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防災の日とは?9月1日になった理由や子ども向け行事例も

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この数十年を振り返ってみると、地震や豪雨、台風、豪雪などの大きな災害がたびたび起きています。「自分の住む地域は大丈夫だろう」と思っても、災害はいつどこで起こるか分かりません。そのため、多くの時間を過ごす家庭や学校、職場などで防災について考え、行動することは大切です。

この記事では、防災の日や防災週間、なぜ9月1日になったのか、具体的に何をすれば良いのか、子ども向けの行事例、私たちができること、SDGsとの関係について解説します。

防災の日とは

防災の日とは、台風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波などの認識を深めて備える日で、毎年9月1日に設けられています。昭和35年に、災害を未然に防止するほか、被害を軽減する目的で制定されました。

「防災の日」になると、政府、地方公共団体、防災関連諸機関、国民は、防災への意識を高め、災害に対する心構えをします。今では、国民の半数以上が「9月1日は防災の日」であることを知っていると答えており、私たちの生活の中にも定着しつつある日です。[1]

防災週間とは

防災週間とは、防災の日の9月1日を含む、8月30日から9月5日までの1週間のことを言います。防災の日と同じように、災害への備えや心構えをすることを目的として、昭和57年に設けられました。防災の知識を深められる講演会や展示会、防災訓練、防災功労者の表彰などの行事が、政府や地方公共団体などにより全国的に実施されています。

津波防災の日とは

津波防災の日は、津波対策の理解と関心を深めるための日として、毎年11月5日に定められています。平成23年に制定された「津波対策の推進に関する法律」の中に規定されており、この日には、国、地方公共団体は、その趣旨にふさわしい行事が実施されるよう努めるものとされています。

11月5日は「安政南海地震」が発生した日

津波防災の日が11月5日である理由は、昔の実話に関わりがあります。安政元年(1854年)11月5日、伊豆から四国までを最大震度7の地震が襲いました。このとき、紀州藩広村(現在の和歌山県広川町)に生まれ、関東で家業を営んでいた濱口梧陵(はまぐちごりょう)は、村人に避難を呼びかけるとともに、稲むらに火をつけて、暗闇の中でも逃げられるよう誘導をしました。この実話を元に「稲むらの火」という物語が作られ、今に伝えられています。[ii]

なぜ9月1日が防災の日に制定された?

防災の日が9月1日に制定された理由は2つあります。

関東大震災が発生した日

大正12(1923)年9月1日、神奈川県西部を震源とするマグニチュード7.9と想定される大地震が発生しました。東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、山梨県などの首都圏は、震度6弱から7相当の揺れを観測しています。全国での死者・行方不明者は10万5千人超、住宅全壊・消失建物は合わせて32万余りと、明治以降の日本では最大規模の災害でした。[iii]

9月1日は大災害をもたらした関東大震災が発生した日であることから、防災の日に定められたという経緯があります。

雑節の二百十日に当たる日

もう1つの由来は、暦の上で台風シーズンを迎えるのが9月1日頃であるというものです。季節の移り変わりを表す日に、節分や彼岸、八十八夜などがあり、これらをまとめて「雑節(ざっせつ)」と言います。そして雑節の1つに「二百十日(にひゃくとおか)」があり、立春から数えて210日目に当たる日を指します。

「二百十日」はちょうど9月1日頃であり、イネの開花期である一方、台風が襲来することから厄日とされています。戦後最大の被害をもたらした伊勢湾台風(昭和34年)がこの時期の9月26日に起きたことも、防災の日の制定のきっかけになったといわれています。[iv]

防災の日は具体的に何をする?

