加

プラスチックゴミというと、リサイクルされているイメージがありますが、実はそのほとんどは焼却処分されています。

そして世界の人口は現在も増え続け、貧しかった途上国でも産業が発達し、それに伴いプラスチックの生産量も下のグラフのように年々増えています。

【プラスチックの生産量の推移】

※主なプラスチック製品

下から:包装容器/運送用品/建築資材/電化製品/消費者向けおよび機関向け製品/工業器械/繊維

これだけプラスチックゴミが増えれば、当然燃やす量も増加するため、二酸化炭素も大量に排出されます。結果的に温暖化の勢いは加速し、気候変動の原因となっているのです。

2050年にはプラスチックゴミが魚たちの量を上回る可能性がある

温暖化以外にも、プラスチックゴミを適切に処分せずに海に流出している問題も指摘されています。現在、年間800万〜2,000万トンのプラスチックゴミが世界中の海に流出しており、これは不法投棄ポイ捨てによるものです。

このまま対策を施さなければ、2050年にはマイクロプラスチックの質量が世界中の魚や貝類を上回ると予測されます。海を漂うプラスチックゴミは生態系に深刻な影響を及ぼします。例えばビニール袋を飲み込んだことが原因で死んだ海亀、釣り糸が絡まって動けなくなった鳥など、海洋に投棄されたゴミのために犠牲になった生き物は数知れません。

マイクロプラスチック問題

さらに、マイクロプラスチックも問題視されています。

マイクロプラスチックとは、海に捨てられた、または陸から川を通じて海へ流れ込んだプラスチックゴミが、水や紫外線などによって劣化して粉々になり、小さな粒として海洋に漂っているものです。

このマイクロプラスチックが海の、そして陸の生態系にも悪影響をもたらしていることがわかってきました。

影響①海水中の有害物質を高濃度で吸収

マイクロプラスチックを構成する高分子は、海中に溶けている発がん性物質のポリ塩化ビフェニル(PCB)、神経系疾患の原因となる有機リン化合物高濃度で吸収しやすい性質があります。さらにこうした残留性有機汚染物質は自然環境では分解されず、長期間残り続けます

影響②有害物質を含むプラスチック片が海洋生物の体内へ取り込まれる

このような有害物質を吸収したマイクロプラスチックを、小魚類は餌と間違えて食べてしまいます。その小魚をさらに大きな魚(マグロ、カツオ、クジラ)が大量に捕食すれば、当然有害物質はさらに蓄積されます。そして私たちがその魚たちを食材として食べる可能性も否めません。

現在のところ、人体へ有害となるレベルではないとされていますが、気がついた時には手遅れになる日が来るかもしれません。このように、プラスチックゴミは温暖化水質汚染など、さまざまな面の原因となっており、一刻も早く解決しなければならないのです。

生分解性プラスチックのメリット

これらの課題に対し、環境破壊を防ぎつつ経済活動も両立させる生分解性プラスチックは、脱炭素社会へと移行するために大きな役割を果たすことが期待されています。

では生分解性プラスチックを使うとどのようなメリットが見込めるのでしょうか。

メリット①廃棄物の削減

最もわかりやすいメリットは、プラスチックゴミを中心とする廃棄物を減らすことができることです。

世界ではまだまだ分別回収されず路上や埋立地にプラゴミが溢れる国はたくさんあります。

そうした国でも、土壌で分解できる生分解性プラスチックが普及すれば、廃棄物の削減につながります。だからといってゴミの路上放置や川・海への投棄をしていいことにはなりません。技術面と共に、ゴミ廃棄ルールを守る意識を高める必要があります

メリット②二酸化炭素の削減

焼却するプラスチックゴミを減らし、自然に還る生分解性プラスチックに代替できれば、気候変動の原因となる二酸化炭素の増加を抑える効果が期待できます。

もちろん生分解性プラスチックでも焼却や生分解で二酸化炭素は発生しますが、植物由来の製品なら植物が育つ過程で光合成により二酸化炭素が吸収され、実質プラスマイナスゼロ、いわゆるカーボンニュートラルということになります。そうしたメリットゆえ、生分解性プラスチックも石油由来から植物由来へと比重が増えつつあります。

