三喜屋珈琲株式会社|選びぬいた農園の安心・安全・新鮮なコーヒー豆がもたらすSDGs

三喜屋珈琲株式会社 園田さんインタビュー

園田高久
1991年7月 三喜屋珈琲株式会社 入社
2012年6月 三喜屋珈琲株式会社 代表取締役 社長 就任
全日本コーヒー商工組合連合会  J.C.Q.A(全日本コーヒー検定委員会) コーヒーインストラクター講師

Introduction

京都の老舗、三喜屋珈琲株式会社の五代目社長園田高久さんは、かつて赤道直下の様々なコーヒー農園を見て歩き、貧しさのなかでも目を輝かして暮らす子どもたちに惹かれました。その出会いが原点となり、コーヒーを飲む人だけでなく、コーヒー農園の生産者や地域の幸せにも思いを致すようになりました。

今回は、園田社長に、コーヒー事業とSDGsの接点について伺いました。

環境を保全する優れたコーヒー農園との取引で、環境問題に貢献し生産地の経済を潤す

-最初に、三喜屋珈琲がどのような会社なのか、アウトラインをご紹介ください。

園田さん:1952年の戦後間もない時に、祖父園田重一が京都で開業したコーヒーショップが当社の原点です。今でこそコーヒーは一般的な飲み物ですが、当時はかなり珍しくハイカラだったと思います。

のちに三喜屋商店となり、京都という和の文化のなか、日本人好みのコーヒーを提供していました。三喜屋珈琲株式会社となった今では、関西を中心に高島屋9店舗でもコーヒー豆の売り場を持っています。長きにわたり、安心・安全・新鮮なコーヒーを提供していこうと努力し続けている会社です。

-まさに老舗ですね。<環境保全を経営の最重要課題のひとつと認識している>と貴社サイトに掲げられているのも、老舗珈琲店としての気概を持たれてのことでしょうか?

園田さん:創業者である祖父は、<技術だけでなくコーヒーそのものを愛する心、お客様を尊ぶ思い>を「コーヒー魂」と称しましたが、私もその思いを受け継いでいます。現代社会では、当然、そこに環境への配慮も加わります。

コーヒーに携わるようになってから、コーヒー農園に足を運んで様々な経験を重ねました。コーヒーの産地は赤道直下の国々が多いのですが、当時すでに森林汚染などの深刻な問題も出ていました。

コーヒー生産者の暮らしは非常に貧しかったのですが、そんな中、子どもたちが目を輝かして生きている姿に心打たれました。以来、生産者やその子どもたちの幸せというものも考えるようになったんです。

環境を保全しつつ頑張っている農園から良いコーヒー豆を買い、それを一生懸命売っていくことが、環境問題や産地の皆さんの生活に役立つ一助になります。優れた美味しいコーヒーは、消費者にも喜んで頂けます。この循環を作り出し、推進していきたいと思っています。

-お客様と取引農園の両方をとても大切にされているのですね。

園田さん:はい。たとえば、農園単位で契約をすることもあります。美味しい豆だけを買うことは可能ですが、農家からすれば、いいとこどりされるようなものです。農作物ですから、小さな豆なども出てきますよね。流用法はいろいろありますから、すべての豆を買いましょう、というのが農園単位の契約です。

認証を受けた農園以外の優れた生産者も堀り起こす

-「レインフォーレスト・アライアンス認証」、「フェアトレード認証」のコーヒー豆を販売されていますが、産地でのご体験が背景にあったのですね。認証コーヒーについて教えて頂けますか?

園田さん:レインフォーレスト・アライアンスは、さまざまな厳しい基準をクリアした農園にのみ与えられる認証です。森林・生態系の保護、土壌や水資源の保全などに加えて、生産者の労働環境や生活の向上も審査の対象です。

フェアトレードは、発展途上国の生産物や作られた物品を、先進国の会社などが適正価格で買い、対等な関係で取引する国際的な取組みで、こちらも審査を経ての認証となります。

環境を保全していて、かつ安心安全なコーヒー豆を作る農園を探していたら、認証コーヒーに行き着いたわけです。ただし、認証がないとだめ、というものでもありません。

実は、レインフォーレスト・アライアンスなどの認証を獲得するには、資金力も必要なんです。環境も保全し、さまざまな努力をしていても、正式な認証を獲得するためのお金がない生産者はたくさんいます。そういう生産者、農園も掘り起こしてあげねば、と思っています。

認証コーヒー豆を扱い始めた頃は、認証を強くアピールする売り方をしていました。今では、販売しているすべてのコーヒー豆が同レベルで、それがベース。販売員は、コーヒー豆の特徴や由来をきちんと説明できる知識を身につけていますし、現在は、認証ばかりをアピールする売り方は卒業しています。

-たしかに、認証コーヒー豆ばかりを前面に出せば、同等の努力をしている農園のコーヒー豆がかすんでしまいそうです。

園田さん:そうなんです。もともとが、子どもたちの目の輝きを大切にしたい、彼らが貧困を抜け出して豊かになれるように、という思いからでしたので。当社のラインアップはすべて優れた生産者の豆で、それらの中には実際に認証をとった豆もある、というかたちです。

実のところ、コーヒーは嗜好品であり、百人すべてが「これが一番」というものはありません。農家の方々の思いを活かせるのは、我々の「焙煎」という加工の部分です。お客様それぞれにあったものを薦めさせて頂くことが大切ですし、農園に対しては、個性を引き出してあげるのが一番大切なことだと思っています。

