日本シール株式会社|時代の変化に合わせて、アップデートし続ける創業100年の老舗

日本シール株式会社 竹野さん インタビュー

竹野 林太郎

2017年11月、日本シール株式会社に入社、車両営業部に配属。日本シールに入社する前は繊維商社にてアパレル関連の仕事に携わる。モケットの廃棄ロスを削減すべく、それまでの経験を活かし、昨年よりペンケースなどのモケットグッズを企画・生産。想像以上の反響をいただき、引き続き環境にやさしい商品の開発に取り組む。プロフィール写真のリュックサックは数社の鉄道会社のモケットとサボテン由来の合皮レザーを組み合わせた環境にやさしい商品の試作品。

introduction

今年で創業100年を迎える、老舗モケットメーカー「日本シール株式会社」。電車やバスの座席に使うモケット生地の製造に加え、さまざまなSDGsに関する取り組みで、活動の幅を広げています。今回、日本シール株式会社の竹野さんに、SDGsの取り組みや現状について話を伺いました。

100年の歴史をもつ会社が展開するモケット

–まずは、事業内容について教えてください。

竹野さん:日本シール株式会社は、創業100年を迎えるモケット生地のメーカーです。モケットとは、電車やバスの座席に貼られている生地のことを指し、全国の鉄道会社で採用していただいております。

また、1959年には無数の短いパイルを傾斜させたパイルブラシを独自開発し、自社商品としてエチケット®︎ブラシを販売しました。この素材を活用した掃除機のヘッドブラシ、OA機器の部品、最近ではエアコンのクリーニング装置の部品など、関連グッズを展開しているところです。

–100年も前からモケット生地を扱っているのですか?

竹野さん:戦前、鉄道省と呼ばれる鉄道に関する業務を管理、監督していた機関がありました。そこにモケット生地を卸したのが始まりです。それから、1964年の東京オリンピックを控えて開業した「団子鼻」こと「0系」新幹線でも弊社の生地を採用していただくなど、徐々に拡大していきました。

実は、鉄道のモケット生地を扱う会社は、日本で数社しかありません。当社含め燃焼性や耐久性などの品質にこだわり、長く貢献させていただきましたが、今後はSDGsに対応した取り組みにも注力しているところです。

常にアップデートし続けること

–SDGsの取り組みについてどのようなことをされているのでしょうか?

竹野さん:2005年に環境マネジメントシステムの国際規格であるISO14001に加入してから、毎年監査を受けながら目標を立て、SDGsの取り組みを強化しています。監査では、電気代、温室効果ガスの排出量、ゴミの廃棄量など、さまざまな基準が設けられ、細かなチェックが行われています。

また最近では、環境に優しいシートヒーターを開発しています。通常、電車の座席下には、シーズヒーターとよばれるコイル状のニクロム線に電流を流して熱を発するタイプが一般的です。しかし、これだと重くて消費電力が高いデメリットがあるため、薄いTシャツのような生地を使って軽量化し、消費電力の節約をしようと考えました。2024〜2025年頃の実装試験を目指し、2年前から開発しているところですが、すでに数社の鉄道会社さんから問い合わせをいただいております。

ほかには、本来廃棄されてしまうモケット生地を利用したり、座席クッションの端材を再利用する取り組みを行っています。その一環として、モケット生地を使ったペンケースや、まもなく販売される猫の遊びアイテムけりぐるみなどを展開しています。

–さまざまな製品を展開するなかで、共通して意識していることなどはありますか?

竹野さん:弊社は製造業なので、やはり廃棄をなくしたいという想いが一番大きいですね。SDGsの観点からいうと、糸メーカーでは余った生地を溶かして再利用したり、アパレル業界ではリサイクルされた生地を使った服を販売していたりと、すでにさまざまな取り組みが展開されています。我々の取引先だと、大手鉄道会社、バス会社、家電メーカーなどもSDGsの目標を立て、取り組みの幅を広げている印象です。

サプライチェーン全体の排出量である「スコープ1(直接排出量)」「スコープ2(関節排出量)」「スコープ3(そのほかの排出量)」を開示している会社も増えてきています。その中で、私たちもサプライチェーンのなかに入っていく必要性は常に感じております。小規模な会社だからこそ、機能面や付加価値を考えた生産を心がけ、常に時代に合わせてアップデートしていきたいですね。

–具体的には、どのようにアップデートしているのでしょうか?

竹野さん:毎月社内会議を行っており、そこで目標を立て、コストや環境面を考慮したうえで製品化を検討する流れです。さらに弊社には試験室があるので、何度も試験を行いフィードバックをもらっています。例えば、電車の座席に使うモケット生地は、水に濡れたことで発生することのある色の変化を測る「堅ろう度試験」、日が差したときによる変色の程度を測る「耐光堅ろう度試験」などがあり、試行錯誤しながら改良を重ねています。

認識を変えるためにできること

–現状の課題などはありますか?

竹野さん:素材の原料が高騰している現状を危惧しています。環境に配慮したリサイクル紙や合皮を利用した商品の価格がどうしても高くなってしまう傾向があります。アパレル業界を見ていても、自然由来の合皮でできた洋服を作ると、本革とほぼ同じコストになるようです。

海外では、一昨年ぐらいからサボテン、キノコ、ブドウの皮、サトウキビなどを活用した自然由来の合皮が欧米を中心に開発され、エコの素材はコストが高くなっても価値があると認識されつつあります。一方日本では、同じ値段であれば、本革の方が売れる傾向にあり、浸透性はまだまだ低いのかなと感じています。

今後、リサイクルのモケット生地を活用していくに当たって、同じ壁にぶち当たるのでは?といった心配はあります。コロナによる厳しい経営環境のもと、どこまで割高なエコ素材が浸透しているのか、バランスが難しいところですね。

–この課題を改善するために何かできることはあるのでしょうか?

竹野さん:まずは啓発して、人々の意識を変えることが大事だと考えています。とはいえ、弊社の力だけでは限界があるので、Spaceship Earthのように積極的に発信しているメディアに掲載してもらったり、インタビューなどの機会が増えたりしていけば、認知の幅も広がると信じています。

SDGsはエコだけでなく、労働環境なども該当します。もしかしたら、無給与で劣悪な環境下で働かされている人たちが世界中にいるかもしれません。労働環境や環境面など、選ぶ商品の背景を知ることだけでも大きな一歩です。問題意識を持つ人が少しでも増えることを願っています。

ー今後さらに御社の取り組みが拡大し、人々の認識だけでなく環境にもいい変化が起こるといいですね。本日は貴重なお話をしていただき、ありがとうございました!

関連リンク

日本シール株式会社 https://www.nipponseal.co.jp