メリット③化石資源の削減

ほとんどのプラスチックは、石油を中心とした化石資源から作られています。石油を原料とした商品は地球の環境に大きな負荷をかけているだけではありません。

日本でも原油価格の変動で備蓄原油の放出が行われたように、産油国の供給に依存する経済は世界に混乱をもたらします。植物由来のプラスチックに軸足を移していくことで、化石資源の削減と節約にも貢献することができます。

メリット④分解にかかる時間が短い

通常のプラスチックゴミが自然界に流れ出た場合、分解するまで数百年かかると言われています。

対して、生分解性プラスチックが分解する時間が短くて済みます。具体的には、

  • 一般的なサイズのゴミ袋であればおよそ90日で粉々になる
  • ペットボトルであればおよそ40日で粉々になる

とされています。(参考:日本バイオプラスチック協会)

とはいえ、微生物の数や温度などの環境によって分解する時間は変化します。そのため、一概に上記の期間で分解するとは言えないことには注意しなければなりません。筆者が2021年5月に埋めた生分解性プラスチックのゴミ袋は、1年経った今でも形を残していました。

また、土に還るからと言って、ゴミをポイ捨てしても良いということではないことにも留意しましょう。

生分解性プラスチックが使用されている製品や使用例

では、どのような商品に生分解性プラスチックが活用されているのでしょうか。ここでは代表的なものを5つ紹介します。

製品①農業・土木資材(マルチフィルム、獣害対策ネットなど)

農業用資材は生分解性プラスチックが最も活用に適した分野です。有機物ゴミ(家畜排泄物など)と一緒に処分することで堆肥化などのリサイクルもできるほか、使用後の回収や分別に手間を省けるので作業効率の向上も期待されます。

製品②容器・カトラリー類

私たちの生活で出るプラスチックゴミのうち、その47%、一般廃棄物でいうと実に8割が「包装・容器/コンテナ類」です。その中には、スーパーやコンビニのお弁当、お惣菜、スプーンなどが含まれます。

これを生分解性に代替すれば環境への負荷はかなり軽減されます。以前は耐熱性や耐薬品性、食材への影響などが課題でしたが、研究が進んで改良され、従来のプラスチックと遜色ない性能を示しています。

製品③袋類(ゴミ袋、レジ袋、エコバッグ)

ゴミ袋、レジ袋、エコバッグなどに活用される機会も増えてきました。特に植物由来の袋なら焼却しても埋めても安全なので、現在広く普及が進んでいます。合成繊維への加工技術が進み、おしゃれで機能性に優れたエコバッグも登場しています。

製品④梱包資材

ネット通販の需要が増えるにつれ、緩衝材など梱包用の資材もプラスチックゴミ増加の一因となります。PBATPLAの混合素材を使った梱包箱は、使い捨て梱包資材や発泡スチロールの代替製品として期待されます。

その他

変わったところでは、骨壷に生分解性プラスチックが使われているケースもあります。材料にはポリ乳酸が使われ、土壌中で生分解して自然に還るというコンセプトで、樹木葬用として多くの市営墓地で採用されています。

このほかサバイバルゲームのモデルガンに使われるBB弾にも、生分解性プラスチックが使われているものがあります。野山に散らばってしまうと回収が難しいため、生分解できれば環境への負荷が低減されます。

生分解性プラスチックのサイクル

続いては、生分解プラスチックはどのように使われ、どのようなサイクルで廃棄、循環されるのかを、日本バイオプラスチック協会による図をもとに見ていきましょう。

先述したように、素材メーカーから製品化された生分解性プラスチック製品は、いろいろな商品に加工されて販売されています。そしてその役割を終えた製品は、主に、

  1. 畑や土壌に埋めて生分解させる
  2. 分別回収して堆肥化施設で分解させる

の2通りの処理に回されます。

①畑や土壌に埋めて生分解させる

これは最も単純な方法です。畑や菜園、家庭用コンポストに埋めて加水分解を起こし、微生物によって完全に分解されます。ただし材質によっては、土の温度や湿度が不十分だと分解しないものもあります