コーヒー豆の「認証」とは

レインフォレスト・アライアンス認証やフェアトレード認証に加え、コーヒー限定の認証として「バードフレンドリー認証」がある。渡り鳥の生息地ともなる、木陰でコーヒーの木を育てるシェードグロウン栽培や有機栽培などの審査条件を満たした農園に与えられる認証のこと。

マイボトルへの「給茶」で使い捨て容器の削減へ

-SDGsに添う活動としては、象印マホービンの提唱による「給茶スポット」にも、登録店として参加されています。このシステムや意義についてお聞かせください。

園田さん:「給茶スポット」は、マイボトルを登録店に持ってきて頂き、「給茶」してテイクアウトを楽しんでもらうシステムです。当社では、大阪府堺市の「焙煎工房 mikiya coffee」の店舗が登録店です。

ボトルに入れる内容に制限がありますので、ストレートのアイス・ホットコーヒーに限ってのご提供ですが、本来であれば紙コップ、プラカップを使用するところを、マイボトルで楽しんで頂けます。コーヒー一杯で、お客様にも環境保護活動にご参加頂けるシステムです。

このカフェは、大阪府による「ほかさんMAP」登録店にもなっています。「ほかさん」は、「捨てない」という意味の方言なんですが、容器を「ほかさん」ために、マイボトルやマイ容器で飲食物のテイクアウトができる店の検索ができるサイトが「Osakaほかさんマップ」です。

当社では、今のところはマイボトルだけの対応ですが、ゆくゆくはコーヒー豆も、マイ容器にお詰めすることなども検討中です。

マイボトルを持ってこられるお客様は環境問題への意識が高い方ですので、このシステムがあることを喜んでくださり、固定客となられることが多いんです。提供させて頂く側と、使って頂く側と、環境問題を共通項として意思が通じるのだと思っています。

天然水の産地から近隣の店舗に至るまで、Win-Winの循環型経済システム

-アイスコーヒーには、北海道羊蹄山のふきだし湧水を使用されていますね。美味しい天然水はよい自然環境の賜物かと思いますが、水へのこだわりについてもお聞かせ頂けますか?

園田さん:コーヒー成分の99%は水ですから、ウエイトは高いです。ただ、コーヒーにはどの天然水でも合うわけではありません。硬水よりは、ミネラルが少ない軟水のほうがコーヒーの味を引き出してくれます。その意味で、当社のアイスコーヒーに最適だったのが羊蹄山の天然水だったということです。

ただ、これも産地へのサポートになっています。始まりは、日本中がミネラルウオーターブームになってきたころで、各地で天然水が売られ始めていました。北海道では、どんなによい天然水でも運賃が高くなってしまうので、価格競争に勝てません。

そこで、水2ℓ100円ちょっとの時代なら、その2ℓをコーヒーにすれば、付加価値がついて500円以上でも売れますよ、という話をしました。当社のコーヒーをふきだし湧水の産地に送り、アイスコーヒーにして送り返してもらうかたちです。

-消費者も美味しいアイスコーヒーが楽しめて、産地も潤いますね。ほかにも、そのようなパートナーシップによるご活動はありますか?

園田さん:当社の近くに「麻工房 FUJITA」という、麻素材の製品を扱う店があり、コーヒー豆が入っていた麻袋を無償で提供すると、バッグや雑貨に生まれ変わるんです。当社のコーヒー豆も売り場に置いてくれるので、Win-Winの関係ですね。

廃棄物には、コーヒーの焙煎で出る薄皮のようなコーヒーかすもあります。近くに大阪府の農芸高校があるんですが、何か月かに一度そのかすを取りにきて、農業の肥料に使ってくれています。

また、挽いたコーヒーも、抽出したあとペーパーにかすとして残ります。これも、近くのパチンコ屋が取りに来て、消臭剤のようにして使っています。もちろんこれらは無償提供しています。もともとが捨てるものですから。今時は、捨てるにもお金がかかるので、取りに来て使ってくれるなら、こちらもありがたい。なおかつ、できるだけ地域が一体になって、ゴミを減らすために皆で動いているんです。

-地域の環境資源対策であり、循環型経済も成立していますね!最後に、今後の展望をお聞かせください。

園田さん:私からすれば、コーヒー屋の仕事はもともとSDGsです。繰り返しになりますが、コーヒー豆の生産地のほとんどは発展途上国。環境を保全しながら良い豆を作る農家の豆を売ることは、間接的に環境問題に貢献し、かつ、彼らの生活の向上に繋がります。

現在、私はコーヒー業界でいろいろな役職をさせて頂いていますので、何がSDGsにつながっているのかを業界全体に伝えていきたいですね。普通に売っているだけで、誰かのためになっているのがコーヒーなんです。

皆が一生懸命やっていることが、実は地球のため人のためになっているということを、すべてのコーヒー屋に発信し、皆でさらに推進していく体制を作りたいです。当社だけでなく、業界全体でそんな運動が拡がっていくように、少しずつ模索しているところです。

-コーヒー一杯で環境問題対策に参加できるとは考えてもいませんでした。これからは、コーヒーを飲むたびに産地の子どもたちの笑顔が思い浮かびそうです。本日は、貴重なお話をありがとうございました。

関連リンク

三喜屋珈琲:https://mikiya-coffee.co.jp/