#インタビュー

【SDGs未来都市】三郷町まちづくり推進課|SDGsで町の課題を解決。誰一人取り残さないまちづくりを目指す

三郷町 まちづくり推進課 インタビュー

三郷町
明治22年 立野、勢野、南畑の三村が合併し三郷村となる。(1889年)
昭和41年 三郷村が三郷町になる。(町制施行)(1966年)
平成28年 奈良サテライトオフィス35を開設(2016年)
平成30年 「童謡のまち」を宣言(2018年)
平成31年(令和元年) 新三郷中学校完成(2019年)
「SDGs未来都市」に選定(2019年)
令和2年 大阪府柏原市とともに「日本遺産」に認定(2020年)
令和3年 BWA無線局開局(2021年)
ゼロカーボンシティ宣言(2021年)

introduction

大阪のベッドタウンとして栄えてきた三郷町。町の抱えるさまざまな課題をSDGsに絡めて解決する取り組みで、2019年にSDGs未来都市に選定されました。

今回、三郷町が推進する「誰一人取り残さないまちづくり」について、詳しい内容を三郷町まちづくり推進課に伺いました。

観光とベッドタウンのまち・三郷町

–まずは、三郷町がどのような町なのかを教えてください。

まちづくり推進課:

三郷町は、奈良県の北西部に位置する人口およそ2万3,000人の町です。町の特徴のひとつとして、大阪に非常に近いことからベッドタウンとして発展してきたので、住宅地が多いことが挙げられます。加えて聖徳太子ゆかりの地である信貴山(しぎさん)があり、国内外から多くの方が観光に訪れています。

–住宅地であり、観光地でもある町なのですね。三郷町はSDGs未来都市に選出されていますが、なぜSDGsに力を入れることになったのか、そのきっかけをお聞きかせください。

まちづくり推進課:

SDGsが採択される以前より、三郷町では災害対策や環境保全など、様々な取り組みを進めてきました。町の周囲のおよそ1/4が大和川に接しており、大雨や台風などがあると川の水が溢れ、地域住民は床下浸水などに悩まされるなど、昔から水害の多い地域です。

<大和川の写真>

住民の方の災害時の不安や不便を軽減できるよう、公共施設の屋上に太陽光発電装置や蓄電池を設置し、停電時でも避難されてきた方が携帯を充電できるなどの様々な対策を講じてきました。

<三郷町 西部保育園の太陽光パネル>

また、環境については環境省が進める「COOL CHOICE」に賛同し、町として真剣に取り組みました。このように、防災と環境をセットでまちづくりを進めてきました。

–以前からSDGsと親和性のある取り組みを進めていたんですね。

まちづくり推進課:

はい。SDGsという言葉が出てきたときに、その理念と町の方針として取り組んでいることとがすごく近しいものだということがわかりました。であれば、これまでの取り組みとSDGsが目指すゴールを結びつけ、明確化しようとなったのです。そしてSDGs未来都市に応募し、選定していただきました。

–SDGs未来都市の応募の際は、やはり防災と環境を軸とした提案となっているのでしょうか?

まちづくり推進課:

その2つに加えて、三郷町は坂道が多く移動に課題があるため、「公共交通」「高齢化」を含めた4つの柱での提案をしています。

住民のQOLを上げた予約制乗合タクシー

–ここからは、詳しい取り組みの内容についてお聞かせください。

まちづくり推進課:

「防災」「環境」「公共交通」「高齢化」全てにまたがる取り組みとして、「予約制乗合タクシー」の導入があります。事前に予約しておくと、自宅までタクシーが迎えに来て、他の方と乗り合いながら、目的地まで送ってくれるサービスです。

–どのような方が利用していますか?

まちづくり推進課:

主に高齢で足腰が弱くなってきた方や、子育て世帯に多く利用いただいています。「病院や買い物に行く」「ちょっとそこまで出かける」など、どんな目的でも利用できます。

–すごく便利なサービスですね。

まちづくり推進課:

この予約制乗合タクシーによって、坂道の不便さが解消されます。また、タクシーは一部に電気自動車を導入し、充電にも部分的に再生エネルギーを使っているので、環境に配慮したものです。そして災害時には、電気自動車が蓄電池になり、ここから電気を供給することもできます。

<乗合タクシー(EV)>

–電気自動車一つで、防災・環境・交通・高齢化の4つの課題に対応しているのですね。この予約制乗合タクシーはどのように予約をするのですか?