②分別回収して堆肥化施設で分解させる

主に生ゴミの袋や食品容器などに使われた生分解性プラスチックを、処理施設で堆肥化させます。分解の過程で発生したメタンガスは回収されて、発電などのエネルギー源に使われます

どちらの処理方法でも、生分解性プラスチックは最終的に分子レベルまで分解され、二酸化炭素に変わります。

生分解性プラスチックの課題・問題点・デメリット

こうしてみるといい事ずくめのような生分解性プラスチックですが、そこにはまだ多くの課題があり、広く普及するには至っていません。また、その特性ゆえに、否定的な見方をされることも少なくありません。

①耐熱性や強度が低く、製品寿命が短い

生分解性プラスチックは、分解しやすいという性質上、耐熱性や耐油性、強度を求められる用途には不向きとされてきました。現在、大手コンビニでも弁当や惣菜の容器にバイオマスプラが採用されていますが、生分解性ではありません。

しかしこうした欠点は、研究や改良によりだいぶ改善されており、ポリ乳酸でも電子レンジで使える耐熱性がある製品が出ています。

②コストがかかる

普及へのネックになるのがコストの問題です。生分解性プラスチックは開発や生産の手間を考えると高価になり、2020年の時点で100%バイオマス由来のPHA系プラスチックの価格は、従来のPPやPEと比較すると2倍程度とされます。

ただこれも将来的に技術革新や量産化が進めば、より価格が下がることが期待されます。これから生分解性プラスチックを導入したい企業や店舗は、環境への貢献を商品の付加価値としてアピールすることも必要でしょう。

③適切な分別が必要

たとえ生分解性プラスチックが自然に戻るとはいえ、生分解できないプラスチックと同じように燃えるゴミとして廃棄してしまってはメリットを生かせません。燃やしても有害物質の発生はないので安全ではありますが、焼却にかかるエネルギーやコストを考えると、適切な分別が求められるでしょう。

処理や分別に関する理解の促進とともに、法的な枠組みの制定が急がれます。

生分解性プラスチックに関する世界の取り組み

ここまで生分解性プラスチックについて詳しく見てきました。

デメリットや課題を残すものの、脱炭素社会の実現に向けて生分解性プラスチックの普及は不可欠です。そこで次では、世界の国や地域で行われている取り組みを見ていきましょう。

欧州連合(EU)の取り組み

ヨーロッパは、どの国でも環境問題や気候変動に対して強い危機感を持っており、2018年にはEUとしてプラスチックに関する経済戦略を出しています。

具体的には、

  • 2020年までに使い捨てプラスチック製品を原則禁止
  • 2030年までにプラスチック包装材やプラスチック廃棄物の50%以上をリサイクル化する
  • 生分解性プラスチックの定義と製品ラベリングに関する共通ルールの策定

などです。

EUでのルール策定は下記の内容になります。

  • 生分解や堆肥化の条件、性能、用途、使用割合、材料や製品の種類に基づいて定義
  • 消費者に対し、ラベリングの明確さや良し悪しの事例を紹介
  • 堆肥への有害物質や石油由来プラスチックの混入など、有機性廃棄物処理への影響を調査

フランス

フランスはEUの中でも特に環境問題に熱心で、2020年から非生分解性のポリエチレンやポリスチレン製の使い捨てプラスチックが禁止となりました。生分解性プラスチック市場でも石油燃料大手のトタルはオランダの乳酸製造会社コービオンと合弁会社を立ち上げ、植物由来のポリ乳酸「Luminy」を生産。政府や産業界の後押しもあり、他の企業も製品開発を進めて世界の主導権を握っています。

ドイツ

高い工業力を持つドイツでは、再生可能な原料を奨励する専門事業団体を国が支援しています。

例えば、BASF社の「エコフレックス」は現在国内外で広く活用されている高機能な生分解性プラスチックが挙げられます。また、ドイツ国内にある欧州最大の研究機関では、より優れたポリ乳酸素材の研究が続けられています。