防災の日は、特にやることが決まっているというわけではありません。とはいえ、災害を防いだり被害を最小限に抑えたりする対策が一般的に行われています。家庭や学校、職場でできる「確認する」取り組みを3つ紹介します。

防災マップで避難場所を「確認する」

自然災害が起きたときの避難経路や避難場所、防災施設などの情報が掲載されている地図が「防災マップ」です。「防災地図」「災害予測地図」「ハザードマップ」などとも呼ばれています。各自治体が紙面やインターネットで発行しているほか、全国の状況をまとめたサイトもあります。

自宅周辺の情報は確認していても、職場や毎週行くような場所の危険性は案外知らないものです。災害はいつ起こるか分かりません。常に防災マップで行動範囲の状況を調べておくことが大切ですが、防災の日に改めて確認しておくと良いでしょう。

防災用品を「確認する」

いざ災害が起きたときのために用意しておきたいのが、防災用品です。水や食品のほか、懐中電灯、洗面用具、子どものミルクや女性の生理用品などについて、必要なものがそろっているか、使用期限・賞味期限が切れていないか、使える状態かなどの点検を行います。

災害に備えて何をどのくらい準備すれば良いのかについては、自治体をはじめ、さまざまな機関から情報が提供されています。インターネットなどで簡単に調べることができるので、参考にすると良いでしょう。

例)防災用品チェックリスト

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連絡手段を「確認する」

災害が発生したとき、家族とどのように連絡を取り合い、安否を確認するのかを話し合っておくことも必要です。「連絡を取り合う方法は何か」「集合場所はどこか」などを決めておきましょう。

参考までに、災害時には次のような連絡手段があります。

災害用伝言ダイヤル(171)電話で「171」をかければ、伝言を録音できるサービス。家族などが全国どこでもその録音を聞くことができる。
災害用伝言板(web171)→サイトへはこちらからインターネットの災害用伝言板(web171)にアクセスし、電話番号を入力すれば、伝言を登録できるサービス。伝言を確認するときは、登録したときの電話番号を入力する。

上記の他にも、NTTドコモやau、ソフトバンクなどの業者でも災害用のサービスを提供しています。

【子ども向け】防災の日に行う取り組み事例

災害が起きたときに特に注意したいのが、子どもや高齢者、障がい者など、自力での避難が難しい人たちの対応です。ここでは、防災の日に取り組みたい、子どもに必要な防災についての学びを紹介します。

避難訓練をする

災害時を想定した避難訓練を行います。ポイントは、①安全に避難できる②避難方法に慣れるの2点を目標に行います。どのような危険があるのか、それに対してどのような指示を出すのかなどの確認をします。また、日常とは異なる非常事態に慣れることも必要です。実際に訓練をして初めて分かることもあります。問題点を洗い出して対策をしましょう。

また、③保護者への連絡や引き渡しの方法についても決めておきます。どのような手段で連絡するのか、どこに避難するのか、といった情報を保護者に伝えておくことも重要です。

防災について考える

避難訓練と併せて、防災に関する知識も学びになります。例えば、避難訓練の約束事を分かりやすく説明する言葉に、「おかしもち」があります。「おかしもち」は保育園や学校などで使われる標語ですが、防災の日にあらためて伝えます。

■「おかしもち」とは

お友達や先生を押さない
危険な物があるので走らない
しゃべらないで先生の話を聞く
忘れ物などを取りに戻らない
危険な場所に近寄らない

また、防災に関する○×クイズに答えて、楽しみながら学ぶ方法もあります。

■防災に関する○×クイズの例

  • 地震がおきたら「テーブルや机の下に隠れる?」「大きな声で周りの人に知らせる?」
  • 火事を見つけた「大声で周りの人に知らせる?」「自分で火を消す?」など

その他、防災教育用の動画も公開されているので、利用してみるのも良いでしょう。

■防災教育用動画

【もし地震が起きたら…】子ども防災 避難訓練〈 保育園 幼稚園 小学校 〉みんなのライブラリー(YouTube)

【幼児向け】防災紙芝居『じょうずにひなんできるかな?』下関市消防局(YouTube)