まちづくり推進課:

インターネットと電話で受け付けています。オペレーターがいて、乗り合いをうまく調整してくれます。

–利用している方の反応はいかがでしょうか?

まちづくり推進課:

非常に喜んでいただいてますし、リピーターとなって頻繁に利用する方が多いので、便利に感じてもらえているのかなと思います。ただ、コロナ禍になってからは乗り合いというところに不安を抱く方もいらっしゃるので、それが利用量の減少に繋がったところはありますね。

住民参加型の宅配バッグプロジェクト「OKIPPA」

–その他の取り組みについてもお聞かせください。

まちづくり推進課:

2020年6月に三郷町と大阪府を結ぶ龍田古道、そして亀の瀬が日本遺産に登録されました。これにより、日本遺産とSDGsを結び付けてもっとPRしていこうと、聖徳太子の17条の憲法とSDGsの17の目標を絡めたSDGs×日本遺産推進委員会が立ち上がりました。

–推進委員会ではどのような取り組みを行っていますか?

まちづくり推進課:

現在、若手の職員が中心となって宅配バッグのプロジェクト「OKIPPA」を進めています。宅配ボックスのかばんバージョンで、このバッグを使って荷物を受け取ることによって、宅配業者の再配達が必要なくなります。これにより、運転によるCO2排出量の削減や、配達員の業務負担の軽減が期待されています。また、非対面で荷物が受け取れるので感染症対策にもなります。現在モニターを募集中で、今年の9月から300世帯を対象に実証実験が始まります。

<OKIPPAプロジェクトのチラシ画像>

–どのような効果が出るのか楽しみです。

まちづくり推進課:

そうですね。これまで、住民の皆さんからは、「SDGsに対してすごく興味はあるけれど、どのように取り組んでいいのかわからない」という意見が多く寄せられていました。三郷町はSDGs未来都市に選定されましたが、そこに住んでいる住民の皆さんが積極的にSDGsに取り組み、住み続けられるまちづくりに参加してもらうことが重要だと考えています。

–宅配バッグなら住民ひとりひとりが参加意識を持つことができますね。

まちづくり推進課:

はい。実証実験が終わった段階で、参加してよかったという声が聞けたらいいなと思っています。

–ちなみに、町の方のSDGsに対する認知度はどの程度なのでしょうか?

まちづくり推進課:

SDGsの未来都市に選定されたタイミングでは、そこまで認知度は高くありませんでした。住民の皆さんには、三郷町の取り組みがSDGsに繋がっているというイメージはなかったと思います。そこでSDGs未来都市に選定されてから、町が主体となって「SDGsとは何か」を学んだり啓発する取り組みを積極的に実施してきました。

–啓発活動ではどんなことを行っていたのですか?

まちづくり推進課:

住民向けの広報誌にSDGsの情報を毎月載せたり、シンポジウムを開催したりして情報発信を行いました。また、楽しく学べるよう、吉本興業さんと連携して芸人さんにSDGsを盛り込んだ漫才をしてもらいました。

–楽しそうですね!大阪に近い三郷町ならではの面白い取り組みです。

サテライトオフィスでお母さんに働き方の選択肢を

–三郷町はベッドタウンであることから、子育て世帯も多いと思います。そういった方々に向けた取り組みは何か行っていますか?

まちづくり推進課:

平成28年12月からサテライトオフィスを設立して運営しています。コロナ禍になってからは、テレワークの需要が増えていますが、もともとは、「お子さんのお迎えがあって大阪での勤務が難しい」という子育て世帯のお母さんからのニーズに応えて、三郷駅前に施設を作った背景があります。

–駅前にあればスケジュール調整がうまくできそうです。

まちづくり推進課:

サテライトオフィスがあることで、駅前に行ってちょっと仕事をしてお子さんを迎えに行くなど、お母さんの働き方に幅を持たせられるようになりました。お母さんの働く時間が制限されていることは、企業にとって採用のハードルの1つにもなっていたので、そのどちらもが解消された形になります。

–お母さんだけでなく、企業にとってもありがたい取り組みだったのですね。

まちづくり推進課:

はい。そのような理由もあって、最近では利用者が増えてきています。企業専用のオフィスブースもあるのですが、現在3室すべて埋まっている状態です。今後、サテライトオフィスの2号店の設立も計画しています。

–利用者の方の反応で、特に印象的なものはありますか?