アメリカ

アメリカといえば大量生産、大量消費のイメージが強く、実際使い捨てプラスチック製品の流通で世界トップレベルでした。2000年代から堆肥化できない使い捨てプラスチックの規制が各州や自治体で始まったものの、国内では賛否が分かれており、国全体での規制は難しいのが現状です。

とはいえNatureWorksなど世界トップクラスのシェアを誇るメーカーも多く、アメリカでは企業や州、自治体が生分解性プラスチックへの取り組みを主導する動きが強いようです。

中国

もう一つの超大国中国も、世界一のプラスチックゴミ排出国です。人口の多い中国は環境問題に与える影響も大きく、国をあげてプラスチックゴミ対策に乗り出しています。

例えば、2020年末までにプラスチック買い物袋や使い捨て食器などの生産や販売を禁止し、生分解性容器や農業用の生分解性フィルムを推奨するなどの強化策を発表しています。生分解性プラスチックは海外メーカーの工場が中国に進出しており、国内メーカーの成長が今後の課題です。

インド

13億の人口を抱えるインドでも、プラスチックゴミの問題は深刻です。そのためインドでは2022年までに、食器やペットボトル、個別包装などすべての使い捨てプラスチックを禁止する方針を発表しました。

インド国内でも生分解性プラスチックの研究や新商品の開発は続けられており、更なる普及が急がれます。

生分解性プラスチックに関する日本の取り組み

一方で、日本はどうでしょうか。

2002年バイオテクノロジーに関する国家戦略

日本の生分解性プラスチックに対する取り組みは意外と早く、2002年にはバイオテクノロジーに関する国家戦略が打ち出されています。

世界に先駆けて化石燃料由来ではないプラスチックの研究開発と普及が進んでいたものの、2008年のリーマンショックによる恐慌と東日本大震災の影響により、生分解性プラスチックの開発は下火になってしまいました。

その後2019年のG20大阪サミットで海洋プラスチックゴミの対策が議題となり、日本は再びバイオプラスチックの普及促進に乗り出します。

現在は業界をリードする大手化学企業に加え、中小企業を中心に生分解性プラスチックの商品開発が盛んになっています。

日本企業の取り組み

では、生分解性プラスチックに対する企業の取り組みはどうなっているのでしょうか。生産する側、利用する側、両方の視点から紹介していきます。

【高機能ポリ乳酸容器で業界をリード】ユニチカ

日本屈指の樹脂・繊維メーカーであるユニチカは、早くから持続可能な生分解性素材・テラマックの開発を続けてきました。植物由来の糖やデンプンからなるポリ乳酸に、独自の技術で改良を加え、熱湯や電子レンジでの加熱にも耐える発泡容器・食品容器は、ポリ乳酸由来の製品としては世界初。日用雑貨やフィルム、繊維など、幅広い用途で使われています。

【加工用トマト栽培に生分解性フィルムを使用】カゴメ株式会社

トマトジュースやケチャップでおなじみのカゴメでは、商品に使われるトマト栽培のために、畑の畝(うね)を覆うフィルムを生分解性のものにしています。収穫後はそのまま土と一緒にすいてしまえば自然に返ります。

高齢化する契約農家にとってフィルム回収の作業は負担になりますので、こうした取り組みは働く側にとっても大きなメリットになります。

バイオプラスチック導入事例集

【海洋生分解性レジ袋を開発】株式会社キラックス

この会社では三菱ケミカル株式会社との協力で、同社の素材BioPBS™を使った日本で初めての海洋生分解性プラスチックのレジ袋を実用化しました。

海洋でも1年で90%が分解されたというこのレジ袋は、大分県中津市のスーパーに導入されています。

>>関連記事

株式会社キラックス|オーダーメイドな生分解性プラスチック包材で「つくる責任・つかう責任」を果たしたい

【生分解性プラスチックストローを採用】株式会社ゴールドウイン

飲食業界ではストローを植物由来の材料に切り替える動きが活発です。その中で、「ノースフェイス」などのスポーツブランドを取り扱う株式会社ゴールドウィンでは、「ノースフェイスカフェ」で使うストローを、植物由来・生分解性プラスチック製にしました。セブンイレブンのセブンカフェでも採用され話題となったこのストローは、株式会社カネカの生分解性ポリマーPHBH®を使用しており、高い生分解性を示しています。