など

非常食を食べる

災害の際は、非常食を食べることもあります。非常食は普段の食事と違うため、慣れずに戸惑う子どももいるかもしれません。子どもたちが少しでも非常食に慣れるために、また大人は食事を提供する手順や必要なものを確認するために訓練として行います。保育園や学校であれば、アレルギーを持つ子どもにどのように対応するかも決めておくことが必要です。

実際に電気やガス、水道が止まると、食生活は大きく変化します。子どもたちにとっては、水や食べ物の大切さを知る機会にもなるでしょう。

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防災に関して私たちができること

防災のために私たちができることは、防災の日の取り組みだけではありません。日頃からの備えも重要です。そこで、継続して準備したい防災対策のポイントを確認していきましょう。

地域とのつながりを大切にする

阪神・淡路大震災では、家屋の下敷きになった人たちのうち、家族や地域の人たちに救出されたのは77%と高い割合でした。地域の人との交流や近所付き合いを通じて助け合える関係を築くことは、防災の第一歩です。近所に高齢者や助けの必要な人はどのくらいいるのかといった情報も役に立ちます。まずは、あいさつから始めると良いでしょう。[v]

避難情報の意味を知る

防災情報が出された際、どのような行動が必要なのかが分からないと困ります。普段から災害の種類や警戒レベル、とるべき行動を理解しておきましょう。

警戒レベル5は、すでに安全な非難ができない命に危険な状況です。警戒レベル4避難指示が出たら全員避難します。

家具類の転倒・落下・移動を防止する

近年の地震により負傷した人の30~50%は、家具類の転倒・落下・移動が原因という報告があります。[vi]家具類によりけがをしないためには、次のような対策が有効です。

  • なるべく部屋に物を置かない
  • 家具類を固定する(L字型金具で壁にねじ止めをする、天井との間にポールを設置して固定する、粘着マットで床面に接着するなど)
  • キャスター付きの家具は、ロックをするか、下皿を使い移動しないようにする
  • ガラス飛散防止フィルムを貼り、割れたときに破片の飛散を防ぐなど

防災の日には、ねじが緩んでいないか、器具が劣化していないかなどを点検する日にしても良いでしょう。

防災とSDGs

最後に、防災とSDGsの関係を確認します。防災はSDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」につながっています。

目標11「住み続けられるまちづくりを」

目標11「住み続けられるまちづくりを」は、2030年までに水関連災害などの災害による死者や被災者の数を減らすことを目標に掲げています。また、総合的な災害リスク管理を行うことも含まれています。

防災は、まちに住む私たち自身を守ることが最も重要です。災害が起きてしまった際にまちを復旧するのは、ほかならぬ私たちです。誰一人取り残されることなく災害への備えをすることや防災への意識を高めることは、目標の達成につながります。

まとめ

防災の日は、台風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波などの認識を深めて備えをする日として、毎年9月1日に設けられています。9月1日は関東大震災が発生した日であること、また雑節の二百十日であることから防災の日に定められたという経緯があります。また、防災の日を含む8月30日から9月5日までの1週間は防災週間として、全国で防災に関わるイベントが行われています。

防災の日には、①避難場所②防災用品③連絡手段の3つの「確認」を行いましょう。子どもには、避難訓練をする、防災について考える、非常食を食べるなどの行事は学びになります。加えて、防災は日頃の備えも大切です。地域とのつながりを大切にするほか、避難情報の意味を知る、家具類の固定などを行いましょう。

今年の防災の日には、家庭や学校、職場でできる防災に取り組んでみませんか。

参考文献
[1] スカパーJSAT調べ 9月1日は“防災の日” 認知率は64% 「自宅周辺のハザードマップを見たことがある」70%、「自宅の最寄りの避難場所を知っている」77%
[ii] 特集 津波防災の日 : 防災情報のページ – 内閣府
[iii] 関東大震災とは? 被害の特徴・メカニズム・教訓は? – NHK
[iv] 東京消防庁<消防マメ知識><消防雑学事典>
[v] 近所付き合いの大切さ|大府市
[vi] 自宅での家具類の転倒・落下・移動防止対策|東京都防災ホームページ