まちづくり推進課:

子育て世帯のお母さん、それこそ町が課題として挙げていた対象そのままの方がオフィスブースで働いているのですが、「サテライトオフィスがあるおかげで、仕事も子育ても両立できる。ここがあって本当によかった。」との声を頂いています。町としてもそうしたお声をいただけて本当に嬉しく、ありがたい思いです。

–先ほどの予約制乗合タクシーの事業もそうですが、住民の困りごとをきちんと吸い上げて、事業を作り、要望にきちんと応える。三郷町ではその仕組みが確立されていると感じます。住民のヒアリングなどについて、特別なことを行っているのでしょうか?

まちづくり推進課:

アンケート調査もしますし、役場に住民の方から声が上がってくることもあります。そうした声を無視することなく拾い上げて、町の課題を逃がさないようにしています。

–日々それを行ってきたことが、課題解決事業の立ち上げに繋がっているのですね。

まちづくり推進課:

そうですね。今の町長自身も若手の意見をきちんと聞いてくれます。さきほどの宅配バッグの取り組みでもそうですが、新しい事業を行うとなると当然予算がかかるわけです。場合によっては、不可能に近い提案があるかもしれません。しかし町長は、住民の意見も職員の意見もしっかり聞いてくださり、積極的に事業の検討や後押しをしてくれます。

–役場の環境そのものも良いことが、SDGs事業の推進に繋がっているのですね。

大学跡地を利用して、生涯活躍のまちを作る

–他にも「生涯活躍のまち」というプロジェクトを進めていると伺いました。

まちづくり推進課:

このプロジェクトは、現在三郷町が特に推進している事業です。もともと、三郷町には奈良学園大学という何千人もの学生が通うキャンパスがありました。しかし、2022年の3月に移転することになり、その跡地を三郷町が譲り受けたのです。

–かなり規模の大きい学校だったのですね。町への影響は大きそうです。

まちづくり推進課:

その周りには、学生が利用していたアパートやスーパーがありましたから、大学がなくなって空洞化してしまうことは、周辺地域の経済にもかなり大きな損失です。そこで今、大学跡地を活用して、人が集まるスモールシティを作る構想を立てています。

–どのような構想でしょうか?

まちづくり推進課:

全世代・全員が活躍できる生涯活躍のまちを目指したものです。高齢者の住宅や、障がい者の就労支援施設、児童発達支援施設、外国人向けの日本語学校など、多様な方が集まって交流できる場にしようと整備を進めています。先ほどお話ししたサテライトオフィス2号店もここに設け、企業の方や社会人も集まる場にしたいと思っています。

<「生涯活躍のまち」の完成イメージ図>

–三郷町に住む全員が利用できる施設ですね。ものすごい規模になりそうです。

まちづくり推進課:

はい。町としてもSDGsの理念と同じく、誰一人取り残さない社会の実現を目指して、この事業を計画したところです。この事業により、エリアの中はもちろんのこと、地域全体を通して発展や地域活性化ができればいいなと思っています。

2030年までに目指すは、スマートシティの実現

–三郷町として、2030年までにどのような町になっていたいか、目指す姿をお聞かせください。

まちづくり推進課:

まず、2030年までにSDGsで掲げている目標を達成していくことに加え、スマートシティの実現も同様に目標として掲げています。

–どのようなやり方で実現していくのでしょうか?

まちづくり推進課:

ICTを上手く活用しながらスマートシティを実現し、住民の課題を解決していきたいと考えています。当然、ICTを使うのが難しい高齢者の方などもいます。そのような方々には、様々な支援をしながら、住民全員が一つの方向に進んでいけたらと思っています。

–ICTと言いますと、先に出てきた予約制乗合タクシー事業にも何か関係するところがあるのでしょうか。

まちづくり推進課:

はい。最終的には現在の運用に、車の自動運転システムなども取り入れていきたいと考えています。

–予約制乗合タクシーが自動運転になる未来、想像するとわくわくしますね。2030年の到来が楽しみです。本日は貴重なお話ありがとうございました。

関連リンク

三郷町公式ホームページ https://www.town.sango.nara.jp/