個人にできること

これからますます重要となってくる生分解性プラスチック。企業や店舗の取り組みによって市場の伸びが期待されますが、プラスチック製品の大半はまだまだ化石原料由来の非生分解性で占められています。

私たちが普段の生活で生分解性プラスチックを使い、普及につなげるにはどのようなことをすればいいのでしょうか。

正しい知識と情報を得る

まず大事なのは、生分解性プラスチックに関する正しい知識と情報を得ることです。

にもかかわらず、

  • 生分解性と非生分解性素材の混合商品を「生分解性」として取り扱う
  • トウモロコシを原料に使うことで食糧危機をもたらす、と誤解する

など、世の中にはいまだ生分解性プラスチックについて正しい知識や情報が伝わっているとはいえません。

こうした状況を改善するために、信頼のおける公的機関や団体のウェブサイトから情報を得る、書店や図書館でバイオプラスチックに関する資料を読むなどして、生分解性プラスチックに関する理解を深めていきましょう。

信頼のできる認証マーク入り商品を選ぶ

私たちの身の回りの商品は、ほとんどが「プラ」マーク表示のみで「これは生分解性プラスチック」とわかる商品は実は意外とみつからないものです。ネットの通販で探してみても、それがどの程度「生分解性」なのか、どのような素材が使われているか、正しい情報を把握することは簡単ではありません

ひとつの目安として、各国の認証基準を満たす「識別表示制度」に基づいた表示マークがあります。商品を選ぶときは、この識別表示マークの有無を確認してみましょう。

JBPA(日本)

BPI(米国)

European Bioplastics

不要なプラスチック製品の使用は減らす

どうしても必要なもの以外は、プラスチック製品ではなく、木や竹、ガラス、陶器など自然素材の商品に切り替えることも実は重要なことです。

他にも天然繊維のセルロース製スポンジ、木のしゃもじ、杉のまげわっぱランチボックスなど、身近な日用品でプラスチックに代替できるものはたくさんあるのです。

例えば、ファイン株式会社より発売されている「竹の歯ブラシ」は、柄は竹とポリ乳酸、ブラシも豚毛、馬毛、または植物性バイオプラが使われ、2年という期限で生分解されます。

まだまだ世の中の主流である化石由来・非生分解性プラスチックの消費を控え、割合を減らすことで、逆説的に生分解性プラスチックのシェアも増え、社会的意義と存在感も増していきます

生分解性プラスチックとSDGsとの関わり

最後に生分解性プラスチックとSDGsの関係を見ていきましょう。

SDGsとは

SDGsとは「Sustainable Development Goals」の頭文字からとったもので、2015年の国連サミットで採択された国際目標です。日本語では「持続可能な開発目標」と訳されています。SDGsには、「誰一人取り残さない」を合言葉に、世界が達成しなければならない17のゴールと169のターゲットを掲げています

生分解性プラスチックは、その中でも以下の3つのゴールに関連してきます。

目標12「つくる責任 つかう責任」

目標12の「つくる責任 つかう責任」とは、「より少ないもので、より大きく、より上手に効果をあげる」ことをゴールにしています。特に、

【12.2】2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。

【12.4】2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。

【12.5】2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。

などは、生分解性プラスチックの普及により、達成に大きく貢献できることが見込まれます。

そのためには、企業には「地球に優しい製品をつくる責任」、消費者である私たちには「地球に優しい製品を選んでつかう責任」が求められます

目標13「気候変動に具体的な対策を」

目標13「気候変動に具体的な対策を」は、気候変動をもたらす温室効果ガス、中でも大気中の二酸化炭素や有害物質を減らすことです。そしてこのゴールの達成に向けても、生分解性プラスチックは大きな役割を果たします。

生分解性プラスチックへとシフトして余分な二酸化炭素を出さないことは、気候変動に歯止めをかける具体的な対策となるのです。

目標14「海の豊かさを守ろう」

海へ流れ込むプラスチックゴミを削減し、海洋環境を守ることは目標14「海の豊かさを守ろう」の、

【14.1】2025年までに、海洋堆積物や富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。

の達成につながります。その解決策として期待されているのが生分解性プラスチックです。

かつては「生分解性プラスチックはマイクロプラスチック問題の解決にはならない」という批判もありました。これは、土壌中やコンポストに比べ海中では生分解に時間がかかり、生分解性プラスチックもマイクロプラスチック化してしまう、という理由によります。

しかし現在では、技術開発により水中での生分解性能は向上。また、海洋ゴミの多くは陸地からのもので、海に流れ着いてマイクロプラスチック化する頃には、分解が相当進むという研究結果も出ています。もちろん最も大事なのは、陸でも海でもポイ捨てをせず、不法投棄をそもそもしないことです。そうした社会の規範や制度の確立と最新技術の両輪が、問題の解決へとつながります。

まとめ

プラスチック製品は便利で使いやすく、現代の私たちの生活をとても豊かなものにしてきました。反面、大量の化石資源を使い、燃やすその負の側面は確実に地球の未来を脅かしています。自然環境や生物への負担を最小限に抑えながら、日常生活に必要なプラスチック製品を使っていく。

その矛盾する問題に対し解決の糸口を見出すために、生分解性プラスチックという選択肢を私たちが正しく理解し、使うことは大きな意義をもつのです。

〈参考文献〉
脱炭素時代のグリーン材料 バイオプラの教科書/小松道男:日経BP社
生分解性プラスチックの素材・技術開発ー海洋プラスチック汚染問題を見据えて/望月政嗣 監修:株式会社エヌ・ティー・エス
日本バイオプラスチック協会: JBPA
生分解性プラスチック製品、中小企業に目立つ意欲的な取り組み | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)
生分解性プラスチックの課題と将来展望 | 三菱総合研究所(MRI)
知って得する!グリーンプラマークから生分解性プラマークへの変更 (kiracs.co.jp)
日本初の海洋生分解性プラスチックレジ袋完成!製造企業のキラックスが背景を解説 (kiracs.co.jp)
ゴールドウイン直営店舗で「カネカ生分解性ポリマーGreen Planet™」ストローを採用 4月下旬 環境配慮の観点から「THE NORTH FACE」のカフェ併設5店舗で使用開始 | COMPANY | GOLDWIN
循環経済法で使い捨てプラスチックからの脱却を目指す(フランス) | ビジネス短信 – ジェトロ (jetro.go.jp)
USA発サステナブル社会への道―NYから見たアメリカ最新事情第24回 米州や自治体のプラスチック規制 | 一般財団法人 地球人間環境フォーラム (gef.or.jp)
バイオプラスチック導入事例集/環境省
PlasticsSmart|バイオプラスチックを取り巻く 国内外の状況
三井物産戦略研究所|新たな国際規格発⾏で普及に向けて進展する 海洋分解性プラスチック
土に還る骨つぼ|京浜テクノ
一般社団法人 プラスチック循環利用協会 2019年 プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況

この記事の監修者
阪口 竜也 フロムファーイースト株式会社 代表取締役 / 一般社団法人beyond SDGs japan代表理事
ナチュラルコスメブランド「みんなでみらいを」を運営。2009年 Entrepreneur of the year 2009のセミファイナリスト受賞。2014年よりカンボジアで持続型の植林「森の叡智プロジェクト」を開始。2015年パリ開催のCOP21で日本政府が森の叡智プロジェクトを発表。2017年には、日本ではじめて開催された『第一回SDGsビジネスアワード』で大賞を受賞した。著書に、「世界は自分一人から変えられる」(2017年 大和書房)